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2018年2月21日 (水)

騙し絵の牙

著  者:塩田武士
出版社:KADOKAWA
出版日:2017年8月31日 初版 9月15日 3版
評  価:☆☆☆☆(説明)

  本屋大賞ノミネート作品。著者は昨年も「罪の声」でノミネートされ第3位に輝いた。実を言うと私は事前に予想して「罪の声」の第3位を見事に的中させている(大賞も第2位も外したけれど)。実際の事件を題材にした見事なミステリー作品だった。

 本書の主人公は速水輝也。40代半ば。大手出版社「薫風社」の月刊のカルチャー誌「トリニティ」の編集長。仕事熱心、芸達者、部下への心配りも、作家へのサポートも篤い。必然的に、周りから頼りにされ信頼もされている。唯一の例外として妻を除けば..。

 物語は、出版業界の現況を映しながら、様々なドラマと人間模様を描く。出版不況と言われる中で、会社の看板である文芸誌さえ廃刊の憂き目に会う。速水の「トリニティ」も、黒字化を厳命され「達成できなければ廃刊」を言い渡される。

 この「トリニティ」黒字化に向けた、速水の奮闘を軸にして、社内の派閥争いや労使の交渉、部下の編集部員たちの確執、作家の先生たちの動静などを描く。「頼りにされ信頼もされている」速水は、何にでも駆り出されてしまうので大変だ。おかげで、家庭の方が疎かになっていた、ということだ。

 神は「乗り越えられない試練は与えない」という話があるけれど、本書の速水に与えられる試練が、ちょうどそんな塩梅で、精一杯に手を尽くして何とか乗り越える。その姿が気持ちいい。いくつかの小さな山を越えて行く進行は、連続テレビドラマのようだった。

 テレビドラマのよう、と思う理由はもうひとつある。表紙にも中の扉にも、俳優の大泉洋さんが起用されている。テレビドラマにも映画にもなっていないのに珍しい。実は本書は、著者が大泉洋さんを「あて書き」したものなのだ。読んでいる間中、セリフの一つ、しぐさの一つを、大泉洋さんが演じるのが目に浮かぶ。だからもうテレビドラマを見たような気にさえなってきた。

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コメント

実際に大泉さんがやっていたモノマネのレパートリーが本文中に書かれていたり、娘を溺愛している姿などはそのままという感じがします。
騙し絵の意味が最後に明かされるのは面白かったです。

投稿: 日月 | 2018年2月27日 (火) 23時29分

日月さん。お返事がすごく遅くなって申し訳ありません。

あて書きだけあって、大泉洋ワールド全開でしたね。

最後の部分は、私は「騙し絵」という解釈でなく、それまでの延長で違和感もないし、
その方がいいのでは?と思いました。
あれもこれもウソだったの?と取られると(正確にはどっちの面も「本当」なんですが)
「そんなの大泉洋さんらしくない」気がします。

投稿: YO-SHI | 2018年3月22日 (木) 17時17分

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