3G.海堂尊(田口・白鳥)

2017年3月12日 (日)

イノセント・ゲリラの祝祭

著  者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2008年11月21日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥シリーズ(著者は「東城大学シリーズ」としているそうだ)」の第4作。今回はこれまでと違って医療の現場は出てこない。舞台は主に「会議室」だ。

 主人公はこれまでと同じ。東城大学医学部付属病院の講師田口公平。田口は旧知の厚生労働省のはみ出し技官、白鳥からの病院宛の依頼によって「医療関連死モデル事業モデル特別分科会」という会議に出席する。それは法律家の正論と大学病院の教授の愚痴に終始する退屈な会議だった。

 ただ退屈な会議は、その後に続くドラマの前哨戦で、白鳥が田口をこの会議に呼んだのもそのドラマへの布石だった。そのドラマというのは「死因究明」にあたっての、医療と司法のあり方に関する、守旧派、革新派などの様々な立場のせめぎ合い、といえる。本書ではそれを、会議という場での発言として描いている。

 本書はフィクションだけれど、俎上に載せられるテーマも統計的な数値も事実に即したものだ。やたらと「濃いキャラクター」が多く登場するので、コメディっぽく感じてしまうけれど、これまでのシリーズを通して、問いかけてきたものは、意外なほどずっしりと重いものだった、ということだ。

 前作「ジェネラル・ルージュの凱旋」のレビューで「シリーズの主題がよく見えてきたように思う」と書いたけれど、それは本書でより鮮明になった。ただし、これからどこに向かうのかは分からない。

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2016年3月 9日 (水)

ジェネラル・ルージュの凱旋

著  者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2007年4月22日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ヒット作「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥シリーズ(著者は「東城大学シリーズ」としているそうだ)」の第3作。大学病院で起きた収賄疑惑事件を追う。

 読み始めてすぐに、強烈な既視感。「これ前に読んだことある?」と疑問が湧いた。実は、本書が描くのは、前作「ナイチンゲールの沈黙」と、同じ舞台で同時並行的に起きたもう一つの事件。だから当然、前作と同じ出来事が本書でも起きる。私の既視感の原因はそういうこと。

 主人公は田口公平。東城大学医学部付属病院で「不定愁訴外来(通称愚痴外来)」の責任者。ある日、田口が委員長を務める「リスクマネジメント委員会」宛に文書が届く。「救急救命センターの速水部長が、業者と癒着して収賄している」という告発状だ。

 物語は、速水部長は本当に収賄をしたのか?その場合の処分はどうなるのか?そもそもこの告発状は誰が何の目的で出したのか?といった、ミステリーとして展開される。

 面白かった。これまでのシリーズ3作の中で一番楽しめた。悪者の悪者っぷりが良かったし、看護師たちの活躍も痛快だった。そして何よりも、ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)こと、救急救命センターの速水部長が(収賄の容疑者なのに)カッコいい。

 「キャラの立った」登場人物も、このシリーズの魅力。ただし今回は、それは少し控えめだった(新登場の姫宮さんはすごくよかった)。そのおかげもあって、シリーズの主題がよく見えてきたように思う。

 それは、現代医療が抱える「医療と経営と倫理」の問題に切り込む、コミカルにも思えるストーリー展開には似合わない、ずっしりと重いものらしい。

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2015年7月 8日 (水)

ナイチンゲールの沈黙

著  者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2006年10月21日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ヒット作「チーム・バチスタの栄光」の続編。前作で起きた、大学病院を揺るがした、最先端医療の花形チームのスキャンダルから9か月後、という設定。

 主人公と舞台は前作と同じ。主人公は田口公平。東城大学医学部付属病院で「不定愁訴外来(通称愚痴外来)」の責任者。舞台はこの大学病院。前回は外科チームで事件が起きたが、今回は主に小児科での出来事を描く。

 タイトルの「ナイチンゲール」は、ダブルミーニングで使われている。1つは、フローレンス・ナイチンゲール。看護師の象徴的に扱われているクリミア戦争に従軍した看護婦。もう1つは「小夜啼鳥」、英語名がNightingale。夕暮れ後や夜明け前に美しい声で鳴く鳥の名だ。

 小児科病棟の看護師の浜田小夜が、今回の準主人公。その歌声には誰もが魅了され、忘年会では大賞を受賞する。彼女が立ち寄ったライブハウスで急病人が出て、救命救急センターに搬送される。その後にも、彼女の周囲で様々な出来事が続く。そして物語は殺人事件に発展していく。

 このシリーズの特長というか楽しみは、個性的なキャラクターの登場にある。前作で見せた傍若無人な振る舞いが、なぜか憎めない厚生労働省の調査官の白鳥佳輔が再び登場する。さらに今回は白鳥の同級生という、刑事の加納達也が加わる。あと「ガンガントンネルの魔人」なんていうのもいる。

 小児科が主な舞台なので、子どもの患者が多く出てくる。それぞれが背負うものを思うと、胸が潰れる思いがする。そこを個性的なキャラクターやテンポのいい会話によって、暗くならなずに読めるようになっている。

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2015年5月27日 (水)

チーム・バチスタの栄光

著  者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2006年2月4日 第1刷 2006年3月27日 第4刷 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2005年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。本書は2008年には映画とテレビドラマになり、さらに続編を重ねてシリーズ化されている。きっと面白いのだろうと、ずっと前から気になっていた。

 主人公は田口公平、41歳。東城大学医学部付属病院の神経内科教室の万年講師。「不定愁訴外来」という、不安や不満を抱えた患者を精神面でサポートする診療科の責任者。なかなか先進的な取り組みとも言えるが、実態はその通称が表している。それは「愚痴外来」。

 東城大学附属病院には最先端の医療チームがある。米国から招聘した外科医の桐生恭一が率いる、心臓移植の代替となるバチスタ手術の専門の、通称「チーム・バチスタ」。成功率6割と言われるバチスタ手術を26例連続で成功させ、その名声は轟いていた。

 まぁ言ってみれば、出世競争から降りた万年講師の田口は、「チーム・バチスタ」とは対極にいる。その田口が、桐生を含めてチームのメンバー全員を調査することになった。「チーム・バチスタ」に立て続けに3例の術中死が起き、病院長からその原因についての調査の特命を受けたからだ。果たしてこの術中死は、連続した不運なのか?医療事故なのか?それとも....。

 チームには医師の他に、看護師、臨床工学技士などコ・メディカルと呼ばれる医療スタッフがいる。その立場の微妙な違いや、病院内の対立や妬み、さらにはそれぞれの個人的な事情などを、巧みにストーリーに取り込んでいる。さらには、物語半ばで絡んでくる厚生労働省の調査官の白鳥圭輔が、ちょっと突き抜けた感のある個性的キャラクターで、飽きさせずに読ませる。

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