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2018年3月

2018年3月29日 (木)

世界の中で自分の役割を見つけること

著  者:小松美羽
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2018年3月7日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は「新進気鋭の現代アーティスト」と帯で紹介されている。現在33歳。作品の出雲大社への奉納、大英博物館での永久展示、ニューヨークのワールドトレードセンターでの常設展示と、ここ数年は大きな話題が続く。一般的な知名度がどのくらいなのかは分からないけれど、私のような素人も含めて、現代アートに興味がある人なら、知らない人はまずいないと思う。

 本書は、アーティストとして高みを駆け上っている最中の小松美羽さんが、自分の半生と自分に与えられた「役割」について記したもの。「絵筆をペンに持ち替えて」と表現したいところだけれど、美羽さんの制作風景をご存じの方は「絵筆」ではなく、手や絵の具のチューブから直接キャンバスに描く姿の方が思い浮かぶことだろう。

 小松美羽さんの「役割」について。美羽さんは作品の殆どすべてに「神獣」や「守護獣」を描く。それは見えない世界の生き物。美羽さんは子どもの頃からその世界の生き物を身近に感じてきた。道に迷ったら必ず「山犬さま」が現れて、見慣れた道まで連れて行ってくれたそうだ。美羽さんの「役割」は、その「「神獣」や「守護獣」らの「依り代」としての作品を作ること。

 「見えない世界」とか「神獣」とか、すんなりとは受け入れられない人もいるはず。むしろその方が多いかもしれない。でも、小松美羽さんの作品を眼前にしたことがある人ならどうだろう?作品を制作する場面を見た人は?(美羽さんは度々ライブペイントを行っている) きっと私のように、「頭」が拒んでも「心」が早々に受け入れてしまうのではないだろうか?

 「絵筆をペンに持ち替えて」、それがうまく行くとは限らない。上に書いたように、その作品を見たことがあるかないかで、受け取りが違うのなら、アーティストは作品こそが一番のメッセージ、という証左でもある。でもこの飾りのない媚もない真っすぐな文章には、作品を描く時に向ける、澄み切った眼差しと同じものを感じた。心に響いた。

 最後に「はじめに」から引用。

 この本は、私の「これまで」を振り返るための本ではない。あなたの「これから」を、私の「これまで」を通じて見つけていただくための本であり、あなたと見つめ合えたらと、祈り願って書いた本だ。

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2018年3月25日 (日)

美術手帖2018年3月号

出版社:美術出版社
出版日:2018年2月17日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は月刊の美術の専門雑誌、その2018年3月号。私は美術鑑賞は好きで、美術館の展覧会にも月に1回ぐらいは行くのだけれど、本書を手に取ったのは「美術」への興味のためではない。この号の特集が「言葉の力。」だと知って、書店で取り寄せてもらった。「言葉」に興味があった。

 結論から言うと、この特集は私が思っていたものと違った。私は、人が会話の中で発する「言葉」が、会話の相手や自分自身に及ぼす影響、という意味での「言葉の力」のことを思っていた。もちろんヘイトスピーチなどでのネガティブな力も含めて。もしくは普段読んでいる本のような「物語としての言葉の力」のことも少し考えていた。

 特集の扉では、「言葉の力」から想起するものとして、「孤独を和らげてくれた誰かの一言」とか「感銘を受けた一冊の本」とかも例示している。しかし、これに続く本論での「言葉」とは、詩や短歌、演劇や音楽、ラップの中で使われる「言葉」だった。

 本書では、それぞれを実践する方々が、自らが操る言葉について時に熱く、時に冷静に語っておられる。私としては、小説家の川上未映子さんと、その詩を演劇として立ち上げた、劇団主宰の藤田貴大さんの対談がとても興味深かった。

 「思っていたものとは違う」と、いくらも読み進まないうちに気が付いたのだけれど、構わず読んでいるとあることに気付いた。「言葉」には「意味」と「音」の両方の属性がある、ということ。これまでの私の「言葉」観は「意味」に偏ったものだったかもしれない。

 もっと言えば「音」には「韻律」や「リズム」もあるし、「意味」と「音」以外に、何かの上に書かれた「言葉」には「形」もある。「形」とはつまり「デザイン」。そんなことを考えていると、少し視野が広くなった気分がした。

