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2018年7月

2018年7月28日 (土)

この星の忘れられない本屋の話

著  者:ヘンリー・ヒッチングズ 訳:浅尾敦則
出版社:ポプラ社
出版日:2017年12月7日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、13カ国16人の作家が「本屋」にまつわる体験を綴ったアンソロジー・エッセイ集。編者のヘンリー・ヒッチングズは、英国のノンフィクション作家・批評家。その著者の呼びかけに応じて、世界中の作家が、人生のある時点で個人的な関わりを持った本屋のことを、思い入れたっぷりに綴ったエッセイを寄稿した。

 例えば、ファン・ガブリエル・バスケスというコロンビアの小説家は、大学生だったころに通った2つの書店について書いている。そのころには小説家になる決意を固めていて、まだ書き始めてもいない自分の本が、その棚に並ぶことに思いを馳せていた、という。アルファベット順ならば、バルガス=リョサ(ラテンアメリカ文学の代表的な作家)の隣に並ぶ、そんなことを考えていたそうだ。

 このバスケスのエッセイに書いてあったことが、本書全体の傾向を言い表しているので引用する。「作家にとって本屋というのは自分を変えてくれた場所である。だから、作家にお気に入りの本屋を訊ねると、たいていの人は、現在よく行く店ではなくて、ノスタルジアをかきたててくれる店を選ぶと思う。

 この言葉どおり、本書でもほとんどの作家が、かつて通っていた本屋についての思い出を書いている。本書に共感を感じるのは、描かれているのがまだ作家になる前のエピソードだからだろう。つまりまだ「何者でもない」ころのことで、それは私自身の10代~20代の頃の本屋の思い出と重なるからだ。すべて外国の話だけれど、国や政治体制にはあまり関係ないらしい。

 そして作家たちが思い出を語る本屋の多くは今はもうない。オンライン販売や、その他のエンターテインメントに、経営を圧迫されて、本屋は今とても弱い立場に置かれている。そんな本屋への応援の意味もあるし、本書を読めば、本屋には何かを生み出す力があることがよくわかる。でも、状況はとても厳しい。

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2018年7月25日 (水)

烏百花 蛍の章

著  者:阿部智里
出版社:文藝春秋
出版日:2017年7月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 八咫烏シリーズの外伝。このシリーズは、八咫烏が、私たちと同じ人間の形になって暮らしている、という世界で、平安京にも似たその宮廷が舞台。本書には6編の短編を収録。6編を簡単に紹介する。

 「しのぶひと」は、若宮妃付きの真赭の薄と、その弟の明留、若宮の護衛の澄尾の物語。真赭の薄の縁談に絡んで、それぞれの想いが表出する。「すみのさくら」は、若宮妃の浜木綿の物語。身分をはく奪され「墨丸」と呼ばれていた子どもの頃の回想。「まつばちりて」は、下層の遊郭で生まれながら、その才によって宮廷務めに取り立てられた少女、松韻の悲劇的な物語。

 「ふゆきにおもう」は、貴族の娘の冬木と、彼女に仕えていた梓の物語。二人の行く道は一旦分かれ再び交わる。若宮の側近の雪哉の出生について語られる。「ゆきやのせみ」若宮とその側近の雪哉の物語。若宮の気ままな行動に振り回される雪哉。「わらうひと」冒頭の「しのぶひと」と対をなす真赭の薄と澄尾の物語。盲目の少女、結についても語られる。

 6巻ある本編が「后選びの宮廷物語」「皇位継承を巡る陰謀」「外界からの魔物の侵入」「全寮制の男子の成長物語」「異界に迷い込んだ女子高生」「種族間の対決」と、その振り幅の大きさは他に類を見ない。そのためもあって「主要な登場人物」も多いのだけれど、それぞれにきちんと性格付けがされている。本書は、その一人一人の背景にある物語を描く。

 また、カバーに「語られなかったあの人たちの物語」と書いてある。細かいことを言うようだけれど「語られなかったあの人の」「物語」と、「語られなかった」「あの人の物語」と両義になっている。松韻と冬木と梓は、本編ではほとんど、あるいは全く語られていない。その他は、本編で多く語られているが、本書で人物造形が補強され、中にはとても魅力的になった人もいる。

 外伝なので、本編を読んでから読んだ方がいい。また、本編を読み通した人は、本書も読んだ方がいいと思う。というか、読まずに済ませることなんてできないだろう。

 「蛍の章」ということは、これからまだ外伝が出るということだろう。期待が膨らむ。

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「烏百花 蛍の章」 固定URL | 1.ファンタジー, 1E.阿部智里(八咫烏) | コメント (0) | トラックバック (1)

