31.伊坂幸太郎

2017年11月15日 (水)

ホワイトラビット

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2017年9月20日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「AX(アックス)」のレビュー記事に「うれしいことに今年は伊坂幸太郎さんの新刊が3冊も出た」と書いたけれど、本書はその2冊目。

 主人公の名前は兎田孝則。2年前から「誘拐」をビジネスにしているグループで働いている。「ビジネス」だから業務分担があり、兎田は「仕入れ担当」。つまり、上から指示された人を連れ去ってくる役割。「倉庫」と呼ばれる指定場所まで人質を無事連れてくれば業務完了。

 重要な登場人物が他に2人いる。一人は宮城県警特殊捜査班の夏之目課長。この物語では、仙台市の住宅街で起きた、人質立てこもり事件の指揮を執る。もう一人は泥棒の黒澤。ひょんなことから事件に巻き込まれた。黒澤は、伊坂作品ではお馴染みの登場人物。ファンなら彼の登場はちょっとうれしいはずだ。

 物語は、夏之目課長が対応する人質立てこもり事件を中心に展開する。兎田が引き起こしたものだ。兎田の警察への要求は、「折田」という名前の人物を連れてこい、というもの。その人物が見つからないと、兎田のかわいい新妻の綿子ちゃんが、大変なことになる。

 「誘拐」をビジネスにするグループの一員とか、真っ当な人間とは言えないけれど、兎田にも憎めないところがある。その一方で、善良な市民のはずの被害者の家族が、ちょっとあやしい。あっさりと見つかった折田も、やけのクセのある人物。誰も信用できない。

 面白かった。これは伊坂さんが時々やるやつだ。いくつかの視点から出来事を描いていく。最後にそれらが「正しく」組み合わさると、思ってもみなかった真相が浮かび上がる。

 最後に。三人称で書かれた小説なので「語り」がある。その「語り」にちょっと「遊び」があって、伊坂さんとしては、たぶん新しい試みだと思うのだけれど、なかなか良かった。

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2017年10月22日 (日)

AX(アックス)

著  者:伊坂幸太郎
出版社:KADOKAWA
出版日:2017年7月28日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 うれしいことに今年は伊坂幸太郎さんの新刊が3冊も出た。本書はその1冊目。

 各エピソードの初めに、主人公の名前のハンコのマーク。これで本書が「グラスホッパー」「マリアビートル」に連なる物語だと分かる。そう、殺し屋がたくさん登場する(人がたくさん死ぬ)「殺し屋業界」の物語。帯には「殺し屋シリーズ」と書いてあった。確かに3冊目もあれば「シリーズ」だ。

 主人公の名前は「兜」。もちろん「仕事」をするときの名前で、本名は「三宅」というらしい。家族は妻と高校三年生の息子がいる。殺し屋の物語に、家族とのエピソードがあるのは、ちょっと珍しいと思うが、さらに珍しいのは、「兜」が大変な恐妻家であることだ。(そういえば、必殺仕事人の中村主水も恐妻家だったか。意外とあるのかも、この設定)

 どのくらい恐妻家かと言うと、「仕事」を終えて帰って来て妻が寝ていたら、腹が減っていてもカップラーメンは食えない、ほどだ。ビニールを破る音、フタを開ける音で、妻を起こしてしまったらいけないからだ。もしそうなったら「大変なこと」になるらしい。

 まぁそんな具合で(ちょっと変わった形だけれど)「家族思いの殺し屋」である「兜」は、息子が生まれたころから「仕事を辞めたい」と思っている。簡単に抜けられる業界ではないので「上からの指示」のまま、ズルズル「仕事」を続けている。

 本書はそうして「辞めたい」と思いながら、家族のことを気にしながら、妻にビクビクしなが、それでも標的を確実に仕留める、兜の鮮やかな仕事ぶりを描く5つの物語を収録した連作集。

 やっぱり面白い。「恐妻家の殺し屋」という設定に、少し面食らったけれど、これが物語に何ともいい味を醸し出すのに役立っている。伊坂作品らしく、伏線としても最後に生きて来る。いつも通りの技ありの作品。

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2016年5月 5日 (木)

