6.経済・実用書

2017年1月22日 (日)

ライフ・シフト

著  者:リンダ・グラットン アンドリュー・スコット 訳:池村千秋
出版社:東洋経済新報社
出版日:2016年11月3日 第1刷発行 11月29日 第3刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の一人のリンダ・グラットンさんは、前著「ワーク・シフト」で「2025年の働き方」を展望して見せた。テクノロジーやグローバル化などの要因が変化する中で、必要とされる「仕事」に関する考え方の「転換(シフト)」を考察したものだった。本書は、その考察をさらに広げて「人生」に関する考え方の「転換」をテーマとしたものだ。

 内容の紹介の前に2つ質問。その1「「人生」と聞いて何年ぐらいのものを思い浮かべますか?」。その2「仕事をリタイアするとして、何歳ぐらいを想定していますか?」。その1の答えは「80年ぐらい?」、その2は「65~70歳ぐらいまでにはなんとか..」と、私は思っていた。みなさんはどうだろう?

 厚労省の発表によると、日本の平成27年の平均寿命(ゼロ歳の平均余命)は男性が80.79年、女性は87.05年。年金受給開始年齢は65歳で、70歳への引き上げが取りざたされている。だから、私が思っていたことも、大きく間違えていないはず。

 本書の内容の紹介。序章に衝撃的な計算結果が載っている。それはある年に生まれた人が50%に減る年齢。2007年生まれの人は104歳、1997年生まれは101~102歳、1987年生まれは98~100歳...1957年でも89~94歳。ちなみにこれは「先進国」の値で、日本ではさらに3歳程度プラスされる。要するに今後は、半分の人は100歳まで生きる「100年ライフ」の世界になる、ということだ。私が思っていたこととはかなり違う。

 これを元に本書は「人生の組み立て」を考察する。これまでは「教育」「仕事」「引退」という3つステージで分けて、人生は組み立てられてきた。「100年ライフ」では、この3ステージのモデルでは無理がある、というのが本書の考察の基礎にある。

 例えば、これまでどおり65歳ぐらいで「引退」のステージに移ると、35年とか40年の長さになる。そんな長期間の経済負担に現役の時に備えるのは無理だ。また、引退年齢を思い切って80歳に引き上げると「仕事」のステージが60年近くなってしまう。様々なものの進歩の速さを思うと、そんな長期間有用な知識やスキルを、最初の「教育」のステージだけでは培えない。

 「ならばどうするか?」本書は、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーン、の3人を登場させ、それぞれの人生として「あるべき姿」を描き出す工夫をしている。これが参考にはなる。キーワードは「レクリエーション(娯楽)からリ・クリエーション(再創造)へ」

 しかし「理想的なロールモデル」が存在しない、ということも「100年ライフ」の特徴なので、自分の人生は自分で考えるしかない。備えておく必要があるのは確かなようだ。

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2016年10月26日 (水)

大人の経済常識

著  者:トキオ・ナレッジ
出版社:宝島社
出版日:2015年10月24日 第1刷 2016年2月29日 第2刷発行
評  価:☆☆(説明)

 行動経済学を中心として、経済学の用語を多数、身近な例を使って紹介した本。「予想どおりに不合理」「経済は感情で動く はじめての行動経済学」と同じジャンル。

 伝統的な経済学は「人は常に合理的な行動をする」ことを前提にしている。それに対して行動経済学は「合理的な行動をしない」生身の人間の行動を研究対象にしている、比較的新しい(ここ20年ぐらい)学術分野だ。「人間の不合理な行動」の例が豊富だから「あるある感」があって、小ネタに重宝する。

 本書もその「重宝さ」を狙ったものだ。様々な例を、キーワードとして関係のある理論の名称とともに、短く2~4ページでまとめている。プロスペクト理論、ハロー効果、フレーミング効果、アンカリング効果、サンクコスト..。「誰かに話したくなる」ネタがたくさん身につく。

 それから「限定」とか「○○も認めた!」とかの広告に弱い人や、なぜか無駄なものを買ってしまう人がいたら、読んだらいいかもしれない。「これ、私のことだ!」という例を見つけて、お店にカモられていたことに気付くかもしれない。