 そして最後に思い至ったのが、こんなことを全部この本は「言葉」で私に伝えたことだ。この特集は「言葉の力」を、私に理解させるのではなく、感じさせることに成功した、と言える。

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2018年3月21日 (水)

キラキラ共和国

著  者:小川糸
出版社:幻冬舎
出版日:2017年10月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。昨年の本屋大賞で第4位となった「ツバキ文具店」の続編。「ツバキ文具店」は、NHKで多部未華子さん主演でドラマ化された(公式サイト)。

 主人公は前作と同じで雨宮鳩子(ポッポちゃん)。いや本書の冒頭で守景鳩子になった。前作で知り合った、近くでカフェを営む守景蜜朗(ミツロー)と結婚したのだ。前作の最後でミツローさんがポッポちゃんをお寺の境内でおんぶしたシーンがある。その時から付き合い始めてそれから1年足らず、だそうだ。

 ポッポちゃんは「ツバキ文具店」という文具店を営む傍らで、手紙の代書を請け負っている。こんなご時世でも手紙の代書を依頼に来るお客は一定数居て、ポッポちゃんは、依頼人の事情を聴いて、文面だけでなく、紙や封筒、筆記具、インクの色、字体、切手まで選んで、手紙を書いて投函する。

 前作は、この代書の依頼を主に、ポッポちゃん自身の身辺を従に描いた。本書では、主従が代わって、ポッポちゃんの物語が主になった。象徴的なのは、本書でポッポちゃんが最初に書く手紙が、自身の結婚のお知らせだったことだ。

 なんと言っても新婚だから...。行間から幸せが立ち上ってきて、甘い香りがしてきそうな物語。「私は恥ずかしくて「モリカゲさん」と言ってしまう。ミツローさんは、私のことを「ポッポさん」と呼んだり「ポッポちゃん」と呼んだり、たまに..」なんてあって、「どーでもええわ、好きなように呼びなさい」と思ってしまう私は、少し羨ましいのだろうきっと。

 タイトルだって「キラキラ共和国」で、なんだか浮足立った感じがする。ただ、これには意味付けがあって、隣家の婦人が教えてくれたおまじないに関係している。心に暗闇ができた時に「キラキラ、キラキラ」と唱える。今はちょっと「アホらしい」と思うけれど、いつか使う時がくるかもしれない。

 こんなおまじないが必要だったことで分かるが、ポッポちゃんもミツローさんも、結構深刻な事情も抱えている。それを一つ一つ乗り越えての結婚であり、その後の本書で描かれる約1年も、そうしたことの連続だった。ポッポちゃんに幸あれ。

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「キラキラ共和国」 固定URL | 2.小説 | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年3月18日 (日)

RDG レッドデータガール 学園の一番長い日

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2011年10月31日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「レッドデータガール」シリーズの第5巻。第4巻で準備が進んだ学園祭当日の2日間を描く。 
 主人公の鈴原泉水子が在籍する東京郊外の鳳城学園の学園祭。今年のテーマは「戦国学園祭」で、「風雲わたあめ」とか「下剋上焼きそば」とかの模擬店は、まぁ「ありがち」としても、全校生徒が戦国時代の装束で行うフィールドゲーム「戦国合戦」は、手の込んだ大掛かりな催しだ。

 この学園には、陰陽師の集団と忍者の組織が活動している。これらの覇権争いが、この学園祭の裏では進行していた。泉水子自身も「姫神憑き」という、その身に神が降りる体質で、彼女を守るために、山伏たちもいる。陰陽師のリーダーは泉水子の取り込みに動く。

 物語のクライマックスは「戦国合戦」。六百数十名いる全校生徒が参加するので、ただでさえ混乱が予想される。さらに陰陽師やら忍者やらがあれこれ画策するし、泉水子の能力がちょっと覚醒するしで、大混乱に陥る。その大混乱のさなかに泉水子は...。の周辺ではもう少し静かだけれど深刻なことが起きていた。

 これまで結末に向かって、比較的真っすぐに進んできたように思うけれど、今回はちょっとその道がねじれて、この先どうなるのか分からなくなった。残すはあと一巻。どうなるのだろう?
 どうなるのだろう?と言えば、泉水子と山伏の相良深行の関係も、ますます甘酸っぱさを増してきた。