サブマリン

著  者:伊坂幸太郎
出版社:祥伝社
出版日:2016年3月30日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの最新刊。書き下ろし長編で、あの「チルドレン」の続編で、「陣内さん、出番ですよ。」と書いた帯が付いている。これは伊坂ファンならばすぐにでも読みたいだろうと思う。

 陣内は、数多い伊坂作品の魅力的なキャラクターの中でも、人気がある登場人物で、「チルドレン」以来12年間登場していない(たぶん。作品間リンクでの言及はあったけれど)。つまり待望の再登場だからだ。

 「チルドレン」は、陣内の学生時代と家裁の調査官になってからの、2つの時代を交互に描いた短編集だった。本書は長編で、家裁の調査官で主任になった陣内を、陣内さんの部下となった武藤を主人公にして描く。時代は「チルドレン」の「家裁の調査官パート」から、数年後ぐらい。

 陣内のことがよく分かるエピソードが「チルドレン」にある。永瀬という盲目の友人が、盲目というだけで憐れまれて現金を手渡された。その過剰な同情は、永瀬はじめ友人たちの心に影を落とす。陣内も怒った。「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」「(目が見えないことなど)そんなの関係ねえだろ」

 その魅力は健在だった。「空気を読まない」から誰かを傷つけてしまうかもしれない。でも、その固定観念に縛られない感性は、時に「本当に大事なモノ」をしっかりと捉える。陣内のところに、かつて担当した少年たちがなぜか顔を出すのは、やはり何か救われた思いがあるからだろう。

 だから面白かった。ただ、本書は重いテーマを抱えている、ということも指摘しておく。サンデル先生の「これからの「正義」の話をしよう」に重なる、「正義」に関するもので、容易には答えが出ない。そのために、荷物を持ったまま物語を読むような気の重さを感じてしまった。

 最後に。鴨居くんはどうしたのだろう?

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2015年11月11日 (水)

陽気なギャングは三つ数えろ

著  者:伊坂幸太郎
出版社:祥伝社
出版日:2015年10月20日 初版第1刷 10月30日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの最新刊。「陽気なギャングが地球を回す」「~の日常と襲撃」に続くシリーズの第3弾。

 主人公は、お馴染みの響野、成瀬、久遠、雪子の4人組の銀行強盗たち。銀行強盗は2年ぶりだと言っているし、係長だった成瀬は課長になっているし、(第1弾で)中学生だった雪子の息子の慎一くんは大学生になっている。確実に時間が流れている、ということだ。

 時間は流れても彼らは変わらない。冒頭の響野の演説で「あぁあいつらが帰って来た」と感じた。「理由や意味のあることをほとんど言わない」という響野は、強盗に入った銀行で、カウンターに登って演説をする。

 その演説の間に仕事を終えて現場からは、正確無比な体内時計と超絶運転テクニックを持った雪子の車で逃走する。それが彼らのスタイル。ところが今回は現場から立ち去る時にアクシデントがあり、それが事件の発端。

 失踪したアイドルを追う怪しい雑誌記者に関わる→雑誌記者が通う会員制ギャンブルを開くギャンググループに関わる→追われる身になる..といった「巻き込まれ型」の展開で、テンポよく物語が進む。ちょっとした伏線が後で効いてくる。これまでのシリーズの良さが、そのまま生きている。

 「あとがき」に伊坂さん自身が書いているように、伊坂作品にはシリーズものは少ない。「この先どうなるのか分からない」話を書きたい、というのがその理由のひとつだそうだ。この「陽気なギャング」シリーズだって、簡単には先は読めないのだけれど、「お馴染みの雰囲気」が楽しめるという安心感はあって、それが心地いい。

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2015年7月16日 (木)

ジャイロスコープ

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2015年7月1日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 帯に「初文庫オリジナル短編集」と書いてある。単行本の文庫化でなく、最初から文庫で出版された、ということがウリらしい。著者には「連作短編集」でない短編集はあまりなく、私の記憶では「フィッシュストーリー」だけだと思う。それが何を意味するのかは分からないけれど。

 本書は「浜田青年ホントスカ」「ギア」「二月下旬から三月上旬」「if」「一人では無理がある」「彗星さんたち」「後ろの声がうるさい」の7編を収録。最後の「後ろの声がうるさい」が書下ろしで、その他は小説雑誌やアンソロジーに掲載された作品を改稿したもの。

