23.森見登美彦

2016年12月18日 (日)

ぐるぐる問答 森見登美彦氏対談集

著  者:森見登美彦
出版社:小学館
出版日:2016年10月30日 初版第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 長編小説「夜行」と同じ日に同じ出版社から刊行。こちらは対談集。作家生活10年を記念して、ということで、その10年間に様々な雑誌等の媒体に掲載された対談をまとめたもの。

 本書の出版元は小学館だけれど、対談の初出の媒体は他の出版社、ということもある。と言うか、確認してみると最近の2点を除いて全部が他の出版社のものだ。幻冬舎、文藝春秋、メディアファクトリー、講談社、早川書房、角川書店、新潮社。出版界あげての10周年のお祝い、という側面もある。

 対談の再録ということになるから、対談相手の了解も必要。そのお名前を順に(敬称略)。劇団ひとり、万城目学、瀧波ユカリ、柴崎友香、うすた京介、綾辻行人、神山健治、上田誠、羽海野チカ、大江麻理子、萩尾望都、飴村行、本上まなみ、綿矢りさ。

 著者自身が「対談の名手ではない」と自信を持っておっしゃっているように、小説の作品のように著者らしいオモチロイことがあるわけではない(巻末の「小説 今昔対談」は著者らしい工夫があるけれど)。しかし、作品を読むだけでは分からない、著者の暮らしぶりや作品執筆の裏側が、会話から見え隠れする。ファンなら楽しめるだろう。

 著者の作品の一群は「腐れ大学生」を描いたもので、著者と不可分に結び付けている人も多い。その嚆矢となったのは、日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作「太陽の塔」だけれど、それはなんと「やけくそで書いて」応募したらしい。

 それまでは「怪談とファンタジーの中間みたいなところをうろうろ」していた。ということは先日の「夜行」や「きつねのはなし」「宵山万華鏡」あたりが、著者がデビュー前から持っていた原点的な方向性だったわけだ。

 最後に本書全般を通して感じたこと。対談相手とよく、互いの作品を分析してみせる。「あの作品はこうなんじゃないですか?」と問いかけると「そうなんですよ!」と、話に弾みがつく場面が多い。相手は作家とは限らないけれど、何かを創作している人で、著者との共通点がある。そういう間柄だと通ずるものがあるらしい。

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2016年11月23日 (水)

夜行

著  者:森見登美彦
出版社:小学館
出版日:2016年10月30日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 長編の小説としては、昨年出版された「有頂天家族 二代目の帰朝」から約1年半、著者の最新作。

 主人公は大橋君。10年前の大学二回生の頃に通っていた英会話スクールの仲間たちと5人で「鞍馬の火祭」の見物に来た。実は10年前にも、この仲間たちとこの祭に来たことがある。その時、仲間の一人の女性の長谷川さんが失踪した。今回こうして皆が集まったのは、彼女に呼ばれたからかもしれない...。

 大橋君は、昼間に京都の街を歩いていて、長谷川さんにそっくりな女性を見かけた。その後を追うように入った画廊で、「夜行」というタイトルが付いた銅版画の連作と出会う。ちなみに画廊には先に入ったはずの女性はいなかった。

 物語はこの後、貴船川沿いの宿に集まった仲間たちの語りが続く。どうした因果か、全員がその「夜行」という銅版画にまつわる不思議な体験をしていた。怪談めいた話を一人ずつ語る様は、5人しかいないけれど「百物語」の様相を示す。

 「今回はこっち系だ!」と一人目の語りの途中で思い、期待が膨らんだ。著者にはエンタテイメント作品や「腐れ大学生」のグダグダな生活を書いた作品が多い。でも、本書のような「妖しさ」を描いたものに「名作」がいくつかあるのだ。「きつねのはなし」「宵山万華鏡」..。

 私は著者と同じように学生時代を京都で過ごした。京都は人口の1割が大学生だと言われる「学生の街」。そこには多少汗臭い活気がある。しかし、1200年の「歴史の街」でもある。小路の向こうの暗がりに異界を感じることが何度かあった。著者の作品の多面性は、京都の街の多面性を映しているのかもしれない、と常々思っている。

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2015年3月15日 (日)

