3D.大沼紀子(まよパン)

2016年5月19日 (木)

真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者

著  者:大沼紀子
出版社:ポプラ社
出版日:2016年3月15日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「まよパン」シリーズの第5弾。前作「午前3時の眠り姫」が2013年10月の発行だから2年半ぶりの新刊、ということになる。

 このシリーズは午後11時から午前5時までの、真夜中に開いているパン屋「ブランジェリークレバヤシ」を舞台にした物語。そのパン屋に転がり込んできた居候の高校生の希実が主人公。当初は真夜中の店に集う「怪しいお客」とちょっといい人情話、という印象の物語だった。

 巻を追うごとに、希実にまつわる秘密に焦点が当たって来た。最初は、「ブランジェリークレバヤシ」の亡くなった奥さんの美和子とは「腹違いの姉妹」だ、ということだった。それはウソなのだけれど、美和子と希実、そして希実の母の律子には深い縁があった、というところまで前回までに語られた。

 そして本書は、希実が律子と1年半ぶりに会う場面から始まる。そこから、希実にとっては(読者にとっても)ジェットコースターのような驚天動地のストーリーが最後まで続く。それも約560ページ、これまでの巻のざっと6割増しの分量。読み応えアリ。

 希実の出生からさらに遡って、美和子と律子の交遊が描かれる。律子は、希実を置いて度々姿をくらましてしまい、希実は放置されて生きてきたように思っていたが、意外と沢山の大人の目が注がれていた。著者がこんな物語を用意していたとは思わなかった。

 「ブランジェリークレバヤシ」の営業時間を考えると、次作が最終巻か?楽しみであり寂しくもあり。

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2013年10月20日 (日)

真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫

著  者:大沼紀子
出版社:ポプラ社
出版日:2013年10月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 大好評シリーズの「まよパン」こと「真夜中のパン屋さん」の第4弾。

 主人公の女子高校生の希実は、真夜中だけに営業しているパン屋の居候。お客は真夜中にやってくる人たちだからか、相当に変わった人が多い。前作までにも、夜中に徘徊する小学生、でかいけれど超美人のニューハーフ、のぞき魔の変態、腹話術の人形を抱えた高校生...。毎回、新しい登場人物が物語を盛り上げる。

 今回の新しい登場人物は、希実の従姉妹の沙耶。広島から男と駆け落ちしてきたという。「金髪に眉毛なし」という風貌から、相当荒んだ生活をしていることが察せられる。果たして、元カレに付きまとわれ、あげくに命の危険まで迫ってきたために逃げてきたらしい。

 この店はこれまでにも様々な(素性の知れない)人を受け入れてきた。希実だってその一人。その日から、沙耶は希実と一つ屋根の下で寝起きすることになった。希実は、幼いころに沙耶の家に居候していた時に、沙耶にいじめられた経験がある。月日は経って、そのころのようなことはないけれど、2人で寝起きする暮らしは、希実にとって心地よいものではなかった。

 物語は、沙耶の話に嘘があって二転三転し、他の登場人物の意外な恋バナが絡んで来たりで、忙しく時にはホロリとさせながら勢いよく進む。そして、おそらくこのシリーズの核心へ向けて切り込み始める。それは希実の過去の出来事と関係がある。

 希実は、母親にそのパン屋の奥さんの美和子とは「腹違いの姉妹」だ、と言われて来た。しかし、美和子は亡くなっている。そして「姉妹」の話も嘘らしいのだけれど、希実と美和子とは何か関係があるらしい、ということが、前作で仄めかされている。本書は、その仄めかしに対する答えになっている。そこにはそれなりにヘビーな過去が明かされているので、読むときにはそのつもりで...

※4月からBSプレミアムで放送された「真夜中のパン屋さん」(滝沢秀明さん主演)が、11月5日(火)から総合テレビで放送されるそうです。私はBSの放送を見ました。ちょっと最初はキャストに違和感がありましたが、回を重ねるごとに薄れてきました。

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2012年12月26日 (水)

真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生

著  者:大沼紀子
出版社:ポプラ社
出版日:2012年12月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「午前0時のレシピ」「午前1時の恋泥棒」に続く、「まよパン」シリーズ第3弾。「Boulangerie Kurebayashi」という、午後11時から午前5時までの真夜中に営業しているパン屋を舞台としたミステリー。

 今回は主人公の希実のクラスに来た転校生が騒動の中心。彼の名は美作孝太郎。何と左手に腹話術の人形のアンジェリカを携えて教室に現れた。そして、アンジェリカには予知能力があると言って、希実に「君に危機が迫っている」と警告した。

 希実の周りには、かなり際立ったキャラクターが多い。夜中に徘徊していた小学生、ホームレスだったニューハーフ、のぞき魔の変態、裏社会に生きる飲食店経営者...。変人はもう十分過ぎる。希実の言葉を借りると「お腹いっぱい」だ。

