3C.柳広司(Joker Game)

2015年5月21日 (木)

ラスト・ワルツ

著  者:柳広司
出版社:角川書店
出版日:2015年1月20日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第4作。大日本帝国陸軍に設立されたスパイ養成学校、通称「D機関」のスパイを描く。「アジア・エクスプレス」「舞踏会の夜」「ワルキューレ」の3編を収録。

 「アジア・エクスプレス」は、満州でソ連の内部情報収集の任務に就くスパイの話。情報提供者のソ連の外交官が、情報の受け渡し場所の満鉄特急「あじあ」車内で暗殺される。ソ連のスパイ組織との謀略戦が始まる。

 「舞踏会の夜」は、華族の出身で今は陸軍中将の妻となった女性が主人公。アメリカ大使館で催された仮面舞踏会に出席する。そこでなぜか、20年前の十代の頃に、この身を救ってくれた男のことを回想する。

 「ワルキューレ」は110ページの中編。ナチス政権下のドイツに潜入したスパイの話。日独共同製作のスパイ映画が完成した。その主役を務めた日本人俳優と、かれに接触したスパイの周辺にゲシュタポの影が迫る。

 今回はこれまでとは少し趣が異なる物語だった。子どもに手品をして見せたり、愚連隊に絡まれる少女を救ったり、逃亡者の脱出に手を貸したり。任務の達成のためと言えばそれまでだけれど、「人間味」の側面が見える。

 「D機関」を設立した結城中佐の影がチラチラと現れる。彼のカリスマ性が、このシリーズの求心力になっている。

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2014年3月 6日 (木)

パラダイス・ロスト

著  者:柳広司
出版社:角川書店
出版日:2012年3月31日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ジョーカー・ゲーム」「ダブル・ジョーカー」の続編。大日本帝国陸軍に設立されたスパイ養成学校、通称「D機関」のスパイを描くシリーズの3作目。シリーズとしては現在のところ本書が最新刊。表題作の「失楽園(パラダイス・ロスト)」と、「帰還」「追跡」「暗号名ケルベロス」の全部で4編の短編を収録。

 「失楽園」は、シンガポールに領事館付武官として赴任した米海軍士官の物語。欧州と中国での戦争の影はシンガポールにはまだ落ちていない。美しい街並みと贅を凝らしたホテルの暮らしは、まさに楽園(パラダイス)。そこで英国人の実業家が不慮の死を遂げた事件。

 「追跡」の主人公は、英国タイムズ紙の極東特派員。D機関を統率する結城中佐の実像に迫ろうとするが、些細な情報さえ容易には得られなかった。それでも調査を続け「特ダネ」をつかみ取った。しかし...という話。その実像に迫ろうとすればするほど、「魔王」と呼ばれる結城中佐のカリスマ性と神秘性が際立つ。

 「誤算」は、ドイツに占領されたパリが舞台。日本からの留学生がドイツ兵とトラブルを起こし、現地の若者らに助けられる。しかしその留学生は記憶を失っていた。「暗号名ケルベロス」は、まだ中立を保っていた米国から日本への航路を進む豪華客船が舞台。D機関のスパイと英国のスパイの対決。

 本書もこれまでの2冊に劣らず面白かった。特筆すべきは「失楽園」と「追跡」の主人公が、D機関のスパイではないことだ。「追跡」に至っては登場さえしない。しかし、紛れもなくこの2編はD機関の物語だと感じる。いや、他の2編よりもくっきりとD機関のあり方が感じられるぐらいだ。こういう描き方がとてもうまいと思う。

※「ジョーカー・ゲーム」が亀梨和也さん主演で映画化され、2015年公開予定です。
映画「ジョーカー・ゲーム」公式サイト

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2013年2月20日 (水)

