34.加納朋子

2016年10月 2日 (日)

トオリヌケ キンシ

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2014年10月15日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2014年の発行だけれど、現在のところ著者の最新刊らしい。表題作の「トオリヌケ キンシ」の他、「平穏で平凡で、幸福な人生」「空蝉」「フー・アー・ユー」「座敷童と兎と亀と」「この出口の無い、閉ざされた部屋で」の計6編を収録した短編集。

 「トオリヌケ キンシ」は、小学生3年生の男の子の話。「トオリヌケ キンシ」と書かれた札がある、50センチぐらいの隙間。そこに入って行くと、古ぼけた木造の家があった。

 「平穏で~」は、ウォーリーとか四つ葉のクローバーとかを、すぐに見つけることができる「超能力」を持った女の子の話。「空蝉」は、優しかったお母さんが突然、乱暴に怒鳴り散らす「バケモノになってしまった男の子の話。

 「フー・アー・ユー」は、「相貌失認」という病気で、人の顔が識別できない高校生の男の子の話。「座敷童と~」は、近所の家に突然やって来て「家の中に、座敷童がいる」と言ったおじいちゃんの話。「この出口の無い~」は、寝ている時に見る夢を自在にコントロールしようとしている浪人生の話。

 全体的に現実と空想の境界のような曖昧さが漂う。50センチの隙間は異世界への通路のようだし、「超能力」や「バケモノ」や「座敷童」が出て来る。話しかけてくる人が誰だか分からないというのも、世界を曖昧にする。最後の話は、そもそも「夢」が主題になっているし。

 ところが、読み進めていくと、どこかで話がストンと現実に着地する。ライトがついて急に明るく照らされたように。こういう「驚き」の仕込みはミステリ作家ならではの手際だ。

 最後に。どの作品も「フー・アー・ユー」の「相貌失認」のように「病気」と深く結びついている。これは、著者自身が大きな病を患ったことと関連があるのだろう。著者は、2010年に急性白血病で緊急入院し抗癌治療を受けられている。本書の短編は、表題作を除いてすべて、復帰後に「文藝春秋」に掲載した作品だ。

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2013年10月13日 (日)

はるひのの、はる

著  者:加納朋子
出版社:幻冬舎
出版日:2013年6月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ささらさや」「てるてるあした」の続編。表題作「はるひのの、はる」を含む6編の短編を収録。

 主人公はユウスケ。物語の初めでは小学校に上がる前の春だった。彼は「ささらさや」「てるてるあした」のサヤの息子。その時はまだ赤ん坊だったユウ坊だ。本書は、ユウスケの成長を追って短編を重ねて、物語の終わりでは彼は高校生になる。

 「てるてるあした」の冒頭で、ユウスケのことが「不思議な赤ん坊」と書かれている。確かにユウスケの周りでは不思議なことが起きる。その訳が本書冒頭で分かる。彼には「見える」のだ。亡くなったけれどまだこの世に留まっている人たちの姿が。

 舞台は、佐々良の町を流れる佐々良川のほとりの原っぱの「はるひ野」(そう、表題作は「はるひ野の、春」という意味)。そこでユウスケは、川でうつぶせになって倒れている少女を見つける。その時、「見ちゃダメ」と言ってユウスケの手を引いた少女がいた。彼女の名は「はるひ」

 はるひはユウスケに「手伝って欲しいことがある」と言う。それはとても奇妙なお願いだったけれど、ユウスケは言うとおりにしてあげた。それ以降、はるひは数年に一度ぐらい割合で、ユウスケの前に現れては奇妙なお願いを繰り返し、すぐに姿を消す。その度に誰かが助けられる。

 各短編は、そんな感じで「いい話」で終わるのだけれど、モヤモヤしたものが残る。はるひは何のためにそんなことをしているのか?そもそも何者なのか?そういった謎が最後になって明らかになる。

 前2作は、亡くなった「見えない」人の存在を感じる不思議な物語だった。ユウスケにはそれが「見える」ので、亡くなった人の存在がリアルに感じられ、ファンタジーの要素を含んだ物語になった。「あとがき」に「シリーズ最後の作品」とされているが、それは惜しい。この言葉は反故にして構わないから、続編を希望する。

 最後に。著者が白血病と闘っておられたことは、闘病記を出版されているので知っていた。復帰第1作の本書が出版されて、私は本当に嬉しい。

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2012年9月22日 (土)

七人の敵がいる

著  者:加納朋子
出版社:集英社
出版日:2010年6月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、今年の春にフジテレビ系列で「昼ドラ」として放映された同名のドラマの原作。新聞のテレビ欄で見かけた時に、石川達三さんの「七人の敵が居た」と勘違いして「ずい分と古いものを持ち出してきたなぁ」と思った記憶がある。それが、先日図書館でこの本を見つけて「あぁこれだったのか!」と借りてきて読んだ次第。