 「浜田青年ホントスカ」は、「蝦蟇倉市事件1」というアンソロジーに収録されていて既読だった。短い中にピリッとスパイスの効いた展開で、なかなか楽しめる。ただ、アンソロジーで他の作家さんとの競作だからこそ生きるエピソードがある。そこから切り離してしまうのはもったいない気がする。

 楽しめた作品を一つ挙げるとすると「彗星さんたち」だ。新幹線の掃除をする作業員の話。伊坂幸太郎流「お仕事小説」。離婚して小学校三年生の娘を育てている30代の女性が主人公。
 自分の感情を言葉にして伝えるのが苦手で、「掃除だけしてればいい」と思って始めた。そんな彼女が「チームの一員」になっていく様が清々しい。もちろん伊坂さんらしい「しかけ」もある。

 ちなみに、新幹線の掃除の作業員と言えば、今年1月に公開された「7分間の奇跡」という動画が、ネットで大きな話題になった。この短編は2013年の作品だから、こちらの方が断然早い。

 いろいろなところから集めたバラバラさ加減がいい。皮肉で言っているのではない。タイトルの「ジャイロスコープ」は、回転によってバランスを保つ仕組みになっている。ある年齢以上の人には「地球ゴマ」と言えば分かるだろうか。違う個性を持った作品でバランスを保っているのだ。

 「ジャイロスコープ」の説明が、扉のページの裏に何気ない風を装って書いてあるので、読み落とさないように。「読み落とさないように」という意味では、巻末に「十五年を振り返って」という、伊坂さんのインタビューが収録されている。ファンなら読みたいはず。読んで損はない。

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2015年3月 5日 (木)

火星に住むつもりかい?

著  者:伊坂幸太郎
出版社:光文社
出版日:2015年2月20日 初版1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの最新書き下ろし長編。

 今回の舞台は「地域安全対策地区」に指定された仙台。「地域安全対策地区」には「平和警察」という組織が設置され、「危険人物」の早期発見と犯罪の未然防止に取り組むことによって、地域の安全を守る。「早期発見」の方法は一般住民からの情報を得ること。早い話が「密告」を受け付けることだ。

 本書は3部構成になっている。第一部は、様々な事件が紹介される。上級生にいじめられる高校生。平和警察の取り調べを受ける男性。隣人が平和警察に連行された男性。...第二部は、平和警察の部署に配属された新人警察官から見た平和警察の活動。第三部は、平和警察によって監視カメラが設置された、理容店の店主を主人公とした物語。

 書誌データでは「らしさ満載、破格の娯楽小説!!」と紹介されている。「娯楽小説」なのだから楽しめばいいのだろう。でも私はあまり楽しめなかった。善良な市民を、いい加減な密告を基に連行し、人権を無視した取り調べで自白させて、首切りの公開処刑にする。「娯楽」にはできなかった。

 「火星に住むことを選びたくなるぐらい酷い世界」という含意だとは思う。こんな世界にも「正義の味方」はいて、悪の権化のような「平和警察」に立ち向かう者もいる。なかなかユニークなキャラクターも登場する。方々に伏線もある。「らしさ満載」については「満載」は言い過ぎのように思うが「らしい」とは言える。

 「らしい」で言えば、伊坂さんは時々「強大な権力」を描く(「モダンタイムス」や「ゴールデンスランバー」など)。それから「闇」や「得体のしれないモノ」を描くこともある。「黒伊坂」作品と呼ぶ人もいる。そういった作品が好き、という人もいるので、本書もそういう読者の支持を得るかも。

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2014年12月23日 (火)

キャプテンサンダーボルト

著  者:阿部和重、伊坂幸太郎
出版社:文藝春秋
出版日:2014年11月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんと阿部和重さんの合作小説。伊坂幸太郎さんは、私が大好きな作家さんで新刊が出れば必ず読む。もう30作品以上を読んだ。阿部和重さんの作品は、まだ読んだことがなかった。芥川賞受賞作家だから「純文学」に分類されるのだろう。