 ちょっと気になったこともある。説明が不正確だったり、的外れだったりすると感じる部分がいくつかあった。例えば「フレーミング効果の好例」として、食品メーカーのキャッチコピーが挙げられていたけれど、例として適切ではない、もっと言えばほぼ関係ないと思う。もちろん私は、この分野の専門家ではないので判定はできないし、異論もあると思うけれど。

 それでさらに、著者はどんな人なのか気になった。プロフィールを見ると「...雑談ユニット。弁護士、放送作家、大手メーカー工場長...で構成される」ここに書かれている限りでは、行動経済学の専門家はいないらしい。そういうことか。ネタを仕入れたいだけの人はいいけれど、しっかり勉強したい人は違う本を選んだ方がいいと思う。

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2016年7月31日 (日)

コンセプトのつくり方

著  者:山田壮夫
出版社:朝日新聞出版
出版日:2016年3月30日 第1刷発行 5月30日 第2刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は電通のクリエーティブ・ディレクター。広告キャンペーンのほか、テレビ番組や店舗の開発から経営戦略の策定まで手掛ける。その著者がイノベーションを起こす「コンセプト」のつくり方、方法論を説く。

 「はじめに」の冒頭がいい。

 「でさぁ..それってデータで証明されているの?」誰かが現状を打破するために頑張っている時、こんな正論ばかり振りかざす「批評家」ってホント腹が立ちますよね。過去の情報をどれだけ客観的にいじくりまわしたって「その手があったか!」という突破口なんて見つかるわけもないのに、なぜかきょうも彼らは大威張りです。

 何か議論をするとき、企画を考えるときに、「データ」をベースにすることの重要性は否定しない。ただ、最近はそれが行き過ぎているように思う。データが揃っていない主張を「感情的」と言って切り捨ててしまう。上に書いた「はじめに」は、そんな風潮に対するアンチテーゼになっている。

 データをベースにした「客観的・論理的思考」は、「正解」が用意されている課題の解決にはとても有効だろう。しかし、世の中の課題にそんな「正解」があることは稀だ。そうなると、論理的にどれだけ考えても「正解」に辿り着かない。

 そこで、著者が重視するのは、主観的な経験や直感までも駆使する、いわば「身体的思考」。本書にはその方法論が書かれている。例えば「感じる」「散らかす」「発見!」「磨く」の順番を繰り返す「ぐるぐる思考」

 もちろんこれで「身体的思考」が、一朝一夕にできるようにはならない。しかし、この方法論はトレーニング法でもあって、繰り返し使っていると「身体的思考」が身につく、そんな確信めいたものを感じる。

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2016年5月25日 (水)

僕の仕事はYouTube

著  者:HIKAKIN
出版社:主婦と生活社
出版日:2013年7月29日 第1刷 2014年5月16日 第9刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 少し前に「小学生男子に将来の夢で「ユーチューバー」が3位に入った」というニュースが流れた。小学生に「ユーチューバーという職業」を浸透させた一番の人物は、本書の著者のHIKAKINさんで間違いないだろう。私は仕事で小学生と話すことがあるのだけれど、「ヒカキン」の話題を何度も聞いたことがある。

 帯によると、著者はYouTubeで「総登録者数356万人」「総再生回数7億5千万回超」という、日本一のユーチューバーだそうだ。本書はその著者が「日本一のユーチューバーになるまで」「アクセスUPの秘訣」「成功の陰の落とし穴」などを記したもの。

 著者の動画を見た印象が「お調子者」という感じだったので、読む前は、本書も「調子がいい割に中身のないハウツー本」かと思った。読み終わって思うのは「そんなに悪くない」という感想だった。

 「お調子者」なのはウケルための演技か、そうでなければ著者の一面に過ぎないのだろう。読者のために真面目に書かれたものだし、「秘訣」は実践的でもある。編集者が手を入れているとしても、これだけ物事を整理して書けるのは、ひとつの才能だと思う。