 主人公は山田陽子。出版社の編集者。モーレツに忙しい。愛息子の陽介が入学した小学校の、最初の保護者会が本書の冒頭。この陽子のPTAデビューは最悪だった。「PTA役員なんて、専業主婦の方じゃなければ無理じゃありませんか?」と言ってしまった。つまり、その場にいた多くの母親を敵に回したわけだ。

 「専業主婦でなければ無理」ということはない(実は、私もPTA役員の経験がある)。ただ、陽子にとってはそれは根拠のある主張で、それを非難する声には正論で返して黙らせてしまう。
 正論は正論として「そうは言っても..」「そこを何とか..」で回っているのが現実のPTA活動だ(と私は思う)。しかし陽子は、陽介に累が及ぶのを危惧しながらも、正論を止められない。学校で、学童保育で、自治会で、スポーツ少年団で....。その度に敵を作ってしまう。

 こう書くと、陽子がとんでもなく自己中心的な人間のようだけれど、読み進めるうちに、そうではないことが分かる(「その言い方は何とかした方がいいよ」とは、最後まで思ったけれど)。また、「陽子vs敵」の図式の繰り返しの中で、陽子にも敵にも「事情」を潜ませてあって、この辺りは著者の技ありだ。

 本来は「正論」は文字通り正しくて、それが通らない現実の方に問題がある。職場で「ブルトーザー」とあだ名を付けられた陽子は、その馬力で現実の問題を正そうと立ち向かう。そんな陽子を、助けたり協力したりしてくれる人も現れる。ブルトーザーは色んなものをなぎ倒してしまうけれど、その後には道ができて、人が歩けるようになる。

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2012年7月21日 (土)

少年少女飛行倶楽部

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2009年4月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「底抜けに明るい、青春物語が書きたくなりました。それも、中学生が空を飛ぶ話が。」これは「あとがき」の冒頭の著者の言葉だ。本書のことをよく表している。

 主人公は中学1年生の女の子の佐田海月。舞台は彼女が通う中学校。海月は、幼馴染の大森樹絵里と一緒に、2年生の部長の斎藤神と副部長の中村海星の2人しかいない「飛行クラブ」に入部する。「飛行クラブ」とは、文字通り飛行することを目的とするクラブ。活動内容の文書に「理想を言えば、ピーター・パンの飛行がベスト」と書いてある。

 この何とも奇妙なこのクラブの活動は部長の神の「空を飛びたい」という強い願望の現れだ。この中学ではクラブ活動が必修なのだけれど、神は既存のどのクラブにも入らず、自分でこのクラブを創ってたった1人で1年間活動してきた(海星は野球部と兼部、友達の神に付き合って籍を置いている)。まぁ正真正銘の「変人」だ。

 海月は、頼りない樹絵里の面倒を幼稚園の頃から何くれとなく見てきた。今回の入部も樹絵里の海星への恋心に付き合わされたものだ。他にもワガママな同級生にも慕われ(絡まれ?)ていて、どうやら海月は「放っとけない」たちのようだ。変人の神のことも放っとけなくなって、「空を飛ぶ」ために奔走する。

 著者の作品の特長と言えば「日常に潜む謎」を描いたミステリーだと思うが、今回はミステリーではない。「あとがき」の言葉通りの青春小説だった。一見するとステレオタイプな登場人物たちだけれど、その一人一人に対して人物造形の背景を丁寧に描く。お見事だ。最後に一言。海月のお母さんがいい味を出している。

 この後は書評ではなく、この本の「あとがき」を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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2010年9月 1日 (水)

コッペリア

著  者:加納朋子
出版社:講談社
出版日:2003年7月7日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の作品を読むのはこれで7作目。これまでは連作短編か短編集だったが、本書は長編作品。また、「日常に潜む謎」を描いたこれまでとは違って、本書が描くのは日常から薄いヴェールで隔てられたような非日常。タイトルの「コッペリア」は、からくりで動く人形とそれに恋する青年が登場するバレエ作品の名前。本書も人形の存在が物語の大きな位置を占め、人形に恋した(執着した?)男性が登場する。

 主な登場人物は、人形に心を奪われてしまった青年の了、その人形を作った人形師のまゆら、まゆらのパトロンである創也、まゆらが作った人形にそっくりな劇団女優の聖、の4人。物語は、了と聖を1人称とした章が交互にあり、その間にまゆらと創也について語る3人称の章が挟まる形で進む。

