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2017年6月21日 (水)

麻布ハレー

著  者:松久淳+田中渉
出版社:誠文堂新光社
出版日:2017年3月8日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 ずいぶん前になるけれど、このお二人(松久淳さんと田中渉さん)の著者のコンビの「天国の本屋」という一連のシリーズを読んだ。その後「天国の本屋~恋火」という竹内結子さん主演の映画にもなったのだけれど、心に染みる物語だった。そういうことで本書も手に取ってみた。

 タイトルの「麻布ハレー」の「ハレー」は、ハレー彗星の「ハレー」。約76年周期で地球に接近する。この前にやって来たのは1986年。さらにその前は1910年。そのころ、今の国立天文台の前身になる天文台が麻布、あの都会の真ん中「東京都港区の麻布」にあった。本書はその麻布天文台を舞台の中心とした物語。

 主人公は佐澤國善。24歳。岩手から上京して早稲田の文学部に進み、作家を志した。大学卒業後も作品を文学雑誌に持ち込んでいるが、不採用を繰り返している。定職には就かず、下宿先の一人息子である小学生の男の子、栄の遊び相手兼家庭教師などをしている。物語は麻布天文台に忍び込んだ栄を、國善が迎えに行くところから始まる。

 麻布天文台には魅力的な人々が居たし、多士済々が集っていた。台員は台長以下7名。誰もが小学生の栄に丁寧に天文のことを教えてくれる。栄も驚くほどの勢いで知識を吸収した。ハレー彗星が近づいていることもあって、政府や海軍の関係者や新聞記者なども出入りしていた。

 先に「國善が迎えに行くところから始まる」と、物語の始まりを紹介したけれど、ページ順で言うとこれより前がある。それは1986年、つまり次にハレー彗星が近づいたときのエピソードが短く挿入されている。そして、さらにその前に、場所も時代も不明の場面が描かれている。

 これらは著者が用意した「時を越えた仕掛け」になっている。また、ネタバレになってしまうので具体的には言わないけれど、この物語には、様々な実在の人物や物事などをモチーフとしたものが取り込まれている。著者は楽しめる工夫を何重にも施してくれている。面白かった。

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