53.池上彰

2016年1月16日 (土)

日本は本当に戦争する国になるのか?

著  者:池上彰
出版社:SBクリエイティブ
出版日:2015年12月15日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 昨年の通常国会で可決、成立したいわゆる安保関連法について、私は「得ることがほとんどなく、懸念されることが大きい」という理由で、基本的に反対の意見を持っている。しかしもう一度整理をしてみようと思って本書を読んでみた。

 「戦争する国になるのか?」という、煽りの強いタイトルへの答えは、本書の中には出ていない。それはまだ「これからどうするのか」にかかっているからだろう。帯には「この国の未来を自分で判断するために」と書いてある。

 本書は「賛成派と反対派、噛み合わなかった議論」という序章から始まり、「憲法違反ってどういうこと?」「安保関連法っていったいなに?」という基本的な事項の整理に続く。そのあと「中国」「アメリカ」「反対運動」「戦後の安全保障政策」のそれぞれとの関係を解説する。コンパクトで過不足がない。

 判断は読者に預けるという主旨からか、著者の池上さんは、中立の立ち位置を取る。例えば「(安保関連法は)憲法違反ではないという立場の人」と「憲法違反だという反対派の人たち」の意見それぞれの問題点を指摘している。

 ただし「中立」と言っても、放送法の議論に出てくるような「両方の意見を同じ分量」などという本意からズレたものではない。安保関連法への賛成派、あるいは政府与党の問題点が圧倒的に多い。池上さんは「反対」とは言わないけれど「賛成していない」のは明らかだ。

 そんなわけで、もう一度整理をしてみても私の意見は変わらなかった。読まなくても同じだった、ということでは全くない。本書を読んで初めて知ったことは多い。憲法審査会のこと、関連法の11の法律のそれぞれのこと、日米安保条約のこと。勉強になった。

 最後に。池上さんも書いているけれど、昨年の安保関連法案の審議は、「憲法論議」と「安全保障論議」が、混乱した形で並行して進められた。このために「憲法」も「安全保障」も「あるべき姿」の議論ができていない。不幸だ。

 にほんブログ村「政治、経済、国際問題」ブログコミュニティへ
 (政治、経済、国際問題についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「日本は本当に戦争する国になるのか?」 固定URL | 53.池上彰, 7.オピニオン | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月19日 (日)

世界を変えた10冊の本

著  者:池上彰
出版社:文藝春秋
出版日:2011年8月10日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 友達に、「イチオシ」と薦められて読んでみた。これは読み応えがあった。

 1冊の本が「世界を変える」ことなんてあるのか?ある本との出会いが、誰かの人生を変えることはあるだろう。それは容易に想像できる。でも「世界」となると..というのが、読む前に感じたことだった。

 著者が選んだ10冊は次のとおり。「アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「資本論」「イスラーム原理主義の「道しるべ」」「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」

 全部を読んだ方は非常に少数だと思う。全部を知っている方だって多くはないだろう。宗教に関するものと経済に関するものが多い。私は経済学を学んでいたことが幸いして「道しるべ」以外は知っていた。「資本論」と「雇用、利子および貨幣の一般理論」は読んだことがある。ただし「読み終える」だけの興味と忍耐は持ち合わせていなかった。

 「宗教と経済に関するものが多い」ことは何となく合点がいく。この2つは共に国、集団、個人などの各階層における「規範」に関わるからだ。様々な場面でどのような行動をとるか(とることが良いか)を、真の意味で自由に決定することは難しい。規範(ルール)が必要だ。ルールを定めたという意味で、これらは「世界を形作った」と言えるだろう。

 考えたことを2つ。一つ目は「聖書」と「コーラン」「道しるべ」について。「おとなの教養」にも書いてあったのだけれど、「聖書(旧約聖書と新約聖書)」と「コーラン」は、まったく別のものではなく、一続きのもの、イスラム教にとっても「聖書」は「経典」の1つなのだ。強いて説明をすれば「コーラン」は「聖書」の教えをより厳格にしたもの、「道しるべ」はそれをさらに「純化」したものらしい。