有頂天家族 二代目の帰朝

著  者:森見登美彦
出版社:幻冬舎
出版日:2015年2月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書を手に取って感無量だった。7年あまり前に前作の「有頂天家族」を読んだ時に、既にこの第2弾が予告されていた。その1年半後の2009年4月には、文芸誌への連載が終わったという知らせが届いた。それから待つこと数年。何度か「いよいよ」というニュースがあったが出版には至らず。著者の体調不良による休筆などもあって「もう読めないのかもしれない」とさえ思っていた。

 現代の京都で暮らす狸たちの物語。相当数の狸が人間の姿に化けて京都の街で暮らしている。狸だけではない。天狗も縄張り争いをしながら住んでいる。人間だって相当クセのあるのが跋扈している。そういう設定。

 サブタイトルの「二代目の帰朝」の「二代目」とは、前作からの主要登場人物の一人である天狗の「赤玉先生」の息子のこと。100年前に壮絶な親子喧嘩の末に敗れ、大英帝国に渡っていた。その二代目が急に帰国する。拍子抜けするほどあっさりと。物語が始まって18ページで。

 「赤玉先生」は「如意ヶ嶽薬師坊」という名の大天狗なのだけれど、今はその神通力が衰えて、プライド以外にはその往年の姿は見る影もない。100年前とは二代目との力関係が違う。その急な帰国は、狸たちの世界にも緊張感を走らせた。

 という具合に、なにやら緊迫した雰囲気で始まるのだけれど、これは長くは続かない。なにしろ狸たちは太平楽なのだ。本書の主人公の矢三郎は、中でも極めつけの阿呆と言われている。帯には「阿呆の道よりほかに、我を生かす道なし」と大書されている。

 さらには、矢三郎たち狸兄弟が父から受け継いだ遺訓は「面白きことは良きことなり」。帯の背には「波風を立てて面白くするのよ。」と書いてある。そんなわけで「面白いこと優先」で、ハチャメチャとシリアスとハートフルをかき混ぜたような物語だ。

 矢三郎の、揉めれば揉めるほど湧き上がる「阿呆の血」は、父からだけでなく母からも受け継いでいたことが分かった。前作はテレビアニメ化もされたヒット作。本書を読む前に前作を読んでおくことをおススメする。

 そして...よせばいいのに最後のページに「第三部」が予告されている。もちろん期日は書かれていない。

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2014年7月24日 (木)

Fantasy Seller(ファンタジーセラー)

編  者:新潮社ファンタジーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2011年6月1日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 大好評の「Story Seller」シリーズ(123Annex)の仲間ということで良いかと思う。ファンタジー作家さん7人の作品を収録したアンソロジー。7人に共通しているのは、ファンタジーノベル大賞で賞を受賞しているということ。

 収録順に作品名と著者を紹介する。「太郎君、東へ/畠中恵」「雷のお届けもの/仁木英之」「四畳半世界放浪記/森見登美彦」「暗いバス/堀川アサコ」「水鏡の虜/遠田潤子」「哭く戦艦/紫野貴李」「スミス氏の箱庭/石野晶」「赫夜島/宇月原晴明」。

 こうして列記してそれぞれの作品を思い出して感じるのは、ファンタジーには、ずいぶんと様々な作品があるのだということ。河童や雷や竜といった和製ファンタジーのキャラクターものや、古典文学をベースにした創作、怪奇現象やホラー色の強い題材、そして学園ものまで。(意外なことに、ファンタジーの定番の魔法系はなかった)

 私としては、馴染のある作家さんということもあって、畠中恵さんの「太郎君、東へ」が楽しめた。徳川時代の初め、関八州に聞こえた河童の大親分、禰々子(ねねこ)の物語。女性ながらめっぽう腕っぷしが強い。利根川の化身である坂東太郎とのやり取りも面白い。

 もう一人の馴染のある作家さんは森見登美彦さん。「こんなところに新作が!」と思ったのだけれど、森見さんの作品は小説ではない。「四畳半」について、自分の作品と絡めながらグダグダと書いたものだ。(「グダグダ」なんて書いたけれど貶すつもりは毛頭ない。「グダグダ」は森見さんの作風なのだ)

