6.経済・実用書

2018年11月14日 (水)

55歳からのリアル仕事ガイド

監  修:松本すみ子
出版社:朝日新聞出版
出版日:2018年9月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 以前に紹介した「人生100年時代の新しい働き方」と同じく、「人生100年時代」が気になって読んだ本。ちなみに、私は今55歳。

 監修者はシニアライフアドバイザー。各地でシニア世代に関する講演やセミナーの講師を務めている。著者紹介によると、IT企業で広報やマーケティングなどを担当した後、50歳で独立して会社を設立、シニア世代にライフスタイルの提案や情報提供などを始めた、とある。ご自身も「セカンドキャリア」構築の実践者、ということか。

 全部で4章。第1章から順に「55歳からの働き方・お金の基礎知識」「定年後の仕事のリアル」「定年後の仕事の探し方」「シニアの仕事と資格紹介」。最後の「シニアの資格紹介」では「シニアライフアドバイザー」も紹介しているのが、ちょっと面白かった。確かに若い人にはあまり向かない仕事かもしれない。

 分量的に大半を占めるのは、第2章「定年後の仕事のリアル」で、「セカンドライフ」の実例を40件紹介している。パターンも様々取り揃えてあって、「現役時代の仕事を活かして」というのもあれば、「前職にこだわらずに」もあり、「新たに資格を取って」もあれば「好きなことで生きる」というのもある。

 実例は、自分のことも具体的に考えるのに役に立った。ただ、仕方ないとは言え全て成功した例で、みなさん活き活きしていて「うまく行った人はいいよねぇ」なんて、ひねくれた気持ちが顔を覗かせてしまった。また、他人の例はあくまで他人の例で、私の漠とした想いにフィットするものはなかった。

 それよりも私には、第1章にあった基本的な考え方が心に残った。それは「60歳退職」と「65歳退職」では大きく違う、というもの。今は再雇用制度によって65歳まで勤められるけれど「60歳で辞めていれば、65歳までの間に何かを始められていたかもしれない」という。

 つまり、準備期間が必要なのだ。実例を見ても「定年になる前に始めた」という人が意外と多い。本書のタイトルが「55歳からの~」なのは、60歳を定年として、それまでの5年を準備期間に..ということなのだろう。

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2018年10月27日 (土)

人生100年時代の新しい働き方

著  者:小暮真久 
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2017年9月21日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「人生100年時代」が気になって、そういうタイトルや内容の本を何冊が読んでいる。本書はその1つ。

 本書は「仕事を、人生を、よりよい方向にシフトさせながら幸せを見つける生き方」をする人を「ライフシフター」と定義する。「シフト」をより具体的に言うと、「仕事の場所や職種を変える」こと。そして、そうした生き方に必要な「5つの力」と「14のソフトスキル」を紹介する。

 「5つの力」は、「見いだす力」「聞き出す力」「嗅ぎとる力」「つかむ力」「味わう力」。「14のソフトスキル」は、例えば「見いだす力」に関連するものとして「未来想像力」「アイデア直感力」「ありのまま観察力」の3つがある。さらに例えば「未来想像力」を身につけるには「過去を見る」とか「外の人との対話」が役に立つ、という具合。

 説明は懇切丁寧だ。こんな感じで14のソフトスキルが時々具体例を引きながら紹介される。役に立ちそうなちょっとしたコツもある。例えば「聞き出す力」の「深堀り質問力」で、有益な情報を得るのに「インタビュー終了後に片付けながら質問する」とか。

 ただし、こんな感じで「いいこと」は書いてあるんだけれど、「私が知りたかったこととは違う」という思いが、読み進めるほどに募る。このスキルを身につければ、コミュニケーション能力と順応性に優れた、軽やかなある種の万能人になれる。でも、私はそういうものになりたかったわけではない。(よく見ればサブタイトルに「生産性を高め、パフォーマンスを最大化する~」と書いてあるので、このミスマッチの原因の大方は私の方にある)

 私は「あと数年で迎える定年の後をどう過ごすか」という、少しみっともない問の答え(のヒント)を求めていた。確かに「人生100年時代」の端緒となった「ライフ・シフト」でも、「教育」「仕事」「引退」の3つのステージモデルから「マルチステージ」へと書いてあった。しかし、私としては「マルチ」といっても、ステージが2つか3つ増える、というイメージだった。著者がモデルとした人々のように、早ければ数年でシフトするような生き方は考えていなかった。

 「コミュニケーション能力と順応性に優れた人になりたい」という人、「役に立ちそうなちょっとしたコツを知りたい」という人にはおススメ。「定年後をどう過ごすか」を考えるには、ちょっと不向き。

