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2019年5月 1日 (水)

フーガはユーガ

著  者:伊坂幸太郎
出版社:実業之日本社
出版日:2018年11月10日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 今年の本屋大賞の第10位の作品。

 主人公は常盤優我。20代前半。彼には風我というな名の双子の弟がいる。「フーガとユーガ」。タイトルは双子の兄弟の名前なわけだ。優我は、仙台のファミリーレストランで、東京のテレビ制作会社のディレクターの高杉と会っていた。本書は、優我が高杉に語った、自分たち双子の兄弟の長い物語。

 高杉と会うきっかけは、一つのビデオ。悪趣味というか完全に犯罪だけれど、ファストフード店のトイレの盗撮映像だ。そこには優我が映っていて、映像が飛んだように瞬間的に体勢が変わって、しかもさっきまでなかった絆創膏が顔に貼られていた。そのビデオを持ち込まれた高杉が、優我を探し出して「この動画について教えてほしい」と聞いてきた。

 優我の説明は明快だ。「双子の兄弟が瞬間移動で入れ替わっている」。ただ、優我は前もって高杉に告げている「僕の喋る話には記憶違いや脚色だけじゃなくて、わざと嘘をついている部分もあるので、真に受けないほうがいいですよ」...

 なかなか爽快な物語だった。でもそれ以上に痛々しかった。読者は高杉と一緒に、ウソかホントか分からない優我の話を聞かされる。でも「双子が瞬間的に入れ替わる」現象を使えば、いろいろなことができる。ちょっとしたいたずら。いじめられているクラスメイトを助ける。もっと大胆な仕掛けにも挑んでいく。うまく行った時には爽快だ。まぁウソかもしれないけれど。

 痛々しいのは、彼らや彼らの周辺の人たちの生い立ちや暮らしぶり。詳しくは書かないけれど、双子は真っ当な両親には恵まれなかった。物語は「父親に殴られる風我を優我がが見ている」というシーンから始まる。これ以上にひどいことはないように思うけれど、これを上回るかもしれない出来事も起きる。子どもがつらい目に会う話が苦手な私としては、ちょっとつかった。

 最後に。ちょっとつらい部分も含めて、著者の作品らしさを感じる物語だった。伏線もあるし、他の作品とのリンクもあるし、気の利いたセリフもある。私としては、ワタヤくんの職業に「あぁ伊坂さんらしい」と思った。

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