 人形というのは、人の心をざわつかせる。しかもまゆらがつくる人形は、人肌そっくりの艶かしい質感とガラスの目を持った人形。それが、家の裏手に打ち捨てられてあったのだから、了がその人形に心を奪われたのもムリはない。
 そして、了がその人形と瓜二つの聖と出会い、創也も聖と出会い、聖はまゆらの個展に行って自分そっくりな人形と出会い、といくつもの遭遇が重なって、物語は複雑に進展していく。さらに著者は、ミステリ作家らしい仕掛けを施している。私は、人形が放つ妖しさに気を取られていて、まんまと騙されてしまった。

 余談であるが、私は学生のころマネキン会社の倉庫で短期バイトをしたことがある。けっこうリアルなマネキンで、至るところにその頭部、手足、胴体が積んであった。1日中その中にいると、生身の人間の一部と錯覚するようなこともあって、妙な昂ぶりを感じたことを覚えている。

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2010年5月20日 (木)

ラジオドラマ「有頂天家族」放送決定

 先日のアニメ「四畳半神話大系」続報に続いて、森見登美彦情報が入ってきました。NHK FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」で、森見さんの最高娯楽作品「有頂天家族」を放送する予定です。6月21日(月)~7月2日(金)までの月~金の10回、22:45~23:00の放送です。

 これは2008年に放送されたものの再放送なんです。このラジオドラマがあったことを、放送後にどなたかに教えていただいて知って、とても残念に思ったことを覚えています。なにしろ「有頂天家族」は、私としては今でも森見作品の中の(「宵山万華鏡」も良かったけれど、僅差で)ナンバー1ですから。

 実は先日、加納朋子さんの「モノレールねこ」の中の短編、「バルタン最後の日」の朗読が、NHK第一の「ラジオ文芸館」でありました。知ったのが当日の夕方だったので、ブログで紹介するタイミングがなかったのですが、その時に家のコンポでラジオの録音予約ができることが分かったので、今回も録音して聞くつもりです。しばらくはラジオがプチマイブームになるかも?

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2010年4月 7日 (水)

螺旋階段のアリス

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2000年11月20日 第1刷 12月10日 第2刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は、日常に潜む不思議を描く連作短編集が持ち味。「日常の不思議」を解き明かすということで言えば、本書に登場する「探偵」ほどうってつけの登場人物はいない。何しろ謎解きを専門とする職業なのだから。ただし、明智や金田一やポアロやクィーンら、難事件を見事に解決する探偵を想像してはいけない。
 本書の主人公は会社の早期退職者支援制度を利用して、脱サラして探偵事務所を開いた仁木順平。当然、そうそう簡単に仕事の依頼は来ない。来ても仁木が期待するようなハードボイルド系の依頼はない。カギを探して欲しいとか、犬を探して欲しいとか、浮気調査かと思えば「浮気してない調査」だとか。

 でも不思議を描くのが巧みな著者のことだから、もちろん話はそう単純ではない。カギ探しだってただのカギ探しではない、犬探しも浮気してない調査も、背後には全く別の事件が隠されている。解決すべきは表面に見える依頼ではなく、背後の事件の方。
 さらにこの謎を解き明かすのは仁木ではなく、フラッとこの事務所に来て居ついた、高級少女服のカタログから抜け出したような美少女の安梨沙。探偵らしくない探偵、事件の依頼にはウラがあり、お茶くみ兼務の助手にしか見えない美少女の一言が事件を解決に..と、何度もひねった筋書きが「さすが」と思わせる。しかも「ひねり」はこれで全部ではないのだからスゴイ。

 仁木と安梨沙の探偵稼業の物語をもっと読みたいと思っていたら、続編があった。「虹の家のアリス」。近々読みたいと思う。

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2009年11月15日 (日)

モノレールねこ

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2006年11月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 やさしい雰囲気の中で、ちょっと不思議で時に切ない話を書く著者。本書は文芸誌などの様々な媒体に書かれた短編を8編収めた短篇集。著者の作品で「ななつのこ」や「レイン・レインボウ」、「ささらさや」などは、短編同士にもつながりがある「連作短篇集」だが、本書は(ちょっと残念だが)それぞれが完全に独立した物語。

 いろいろな加納作品が楽しめる、という意味ではおトクな本。不思議系の「パズルの中の犬」と「シンデレラのお城」。どうしようもなくダメな肉親を描いた「マイ・フーリッシュ・アンクル」と「ポトスの樹」。ほろっとさせる「いい話」系の「セイムタイム・ネクストイヤー」「ちょうちょう」、さらにそこに笑いを振りかけた「バルタン最後の日」。そしてオチが巧みな表題作「モノレールねこ」
 「各種取り揃えました」という感じの短篇集だけれど、多くの収録作品に通じるテーマは「家族」。それは「家族を欠いた」ことで始まる物語であったり、「家族の過去」に触れる出来事であったり、「偽りの家族」の物語であったりする。