2018年7月22日 (日)

この庭に 黒いミンクの話

著  者:梨木香歩
出版社:理論社
出版日:2006年12月 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 梨木香歩さんの挿絵の多い中編、または文章の多い絵本。

 表紙は雪深い庭の風景、本扉の裏の見開きには針葉樹の山の麓の街、その裏のページはカーテンを閉めた部屋が描かれている。部屋の時計は12時10分過ぎ。カーテンのすき間から光が漏れているから昼間だろう。そう、お昼なのにカーテンは閉められている。

 文字による描写の前に、絵によって物語が始まっている。閉ざされた空間、あまり健康とは言えない主人公。そんな予感。

 予感は的中で、主人公は寝起きで、カーテンのすき間から漏れる光が「心に刺さる」という。そしてこの家に来ての数日、ほとんど外に出ていない。寝室ではなくソファベッドで寝起きしている。日本酒、ウォッカ、コニャック、ポートワイン...部屋には酒瓶が転がっている。

 そんな調子だからか、缶詰のサーディンが泳ぎだしたりして、夢とも現とも分からない(いや、どう考えても夢か)物語へと続く。そこに少女がやってきて、一緒に逃げたミンクを探すことに。他人との関りが、主人公を現実につなぎ留めるかと思ったら...。

 静かにイマジネーションが喚起されるような物語。自由奔放なイメージが展開する中で、現在と過去も行き来しているようだ。実は本書は著者の名作「からくりからくさ」に連なるお話。主人公の名前はミケル。私は読んでいないのだけれど文庫版(私が読んだのは単行本)の「からくりからくさ」に、「ミケルの庭」という物語が収録されている。本書と併せて読みたい。

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「この庭に 黒いミンクの話」 固定URL | 2.小説, 25.梨木香歩 | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月18日 (水)

最後はなぜかうまくいくイタリア人

著  者:宮嶋勲
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2018年1月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者はイタリアと日本で「ワインと食」について執筆するジャーナリスト。イタリアではワインガイドの試飲スタッフ、日本ではワインセミナーの講師なども務めている。イタリアと関わるようになって35年。そんな著者が「イタリア人ってこんな人たちなんだよ」を語る。イタリアとイタリア人、そして日本への愛を感じるエッセイ集。

 「はじめに」で紹介するエピソードに本書のエッセンスが詰まっている。30年ほど前、著者はCMの撮影で日伊混合の撮影隊の通訳として参加。現地のイタリアで準備するはずの機材が届いていない。急いで手配するイタリア側、憤って何度も「どうなってるんだ」と催促する日本側。

 そこでイタリアのプロデューサーが著者に話した言葉が、多くを教えてくれる。「機材の手配も済んだし、あと2時間で到着する。時間は遅れるが、この撮影は必ずやり終える(中略)イライラしないで、機材が着いたときにいい絵を撮れるように、リラックスするように日本側に言ってくれ

 著者によるとイタリア人は、「時間にルーズ」で「段取りが苦手」で「嫌なことは後回し」で「規則を破っ」て「コネに頼る」。日本的な「美徳」とは正反対なことばかり、これじゃぁダメダメ人間だ。冒頭の撮影隊のようにイライラさせられることは必至だろう。特にビジネスで付き合うとなればなおさらだ。

 とはいえ、本書はイタリア人をこき下ろす本ではない。多少の問題はあるにしても、イタリアはEUの中核を担う経済大国。ファッション、車、食品などの分野で世界をリードする製品も生み出す。決して単なる「怠け者大国」ではない。日本的に見ればダメダメでも、それを補う何かがあるはず。

 本書を読めばその「何か」が少し分かる。例えば「不測の事態への対応力」はその一つ。上に書いたような人々の国だから「予定通りに行かない」ことの方が普通。それへの対処を繰り返しているうちに「なんとかする力」が身につくらしい。冒頭のプロデューサーが「この撮影は必ずやり終える」と言ったのは、その場しのぎ強がりでもなく、そういう自信があったからなのだ。

 日本的な美徳は素晴らしいし、その価値を誇ってもいいのだけれど、それは「最上」でも、ましてや「唯一」でもない。そんなことが分かった。

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「最後はなぜかうまくいくイタリア人」 固定URL | 4.エッセイ | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月14日 (土)