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2018年10月21日 (日)

マーケットでまちを変える

著  者:鈴木美央 
出版社:学芸出版社
出版日:2018年6月10日 初版第1刷 7月20日 初版第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書で取り扱う「マーケット」として、著者が4つの条件を明記している。(1)屋外空間で売買が行われていること (2)入場に制限がないこと (3)仮説であること (4)伝統的な祭り・フリーマーケットを除く。

 つまり、普段は道や公園などである場所に、ある期間だけ仮設テントなどのお店が集まってお客さまを迎える。例えば...と考えて私は「輪島の朝市」しか浮かばない。他に適当な例が浮かばないのは、私の知識が貧困なだけでなく、日本では都市の近代化の過程で、各地にあったマーケットが途絶えてしまったからだ。

 著者は、英国の設計事務所で大規模建築の建設などを担当したのち帰国、現在は、建築設計、行政のアドバイザー、マーケットの企画・運営などを行う。「マーケット」に着目したのは、英国での経験がきっかけ。本書で詳述しているけれど、ロンドンには都市部で区が運営するマーケットが45カ所もある。ロンドンに暮らす人々にとって、それはイベントではなく日常なのだそうだ。

 そしてマーケットは、「そこに住む人々の生活の質を高め」「地域経済を活性化し」「まちの魅力を増す」ことにつながるとし、日本でも取り入れよう、そうすれば「日本中のまちをマーケットから変えていくことができるのではないだろうか」と著者は主張する。

 本書で著者はまず、ロンドンと東京の100例を調査し、ロンドンで6カ所、東京で5カ所のマーケットを取材、キーマン6人にインタビューする。そして、マーケットが生み出す15個の効果を明らかにする。さらには、自らもマーケットの企画運営を実践した経験を元に「あなたもできるDIYマーケット」と、マーケットの企画・運営の指南まで記している。

 並大抵の気構えではこんなことはできない。著者は本気なのだ。本気で(タイトルの)「マーケットでまちを変える」つもりなのだ。なんかワクワクしてきた。

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2018年10月17日 (水)

働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社

著  者:小室淑恵 
出版社:毎日新聞出版
出版日:2018年3月20日
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は株式会社ワーク・ライフ・バランスという会社の代表取締役社長。この会社はこれまで900社以上の企業等の「働き方改革」を成功に導いたコンサルティング会社。私は、何年か前にテレビで著者が話していた「人口ボーナス期」「人口オーナス期」の話に感銘を受けて、著者の事業をもっと知りたいと思った。(そのまま何年か経ってしまったけれど)

 本書は、著者の会社の900社の実績の中から、20社の成功事例を選んで紹介する。併せてなぜ「働き方改革」が必要であるのか?そのためにはどうすればいいのか?を、コンパクトに説明する。その中に「人口ボーナス期」「人口オーナス期」の話もある。

 「人口ボーナス期」とは、その国に「若者がたっぷりいて高齢者が少ししかいない」人口構成の時期。安い労働力で安く早く大量に仕事をこなす。高齢者が少ないので社会保障費が嵩まない。余った利益をどんどんインフラ投資に回す。爆発的に経済発展する。日本では1960年代半ばから1990年代半ばまで。

 さらに「人口ボーナス期」の特長は、筋力を必要とする仕事が多いので「なるべく男性が働き」、作れば作っただけ売れるので「なるべく長時間働き」、均一なものをたくさん提供するために「なるべく同じ条件の人を揃えた」、そういう組織が成功する。

 「人口オーナス期」はその逆。「高齢者が多く若者が少ない」。その特長も逆。「男性も女性も働き」「なるべく短い時間で成果を出し」「なるべく違う条件の人を揃えた」、そういう組織が成功する。日本はすでに1990年代後半から、世界で一番早く「人口オーナス期」に入っている。

 本書ではコンパクトに収まっている説明を、長々としてきたけれど、この前提がないと「働き方改革」が矮小化して捉えられてしまう。つまり「労働時間の短縮」だけを取り出して、「家に早く帰って家族団らん」という、「個人のライフクォリティの向上」という「個人の問題」に落とし込んでしまう。そうではなくて「働き方改革」は、企業・組織の生き残り、ひいてはこの国の行く末を左右する問題なのだ。

 「そんなこと言っても、うちの会社はそんな余裕ないよ」という人は多いだろう。そういう人にこそ本書を読んでもらいたい。「愛知県警察」とか「あずさ監査法人」とか「内閣府」とか「静岡県の小中学校」とか、「さすがにムリでしょ」と納得してしまいそうなところで、キチンと成果が上がっている。警察の捜査部門でもできた「残業の大幅削減」と「事業(事件捜査)評価の向上」の両立が、あなたの会社でできない理由は何?ということだ。

