27.三浦しをん

2016年10月20日 (木)

むかしのはなし

著  者:三浦しをん
出版社:幻冬舎
出版日:2005年225月25日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 7編の短編を収録した短編集。それぞれの短編が「浦島太郎」や「桃太郎」といった昔話をモチーフとした物語にそれぞれなっていて、短編の扉裏のページにその昔話が短く紹介されている。短編集のには、既出の複数の作品を1つにまとめたものであることがあるが、本書は書下ろし。

 一つ目の作品は「かぐや姫」をモチーフとした「ラブレス」。主人公は男性が早死にする家系の男。彼の父も祖父も27歳で死んだ。「明日、隕石が地球に激突します」と言われたような感情を持って、彼は27歳を迎えた。逃げようがない怖い気持ちと、何が起きるんだろうという期待。物語は主人公の一人語りの形で語られる。

 二つ目の作品は「花咲か爺」をモチーフとした「ロケットの思い出」。主人公は、子どもの頃にロケットという名前の犬を飼っていた男。今は空き巣を生業にしている。どうやらそれで捕まったらしいことが、冒頭で明らかになっている。物語は、子どものころから捕まるまでの半生を、警察の取り調べに答えている体で語られる。

 こんな感じで、主人公が自分に起きた出来事を語る。三つ目の「天女の羽衣」をモチーフとした「ディスタンス」まで読み進めても、収録されている作品につながりはない(ちなみに「ディスタンス」はけっこうショッキングな作品だ)。ところが、四つ目の「浦島太郎」をモチーフとした「入江は緑」で、「どっかでこの話聞いたような」と思い、五つ目の「鉢かつぎ」をモチーフとした「たどりつくまで」で、その思いは確信と変わる。

 そして最後の「桃太郎」をモチーフとした「懐かしき川べりの町の物語せよ」で、著者の意図が見えてくる。この短編は98ページと、他と比べて圧倒的にボリュームがあるので、これがメインの物語なのだろう。

 それぞれの短編も独立して個性的で味のある作品が多い。上に書いたように、一冊の短編集を通しての繋がりもある。書下ろしならではの仕掛けだと思う。

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2015年8月27日 (木)

あの家に暮らす四人の女

著  者:三浦しをん
出版社:中央公論社
出版日:2015年7月10日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 杉並区の善福寺川が大きく蛇行する辺りにある、古い洋館に住む4人の女性の物語。帯には「ざんねんな女たちの、現代版「細雪」 谷崎潤一郎メモリアル特別小説」とある。とても楽しめた。

 女性たちの名は、牧田鶴代、牧田佐知、谷山雪乃、上野多恵美。鶴代は佐知の母でもうすぐ70歳になる。佐知は37歳で独身、刺繍作家として生計を立てている。雪乃は佐知の友人で佐知と同じく37歳で独身、保険会社に勤めている。多恵美は雪乃の会社の後輩で27歳。

 4人は佐知の曽祖父が建てた家に住んでいる。鶴代と佐知の母娘が住む家に、雪乃と多恵美が順に転がり込んできたわけで、それなりの事情がある。ともかく今は、4人で家事を分担する共同生活を営んでいる。

 日々の暮らしと会話で、女性たち、特に佐知の内面を綴る。恋愛、仕事、友情、孤独、将来。もちろん事件も起きる。けっこうショッキングな出来事や物騒なこともある。しかし、それは佐知たちの内面の変化のきっかけであって、この物語はそうした出来事ではなく、女性たちの心の方を中心に描く。

 4人の名前はもちろん「細雪」の4姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子、にちなんでいる。それぞれの性格も緩やかに関係していると思う。エピソードにも「細雪」との関連を感じるものがいくつかあった。ただし、そういったことは知っていれば「おっ!」と思う程度で、知らなくても本書を楽しむ妨げにはならない。

 佐知の曽祖父が財を成し、ぼんくらの息子が資産が目減りさせたが、鶴代が一生困らぬぐらいの貯金はある。しかし、鶴代の娘(つまり佐知)が困らぬぐらいは、さすがにない。母娘であっても、この境遇の違いは大きく、母娘のかみ合わない会話が面白かった。