悪だくみ

著  者:森功
出版社:文藝春秋
出版日:2017年12月15日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 表紙は、安倍昭恵さんのFacebookに「男たちの悪巧み」という言葉とともに投稿された写真。安倍総理と加計孝太郎さんの二人以外は暗く不鮮明に加工されている。サブタイトルは「「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞」

 著者は(今となっては数多くの疑惑の一つになってしまったけれど)、下村博文さんが文科大臣時代の2年間に、下村氏の後援会組織主催のパーティ券200万円分を、加計学園が購入していながら、政治資金報告書に記載していない事実を明らかにしたフリーライター。本書で、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞。

 加計学園の問題については、面会した当事者の一方による文書が明らかになるも、安倍総理周辺のもう一方が「記録も記憶もない」と否定することが繰り返されている。中には「ふと思ったことを言った」、つまり「嘘ついてました」なんて人までいる。だから大体のところは「事実らしいこと」は明らかになっている。

 その既に明らかになっている「事実らしいこと」を再確認するだけなら、あまり意味がないが、本書にはまだ広くは知られていない(少なくとも私は知らなかった)事実がたくさん記されている。これは、もっと共有すべき情報ではないかと思った。

 例えば。加計学園問題は当初「第二の森友学園」と呼ばれていた。しかし安倍昭恵さんは、森友学園の小学校の名誉校長より前に、加計学園のこども園の名誉園長になっていた。昭恵さんは「見学に行ってみてはどうですか?」と、籠池夫妻にそのこども園を紹介までしている。森友学園は加計学園を倣った「第二の加計学園」だったのだ。

 例えば。2004年に千葉県銚子市に加計学園の千葉科学大学が開校。この大学の開校に当たっては、内閣官房副長官だった安倍さんが、地元との揉め事の仲裁までしたと言われる。大学側は「将来の総理がバックアップする学校です」とPR。そして加計学園は、この大学新設の時点ですでに「獣医水産学部」を構想していた。

 例えば。加計学園の小学校と米国の小学校の姉妹校提携に絡んで、安倍昭恵さんと下村博文さんの奥さんの今日子さんが、加計孝太郎さんとともに何度も訪米している。...。まだまだある。

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「悪だくみ」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月11日 (水)

絶滅の人類史

著  者:更科功
出版社:NHK出版
出版日:2018年1月10日 第1刷 5月15日 第6刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 サヘラントロプス・チャデンシス、アルディピテクス・ラミダス、アウストラロピテクス・アファレンシス、ホモ・エレクトゥス。これらはすべて「人類」の「種名」だ。私たちホモ・サピエンス以外に、「人類」は少なくとも25種は存在していたけれど、すべて絶滅してしまった。人類の歴史は絶滅の歴史。本書のタイトルはそのことを表している。

 ここで言う「人類」は、私たちの祖先が、現在のチンパンジーに至る系統と分岐してから私たちに至るまでの系統に属するすべての種のこと。本書はその分岐があった約700万年前から、私たち以外の最後の「人類」である、ネアンデルタール人が絶滅する約4万年前までの、「人類」の歴史を概観する。大きなテーマはサブタイトルの「なぜ「私たち」が生き延びたのか?」

 「人類」の特徴は直立二足歩行なのだけれど、これは生存に有利な特徴とは言えず、現に進化の過程でこの特徴を獲得した種はない。視点が高くなって遠くまで見えるという利点はあるが、敵に見つかりやすいという欠点もある。四足歩行より走るのが遅いという欠点を合わせれば、肉食獣の餌食になる可能性が高い。

 それなのに「なぜ「私たち」が生き延びたのか?」。著者は、最新の研究成果を活用しながら、その理由を推論する。それはとても緻密で分かりやすい。アウストラロピテクスやホモ・エレクトゥスなど、断片的に「何となく知っていた」化石人類を、時間的に順序立てて、地理的な観点からもコンパクトに説明してもらえたのがとても良かった。

 最後に。ホモ・サピエンスは、約7000年の間、ネアンデルタール人と共存し交雑してもいた(現在のアフリカ人以外の人のDNAの約2%は、ネアンデルタール人由来だそうだ!)。ネアンデルタール人の方が、脳の容積が大きく体も頑丈だった。それなのに絶滅した原因の一つが、ホモ・サピエンスの存在であるのはまず確実。「ネアンデルタール人の悲哀」を感じた。

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2018年7月 8日 (日)

