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2018年11月 4日 (日)

スッキリ中国論 スジの日本、量の中国

著  者:田中信彦
出版社:日経BP社
出版日:2018年10月22日 第1版第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本いただきました。感謝。

 本書は40年近く中国と関わってきた著者が感じた、中国人がものを判断し、反応する時の「クセ」「反応の相場」を紹介したもの。サブタイトルは「スジの日本、量の中国」。本書はたくさんの「クセ」を紹介しているけれど、たったこれだけの最小限のフレーズに、「中国」と「日本」がよく表れている。そしてこのことがよくわかる例え話が冒頭にある。

 通路で4~5人が立ち止まって談笑している。場所は取っているけれど、横を通ることはできる。「邪魔だな。通路は立ち話をする場所じゃないんだよ」と感じる日本人。「横を通れるのだから無問題」と考える中国人。

 日本人は、自分に不利益がなくても「すべきでない」ことをする人に苛立つ。つまり「べき論」で判断する。本書の「スジ」とは、「スジを通せ」という時の「スジ」だ。中国人は、現実的に不都合があるのか、あるとしたらどの程度の不都合か?を考える。つまり「量」によって判断が変わる。

 例え話は他にもある。小銭がなくて自販機のジュース代を同僚に借りた。日本人なら返すだろう。借りたものは返すのが「スジ」だからだ。中国人は返さない(と思われる)。ジュース代ぐらいは、現実的な不都合のある金額(量)じゃないからだ。

 エピソードをひとつ。中国で列に並んでいて、自分の前に割り込まれたので注意すると、その人物は自分の後ろに割り込み直した。その人物は「列に割り込んじゃいけない」という「べき論」で咎められたとは考えず、「一人分(という量の)順番が遅くなると、この人は困るんだな」と考えた、というわけだ。

 念のため言っておくけれど、中国人にもいろいろな考えの人がいる。また、本書は中国人の思考について「え~信じられない」と驚くのはともかく、「だからあいつらダメなんだな」と蔑むための本ではない。違いを知って、認めて、対応しよう、という本だ。

 私は、目下のところ中国人との密な付き合いはないけれど、本書を本当に興味深く読んだ。それは本書が、中国人のことを書きながら日本人のことも書いているからだ。対比によって、日本人がものを判断し、反応する時の「クセ」も良く分かる。その「クセ」が、世界で唯一ではないことはもちろん、最上でもないことも分かる。

 「べき論」で考える判断は、現実との距離感を誤ると袋小路に入って行き詰る。有名人の言行から一般人のつぶやきに対するものまで、ネットにあふれるバッシングは、ほとんどが「○○なんだから□□するべきだ(べきじゃなかった)」という「べき論」を根拠にしている。これは「スジの日本」が行き着く息苦しい社会の予兆だと思う。

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