ダブル・ジョーカー

著  者:柳広司
出版社:角川書店
出版日:2009年8月31日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ジョーカー・ゲーム」の続編。前作に続いて、大日本帝国陸軍に設立されたスパイ養成学校、通称「D機関」のスパイを描く。表題作「ダブル・ジョーカー」と、「蠅の王」「仏印作戦」「柩」「ブラックバード」の全部で5編の短編を収録している。

 「「D機関」のスパイを描く」とは言ったものの、「D機関」のスパイを主人公とするのは「ブラックバード」だけで、他の作品では「D機関」は、主人公のライバルや、敵対する組織などで、物語の背景となっている。つまり、主人公らは「D機関」に出し抜かれるわけだ。こうして、外からの視点で描くことで、「D機関」のスパイの並外れた能力が際立つ仕掛けになっている。

 5編の中で特筆すべきは「柩」だろう。ドイツの列車事故で亡くなった日本人の、スパイ容疑を追うドイツ軍の大佐が主人公。この作品で、大佐の回想の形でもう1つの物語が語られている。それは「D機関」を設立した、このシリーズの真の主人公である結城中佐との邂逅の物語。

 前作で結城中佐は、「敵国に長年潜伏し、捕縛され拷問を受けるも脱走に成功した経歴を持つ」と噂されている。大佐の回想は、この噂を裏付けるもので、鬼気迫る「結城中佐像」が描かれている。一つの謎を明らかにした訳で、読者へのサービスと言えるだろう。

 読者へのサービスと言えば、気になる情報を得た。私は単行本で読んだのだけれど、文庫版には単行本にはない「眠る男」という作品を特別収録している。しかもその作品は前作「ジョーカー・ゲーム」の収録作品と関わりがあるらしい。これは読まなくては...

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2013年1月27日 (日)

ジョーカー・ゲーム

著  者:柳広司
出版社:角川書店
出版日:2011年6月25日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、2009年に吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞、本屋大賞第3位になった、スパイ・ミステリーだ。

 日中戦争が勃発した昭和12年に、大日本帝国陸軍にスパイ養成学校、通称「D機関」が設立された。そこを統括する結城中佐は、かつてはスパイとして敵国に長年潜伏し、捕縛され拷問を受けるも脱走に成功した経歴を持つ。
 本書は、D機関出身のスパイらを描く短編集。表題作「ジョーカー・ゲーム」の他、「幽霊(ゴースト)」「ロビンソン」「魔都」「XX(ダブルエックス)」の全部で5編を収録。

 「ジョーカー・ゲーム」とは、D機関の学生たちが興じていたゲームのこと。早く言えばルール無用の騙しあいゲーム。例えばポーカーで、第三者の協力者を使って、他のプレイヤーのカードを盗み見てもいい。ただその協力者が、本当に自分に協力しているのかどうかは分からない..まぁ、スパイ活動のシミュレーションなわけだ。

 5編の作品は少しつづ傾向が違ってどれも面白かったが、やはり「ジョーカー・ゲーム」が良かった。「ジョーカー・ゲーム」では、D機関が憲兵隊に偽装して親日家の外国人の家を捜索する。単純な出来事のようで、実は幾重にも陰謀やウソが塗り重ねられた、陸軍参謀本部とD機関がせめぎ合う事件だった、という物語。

 他の作品についても簡単に紹介する。「幽霊」は、外国の総領事への潜入捜査。結末は少しユーモアもある。「ロビンソン」は敵地からの脱出劇。結城中佐の深謀が光る。「魔都」は内通者を探る極秘任務。混乱した上海の街が悲しい。「XX(ダブルエックス)」は二重スパイの捜査。スパイも孤独ではなかった。

 実は作品を読み進めて行くと、結城中佐の人間性に新たな面が見えたり、D機関の学生の面々の心の内が少しわかったりする。なかなかニクイ構成になっている。

※2014.3.6追記
「ジョーカー・ゲーム」が亀梨和也さん主演で映画化され、2015年公開予定です。
映画「ジョーカー・ゲーム」公式サイト

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