 いわゆるイスラム原理主義者は、「道しるべ」を規範としている。オサマ・ビンラディンもこの本の思想を信奉している。彼らが他の宗教、特にユダヤ教やキリスト教に対して不寛容に見えるのは、他の宗教が自分たちと違うからというよりは、教えを「正しく守っていない」と感じるからなのだろう。

 二つ目は「アンネの日記」。10冊の中でもとりわけポピュラーで読んだことのある方も多いだろう。それだけに却って「なぜこの本が?」と思ってしまう。しかしこの本には、欧米の人びとの心に楔を打ち、イスラエル建国を支えた力があるという。中東問題の不可解な点が少しほぐれた。

 読む前に感じた、1冊の本が「世界を変える」ことなんてあるのか?という疑問には答えが出た。実際にあったのだ。読んでみたいと思っても、この10冊のうち多くは読める(読み終える)気がしない。だからせめて、もう少しよく知りたいと思った。

 にほんブログ村「政治、経済、国際問題」ブログコミュニティへ
 (政治、経済、国際問題についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「世界を変えた10冊の本」 固定URL | 53.池上彰, 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月 4日 (土)

メディアの仕組み

著  者:池上彰、津田大介
出版社:夜間飛行
出版日:2013年7月1日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 テレビのニュース解説特番には無くてはならない存在の池上彰さんと、ネットメディアでの活躍が目覚ましいジャーナリストの津田大介さんの対談。「メディアの仕組み」というタイトルだけれども、「仕組み」と聞いて思い浮かぶ、「ニュース番組では、まず記者が取材に行って..」という、チャートで表せるような「仕組み」は書かれていない。

 その代り本書に書かれているのは、「テレビにタブーはあるのか?」とか「新聞は生き残れるのか?」といった、日常で感じる疑問へのお二人の答え(津田さんが池上さんに聞いたり確かめたりする形が多いけれど)だ。二人のやり取りの向こうに「仕組み」が透けて見える。

 本書は5章構成で、第1章から順に「テレビの仕組み」「新聞の仕組み」「ネットの仕組み」「情報を世の中を動かす方法」「「伝える」力の育て方」。徐々に視線が将来へ向く、未来への展望が開ける。まとめ方も読者に優しく気が利いていると思う。

 随所に「Point」と書かれた黄色くマークされた部分がある。短いけれど的を射た言葉が多く、いくつも「あぁそうなのか」「なるほど」と思った。そのうちの2つだけを紹介する。

 1つ目は「もうこれからはメディア事業自体で稼ぐことは考えないで、不動産収入をどんどん増やしていけばいいんじゃないですか」というところ。

 民放とスポンサーの関係は、視聴者が思っているよりずっとゆるやかで、報道系の部署に人はスポンサーのことなんて一切考えないそうだ。ただそうは言っても..ということもある。TBSの「赤坂サカス」のように、別の事業で収益を上げる、というのは報道の独立性を担保するいいモデルかもしれない。

 2つ目は「「正しい情報」と「間違った情報」を瞬時に切り分ける能力ではなくて、「実は分かってないんじゃないか」という恐れを持つこと」という部分。

 これはメディア・リテラシーの話題の中で出てきた言葉。リテラシー不足が大変な惨禍を招くこともある。「自分は絶対に正しい」と思うのは危険だ。「自分の書いた本が売れても、自分は何にも変わらない」という、池上さんの言葉とともに覚え、謙虚であろうと思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「メディアの仕組み」 固定URL | 53.池上彰, 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月17日 (水)

おとなの教養

著  者:池上彰
出版社:NHK出版
出版日:2014年4月10日 第1刷 2015年3月5日 第15刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 時々、著者のこの手の本を読みたくなる。例えばこれまでに読んだののは「知らないと恥をかく世界の大問題」「日本の選択 あなたはどちらを選びますか?」「ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44」。何かこう「知識の補充」をする感じ。

 本書のテーマはタイトルどおりで「おとなの教養」。西欧の「リベラルアーツ」の7科目「文法」「修辞学」「論理学」「算術」「幾何学」「天文学」「音楽」に倣って、本書も7つのテーマを据える。

 その7つは「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」。関係がありそうでなさそうな7つだけれど、実は1つのことが共通している。著者は、これらは全て「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」の答えにつながる、と考えているのだ。