 他には、前から気にはなっていた仁木英之さんの「雷のお届けもの」と、「かぐや姫」をベースにした宇月原晴明さんの「赫夜島」がよかった。これを機会に他の作品を読んでみたいと思った。

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2013年6月18日 (火)

深読み「聖なる怠け者の冒険」

 先日読んだ「聖なる怠け者の冒険」が、著者の前著の「宵山万華鏡」「有頂天家族」とつながっていることをレビュー記事に書きました。このことは著者による「あとがき」でも明らかにされています。しかし私は、さらに強いつながりが、「聖なる怠け者の冒険」と「有頂天家族」の間にあるように思ったので、ここに書くことにしました。

 そんなわけでこれから書くことは、「有頂天家族」をお読みの方でないとよく分からないと思います。また、物語の核心には関わりませんが、両方の作品の内容にも触れます。何の先入観もなく物語を読みたいと思う方は、読み終わってからで良いので、是非ともこの記事に戻ってきて読んでいただけるとうれしいです。

 「聖なる怠け者の冒険」の浦本探偵は「有頂天家族」の矢二郎ではないかと思うのです。

 そのわけは、浦本探偵のセリフに矢二郎と重なることが多いからです。

1.俺には弟がいるんだけど、こいつがへんな騒動ばかり起こすやつでね。でも憎めないやつなんだ。メチャメチャに事態が紛糾するほど生き生きとしてくる...(P203)
 矢二郎はタヌキの四兄弟の次男で、弟の矢三郎は「有頂天家族」の主人公で、まさにそういう性格でした。

2.ずいぶん長い間、引き籠って暮らしていたことがありましてね。その時代には、身の上相談をやっていた(P203)
 矢二郎はあることにショックを受けて以来、カエルの姿で寺の井戸の底に籠っていました。そこで家族や従妹たちの愚痴や相談を聞いていました。

3.俺は知ってるけど言わないでおこう。命が惜しいもの(P205)
 これは、偽電気ブランというお酒をどこで作っているかを聞かれての答です。そのお酒は矢二郎の叔父が製造していて、矢二郎たちと叔父は激しく敵対しているんです。

4.俺ならそんなに疲れる前に、蛙になって井戸に籠もるなあ(P319)
 上の2.に書いたとおり、矢二郎はカエルの姿で井戸に籠っていたことがあります。

いかがでしょう?これは間違いない、と思いませんか?

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2013年6月12日 (水)

聖なる怠け者の冒険

著  者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年1月30日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 森見登美彦さん3年ぶりの長編小説。2009年から2010年にかけて、朝日新聞に連載された同名の作品を全面改稿したもの。私は、新聞連載を欠かさず読んでいたが、全面改稿の「全面」に誇張はなく、全く違う物語に生まれ変わっている。発売に当たって朝日新聞に掲載されたインタビュー記事によると、なんと6回も書き直したそうだ。

 主人公は小和田君、京都郊外の化学企業の研究所に勤める若者。夢で「アア僕はもう、有意義なことは何もしないんだ」と呟き、その夢の中でさらに眠ってしまう、という怠け者。同僚たちに「田んぼのタニシと良い勝負」と言われるぐらい、静かな生活を送っている。

 そんな小和田君に、タヌキのお面に黒マントの変てこな怪人「ぽんぽこ仮面」が、「自分の跡を継げ」と言って付きまとう。さらに「ぽんぽこ仮面」を捕まえようと、得体のしれない組織が追いかけまわしているらしい。

 この「小和田くんに付きまとうぽんぽこ仮面」と「ぽんぽこ仮面を追う謎の組織」という2つの追いかけっこが、絡まりあって物語が進む。そこに可愛らしい探偵助手の「玉川さん」や、やたらと明るい「恩田先輩」とその彼女の「桃木さん」、スキンヘッドの「後藤所長」ら、個性的な登場人物が絡む。もう絡まりあって何だか分からなくなってくる(笑)

 この物語は「有頂天家族」と「宵山万華鏡」とつながっている。舞台が祇園祭の宵山の京都、という共通点もあって、雰囲気が「宵山万華鏡」に似ている。つまり「きつねのはなし」から連なる、京都の「妖しさ」が見え隠れする物語。著者お得意の「腐れ大学生モノ」とは別の系統の作品。私はどちらかと言えば、この「妖しい」系統の作品が好きだ。