 一番好きな作品を1編だけ紹介する。それは「バルタン最後の日」。ディズニーランドに行くと、しばらくは粗食を覚悟せねばならないという、慎ましい暮らしをしている家族。その家の少年フータが釣ってきたザリガニの「バルタン」が主人公。
 悪意はないのだがザリガニの飼い方を知らない家族。「バルタン」は家族の不注意による生命の危機を幾度も乗り越える。そして、家族はなぜか「バルタン」にだけ思いを吐露する。みんな何かを心に抱えている。家族を想うあまりそれが言えないなんて..。「バルタン」もいいヤツなんだけれど、私は「お母さん」に泣けた。

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2008年7月28日 (月)

てるてるあした

著  者:加納朋子
出版社:幻冬舎
出版日:2005年5月25日
評  価:☆☆☆(説明)

 「ささらさや」の続編、「佐々良」という同じ街を舞台とした、1人の少女が経験した半年余りの物語。登場人物の街の住人たちは、前作と同じ面々。「ささらさや」の主人公のサヤも登場する。あれからどれだけ経ったのか分からないが、サヤの子のユウ坊がまだ赤ん坊のままだから、それほど月日は流れていないようだ。

 今回の主人公、照代は15歳、志望校に合格し、晴れて入学式を迎えるはずだった4月に、夜逃げするハメに陥って、遠い親戚である久代を訪ねて一人佐々良に来た。15歳の少女には少し過酷な境遇だ。子どもと言うには成長しすぎているが、一人生きていくのは難しい、まだ大人の保護が必要な年ごろ。
 この街では不思議なことが起きる。前作でサヤの死別した夫が、サヤを助けるために度々現れたような不思議なことが。今回も、照代の周辺には不思議がいっぱいだ。少女の幽霊が現れたり、発信元不明のメールが届いたり。しかし、幽霊が出てくるからと言って怪談ではない。少しホッとする物語がやわらかい文章で展開する。

 この物語は、照代の心の再生物語だ。照代は羽振りの好い家庭で育った。だが夜逃げをしなければならなくなったのは、まっとうな金銭感覚がない浪費家の両親のせいだ。多重債務によって実現した羽振りの良さだったのだ。
 カネやモノは欲しがるだけ与えていたが、愛情は十分に注がなかったようだ。少なくとも、照代自身はそう感じていた。そのためか、やさしくまっすぐなサヤから受ける言葉や親切さえ、嫌悪してしまうほど心がササクレていた。
 しかし、久代やサヤ、そしてクセのある佐々良の街の人々から、たくさんの親切を受けることで、照代の心も穏やかさを取り戻していく。

 このように書いてしまうと、ひどく一本調子でありがちな話のように思える。しかし、この著者は日常に潜むミステリーを書く人だ。ちょっとした伏線が張られていたり、意外な幽霊の正体など、良い意味で読者を裏切る仕掛けがあって楽しめる。

 最後に、この本を読まれた方にお伺いしたいことが...ここからどうぞ(ちょっとネタバレ)

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2008年7月 2日 (水)

レイン・レインボウ

著  者:加納朋子
出版社:集英社
出版日:2003年11月30日
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ななつのこ」で、鮎川哲也賞を受賞してデビューした著者の連作短編集。「ななつのこ」と同じように独立した短編がリレーのようにつながり、1つのストーリーを紡ぎだしていく。「ななつのこ」よりも、全編を通したストーリーが大きくしっかりとした太い流れになっている。連作短編集という、著者のスタイルが確立されてきたということなのだろう。とても面白く読んだ。

 ストーリーは、高校のソフトボール部のOGの死から始まる。
 その葬式に7年ぶりにかつての部員たちが集まる。その後は1編ずつ、1人ずつそれぞれを主人公とした、それぞれの生活が描かれる。何気ない生活の中のちょっとした事件を描くのに、著者は長けているので、1つ1つが短編として面白い。だから、最初の葬式は人物紹介の代わりかと思って、短編と短編のつながりをあまり意識しないでいた。
 しかし、読み進めるに従って、ある短編から別の短編へと、細いつながりがあることに気付いた。物語は何かに向かって進んでいることが分かる。何に向かって進んでいるのかは、何が起きているのかが明らかになる最後まで分からないが、とても大きな流れを感じることができる。素晴らしい構想力だと思う。

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