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2017年8月13日 (日)

君たちはどう生きるか

著  者:吉野源三郎
出版社:岩波書店
出版日:1982年11月16日 第1刷 1983年5月10日 第6刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 1937年に出版された本。この度、マンガ版新装版が同時発売されるという記事を見て、手に取ってみた。とは言っても本書のことを知っていたからではなく、梨木香歩さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」とタイトルが似ているので、関連があるのかな?と思ったからだ。

 その関連は、冒頭の一行で明らかになった。本書の主人公の少年の呼び名が「コペル君」で、それは梨木さんの作品も同じなのだ。たしか「主人公の叔父さんが昔読んだ本の主人公の名前」という設定だった。あの本が本書だったわけだ。

 では本書について。主人公のコペル君は15歳。時代は出版と同時代。日本が戦争を始めたころ。内容は、タイトルの通りで、「君たちは」というのは読者への呼びかけだから、つまり「「私たちは」どう生きるか」を問う。倫理や哲学的なテーマだけれど、それを「コペル君の体験と、それについて叔父さんが記したノート」の形で、身近な問題に引き付けて綴る。

 例えば、ある時コペルくんは友だちに対する重大な裏切りを犯してしまう。それが原因の一つとなって半月も寝込むことになる。その時は叔父さんは、コペル君に何をなすべきかを毅然として伝える。そして人間の悩みや過ちについて説く。

 よい本に出会った。80年前の本にこんなに感銘を受けるとは思わなかった。もちろん現代にそぐわないことは多々あるけれど、書いてあることは今なお大事なことだ。その理由は二つある。一つは、時代を超えた普遍的な価値観というものがあること。もう一つは、「今があのころと似ている」こと。

 本書に「愛国心のない人間は非国民である」という人々が登場する。その人々は、自分たちの唱えていることが正しいと信じ、自分たちの気に喰わない人間は、間違った奴らだと、頭からきめてかかる。

 私が読んだのは岩波文庫(青158-1)。巻末に著者と親交のあった丸山真男さんの寄稿がある。その中で丸山さんは「非国民というコトバが幸いにして戦後において廃語にちかくなった」と書かれている。しかし今、「非国民」という言葉が「売国奴」と姿を変えて跋扈している。

 最後に。タイトルの「生きるか」について。「生きるべきか」の方が収まりがいい気がしたので、どうして「生きるか」なのか勝手に考えてみた。これは「~するべき」という義務付けではなく、「あなたはどうするのか」という意思決定を促す意味があるのではないか?と推察した。

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