 ファンには周知のことだけれど、著者は体調を崩して休筆していた。復帰作とも言えるこの本が出版されて、私はとても嬉しい。クライマックスにかけてのハチャメチャぶりには、「ちょっとガンバリ過ぎじゃないの?」と心配してしまったけれど、元気になられた証だと思うことにした。

 嬉しいお知らせが続く。本書に「森見新聞」というチラシが挟み込んであって、それによると、TVアニメ「有頂天家族」が7月7日から各局で放映開始、「有頂天家族2(仮)」が秋に幻冬舎から、「夜行」が冬に小学館から、それぞれ刊行予定。

(2013.6.18 追記)
この物語を深読みした、深読み「聖なる怠け者の冒険」という記事を書きました。

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2013年3月26日 (火)

「有頂天家族」テレビアニメ化。「聖なる怠け者の冒険」発売。

 少し前に、森見登美彦さんに関する情報が、立て続けに報じられました。まず森見さんの人気小説「有頂天家族」の今年7月のテレビアニメ化が決定したそうです。

 私は、3年前に「四畳半神話体系」がアニメ化された時に書いた記事で、「アニメ化にもっと向いたいい作品」として、この「有頂天家族」を挙げていましたから、私としては待ちに待ったアニメ化です。

 TVアニメ「有頂天家族」公式サイト
 ※ただ「どの放送局で」ということが、見あたりません。何か訳があるのでしょうか?

 次は、「聖なる怠け者の冒険」の発売決定です。5月21日だそうです。この本は、朝日新聞に2009年から2010年に連載された新聞小説を改稿したものです。これまでに公式非公式を合わせて何度か、発売情報が流れては延期になっていました。

 ネット書店などでの登録がないのが、気がかりではありますが、この度は、森見さんご自身の公式ブログでの告知、それも2か月後のことですから、もう確実でしょう。

 これまでの延期は、森見さんの長期にわたる体調不良が理由だと推察されます。その意味ではこの発売は回復の兆しでもあるわけで、私はそれが何よりもうれしいです。

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2011年9月 4日 (日)

森見登美彦の京都ぐるぐる案内

著  者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年6月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 森見登美彦さんによる京都のガイドブック。これまでに膨大な数の「京都のガイドブック」が発行されたことと思うが、これほど私的な偏りのあるガイドブックは、そう多くないだろう。「左京区」に多くの誌面を割いているのだけれど、銀閣寺も南禅寺も平安神宮もない。それは、著者のその場所に対する思い入れの程度によるのだろう。

 それなら何処が載っているのかというと、「鴨川デルタ」「下鴨神社」「京都大学」「進々堂」「吉田山」...(掲載順)。ここに挙げた全部にピンと来た方は、かなりの京都通か、森見登美彦通だろう(3番目の「進々堂」の難易度が高い)。
 森見登美彦通の方はもうお分かりと思うが、このガイドブックに載っている場所は、著者の思い入れがあるだけではなく、その作品に登場した場所だ。「左京区」の他には、四条大橋や叡山電車、それから「竹林」なんてのもある。それぞれの場所のページには、そこが登場した作品の1節が載っている。

 はっきり言って、これは著者の作品のファンに向けられた本だと思う。映画やテレビドラマの舞台やロケ地が、観光地として賑わっているそうだけれど、そのノリだ。作品に登場したあの場所の写真を見て、「こんなところだったんだ」と思い、「いつか行ってみよう」と誓う。...ということで、森見ファンにおススメ。

 ※森見登美彦さんのブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」によると、森見さんは現在、病気療養中だそうです。一日も早いご回復を祈ります。

 この後は、ちょっと私事を話しています。お付き合いいただける方は、どうぞ

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2011年8月20日 (土)

ほっと文庫「ゆず、香る」「郵便少年」ほか

 おもちゃ・ホビーのバンダイと角川書店のコラボレーション商品。30ページほどの短編小説に、その小説に登場する色と香りの入浴剤が1包付いている。全部で6種類発売されている内の4種類を買って読んでみた。