 舞台は仙台と山形、県境に位置する蔵王。主人公は相葉時之と田中徹の二人。小学校時代の少年野球のチームメイトでもうすぐ30歳になる。章ごとに、この二人を含めて何人かの視点が入れ替わり、年代が多少前後しながら物語が進む。

 早い段階で物語の材料が提示される。1945年の東京大空襲の日に蔵王に墜落した3機のB29。その蔵王の火口湖を発生源とする致死率70%強の伝染病「村上病」。その火口湖でロケをした戦隊ヒーロー映画の突然の公開中止。そして相葉を追って来る「銀髪の怪人」。

 面白かった。「魅力的な登場人物」「巧みな伏線」「気の効いたセリフ」の伊坂作品の魅力が三拍子揃った作品。合作ということだけれども、私には伊坂さんの作品ということで、全く違和感がなかった。(それは良いことではないのかもしれないけれど)

 伊坂作品の系譜にもぴったりはまった作品だと感じた(阿部さんの作品は読んだことがないので、どういう特徴があるのか分からないのだけれど)。「グラスホッパー」「マリアビートル」の「たくさん人が死んでしまう」線と、「魔王」「モダンタイムス」「ゴールデンスランバー」の「事件の背後にある巨大な組織」の線が交わるところに位置づけられる。

 文春の情報サイト「本の話WEB」に、伊坂さんと阿部さんの対談が掲載されている。読む前でも後でもいいので、本書を読む方はご覧になることをおススメする。村上春樹さんへの想いや、合作の詳細など、とても興味深いことが語られているので。

本の話WEB「史上最強の完全合作!阿部和重、伊坂幸太郎がそのすべてを語る

 

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2014年10月15日 (水)

アイネクライネハナトムジーク

著  者:伊坂幸太郎
出版社:幻冬舎
出版日:2014年9月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの最新刊。2007年から2014年にかけて文芸誌等に掲載された5つの短編と、書下ろし1編を収録。

 簡単に各短編を紹介する。「アイネクライネ」。ある突発事故の責任をとって「罰ゲーム」のような街頭アンケートを課された、市場調査の会社に勤める佐藤の物語。「ライトヘビー」常連客から弟をいくらか強引に薦められる、美容師の美奈子の物語。「ドクメンタ」自動車教習所の更新に出かける度に、同じ女性と出会う、市場調査の会社に勤める藤間の物語。

 「ルックスライク」駐輪場で料金をネコババした犯人を突き止めに行く美緒と和人の高校生コンビの物語と、ファミレスのアルバイトの朱美とその窮地を救った邦彦の物語のオムニバス形式。「メイクアップ」高校生の頃に自分をいじめてた同級生と再会した、化粧品会社の広報担当の結衣の物語。

 ここまでの各短編で、よく読んでいると、登場人物が別の作品に顔を出していたり、親子関係だったりと複雑に相関していることが分かる。バラバラの場所に書かれた作品とは思えない。

 最後が書下ろしの「ナハトムジーク」かつてのボクシングのヘビー級チャンピョンの19年を行き来する回想に、佐藤や美奈子や藤間や美緒らが登場する。これまでに残して来た伏線のほとんどが回収され、相関図が完成する。圧巻。

 以前から度々言っているけれど、気の利いた会話、愛すべきキャラクター、巧みな伏線、が私が好きな伊坂幸太郎さんの作品の特長。本書は久しぶりにそれが全開になっている。うれしい。

 最後に。冒頭の「アイネクライネ」は、ミュージシャンの斉藤和義さんから歌詞を依頼されて、「作詞はできないので小説を」と書いた作品。読後には斉藤和義さんの「ベリー ベリー ストロング~アイネクライネ~」を聴こう。

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2014年3月 2日 (日)

首折り男のための協奏曲

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2014年1月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の最新作。それぞれ別のところで発表された短編を7編収録した短編集。タイトルの基になっている冒頭の「首折り男の周辺」と、最後の「合コンの話」はそれぞれ「Story Seller」と「Story Seller2」に収録されていて既読だった。

 「首折り男の周辺」は、首を折られて人が殺される事件が連続して起きる中で、隣人がその犯人ではないかと疑う夫婦と、犯人にそっくりの体型・風貌で間違われる男と、いじめられている中学生が、それぞれ主人公の物語が交互に語られる。