みかづき

著  者:森絵都
出版社:集英社
出版日:2016年9月10日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 2017年の本屋大賞第2位の作品。

 「いつか再び狂気の時代が訪れたとき、知の力をもってして、子どもたちが自分を守れるように。真実の道へ進めるように

 昭和の高度経済成長期に、こんな理想を掲げて学習塾を立ち上げた創始者夫婦と、その一族を三代にわたって描いた大河小説。時間軸では昭和36年から平成20年までの約50年にもなる。472ページ。家族のあり方、教育の理想を描きこんだ圧倒的ドラマ。

 物語の最初の主人公は、大島吾郎。22歳。学校の用務員。用務員室で子どもたちの勉強を見てあげていた。吾郎は教え方がうまく、その評判は子どもたちから保護者、とくに母親に広まっていく。そんな母親の一人、赤坂千明に誘われ(半ばはめられ)て学習塾を立ち上げる。

 吾郎は夫と別れて独りだった千明と結婚、娘の蕗子と義母の頼子と四人で暮らし、千明と学習塾を共同経営する。当時は塾は「受験競争を煽る受験屋だ」などと言われ、風当たりが強かったが「勉強を教える、学校とは別の場所」のニーズは確実にあり、塾生は増えて経営は軌道に乗る。

 物語はこんな風に始まるのだけれど、これから数々のドラマが展開する。ほどよく鈍感でおおらかな吾郎と、頑ななまでに意思の強い千明。支えあうこともあれば衝突することもある。二人は蕗子の他に、蘭と菜々美の2人の娘をもうける。千明の血を受け継いだ彼女たちの意思も、衝突とドラマを生む。さらに一見すると吾郎の血を受け継いだ孫の一郎も..。

 三代にわたる家族ドラマの背景には、50年間の日本の教育のあり方の移り変わりがある。民主主義と平等、加熱した競争、ゆとり教育、脱ゆとり。そのそれぞれの波に翻弄されながら、吾郎と千明が始めた学習塾は、曲折を繰り返しながらも、息の長い活動を続ける。二人の意思は次の世代、さらに次の世代に受け継がれる。

 ☆5つ。素晴らしい物語だった。特に後半は心が震える場面が何度も。本書には要所で「月」が話題になる。タイトルの「みかづき」にも意味が込められている。夜空を見上げることが増えそうだ。

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2018年7月 4日 (水)

神々と戦士たち1 青銅の短剣

著  者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書房
出版日:2015年6月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 私はけっこう海外のファンタジーが好きで、トールキンCSルイスサトクリフDWジョーンズ...などなど、以前はよく読んでいたのだけれど、ここ3年ほどは、年に1~2冊ぐらいしか読んでいなかった。それで、できれば、新しい作家さんの新しいシリーズを、と思って、図書館で探していて本書を見つけた。

 著者のミシェル・ペイヴァーさんは、石器時代のヨーロッパを舞台にした「クロニクル 千古の闇」シリーズで高い評価を受け、2010年に最終巻の「決戦の時」でガーディアン児童文学賞を受賞。本書は、新たに始まった全5巻シリーズの1巻目。

 物語の時代は古代ギリシア。ただし、よく映画や物語の舞台になる、アテネやスパルタといった都市国家が興る2000年ぐらい前の「青銅器時代」。主人公はヒュラスという名の12歳の少年。もっと幼いころに妹と一緒に山で拾われた。以来「よそ者」として村の外でヤギの世話をして暮らしていた。

 ある日、青銅の鎧に身を固め、黒いマントをまとった戦士の一団がヒュラスたちを襲う。ヒュラスは運よく逃げ出したが、妹とはぐれてしまう。どうやら「よそ者」を全員殺そうとしているらしいが、なぜ自分たちが命を狙われるのかはさっぱり分からない。物語はこうして始まったヒュラスの逃避行を描く。

 他の登場人物を2人。族長の息子であるテラモンはヒュラスの親友。身分違いのため周囲には秘密だ。ケフティウという島の大巫女の娘であるピラは、本人に意思に反して結婚のためにここに連れてこられた。同じ年頃の子どもとして相通じる感性と、立場の違いから分かりあえない反発が、うまく物語の中で表現されている。

 その他、まだ名付けられていない「地を揺るがす者」や「野の生き物の母」といった神々への信仰や、「女神の使い」とされているイルカの描写など、本書には興味深いことが描き込まれている。全5巻。ということで、今回はひと山を越えただけ。物語は始まったばかり。これからが楽しみだ。

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