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2019年1月

2019年1月12日 (土)

おやすみ、東京

著  者:吉田篤弘
出版社:角川春樹事務所
出版日:2018年6月18日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 4年ほど前に「つむじ風食堂の夜」を読んで、味わい深い物語と洒落た文章がよかった。それを覚えていたので、また読んでみようと思った。

 東京の夜を舞台にした13章からなる物語。主人公は章ごとに入れ替わる。1回だけの人もいるし、2回、3回の人もいる。例えば、映画会社の小道具倉庫の「調達屋」のミツキ、夕方から早朝まで専門のタクシー運転手の松井、電話相談室の深夜帯担当の可奈子、明け方までやっている食堂を共同経営するアヤノ..。

 深夜に働く人が多い。ミツキも監督の要請で、様々なものを探して深夜の街を彷徨する。それは本書が東京の夜、それも深夜から明け方の物語だからだ。全ての章は午前1時から始まる。タイトルは「おやすみ、東京」だけれど、街が眠った後の眠らない人々の物語。

 「つむじ風食堂の夜」と同じく、味わい深い物語だった。章ごとに別々のエピソードがつづられるのだけれど、前後の章は共通の登場人物を通してつながっている。大きな事件は起きないけれど、少しずつ進展する。ある章で主人公が出会った人が、別の章に登場する人の探し人だったり..。

 「洒落た文章」とはちょっと違うけれど、心に残る言い回しは前著と同じくあった。一つだけ紹介。

 この世に「おいしい」という言葉があってよかった。

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2019年1月 9日 (水)

「AI失業」前夜 これから5年、職場で起きること

著  者:鈴木貴博
出版社:PHP研究所
出版日:2018年7月2日 第1版第1刷 9月3日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 AIがもたらす経済・社会の問題について、過去から現在、そして5年後、最大でも10年後までの時間軸で論じた本。

 本書の特長で著者の慧眼は、この時間軸の設定にある。現在「AI」を論じる書籍や記事には、2045年に迎えると言われる「シンギュラリティ(技術的特異点)」の話が、必ずと言っていいほど出てくる。

 しかし、今、私たちが最も問題にしなければならないのは、26年後にAIが人間の知性を越えるのか越えないのか?仕事の半分ぐらいが消滅すると言うけれど本当か?なんて話ではない。これから5年とか10年という、もっと近い将来に起きることにどう対処するのか、の方が大事なはずだ。

 時間軸を「過去」に伸ばしていることも注目に値する。AIの影響は、現代社会の諸問題として既に表れている、と著者は指摘する。例えば、非正規雇用が増え続けている問題がそう。

 これまでのAI研究の成果である「エキスパートシステム」は、コンビニの発注業務をアルバイトができるようにした。小売店にとって「発注」は重要な業務で、従来は熟練の売り場社員しかできなかった。少なくとも「発注」に関しては、熟練の社員は要らなくなり、非正規雇用のアルバイトに置き換わるのは当然の成り行き、という次第。

 こんな感じで、今後についても非常にロジカルに予想する。専門性がある仕事が、AIの開発効率のよい市場の大きいものから順に置き換わる。それは運輸と金融から始まり、ホワイトカラーの仕事の多くに急速に広がる。この予想が当たるか当たらないか、それは分からないけれど、一部はすでに現実になっている。例えば、メガバンク3行は、今後10年間で数万人規模のリストラ計画を発表している。

 最後に。「AIが人間のような知能を獲得することは起きない」を論拠にして「AI失業は怖くない」という議論があるが、その落とし穴にはまらないように、と著者は警告する。その説明が胸に落ちた。「AI失業は怖くない」と思っている人は読むといいと思う。

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2019年1月 5日 (土)

0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書

著  者:落合陽一
出版社:小学館
出版日:2018年11月29日 電子書籍版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 昨年後半から「人生100年時代」が気になっていて、もはや私の「主要なテーマ」と言ってもいいぐらいになっている。本書は友人のFacebookの投稿で知った。著者の落合陽一さんのことは気になっていたこともあって、手に取ってみた。

 人生は学校を卒業してからの方が長い。だから、社会にいながら学び続け、新しい知識を取り込めるか、新しい価値を提供し続けられるか、が鍵になる。本書には、そのためにどうすれば社会に出た後も学ぶ意欲を持ち続けられるのか?について、著者の提案が書いてある。

 全部で3章。第1章は「幼児教育から生涯教育まで「なぜ学ばなければならないのか」」の13問のQ&A。第2章は「落合陽一はこう作られた~」。幼少期から現在まで、どんな教育を受けどんな選択をしてきたか。第3章は「学び方の実践例」。「言語」「物理」「数学」「アート」の4つの要素について紹介。

 第1章には、いいことがいくつか書いてあった。例えば「なぜ勉強しなくてはいけないの?」と聞かれたら?の項。著者の答えは「新しいことを考えたり、新しいことを身につける方法を学ぶため」。「学校の勉強なんて社会に出たらまるで役に立たない」という考えは、教育の「コンテンツ」と「トレーニング」の2つ要素のうち、後者のもつ意味を正しく認識できていない、と。

 もう一つ。「根拠ある反対意見はサンプリングになる」の項。「正解か不正解かだけで判断する教育を受けていると、自分の意見に対する質問や別の意見は、すべて自分の意見を否定するものであり、その人への批判であると受け取ってしまいます」。これは今の世の中に広く見られることで、自戒を含めて本当に「なんとかずべき」ことだと思う。

 第3章には、共感することが書いてあった。「ロジカルシンキングとアカデミック・ライティング」の項。アカデミック・ライティングとは、簡単に言うと「相手が理解できる意味の明確な単語を使い、論理的に正しく意味が伝わる文章を書く」ということ。そのためには論理的な思考(ロジカルシンキング)と、それを言語化する能力が必要。上の「反対意見~」にも関連するけれど、ロジックが通じないと議論ができない。

 ここ数年は「新年最初の読書」の本は、意識して選んでいる。今年は、「人生100年時代」の自分の方向を見い出したい。

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