 最後に。「働き方改革」で成果が出た会社で、誰が一番喜んでいるか?早く家に帰れるようになった従業員ではなく経営者だ。そりゃそうだ。従業員は自信を得て生き生きしているし、業績は伸びるし、特に中小企業で顕著なのは、入社の応募がグンと増えて優秀な人材が採用できるようになったのだから。

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2018年8月29日 (水)

ゼロ・トゥ・ワン

著  者:ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ 訳:関美和 
出版社:NHK出版
出版日:2014年9月25日 第1刷 2015年2月15日 第6刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 友達のFacebookで知った本。「ほぼ日刊イトイ新聞」でも紹介されていた。

 著者は、PayPalの創業者で、そのPayPalをeBayに15億ドルで売却した後は、活動の中心を投資に、特にスタートアップ企業への投資に移す。著者が行った最も有名な投資は、Facebookへの投資で、最初の外部投資家として50万ドルを融資し、それが最終的には10億ドルになった。

 本書は、著者がスタンフォード大学で行った「起業論」の講義を基にしたもの。「より良い起業のあり方」を語っていて、これを理解すればスムーズに起業できる..とはならない。

 それは、起業しようとする人に対する著者の要求レベルが高いからだ。著者は採用面接で必ずする質問があるそうだけれど、起業して成功しようというなら、この質問に答えられなければならない。その質問がこれ。

 「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?

 つまり「ほとんどの人は知らないけれど、自分は知っている」、そんな独創性を持ち、それを言葉にして表せる論理性や表現力、そして何よりも自信が必要だ。なんと言っても「ほとんどの人には賛成してもらえないのだから。

 とはいえ、そんな独創性も自信もない私にも刺激のある本だった。「資本主義は競争を重んじるけれど、資本主義と競争は対極にある」とか「グローバリゼーションは水平的進歩(1 to n)、テクノロジーは垂直的進歩(0 to 1)」の話は、ストンと胸に落ちた(先の質問に対する著者自身の答えも、この辺りにある)。「あいまいな楽観主義」の問題点もよく分かった。

 あえて難を言えば、時々興ざめする記述がある。投資の鉄則として「大成功する可能性のある企業だけに投資する」なんて言われると「それができるなら世話がない」と思う。盟友のイーロン・マスクの「ステラ」を成功企業として取り上げるのはいいけれど、何もかも優れているように書くのはどうなのか?

 最後に、心に残った言葉。「人生はポートフォリオじゃない

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2018年6月17日 (日)

ムダゼロ会議術

著  者:横田伊佐男
出版社:日経BP社
出版日:2018年5月21日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本いただきました。感謝。

 会社勤めや役所勤めをしていれば「会議」を避けては通れない。その会議を理想的なものに変える方法を、本書は教えてくれる、という。「会議」が変われば「仕事」が変わる。「仕事」が変われば「会社」が変わる。「会社」が変われば「人生」が変わる。「はじめに」で上手に煽られて、期待して読んだ。

 本書は会議における悩みを4つに絞っている。会議の「時間が長い」「中身が薄い」「何も決まらない」「発言がない」。思い当たることが多い。私がすぐに思い当たった会議は、1番と2番と3番が複合的にあてはまる。いや発言だって、指名された人がするだけだから4番もだ。

 それで、どうしたらいいのか?まず、会議「前」「中」「後」に分ける。されに「前」に①会議の人選、②論点。「中」に③ゴール設定、④シナリオ、5拡散、⑥収束。「後」に⑦議事録。全部で7つの項目に分けて「良い例」と「悪い例」を分けて説明。分かりやすい。

 例を一つだけ。会議「前」の②論点。これは議題の設定の話。そもそも「議題」があって、その「答え」を論じるのが「会議」。「答え」を論じるのなら、「議題」は「問い」でなければならない。「良い例」と「悪い例」をあげると...

悪い例:現在の営業不振について
良い例:現在の営業不振を、誰がどうやって挽回するか?

 さらに言えば、「比較」や「数字」を取り入れると、より問題の幹をつかみやすい。

良い例:目標未達の「1億円」を「3か月以内」に、誰がどうやって挽回するのか?