 面白いと言えば、佐知の「心の叫び」が今も耳に残る。自分の作品で身を飾ってデートを満喫する女性を思い浮かべて「一針一針にわが情念を込めて、おのれらの魂に直接刺繍してやりたい。おのれらの魂から吹き出す血潮で..」いや、普段は真っ当な生き方をしている常識人なんだけれど。

 参考:エンタメウィーク:浦しをんさんインタービュー

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2014年3月 9日 (日)

星間商事株式会社社史編纂室

著  者:三浦しをん
出版社:筑摩書房
出版日:2009年7月10日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 大好きな三浦しをんさんの作品。でも、発行してすぐには読まなかった。それは主人公が「腐女子」だということだったから。主人公が腐女子じゃぁ、内容もあんな感じ?と思うと、どうにも落ち着かないので。

 読んでみると「あんな感じ」は、心配のないレベルだった。子どもが読むにはどうかと思うから、R-12というところか。

 主人公は川田幸代。29歳。高校生の頃から同人活動を続けている。星間商事株式会社社史編纂室勤務。編纂室には他に、合コンに明けくれる矢田信平と、グラマーなみっこちゃん、定年まであと1年の本間課長がいる。(それから誰も姿を見たことがないけれど、室長もいるらしい)

 現実にはそんなことはないのだろうけれど、フィクションでは社史編纂室というのは「ヒマな部署」だ。星間商事も例外ではない。昨年創立60周年を迎えたのに、社史はできなかった。前半はそんなユルユルのヒマさ加減が描かれる。

 ただ、編纂室の社員たちは実はけっこうデキる。もと居た部署で会社的にちょっとマズいことあって、まぁここに追いやられたわけだ。それなりに仕事を進める内に、会社のある時期に何か秘密があることに気が付く。この謎を追うミステリーが、本書の中心となるストーリー。

 その他に、幸代の同人活動とその仲間の話、幸代と恋人の話、みっこちゃんの恋の話等々、が絡んできて、楽しい読み物になっている。見方によっては、「神去なあなあ日常」「仏果を得ず」「舟を編む」と同じ、お仕事小説の「社史編纂」編でもある。 

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2013年12月22日 (日)

まほろ駅前狂騒曲

著  者:三浦しをん
出版社:文藝春秋
出版日:2013年10月30日第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「まほろ駅前多田便利軒」「まほろ駅前番外地」に続くシリーズ第3弾。舞台と登場人物は、これまでの2作でお馴染みの場所と人々だ。

 物語は、主人公の多田が営む便利屋「多田便利軒」に、高校時代の同級生の行天が転がり込んで、3年目を迎える正月から始まり、その年の大晦日で終わる。級生と言っても友だちではない。会話したことすらない。これまでの2年間と同様、多田は行天の言動に振り回されっ放しだ。

 今回は、「家庭と健康食品協会(略称:HHFA)」という無農薬野菜を販売する団体、バス会社の間引き運転の監視に執念を燃やす「多田便利軒」の常連客、多田が預かることになった4歳の少女の「はる」らを中心に騒動が巻き起こる。そして何と、多田にはロマンスの種が...。(星くんって、いい人だったんだね。)

 多田も行天も、自由に飄々と生きているように見えるが、実は過去の出来事によって精神にダメージを受けている。著者は、本書を「完結編」のつもりで書いたそうだ。そのためなのだろう、彼らの(特に行天の)ダメージの原因が語られ、その救済が描かれている。

 「完結編」ということだが、この終わり方で多田と行天がこのまま大人しくしているはずがない。著者もインタビューで「……どうですかね(笑)」なんて答えている。続編を希望。

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2013年11月10日 (日)

著  者:三浦しをん
出版社:集英社
出版日:2013年10月25日 第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、2006~2007年に「小説すばる」に掲載された作品を、2008年に単行本として刊行し、さらにそれを文庫化したもの。