 読んだのは、有川浩さん「ゆず、香る」、森見登美彦さん「郵便少年」、あさのあつこさん「桃の花は」、西加奈子さん「はちみつ色の」の4つ。前の3人は、私が好きな作家さんで、西さんは「もし面白かったら他の作品も読んでみよう」と、新規開拓のつもりで選んだ。

 面白かった順も上に書いた順のとおりだった。まぁ好きな作家さんの順に書いたので、好きな作家さんの作品が面白かった、という至極当たり前の結果になっただけ、とも言える。

 それぞれを簡単に紹介する。「ゆず、香る」は、王道のラブストーリー。コラボ作品としてハマり過ぎな感じ。「郵便少年」の主人公は、たぶん「ペンギン・ハイウェイ」のアオヤマ君。悲しくもほのぼのとした作品。「桃の花は」は、30歳の女性の遠い昔の記憶をめぐる不思議な物語。「間に合ってよかった」と思えるいい話。「はちみつ色の」の主人公の小学生の母親は小説家。自分の誕生日に「誰からもおめでとうメールが来ねぇ」と憤っているような人。新規開拓のつもりだったが、私には合わなかったらしい。

 それぞれの著者のファンで、(399円払っても)30ページの書き下ろし短編が読みたい、という方にはおススメ。「小説と入浴剤のセットって、ちょっと面白そうじゃない?」という方もOK。

※この商品は入手困難になっている。私も1週間前に、近くの書店、ホームセンター、ドラッグストアを何軒か回ったが売っていなかった。商品のホームページに載っている「商品お取扱店舗」にも行ってみたが、チェーンの場合、全店にあるわけではないらしい。
 今日(2011.8.20)現在では、ネット書店で取り扱いがあるようだけれど、「ゆず、香る」と「郵便少年」は、Amazonでは在庫がなくて「9月26日入荷予定」になっている。
 1週間前には他のも在庫がなかったので、私はバンダイのショッピングサイト「プレミアムバンダイ」で購入した。ここなら今も買えるようだ。(ただし送料が525円(税込)かかる。399円のものを買うのにこの送料はちょっと痛い)

 ここからは書評ではなく、この商品についてちょっと気になったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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2011年4月17日 (日)

四畳半王国見聞録

著  者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年1月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 モリミーの最新刊。yom yom、小説新潮、ユリイカといった小説誌に掲載した短編が7編収められた短編集。掲載誌が3誌あって、掲載された時期もまちまちなのだけれど、登場人物たちがほぼ共通しているので、連作短編といって良いだろう。

 単行本の刊行順で言うと、本書の前が日本SF対象を受賞した「ペンギン・ハイウェイ」、その前は「宵山万華鏡」。著者の作品と言えば思い浮かぶ「腐れ学生」モノからは、ちょっと距離を置いた作品が続いた。そして本書は..「四畳半神話大系」を彷彿させるタイトルでお分かりだろう。愛すべきダメダメ学生たちが帰ってきた。

 最初の一編「四畳半王国建国史」に慄いた。「四畳半王国」の国王が、京都は東山のふもとにある「法然院ハイツ」の一階の四畳半に、いかにして無限の空間を有する「王国」を築いたかが記されている。もちろん妄想が全開した産物だ。著者の作品の愛読者の私も、最初からこのペースで飛ばされたのでは付いて行けない、と思った。巻末の初出一覧で、これが現代思想誌の「ユリイカ」に載ったの知って、再び慄いた。

 このように最初の一編はなかなか手強かったが、二編目の「蝸牛の角」以降は大丈夫だ。大丈夫というのは、これまでの著者の「腐れ学生」モノのペースが戻った、ということ。京都の無益な営みに明け暮れる学生(つまり「腐れ学生」)たちが奉じる、「阿呆神」という神様の周辺の物語。詭弁論部や図書館警察などお馴染みの組織や、大日本凡人會、四畳半統括委員会などが活躍(暗躍?)する、著者のメイン路線とも言える作品。

 私はとても楽しんだ。登場する黒髪の乙女のセリフが、本書を端的に表している。
 「見渡すかぎり阿保ばっかり」

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