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2018年3月15日 (木)

1時間で歴史とビジネス戦略から学ぶ いい失敗 悪い失敗

著  者:鈴木博毅
出版社かんき出版
出版日:2018年1月22日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書はタイトルを見て分かるとおり「失敗」をテーマとしたもの。基本的には「失敗」はネガティブな出来事で、できれば避けたいものだ。そこに「いい失敗」という、本来は「失敗」とは相容れない、ポジティブな言葉をキーワードとして設定することで、考察の新しい視点を提供している。

 その「いい失敗」を設定するにあたって、著者は一つの考え方を導入する。それは「ミス≠失敗」という考え方。「ミス」を犯したとしても、それが悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。「ミス」と「失敗」の間には、意味的にも時間的にもギャップがある。

 つまり「ミス」も、悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。それどころか、後の扱い次第で成長や成功につながることもある。その場合は「失敗」であっても「いい失敗」だ。「あれ?悲劇的な結果につながらなくても「失敗」なの?」と、定義に混乱はあるけれど、言いたいことは分かる。要は「後の扱い次第」ということだ。

 本書は全編を使って、この「後の扱い」に注目してたくさんの例を挙げて「いい失敗」と「悪い失敗」を区分けする。例えば「いい失敗:成長に転換できる/悪い失敗:甚大な被害になる」「いい失敗:客観的に見ている/悪い失敗:感情にとらわれてしまう」「いい失敗:失敗をプロセスと考える/悪い失敗:失敗を終点と考える」...

 私たちは「早く忘れてしまいたい」と思うあまり、失敗を見つめることをしない。でも、何かに挑戦すれば失敗は避けられない。失敗を避けて何にも挑戦しなければ、そのこと自体が失敗だ。このように「失敗」が不可避なものなら、そのことを見つめてよく知ろう。分析することで成功に転じる方法が分かる。この本はそう言っている。私にも異論はない。

 最後に。「失敗の分析」と言えば、先に「失敗の本質」という名著がある。本書での言及は少ないけれど、著者はその解説本である「「超」入門失敗の本質」を記している。これがとても分かりやすい本で、著者はここからも本書のヒントを得たに違いない。 

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2018年3月11日 (日)

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

著  者:新井紀子
出版社:東洋経済新報社
出版日:2018年2月15日 第1刷 3月5日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は、人工知能(AI)プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクタを務める数学者だ。本書は、著者がプロジェクトを進める中で得た2つの知見が書かれている。一つは、今の研究をどれだけ進めても、AIは人間の知能を越えられないこと。もう一つは、日本の中高生の多くは、教科書が読めていないこと。

 「AIは人間の知能を越えられない」について。まず、AIは「意味が理解できない」。例えば、AIの一つの成果とも言えるAppleのSiriは「おいしいイタリア料理のお店」と「まずいイタリア料理のお店」の違いがわからない。「イタリア料理」と「イタリア料理以外」も区別できない。

 試しに「「この近くの~」と訊いてみてください」と著者が言うので、聞いてみたら、「おいしい」も「まずい」も「以外」も、同じ店が紹介された。これは現在のSiriの問題ではなく、今のAI技術が抱える問題だそうだ。今のAI技術が採用している、統計と確率の手法を用いた自然言語処理技術では「意味が理解できるようにはならない」。当然、人間の知能を越えることもできない。

 もう一つの「日本の中高生の多くは、教科書が読めていない」について。これは、著者らが行った全国2万5000人の「基礎読解力調査」の結果から分かったことだ。教科書や新聞の小中学生向けの記事を使って、ある文章に書いてあることの意味を問う問題で、二択~四択の選択問題だ。

 例えば、次の2つの文の内容が同じことを表すかどうか?という問題
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた

 中学生の正答率は57%。これが意味することが分かるだろうか?Yes/Noの2択の問題だから「コインを投げても」50%は正解する。受験した生徒たちは、大半が意味が分かっていなかったに等しい。