 どうだろうか?私の経験では「悪い例」のような議題以外見たことがない。下手をすれば「議題があるようなないような」会議もある。人間「問い」の形で出されると「答え」を求めたくなる。これだけでも、会議を有意義なものに変える力があるかもしれない。おススメ。

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2018年5月27日 (日)

先にしくじる

著  者:山崎裕二
出版社:日経BP社
出版日:2018年5月21日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本いただきました。感謝。

 タイトルの「先にしくじる」を見て、「若いうちは失敗をたくさんしろ」とか「失敗は成功の母」的な話かと思ったが、そうではなかった。そんな精神論的なものではなく「プレモータム・シンキング」という、失敗しないための方法論の解説と実践のための本だった。

 「プレモータム」は「premortem」という英語。もともとは医学界の用語で、検死や遺体解剖などの死後の分析を意味する「postmortem」の反対語で、「死亡前死因分析」などと訳される。「もし患者が死ぬとしたら」と、死因を予想して対処法を検討する方法論。ちなみに「mortem」は「死」で、「pre」は「前」を「post」は「後」を表す接頭語。

 本書のテーマは、そこから転じて「もしプロジェクトが失敗するとしたら」と、失敗の要因を予想して対処法を検討する、ビジネス上の方法論としての「プレモータム・シンキング」。個人の仕事からチームで行う大きなプロジェクトにまで使える。

 「失敗の要因を予想して対処法を検討する」なんて、誰でもやってそうなことだ。しかし本書を読めば「こんなこと誰もやってない」と思うはずだ。なかなか説明が難しいが、敢えて言えば「失敗の要因の予想」の執拗さが違う。誰もが思う「うまく行って欲しい」という気持ちに反して、先回りして失敗することを真剣に考えなければいけない。

 本書には、その「失敗」を考えるのに有用な、心理学や行動経済学の知見が紹介されている。それが、人間が生来持つ「七つのバイアス」の罠。将来より現在を優先してしまう「現在バイアス」これだけつぎ込んだのに今さらやめられない「コンコルド効果」自分たちのやり方でうまく行くと思ってしまう「自己中心性バイアス」などなど。意識して排除しないと、易々と罠にはまって失敗してしまう。

 この方法論は、完遂すれば効果は絶大だろう。絶対に失敗できないプロジェクトを抱えている人は取り入れるといいと思う。ただし、それはとても難しい。「こんなこと誰もやってない」と上に書いたにはそういう意味もある。プロジェクトの計画段階から「失敗」を想定し、その後も何度も「失敗したら」と口にしなくてはいけない。それは簡単なことではない。

 この方法論を完遂するには、「そんなネガティブなこと言うな」と言わないだけの胆力が、チームメンバーに求められる。そう必要なのは胆力だ。著者もそのことは分かっていて、様々な工夫を紹介してくれている。それが効奏すればいいのだけれど。まずは自分ひとりで取り入れてみるといいかもしれない。

 最後に。著者がこの本を執筆する際の想いが「おわりに」に書かれている。深く感銘した。原発などの過酷事故が想定されることの関係者は、必ず習得すべき方法論じゃないかと思う。

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2018年3月15日 (木)

1時間で歴史とビジネス戦略から学ぶ いい失敗 悪い失敗

著  者:鈴木博毅
出版社かんき出版
出版日:2018年1月22日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書はタイトルを見て分かるとおり「失敗」をテーマとしたもの。基本的には「失敗」はネガティブな出来事で、できれば避けたいものだ。そこに「いい失敗」という、本来は「失敗」とは相容れない、ポジティブな言葉をキーワードとして設定することで、考察の新しい視点を提供している。

 その「いい失敗」を設定するにあたって、著者は一つの考え方を導入する。それは「ミス≠失敗」という考え方。「ミス」を犯したとしても、それが悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。「ミス」と「失敗」の間には、意味的にも時間的にもギャップがある。

 つまり「ミス」も、悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。それどころか、後の扱い次第で成長や成功につながることもある。その場合は「失敗」であっても「いい失敗」だ。「あれ?悲劇的な結果につながらなくても「失敗」なの?」と、定義に混乱はあるけれど、言いたいことは分かる。要は「後の扱い次第」ということだ。

 本書は全編を使って、この「後の扱い」に注目してたくさんの例を挙げて「いい失敗」と「悪い失敗」を区分けする。例えば「いい失敗:成長に転換できる/悪い失敗:甚大な被害になる」「いい失敗:客観的に見ている/悪い失敗:感情にとらわれてしまう」「いい失敗:失敗をプロセスと考える/悪い失敗:失敗を終点と考える」...