 「ユーチューバーになりたい」という小学生は、本書を読めばいいかもしれない。ただし、それは「ユーチューバーになるのは簡単じゃない」と知るためだ。今の著者があるのは、努力と集中力と忍耐力の結果だと分かるためだ。

 ユーチューバーを目指して読むのなら、都合のいいところだけ都合よく読むのではなくて「自分はHIKAKINと同じようにできるだろうか?」と自問しながら読んで欲しい。そういう読み方ができないのなら、読まない方がいい。そういう人(大人も含めて)には危険な本だと思う。

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2015年11月25日 (水)

京大式 おもろい勉強法

著  者:山極寿一
出版社:朝日新聞出版社
出版日:2015年11月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は、京都大学理学部卒業、同大学院、助手、助教授、教授を経て、昨年10月に京都大学総長に就任。研究者としての道を一貫して京都大学で歩んでこられた。その著者が記した「京大式 おもろい勉強法」

 タイトルから想像される本書の内容は、「自由」と形容されることの多い校風の元の「実践力を付けるための授業やゼミのあり方」「研究ノートの取り方」などなど、だろう。そして本書にはそういうことは、まったく書かれていない

 本書には、ゴリラ研究者としての著者の半生が綴られている。それによって大事なことを伝えようとしている。タイトルから想像するような、「効率よく知識が身につけられる」的なお手軽な勉強法より、幅広い層、幅広い年代に役に立つ。ゴリラと比較することで、人間のことが良く分かる。

 書き起こされた著者の半生は、1978年に大学院生の時に、コンゴ民主共和国(当時のザイール)から始まる。一人で行って、一人で調査許可を得て、一人で交渉する。並外れてタフでなければできない。「タフ」という意味では「ゴリラ研究のフィールドワーク」自体が想像を絶する。

 ゴリラに慣れてもらうために「餌付け」ならぬ「人付け」というのをするそうだ。簡単に言うと、ゴリラがその存在を気にしなくなるまで、そこに居続けること。咆哮で脅されたり、突進を受けることもある。ゴリラが草を食べれば自分も食べる、昼寝をしたら自分も寝転ぶ、なんて方法を取った研究者もいるそうだ。

 私には絶対にできない。同じことをしようと考えると、そんな諦めの気持ちになってしまう。でも、もちろん同じことをする必要はない。著者もそんなつもりはないだろう。本書からはたくさんのことを教わった。

 借り物ではない「自分の考え」を持つこと、「勝つか負けるか」という単純な解決策しかないと思うことが問題であること、「時間」こそが「信頼」に必要であること、「共にいる」ことが「幸福」につながること、「食事を一緒に食べる」ことに特別な意味があること。

 「それ、おもろいな」。これがキーワード。 

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2015年11月15日 (日)

最強のリーダー育成書 君主論

著  者:鈴木博毅
出版社:KADOKAWA
出版日:2015年10月30日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書はマキアヴェリの「君主論」を読み解いて、そのエッセンスを現代のリーダー育成のためのテキストに編み直そうというもの。念のため補足すると、マキアヴェリは15~16世紀のイタリアの政治思想家。「君主論」はそれまでの様々な君主・君主国を分析した著作。

 マキアヴェリズムと言えば「目的のためには手段を選ばない」という主義のことで、「君主論」はその由来にもなっている。そのような冷徹さは「君主論」の一側面を表しているがすべてではない。約500年前の著作が、今でもこうして読み継がれているのだから、読む人を惹きつけるものが他にあるのだろう。

 そして本書について。「ケチであれ 冷酷であれ 自ら仕掛けよ」「力を求め、力を愛せ」「悪を学んで正義を行え」「誇り高き鋼の精神を養う」「運も人も正しく支配する」の5章建て。テーマに合わせて君主論の中の一節を、現代にアレンジして解説する。

 読んでいて戸惑いを感じた。マキアヴェリの分析が多岐にわたるから仕方ないのかもしれないけれど、項目が多くて散漫な感じがした。中には「軽蔑されるな」とか「決断と責任から逃げる者は君主ではない」とか、「当たり前」のことも少なくない。