 巻末の吉田篤弘さんによる解説にの冒頭に、「さて、読み終えた皆様、まずは声を揃えて「まいったなぁ」と言い合いましょう」とある。吉田さんの意図とは若干意味合いが違ったが、読み終えた後の私の第一声はまさに「まいったなぁ」だった。

 著者の三浦しをんさんは私の大好きな作家さんで、最近のものに偏っているけれど、小説とエッセイを合わせて十数冊の作品を読んだ。そのほとんどが「明るく前向き」な空気が包んでいたので、そんな物語を想像していた。人間の内面をこんなに黒々と見せる作品だったとは..。

 章ごとに主人公が何人か入れ替わる。1人目は、美浜島という人口271人の島に住む中学生の信之。信之が主人公の第一章は、島ののどかな景色と暮らしから始まる。しかしその島を大きな災害が襲う。それは島の住人のほとんどの命を奪うほどの荒々しいものだった。

 その災害のさ中にもう一つの事件が起きる。信之は同級生の美花を助けるために、「そいつを殺して」という声にしたがって人を殺めてしまう。島を襲った災害とこの事件とは、信之から確実に何かを失わせてしまった。

 第二章以降はそれから20年後の物語。信之の妻の南海子(なみこ)と、信之の美浜島時代の年下の幼馴染の輔(たすく)、それから信之の3人が入れ替わりで主人公となる。災害と事件は信之らの人生を変えてしまっただけでなく、その後の人生にまで重くのしかかる。

 数多くの「悪意」が描かれる。信之や輔の「悪意」も描かれるが、それは「敬慕」やら「憐憫」やらが入り組んだ「屈折」を伴うもので、100%の「悪意」とは違う。しかし、それが折り重なることで、100%の「悪意」よりもさらに醜悪な姿を見せる。

 出版社のWebサイトに、単行本刊行時のインタビューが載っている。「何作か明るい作品が続いていたので、"当然、そうじゃない部分も当然あるよ"と作品という形でお見せできてよかったです。」とのことだ。

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2013年9月29日 (日)

政と源

著  者:三浦しをん
出版社:集英社
出版日:2013年8月31日 初刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 最近は、出す作品が必ずと言っていいほどヒットする著者の最新作。

 タイトルの漢字2文字は2人の主人公の名の1文字ずつだ。有田国政と堀源二郎。2人とも御年73歳。墨田区Y町という荒川と隅田川に挟まれた町で共に暮らしてきた。「幼馴染」という言葉で表すにはあまりに長い付き合い。
 気心の知れた2人だけれど、その生い立ちはずいぶん違う。国政は銀行員として定年まで勤め上げた。言わば堅い人生。源二郎は子どものころに「つまみ簪(かんざし)」職人に弟子入り。以来その道一本で来た職人。傍から見ると「自由人」そのものだ。

 物語は6章からなり。夏から少しずつ季節が移ろって翌年春までの、1年足らずの期間の出来事をつづる。途中で挿入される2人の子供時代のことや、それぞれの結婚にまつわるエピソードが、現在の2人の関係に通じていて、しみじみとさせられる。

 「しみじみ」の一方で、突然「笑いのツボ」を刺激されて、呼吸困難に陥る。主な原因は源二郎の言動にある。冒頭の葬儀のシーンで登場した源二郎は、禿頭の耳の上に僅かに残った頭髪を「真っ赤」に染めている。こんな「自由な」源二郎が大真面目にやるあれこれが面白すぎる。

 73歳になってもつまらないことで喧嘩をしたり拗ねたりと、子どものようだ。2人の境遇はそれぞれに寂しさを抱えている。それでも願わくば、このような年寄りになってみたい...