 私たちは「早く忘れてしまいたい」と思うあまり、失敗を見つめることをしない。でも、何かに挑戦すれば失敗は避けられない。失敗を避けて何にも挑戦しなければ、そのこと自体が失敗だ。このように「失敗」が不可避なものなら、そのことを見つめてよく知ろう。分析することで成功に転じる方法が分かる。この本はそう言っている。私にも異論はない。

 最後に。「失敗の分析」と言えば、先に「失敗の本質」という名著がある。本書での言及は少ないけれど、著者はその解説本である「「超」入門失敗の本質」を記している。これがとても分かりやすい本で、著者はここからも本書のヒントを得たに違いない。 

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2018年1月24日 (水)

自分を操る超集中力

著  者:メンタリストDaiGo
出版社:かんき出版
出版日:2016年5月27日 第1刷 7月1日 第5刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の顔はテレビで見たことがあり、「メンタリスト」という職業か肩書かなのだということも知っていた。でも「メンタリスト」が何なのかは知らない。著者紹介によると「人の心を読み、操る技術」を「メンタリズム」と言い、その技術を駆使する人を「メンタリスト」と呼ぶそうだ。

 本書は、その著者が、自分の「集中力をコントロールする術」について書いている。著者は「メンタリスト」だから、人の心を操る技術に長けているわけで、その技術を自分に使えば、心の問題でもある「集中力」を「コントロール(操る)」することもできるわけだ。

 本書の主張はこんな感じ。「ウィルパワー」という、脳の前頭葉を源とする「思考や感情をコントロールする力」。この「ウィルパワー」には一定の量があり、集中力を使う度に少しずつ消耗する。枯渇してしまえばもう集中力を使えなくなる。だから、その「ウィルパワー」の量を増やすか、消耗を減らすかすることが、集中力を高めることになる。

 「量を増やす」と「消耗を減らす」。本書は多くのページを費やして、この二つの方法を紹介している。それも「具体的な行動」に落とし込んで紹介しているので、明日からでも取り入れることができる。例えば「机の周りを片付ける」「15分に一度は立ち上がる」「1~2時間にコップ1杯の水」等々。

 ひとつ「確かにそうだよな」と思ったこと。「脳は小さな意思決定の連続によって疲弊していく。しかも「今は面倒だから..」と後回しにすると、持続的に疲れが増していく」。仕事でも家庭でも、思った以上に多くの、細々とした意思決定を私たちは行っている。面倒な事、特に雑事ほど、すぐに片づけてしまった方がいい。

 もうひとつ。「集中力の高い人は、実は短時間の集中を繰り返している」。25分の集中と5分の休憩を繰り返す、というのが目安らしい。これは使えそう。

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2017年11月25日 (土)

ソニー歴代トップのスピーチライターが教える人を動かすスピーチの法則

著  者:佐々木繁範
出版社:日経BP社
出版日:2017年10月17日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者はソニーの盛田昭夫会長と出井伸之社長のもとでスピーチライターを務めていた方。ソニー退社後は、コンサルタントとして、スピーチ講座や個別のコンサルティング通じて、延べ1万人以上のビジネスリーダーを指導したそうだ。

 本書は、その著者が「スピーチ上達のための12か条」を教えてくれるものだ。1か条につき1章、全部で12章で構成されている。例えば「メッセージを明確にする」「主張には理由を添える」「スピーチの構造をシンプルにする」「ストーリーを織り込む」等々。

 ノウハウを記したこうした本の常として、12か条として提示されたものに、あっと驚くような目新しいものはあまりない。私がそれなりに経験を積んできたからでもあるし、そもそも本当の意味での「秘訣」なんてそうそうないからだ。

 だからと言って、本書に価値がないかというと決してそうではない。ノウハウというのは、整理されてこそ「使える」ものになる。いくつかの項目がバラバラの状態では、自分のスピーチがいいのか悪いのかの検証も難しい。その点、こんな風に整理されていると、とても使いやすい。

 もう一つ。先に「目新しいものは「あまり」ない」と書いたけれど、実は私にとって目新しいものがあった。それは第6章の「自己開示する」という項目。「一般論ではなく経験談を」ということで、著者自身の経験談も載っているのだけれど、これで本当に具体的によく分かった。

 人の心をつかむか否かには、属人的な要素も重要なのだ。「何を話すか」と同じぐらい、もしかしたらそれ以上に「誰が話しているか」に意味がある。「私という人を分かってもらうことで、物事が進みだした」そういう経験が私にもある。

 最後に。「スピーチ」なんて自分にはする機会がない、という人も多いだろう。でも、この12か条は「人に何かを伝える」時に役に立つ。プレゼンをするとき、あいさつ文を書くとき、人に何かを頼むとき。興味がわいた方は一読を。

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