 また「君主論」が念頭に置いているのは中世の君主、軍事力で侵略から国を守る(場合によっては領土を拡大する)立場の者だ。現代の「リーダー」とのギャップは相当に大きい。だからこそ著者が「アレンジ」して解説するのだけれど、会社の社長ぐらいならまだしも、部下を持つ上司に当てはめるのは難しい。その果ては、家庭とか恋人との関係まで例えとして出てくる。

 とは言え「君主論」は、上に書いたように500年も読み継がれ、今もトップリーダーたちに影響を与えているらしい。その内容が気になる方は、本書を手に取ってみてもいいかもしれない。 

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2015年11月 1日 (日)

ヤフーとその仲間たちのすごい研修

著  者:篠原匡
出版社:日経BP社
出版日:2015年7月21日 第1版第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本していただきました。感謝。

 本書はヤフー株式会社の人事本部長である本間浩輔氏が仕掛けた、人材育成研修の様子を記録したもの。この研修は「次世代のリーダーの育成」を目的としたもので、ヤフーだけでなく、アサヒビール、日本郵便、インテリジェンス、電通北海道といった多様な企業の幹部・リーダー候補生が参加する異業種コラボレーション研修だ。

 研修テーマは「北海道美瑛町の地域課題の解決」。数人からなるAからFまで6つのチームに分かれ、それぞれには美瑛町役場の職員も参加する。6か月で5回のセッション、全12日。その間に「効果的かつ美瑛町で実現が可能な」解決策を練り上げて提案しなくてはいけない。参加者にとってはハードルの高い研修と言える。

 期間中には様々な問題が起きる。それでも、受講者と運営サイドが持てる能力を注いで研修を前に進める。その様子と最終的な提案の内容が、要領よく描かれている。読み物としても面白い。研修を進めるためのノウハウも興味深い。

 思ったこと。求めらるのはやはり「課題解決力」なのだな、ということ。「やはり」というのは、これは私が20数年来意識してきたことだからだ。「何か起きた時にそれをどうにか解決する力」。物事を前に進めるにはそういった力が必要だ。

 しかし、それだけでは足りない。企業も地域社会も、もちろんもっと大きなくくりでも、分かりやすい「課題」を解決するだけでは立ち行かなくなっているからだ。「課題の設定」自体も難しくなっている。解決にはブレイクスルーが必要なこともある。

 そこで重要なキーワードが「ダイバーシティ」。「多様性」と訳される。この研修が異業種コラボレーションで行われたのには、多様性を確保するためらしい。「女性や外国人が入りました」というような単純なことではなく、価値観の違う「合わない人」との議論、言って見れば「摩擦」からしか得られないことがある、という。..これは大変な時代になった。 

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2015年8月30日 (日)

この方法で生きのびよ!

著  者:鈴木博毅
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2015年9月7日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書は所属する組織やビジネスの枠組みを「船」に見立て、社会を激変させるような大きな流れを「氷山」に例える。迫りくる「氷山」への対処を知っていれば、衝突や沈没を避けられる、衝突しても海に投げ出されることを免れられる、うまく利用できればチャンスにさえなる、ということだ。

 著者があげる「氷山」は5つ。「代替」「新芽」「非常識」「拡散」「増殖」。言葉だけではどうしてこれが「氷山(=大きな流れ)」なのか分からないだろう。例えば「代替」は、交通手段としての「馬」が「自動車」に、デジカメやゲーム機などのいろいろなものが「スマホ」に、取って代わられた、ということを差している。何かが「代替」となって市場を失う、という流れだ。

 その他の4つも簡単に。「新芽」は、困難に直面した時に、新しい発想によって復元すること。「非常識」は、文字通り常識に囚われず、それまでの世界観から抜け出すこと。「拡散」は、それまで存在しなかった分野に商品が拡がっていくこと。「増殖」は、ある商品を買った消費者が、その商品の熱心なセールスマンになるようなこと。

 読んでいてどうもしっくりこない感じがしていた。本書は、誰に対して何を促そうとしているのか?著者が言うように、従来のビジネス書が描く「日常の仕事の効率化」と違い、「大きな変化」を本書が描き出しているのは間違いない。しかしその大きな変化に乗れる人とはどういう人?という疑問が湧く。