 「宗教」と「歴史」の項目が面白かった。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教を並べて、これだけコンパクトにスッキリとまとめた文章を初めてみた。歴史というものの本質、中国や韓国と日本の関係のことが、すんなりと胸に落ちた。

 それから「経済学」も。恥ずかしながら私は、大学で経済学を学んだはずなのだけれど、「そういうことなのか!」と膝を打つことが数度あった。やはり「教養」が足りないなぁ、と思った。

 文部科学省が大学に出した「人文社会科学系学部の廃止や転換を促した」通知のことが報じられている。実は本書の冒頭には、そのことを見越したような部分がある。「教養」については、これまでにも政府・経済界と大学の間で綱引きがあったらしい。この文脈で見ると今回の通知の位置づけがよく分かる。

最後に印象的な言葉を。「すぐ役に立つことは、すぐに役に立たなくなる

 にほんブログ村「政治、経済、国際問題」ブログコミュニティへ
 (政治、経済、国際問題についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「おとなの教養」 固定URL | 53.池上彰, 9.その他 | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年2月27日 (水)

日本の選択 あなたはどちらを選びますか?

著  者:池上彰
出版社:角川書店
出版日:2012年12月10日 初版発行 12月25日 再版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 複雑な問題を、丁寧に分かりやすく説明してくれる池上彰さんの近著。日本が抱える10個の問題の選択について解説している。書かれたのは昨年末の総選挙の直前、投票の前に本書を読んでいたら、1票の行き先が違った、という人もいるかもしれない。

 10個の問題とは、「消費税」「社会保障制度」「ものづくり」「領土問題」「日本維新の会」「大学の秋入学」「教育員会制度」「原発」「選挙制度」「震災がれき」。それぞれを、必要であればその起源まで遡って説明し、「賛成」「反対」などの「どちらを選びますか?」という選択を読者に促す。

 本書は一昨年の震災後まもなく出版された「先送りできない日本 」を受けて作られたもの。著者は本書の「おわりに」で、前書を「もう先送りなどできない状態のはず」と希望を込めて世の中に送り出したのに、「その後の状況に驚きを通り越して呆れることも多々」と、その心情を吐露している。

 「先送り」は事態をより困難にするばかり。政治家や官僚には期待できないと踏んだ著者が、私たち国民に「選択をすべきだ」と言っているわけだ。しかし著者は、丁寧に分かりやすく説明してくれるが、答えを示してはくれない。それを決めるのは、私たち一人一人。私たちも永らく「選択」せずに来てしまったらしい。

 最後に。池上彰さんは得難い人材だと思う。混迷の時代にこういう人が現れたことは幸運でさえある。ただ、テレビも活字メディアも池上さんに頼り過ぎのような気がする。今日もテレビで「巨大地震」をテーマに4時間スペシャルが組まれていた。

 にほんブログ村「政治、経済、国際問題」ブログコミュニティへ
 (政治、経済、国際問題についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「日本の選択 あなたはどちらを選びますか?」 固定URL | 5.ノンフィクション, 53.池上彰 | コメント (0) | トラックバック (1)

2010年5月12日 (水)

知らないと恥をかく世界の大問題

著  者:池上彰
出版社:角川SSコミュニケーションズ
出版日:2009年11月25日 第1刷発行 2010年5月4日 第15刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1年弱前に読んだ「14歳からの世界金融危機。」の著者の新書。書店で新書ランキングの上位になっていた。新書の場合は、売れている(という噂の)本がさらに売れる、という傾向があって、ランキングが中身の良し悪しを反映しないと思っているので、それだけであれば手を出さないのだけれど、「14歳からの~」が思いのほか良かった覚えがあったので読んでみた。