 第1章の扉絵を見て「じいさん萌えかよ!」と声が出た。少女漫画のイケメンキャラのようなじいさんが2人。カッコよすぎる。
 そうそう「つまみ簪」がわからない人は、Yotubeで「つまみ簪」と検索するといくつかの動画が表示されるので、見てみるといいと思う。

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2013年3月31日 (日)

神去なあなあ夜話

著  者:三浦しをん
出版社:徳間書店
出版日:2012年11月30日 初刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「お仕事小説 林業編」の「神去なあなあ日常」の続編。主人公の平野勇気が、架空の読者に向かって綴る手記の体裁を取った、7つの短編からなる連作短編集。

 勇気は、高校卒業後に母親と先生に謀られて、三重県の山奥の神去村に放り込まれて林業に携わり、曲折はありながらも村で1年間を過ごした。その間に勇気の心には、村と林業への愛情が芽生え、村の方も勇気を受け入れるようになった。と、ここまでが前作の内容。

 今回は勇気が、神去村の起源となる伝説や、居候先のヨキとみきの夫婦のなれそめ、村のお稲荷さんの言い伝え、そして20年前の痛ましい出来事などを、親しい人たちから聞く。もちろん前作から引き続き、勇気と彼が慕う年上の女性である直紀さんとの関係の進展も描かれる、居候先のシゲばあちゃんのユーモアも健在だ。

 昔語りが多いこともあって、物語を一つづつ静かに積み上げる感じだ。前作にあった、オオヤマヅミさんという山神を祭る大祭のような盛り上がりはない。しかし、その抑え目な調子に、二十歳になった勇気の成長を感じるし、山村の日常にも合っていると思う。

 前作の物語が、勇気の神去村の「現在」の体験だとすれば、本書は、勇気が神去村の「過去」あるいは「記憶」に触れる体験だと言える。小さな村の社会は共通の「記憶」が積み重なって出来上がっている。今回の体験は、勇気が村の一員となるために必要なことであったし、村が勇気に懐を開いた証でもあると思う。

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2012年11月18日 (日)

本屋さんで待ちあわせ

著  者:三浦しをん
出版社:大和書房
出版日:2012年10月15日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 讀賣新聞の「読書委員」を務めておられた著者による「書評集」。讀賣新聞の他に日経新聞などに書いた記事が約80本と、「東海道四谷怪談」についてのエッセイを12本、さらに「おわりに」に20本あまりの本の紹介が収録されている。「一日の大半を本や漫画を読んで過ごしている(本人談)」というだけあって、膨大な読書量が伺える。

 率直に言って肩すかしを食った気持ちがした。先日紹介した「お友だちからお願いします」のことを、著者は「よそゆき仕様」と言っていたが、本書はさらに改まった感じ。前書と違ってニヤニヤするところはほとんどなかった。つまり私は、ニヤニヤやゲラゲラを期待していたわけだ。(「おわりに」でBLをまとめて紹介しているのが、著者らしいのだけれど、私はBLには興味がないので)

 作家が他の人の本を評するのは難しいのかもしれない。「ピンとこなかったものについては、最初から黙して語らない」そうなので、悪くは書かないまでも、面白可笑しく評してしまうのも不謹慎かもしれないし。100を優に超える紹介作品の中に、小説がわずかしかないのも、同業者の難しさ故かもしれない。

 とは言え、本書は「書評集」だ。そもそもニヤニヤやゲラゲラを期待すべきものではない。本書は「ブックガイド」としては私には有益な本だった。「東海道四谷怪談」をちゃんと読んでみようと思った。そして何よりも紹介されているのが、読んだことがないどころか、聞いたこともない本ばかりなのだ。「読みたい本リスト」に何冊も書き加えることになった。

 ※本書と「お友だちからお願いします」はセットなようだ。両方の素敵な装画を手がけたのは、イラストレーターのスカイエマさん。表紙の絵を並べて見ると、そこに物語が立ち上ってくる。

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2012年10月27日 (土)

お友だちからお願いします

著  者:三浦しをん
出版社:大和書房
出版日:2012年8月20日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「お友だちからお願いします」。タイトルのこの言葉を見て、私がまっ先に思ったのが「ねるとん紅鯨団」という、20年以上も前のテレビ番組のことだ。「お願いします!」-「お友だちからなら」というやり取りに、何の関係もない私もちょっと嬉しくなった。この言葉は、幸せなハニカミと結びついているのだ。(「何のことか分からん」という方もいるだろう。ゴメンナサイ。)