 しかし、毎回新しい登場人物が現れて、その登場人物を巡る騒動に主人公の希実らが巻き込まれる。そして、その登場人物は次回以降にも何らかの役割が与えられ、いわば「まよパン」ファミリーの一員となって、物語を盛り上げる。どうやらそんな趣向らしい。

 物語は、孝太郎(正確にはアンジェリカ?)の予言に希実が振り回され、その内に(これまた変人と言うしかない)怪しげな医師が登場、彼の不穏な行動が孝太郎とその父との確執につながり...とスピードを増しながら転がっていく。

 本書は、希実の前に現れた孝太郎の目的は何なのか?怪しげな医師は何者なのか?など、本書で新たに登場した人物を巡る謎と、シリーズを通して追う主人公の希実を巡る謎の、二重のミステリーになっている。後者の謎がいよいよ目を離せない展開になって、ドンドン面白くなってきたので、前2作は☆3つだけれど、本書は☆4つにした。

「真夜中のパン屋さん」滝沢秀明さん主演でテレビドラマ化決定(2013年4月から/BSプレミアム)

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2012年9月 1日 (土)

真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒

著  者:大沼紀子
出版社:ポプラ社
出版日:2012年2月5日 第1刷発行 2012年2月25日 第4刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ」の続編。「まよパン」シリーズの第2弾。

 舞台は前作と同じ「Boulangerie Kurebayashi」という、真夜中に営業しているパン屋。登場人物も前作とほぼ同じ。前作は6つの章から成る連作短編の体裁だったけれど、本書は全編で1つの謎を追う。その謎の中心は、新しい登場人物である佳乃。ふらっと現れて、店の2階に住むことになった。パン職人の弘基の中学時代の彼女だということだけれど、彼女は何者なのか?その目的は何か?

 佳乃の登場は、店の2階に住むもう一人の女性、希実が前作で現れた時とそっくりだった。いきなり現れて「私はあなたの〇〇(希実の場合は、オーナーの暮林の奥さんの義妹)なんだから、ここにいさせて欲しい」と言って、居ついてしまう。暮林の「ええよ」の一言で。

 暮林の「ええよ」が表す包容力は、この物語の魅力となってシリーズを通して感じられる。前作で登場したのは、夜中に街を徘徊する小学生、ホームレスのニューハーフ、のぞき魔の変態..。「普通」からはちょっとはずれた人たちをみんな、この店は受け入れてきた。本書では、彼らが誰かの役に立とうとしていて、それが幸せそうに見える。

 佳乃の謎を追う内に、登場人物と読者の前に新たな謎が立ち上がる。どうやらこの謎を、次回以降のシリーズが追うらしい。

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2012年6月 6日 (水)

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ

著  者:大沼紀子
出版社:ポプラ社
出版日:2011年6月5日 第1刷発行 2012年3月14日 第21刷
評  価:☆☆☆(説明)

 高1の娘が持っていた本を借りて読んだ。どうやら評判が良いらしい。特設サイトによると、本書は22刷がかかったそうだし、第2弾が出てシリーズ化され、シリーズ40万部突破、とのこと。確かに売れている。

 舞台はパン屋。「Boulangerie Kurebayashi」という名のそのパン屋のパンは、一口で魅了されるほどおいしい。一風変わっているのは、営業時間が午後11時から午前5時までということ。タイトル通り「真夜中のパン屋さん」なのだ。
 パン屋を切り盛りするのは、オーナーの暮林陽介とブランジェ(パン職人)の柳弘基の2人。そこに飛び込んできたのが、暮林の妻の腹違いの妹だという、女子高校生の篠崎希実。この3人がまぁ本書の主人公。

 本書は6つの章から成っていて、章ごとに完結する小さな物語と、全編を通して徐々に明らかになる大きな物語があり、連作短編形式になっている。章を追うごとに新たな登場人物が加わり、その登場人物が後の章でも大事な役割を担う。
 この登場人物たちが、良く言えば個性的。ストレートに言えば変な人たちだ。誰も彼もが問題を抱えていて、傍目には幸せとは言えない。夜の街をウロウロしている小学生。ワンルームに引きこもるのぞき魔の男。ホームレスのニューハーフ。ただし「問題を抱えている」という点ではパン屋の3人も同じだった。

 登場人物たちの何人かの境遇に、かなり厳しいものがあり「安心して読めない」というか、読み心地が悪い思いをした。しかし読み終わって見れば、ふんわりと暖かいなかなか良い物語になっていた。これは評判になるのも分かる。

 表紙から受ける印象通りに、分類としてはライトノベルだろう。ライトというには少し重いテーマもあるし、描いている人間模様が少し奥深い。

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