 内容は、世界の勢力地図、アメリカの覇権の崩壊とパワーシフト、世界の問題点、日本の問題点、と今の世界を網羅的に説明している。歴史的な流れを踏まえた考察やウラ話的なものも交えてあり、新聞記事より奥行きがある情報が得られる。
 「はじめに」で世界金融危機のことに触れ、「ブッシュ大統領以外の世界の指導者たちは、歴史に学んでいました」と書いているように、ブッシュ政権(あるいはブッシュ元大統領個人)には大変厳しい眼を向ける。今世界が抱えている問題のいくつかは、ブッシュ政権の失策が原因だとも読める。(「世の中の悪いこと全部が、自分たちのせいにされる。アメリカみたいだ」(伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」より)という言葉を思い出した。)
 その反動もあってか、日米の民主党に対しては肯定的な意見が多い。本書の発行は2009年11月、オバマ政権発足から10ヶ月、鳩山政権からはわずか2ヶ月だ。著者も、新政権には期待を持っていたのだろう。今なら、違うことを書かなくてはならないと思うが。

 「知らないと恥をかく~」というタイトルは、見栄っ張りのビジネスパーソンに効きそうな殺し文句。まぁ、知らなくても恥をかくことはないが、どこかで披露するとちょっと得意になれるような話題が詰まっているので、話のネタを仕入れるつもりで買うのなら760円の価値はあると思う。
 しかし「上っ面をなでました」というスカスカした印象はぬぐえない。本書の帯に「世界のニュースが2時間でわかる!」とある。「14歳からの世界金融危機。」は「45分で分かる!」というシリーズ。どちらも「お手軽さ」を謳ったことは共通だが、テーマを世界金融危機1つに絞った45分は意外に充実したものだったが、いくつもの問題を扱っての2時間ではそれはムリだった、ということだ。私としては、年金や教育や地方分権など、本書で取り上げた「日本の問題」について、著者の意見をもう少しじっくりと聞いてみたい。

 それにしても著者のテレビでの人気ぶりはスゴイ。調べてみたら、古巣のNHKを除いて在京キー局のすべてが、今年になってからバラエティ番組などで、ニュース解説に著者を起用している。テレビ局は「ニュースを国民に分かりやすく伝える」という機能を、自前では賄えなくなっているのかもしれない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「知らないと恥をかく世界の大問題」 固定URL | 53.池上彰, 6.経済・実用書 | コメント (2) | トラックバック (4)

2009年6月20日 (土)

14歳からの世界金融危機。

著  者:池上彰
出版社:マガジンハウス
出版日:2009年3月23日 第3刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 最近は、「簡単」で「すぐ読める」本がバカ売れすることがあり(「1Q84」はこれに当たらないが)、あらすじで名作を読もうという本まである。私はこうしたお手軽な本には、否定的な感想を持っていた。簡単にしたことで重要なものが抜け落ちて、それがないと物事は全然違って見えるかもしれないからだ。
 そこへ来て本書は「45分でわかる!」と銘打ったシリーズの1番手。さらに、先日本書の著者による本書をベースにしたと思われる、「池上彰のやさしい経済教室」なる記事が朝日新聞に載っていた。45分でわかる本をさらに要約して2500字前後、まぁ5分ぐらいで読めるようにしたわけだ。なんてお手軽志向なんだろう。

 それで新聞の記事を読んで思ったことが2つ。1つ目は、やっぱりこれでは物事を単純化しすぎなのではないか、ということ。「サブプライムローン」の破たんの原因が「信用力の低い人に貸したこと」としか書かれていない。
 2つ目は、私が知らないことが書いてある、ということ。まぁ、全てのことを知っていると驕るつもりは毛頭ないが、それでも、「グローバル恐慌」も読んだし、新聞も結構読む方だし、毎晩ニュースも見るし、5分で読める解説の内容ぐらいは知っていると思っていた(これだって充分に驕りだったわけだ)。

 前置きが長くなったが、本書を読んだ感想。100ページに満たない薄~い本だけれど、45分の時間をかける価値は充分にあると思う。もちろん2500字が100ページ弱に増えても、単純化の弊害からは免れてはいない。しかし、1つ1つを短く説明することでより多くのことが書けているし、それらを関連付けて説明することに成功している。簡潔に書くことで、逆に新聞やニュースでは見えなかったことやつながりが見えてくるのだ。
 本書は、少し前にブログ友達のさーにんさんが教えてくれたものだが、その時には「物語とは違って、説明は分かりやすく簡単にすることはとても大切」などと答えていた。今も改めて同じことを思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「14歳からの世界金融危機。」 固定URL | 53.池上彰, 6.経済・実用書 | コメント (4) | トラックバック (1)

2007年4月 8日 (日)

大人になると、なぜ1年が短くなるのか?