 2つ目は、事故で子どもを亡くした父親の復讐を扱った「濡れ衣の話」。「首折り男~」とゆるくつながっている。「首折り男~」も含めて「殺人」「いじめ」「復讐」という重々しい話を語りながら、湿っぽくならない。著者らしい作品。

 その後の3作品は、伊坂作品ではお馴染みの「探偵&泥棒」の黒澤の物語。夫を介護中の女性が50年前の逢瀬について黒澤に調査を依頼した「僕の舟」。黒澤が訪ねたクワガタを飼育する小説家の物語と塾で暴力を受ける中学生の物語がシンクロする「人間らしく」。テレビの制作プロダクションの男からの奇妙な依頼を描く「月曜日から逃げろ」。

 6つ目の「相談役の話」は、再びクワガタ飼育の小説家の話。ちょっと怖い怪談話。最後の「合コンの話」は、参加した男女3人ずつがそれぞれワケありで、会話の表面の和やかさと、裏に隠された緊張感を描いた作品。ここで再び「首折り男」が登場する。

 最初に書いたように、それぞれが別のところで発表された作品で、「恋愛ものを」とか「怪談話を」と別々の依頼を受けたもののためか、統一感に欠ける。著者としても、色々なパターンの創作を試している風で、中には「実験的」な作品もある。「短編がたまったので1冊にしました」感がぬぐえない。

 ...というのが一読後の感想だった。ところが...

 短編間のゆるいつながりが気になって、それを確かめるために読み返すうちに、「ゆるいつながり」ではなく、縦横にガッチリと連結していることに気が付いた。さらに、手元にある既読の2作品を読んで改変部分を確認すると、その意図がはっきり分かる。著者が、もともとバラバラだった作品の集まりを「連作集」に生まれ変わらせたのだ。伊坂さん、グッジョブ。

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2013年9月 4日 (水)

死神の浮力

著  者:伊坂幸太郎
出版社:文藝春秋
出版日:2013年7月30日 第1刷 3月5日 第3刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの書き下ろし(冒頭のみ「別冊文藝春秋」に掲載)の最新作。100万部突破のベストセラー「死神の精度」の続編。あの何とも憎めない死神の「千葉」の物語で、しかも長編。期待して読んだ。

 死神の千葉の仕事は、指定された人を1週間調査して、「死」を実行するかどうかを判断すること。短編集の前作「死神の精度」では、何人かの調査を担当したが、長編の本書で担当するのは1人だけ。それは小説家の山野辺遼、35歳。物語は、千葉が山野辺の調査をする1週間を、千葉と山野辺の視点を何度か入れ替えて描く。

 少々重苦しい設定なのだけれど、山野辺は1年前に小学生の娘を、亡くしている。しかも殺された。その殺人の有力な容疑者として逮捕された当時27歳の男、本城崇は、あろうことか裁判で「無罪」になってしまった。このブログで何度か書いているけれど、子どもが可哀想な目に合う話が私は苦手で、本書もちょっとつらかった

 山野辺とその妻は、司法が裁けなかった本城を、自分たちで制裁を加えようとするが、常に後手に回ってしまう。本城はずば抜けて頭がよい男で、「無罪」も用意周到な準備によって、計画的に得たものだ。彼にとってはこの事件は「ゲーム」にすぎない。本城はいわゆる「サイコパス」なのだ。

 上にも書いたけれど設定が重苦しく、展開にも心が塞がれる。そこを千葉の言動が救う。人間の常識とはズレているから、やりとりがチグハグになる。例えば山野辺が本城のことを「良心がない人間」と言えば、千葉が「クローンというやつか(注:両親がない)」と返す、といった具合。

 読んでいてちょっとした既視感があった。身内を殺された男の復讐という流れは「グラスホッパー」に似ているし、逃避行での信頼と善意は「ゴールデンスランバー」を、圧倒的な悪には「モダンタイムス」を思い出した。そういった意味では伊坂ファンには馴染のある物語だとも言える。

 気になったのは、主人公を「小説家」にしたこと。小説家を主人公に据える以上、作家本人の何かが投影されているのでは?と考えてしまうのだけれど...

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