 この2つのことがどうつながるのか?実はAIと中学生には共通点がある、ということにつながる。「意味を理解する」という、AIができないことを、大半の中学生も苦手としている。よく「AIに仕事を取って代わられるとしても」という話題で、「人間はAIができないことをやればいい」いう答えが定番になっているが、この答えの実効性がとても怪しくなる。大問題だ。

 本書に書いてあることは、知って楽しい気持ちにはならないけれど、たくさんの人が知っておいた方がいいと思う。

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2018年3月 7日 (水)

百貨の魔法

著  者:村山早紀
出版社:ポプラ社
出版日:2017年10月5日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。著者は昨年は「桜風堂ものがたり」でノミネートされ、第5位になった。出版社は異なるけれど、本書はその姉妹作にあたる。

 舞台は「風早の街」にある「星野百貨店」。50年前に商店街の核となるように建設された老舗百貨店で、街のシンボルのような店。主人公は、ここに勤める従業員やテナントの店員らが、章ごとに入れ代わって務める。エレベーターガール、靴屋の店主、贈答品フロアのマネージャー、郷土資料室の職員、そしてドアマン。

 全体を通して語られるものが2つある。一つは星野百貨店に新しく設けた「コンシェルジュ」に就いた芹沢結子のこと。もう一つは、願いを叶えてくれるという魔法の白い子猫のこと。そして、時にこの2つのことは溶け合って語られる。結子は魔法の猫の化身なのではないか?と。

 著者が「あとがき」で「卵をあたためるように、じっくりと考えてゆきました」と書いているけれど、その通りに丁寧に紡ぎだされた感じのする物語だった。百貨店で働く一人ひとり、訪れるお客さんの一人ひとりに、物語がある。その物語に、この百貨店に流れた50年という時間が、うまく使われている。

 今は、百貨店には厳しい時代だ。スーパーやショッピングモール、ネット通販など、他の業態との競争は分が悪い。そんなご時世に星野百貨店は、ホテルとコンサートホールと映画館を併設して、レストランではピアノの生演奏があり、エレベーターガールまでいる。

 やっていけそうにない。いずれ大きな船が沈むように閉店してしまうだろう。でも、私の街にこんな百貨店があって、そこにこんな人々がいたら素敵だな、と思う。そして...やっぱり、こんな人々と「魔法の猫」がいたら、この厳しい時代も乗り越えられそうだ。

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2018年3月 3日 (土)

日本を再生する66の提言

編  者:日本青年会議所
出版社:幻冬舎
出版日:2017年12月5日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 本書の編者は「公益社団法人 日本青年会議所」。通称「日本JC」。全国に695ある青年会議所の総合調整機関。「修練」「奉仕」「友情」の3つの信条のもと、20歳から40歳までのメンバーが、よりよい社会づくりを目指して活動している。

 本書は「教育再生」「経済再生」「安全保障」「憲法改正」「外交問題」「地域再興」の6つのテーマに分類した、66個の質問に対する一問一答。回答者はその質問に相応しいと考えられた、いわば有識者で、全部で23人。

 回答の中には「提言」と考えられなくもないものはある。しかし、基本的には質問に対する「答え」。たからタイトルでうたう「66の提言」ではないし、「日本を再生する」という意図も感じられない。そういうものを期待していたので残念だった。

 期待したものとは違ったけれど、分かったこともある。それは日本JCの主張だ。一問一答の形式だけれど、「答え」はもちろん、「問い」の立て方にもそれは現れる。例えば「教育再生」の8問目。「なぜ、中国や韓国の言い分がまかり通ってしまうのでしょうか?」。日本JCは、今の日本の教育は「中国や韓国の言い分がまかり通っている」と主張しているわけだ。

 「問い」や「答え」に比べると目立たないけれど、誰を回答者に選定したか?にも、傾向が現れる。8問目の回答者は、近現代史研究家の水間正憲さんだ。慰安婦問題に言及した歴史教科書を採択した中学校に、「反日極左」だとして採択中止を求める葉書が大量に送られる事件があったが、それを主導した人物だ。

 もちろんこのような「偏向」を、全部の項目に感じるわけではなく、むしろ少数。また「全く偏りのない意見」なんてものは、望んでも得られないのも確か。「日本JC」の主張に興味がある人は読んでみたらいいと思う。

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