著  者:一川誠、池上彰
出版社:宝島社
出版日:2006年12月30日第1刷
評  価:☆☆(説明)

 著者2人は、それぞれ認知科学者と、元NHK記者のジャーナリスト。2人の対談をまとめて出版した形。

 認知科学者である一川誠氏は、山口大学の「時間学研究所」のメンバーである。「時間学」なる学問が確立されているとは思わないが、心理学や物理学から、文学、考古学、哲学といった様々な学問の学際的研究によって、時間に関する学問の価値創造を行っているらしい。この取り組みは面白いと思う。

 前半は、一川氏の専門である認知科学の面白い事例が紹介されていて、「へぇ」と思わせてくれる。人間は実は見たもののほとんどを覚えていない、とか。例えば、見知らぬ人に道を聞かれて、途中で道を聞いた人が入れ替わっても、半数以上の人は気付かない、といった実験。また、同時に光っても、動いている光点は実際より先に進んで見えてしまう「フラッシング効果」も興味深い。サッカーのオフサイドは、この錯覚のために正確な判定は難しいそうだ。

 後半になってタイトルの「大人になるとなぜ1年が短くなるのか」の話題になる。しかし、これに対しては、期待を満たすような回答はない。「子どものころは変化に満ちていて、運動会や遠足などイベントが多くて充実しているからではないか」などと、普通に思いつくようなことが言われているだけだ。これについての学問的検証もない。対談で出てきた話題の中で、ウケそうなものをタイトルにしただけではないのか?

 ただし、「大人になると.....」という話のくだりではないのだけれど、「1,2,と、カウントしないで自分で1分を測ることで、代謝の良い悪いが分かる」ということが紹介されていた。
 代謝が良いと実際より早く1分だと感じてしまう、悪いと遅く感じる。子どもの頃は代謝が良いので、自分は1分経ったと思っても45秒だったりするわけだ。これなら、子どもの頃は時間がゆっくり流れるように感じるはずで、この説明なら何とか学問的かもしれない。

 タイトルに対する明快な解や研究を期待すると裏切られてしまうが、時間に関する興味深い話を仕入れることはできる。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「大人になると、なぜ1年が短くなるのか?」 固定URL | 53.池上彰, 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

0.トラックバックについて | 0.本の評価について | 1.ファンタジー | 11.トールキン | 12.C.S.ルイス(ナルニア国) | 13.ル・グウィン(ゲド戦記) | 14.ダイアナ・ウィン・ジョーンズ | 15.サトクリフ | 16.上橋菜穂子 | 17.P・ステュワート(崖の国) | 18.ガース・ニクス(王国の鍵) | 19.D・デュエイン(駆け出し) | 1A.たつみや章 | 1B.畠中恵 | 1C.小野不由美 | 1D.仁木英之(僕僕先生) | 1Z.その他ファンタジー | 2.小説 | 21.村上春樹 | 22.有川浩 | 23.森見登美彦 | 24.恩田陸 | 25.梨木香歩 | 26.万城目学 | 27.三浦しをん | 28.重松清 | 29.小川洋子 | 2A.あさのあつこ | 2B.近藤史恵 | 2C.和田竜 | 2D.高田郁 | 2E.瀬尾まいこ | 2F.辻村深月 | 2G.朝井リョウ | 2H.池井戸潤 | 3.ミステリー | 31.伊坂幸太郎 | 32.東野圭吾 | 33.森博嗣 | 34.加納朋子 | 35.三崎亜記 | 36.ダン・ブラウン | 37.ダレン・シャン | 38.フィリップ・プルマン | 39.小路幸也(バンドワゴン) | 3A.三上延(ビブリア古書堂) | 3B.ジェフリー・アーチャー | 3C.柳広司(Joker Game) | 3D.大沼紀子(まよパン) | 3F.中山七里 | 3G.海堂尊(田口・白鳥) | 4.エッセイ | 5.ノンフィクション | 51.塩野七生 | 52.感動コミック | 53.池上彰 | 54.グラハムハンコック | 6.経済・実用書 | 7.オピニオン | 71.香山リカ | 8.雑誌 | 9.その他