 本書は著者が2006年から2012年にかけて、新聞や雑誌などから依頼を受けて書いたエッセイ95編を収めたエッセイ集。著者の小説は好きで何冊か読んでいる。そしてエッセイが面白いことは聞き知っているのだけれど、これまで読む機会がなく、本書が私にとって初めてのしをんさんのエッセイ。

 「はじめに」によると、「ふだん「アホ」としか言いようのないエッセイを書いている」著者にとっては、依頼をいただいて書いた本書の作品は「よそゆき仕様」なのだそうだ。本書は「お友だち未満」の人に向ける少しすまし顔の本。そして「お友だち」から先への期待という、冒頭に書いたような幸せなハニカミを感じる本でもある。

 このように紹介すると、生真面目な印象が漂う。でも、「よそゆき仕様」からも滲み出る(著者は「地金」が出るとおっしゃっている)ものがあり、私は95編のほとんどでニヤニヤしっぱなしだった(おかげで家族から何度も変な目で見られた)。「よそゆき仕様」でこんなことを書いてしまうなんて、ふだんのエッセイはどんなものなのだろう?

 著者の作品のファンにはちょっと嬉しいこともある。「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」「仏果を得ず」などの作品の裏話的なエッセイもあるのだ。そして私は、新幹線で「京都あたりでお昼に食べよう」と買ったヒレカツ弁当を、品川に停車中に箸を付けてしまうしをんさんが好きになった。お友だちになりたい(その先は、ちょっと...)。

(2012.11.18 追記)
この本と1セットになる「本屋さんで待ちあわせ」も読みました。表紙の絵を並べて見ると、物語が立ち上がってきます。

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2012年7月14日 (土)

木暮荘物語

著  者:三浦しをん
出版社:祥伝社
出版日:2010年11月10日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 祥伝社の「Feel Love」という小説季刊誌に掲載された連作短編7編を収録。ちなみに「Feel Love」のキャッチコピーは「100%恋愛小説誌」。

 著者の作品は最新刊の「舟を編む」をはじめとして、「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」「仏果を得ず」と、他人にもおススメできる爽やかな作品が沢山ある。しかし本書は、他人におススメするのは微妙な、なんとも評し難い作品だった。70歳を過ぎた男性がデリヘル嬢を呼ぶ物語を、どんな顔をして薦めればいいのだ?

 もちろんこの男性の話は7編あるうちの1編にすぎない。しかし他の短編も、柱に〇〇〇(←自粛)の形のものがはえてくるとか、階下の部屋を覗くとか、道を外れた感じの物語が並んでいる。そう言えば、「きみはポラリス」も「普通ではない」恋愛短編集だった。著者が描くと「恋愛」はこんなにバリエーション豊かになるのだ。

 舞台の中心は、小田急線世田谷代田駅近くにある、木造二階建ての古ぼけたアパート「木暮荘」。住人は、大家の木暮、花屋に勤める坂田、外食チェーンの社員の神崎、女子大生の光子の4人。彼らと彼らを取り巻く関係者が順番に物語の主人公になる。

 上に書いたことで何となく分かるかと思うが、語られているのは主人公たちの「性」にまつわる物語。それもちょっと変化球。部分的にはエロ小説かと思う場面もあるが、読み終わって振り返えると別の思いが残っている。東京の私鉄沿線の、真面目で(はないかもしれないけれど)善人の人々の暮らしが、切なく慎ましく微笑ましい。

※著者の最新作で本屋大賞受賞作品「舟を編む」の映画化が決まったそうです。
 主演は松田龍平さん、共演は宮崎あおいさん。宮崎あおいさんは、「天地明察(2010年大賞」「神様のカルテ(2010年2位)」に続いての本屋大賞作品でのヒロイン役。(ついでに「陰日向に咲く(2007年8位)も)本屋大賞女優と言って差し支えないでしょう。

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