 しかもその「大きな変化」の例が、「「馬」が「自動車」を代替」では「つまり「第二の自動車」を発明しろってこと?」と思ってしまう。その他にも「巨大帝国を築いたアレクサンダー大王の「非常識」」というのもあったけれど、例えがあまりに大きすぎる。

 タイトルが「この方法で生きのびよ!」だから、生きのびるための具体的な方法が書いてあると思うと肩すかしを食う。私の「しっくりこない」感の原因もここにある。本書は、もっと大きな戦略レベルの思考の枠組みを提供する。そのつもりで読めば得るものがあるだろう。 

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2015年6月10日 (水)

どうする定年 50歳からの巻き返し! まだ間に合うマネー対策

著  者:日経ヴェリタス編集部
出版社:集英社
出版日:2014年12月10日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 本書は「日経ヴェリタス」という、日本経済新聞社の週刊投資金融情報紙の連載に加筆・修正したもの。登場するのは50歳の会社員3人。それぞれが10年後の定年と、それ以降の老後を考える、悲喜こもごもを綴る。(なんと3人は1963年生まれで私と同じ歳!)

 まず気が滅入る話をする。平均寿命から逆算すると、男性は定年後23年、女性は28年生きる。その間の生活費はざっと9000万円。65歳から支給される年金は、会社員+専業主婦のモデルで、約5500万円。(あまり現実味がないけど)仮に退職金が1000万円もらえるとしても、約3500万円足りない。絶望。

 まぁ絶望してしまってはいけないので、本書は、定年までと定年後に、如何にして資産を形成するかを、物語仕立てで説明する。金融商品の紹介が、特に前半には、たくさんでてくる。まぁつまり「投資のススメ」みたいな本だ。

 当然なのだけれど、「日経ヴェリタス」の読者層を対象に想定している。登場する3人も上場企業の社員で、2人は役員の席を覗う部長。まぁちょっと我が身と引き比べて、違いが大きすぎて、正直言って鼻白む想いもした。

 ただ、前半の金融商品の説明は読み飛ばして、後半に展開される「相続」に関する顛末と読むのはいいかもしれない。取りあえず危機感は共有しておいた方が良さそうなので。

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2015年6月 3日 (水)

伝え方が9割 2

著  者:佐々木圭一
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2015年4月23日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルのとおり「伝え方が9割」という本の第2弾。第1弾のレビューで「意外と良かった。とても役に立ちそうだ。」なんて書いたけれど、広い評価も得たようで、64万部を突破したそうだ。

 このシリーズは、コピーライターの著者が、自らの経験から導き出した「YESと言ってもらえる伝え方」「相手に響く強いコトバの作り方」のテクニックを記したものだ。

 例えばお店で「このシャツは現品限りです」と言うより、「こちら人気で、最後の一着なんです」と言った方が、買ってもらえる、というようなこと。これは「相手の好きなこと」の文脈で伝える、というテクニックの一例。

 第1弾は「役に立った」としても、第2弾もそうかどうかは別問題。第1弾には入らなかった、言わば「2軍」的な項目が書かれているとすれば、あまり期待できない。こういうHowToモノだと、第2弾はムリがあるんじゃないの?と懐疑的に思っていた。

 この懐疑は半分だけ当たっていた。第1弾とは全く別の項目で同等のクオリティを保つのは、やはりムリだったようだ。15項目あるうち、新しいのは3項目しかない。他の12項目は、はっきり言うと「第1弾の焼き直し」だ。

 「半分だけ当たり」としたのは、この「焼き直し」が、なかなか見事だったからだ。第2弾の作り方としては、意外だったけれど悪くない。

 それぞれのテクニックを使った例が、より具体的により洗練されたものになっていた。第1弾の出版後に「こう言ったらうまくいきました!」という報告が、著者の元にたくさん寄せられたらしい。つまり本書に載っているのは、「効果を確認済み」の例なのだ。

 そんなわけで、第1弾を読んだ人にススメるには、ちょっと微妙な内容。これから読む人は、第2弾の本書だけ読んでも役に立つと思う。

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