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2018年10月11日 (木)

理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ

著  者:吉川浩満
出版社:朝日出版社
出版日:2014年10月31日 初版第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 新聞の記事で見かけて、これは面白そうだと思って手に取ってみた。

 本書はダーウィンの「進化論」について論じたもの。「進化論」と言えば「適者生存」つまり「適した者が生き残る」。生物の進化の歴史は、生き残った者のサクセスストーリーだ。ところが本書は、まず最初に「絶滅」という観点から生物の進化を捉えてみる。その観点を面白いと思った。

 40億年ともいわれる生命の歴史において、これまで地球上に出現した生物種の99.9%が絶滅したと考えられる。「適者生存」を裏返して考えると、絶滅した種は「適していなかった」ことになる。しかし、絶滅現象に関する考察をすると、突然の環境変化など「運が悪い」としか言いようのない事情が浮かび上がる。タイトルにある「理不尽」の含意はそういうことだ。

 この導入部の後、著者は「日常の世界で出会う進化論」、例えば「ダメなものは淘汰されるのさ」といった言説を「誤解」だと説明する中で、「適者生存」についての考察に入る。誰が生き延びるのか?それはもっとも適応した者だ。もっとも適応した者とは?それは生き延びた者だ。これではトートロジー(ある事柄を述べるのに同義語を繰り返す技法)ではないか?という論点をまず論じる。

 中盤からは、進化生物学会での「適応主義」を巡る、ドーキンスとグールドの論争に進む。「適応主義」というのは、すべての生物の特質は自然淘汰の結果として進化的な最適値に調整されている(適応している)とするもの。これを現在的な有用性を重視して適用すると「人間の足が2本あるのは半ズボンに適応したからだ」という珍説につながる。

 正直に言って、この論争のあたりから、論理の森に迷い込んだようになって、読み進めるのに難渋した。でも、数多くの気付きがあった。「進化論」は面白い。

 最後に、心に残った言葉。「99.9%絶滅」に絡んで、「みんな何処へ行った?」((c)中島みゆき)

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