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2017年6月18日 (日)

不時着する流星たち

著  者:小川洋子
出版社:KADOKAWA
出版日:2017年1月28日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の小川洋子さんの作品はそれほど多く読んでいない。これまでに読んだのは「博士の愛した数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」「人質の朗読会」、そして樋上公実子さんの絵に小川さんが文をつけた「おとぎ話の忘れ物」。どれも情景が思い浮かぶ静かな余韻が残る、しかしそれぞれに特色のある四様の物語だった。

 本書は10編からなる短編集。実在する人物や出来事からの連想によって、著者が紡ぎ出した物語たち。連想の元になった人物には、グレン・グールドやエリザベス・テイラーといったスターもいれば、長大な物語を記しながら誰にも見せることなく生涯を閉じた作家、ヘンリー・ダーガーのように、世界の片隅で異彩を放つ人もいる。

 10編を順に簡単に紹介する。母の再婚によって同居することになった「誘拐されていた」という姉の話。文字に似た形の小石を探して歩く男性の話。飛行場でカタツムリのレースを客に見せている男性の話。「放置手紙調査法」という心理学の実験の補助員の話。あらゆる場所の距離を歩数で測量する盲目の祖父の話...。

 葬儀に呼ばれて参加する「お見送り幼児」の姪を連れた女性の話。外国に一人で暮らす息子のところを訪ねた母親の話。若草物語の四姉妹を友達と繰り返し演じる少女の話。授からなかった子どもの代わりに文鳥を飼って可愛がる夫婦の話。主人公の少女のお願いを「アイアイサー」と言って聞いてくれる叔父さんの話。

 何か少しだけ、でも決定的におかしい。例えると「リアルな夢」。そんな物語をたっぷりと楽しめた。狂気と隣り合わせの不穏な感覚、どこにも行き着かないような不安感、輪郭が不明瞭な視界、常軌を逸した出来事とそれを受け入れている主人公。「不完全」な登場人物たち。「リアルな夢」は時として「怖い夢」に転化する、その予感が漂っている。

 この「予感」を、タイトルにある「不時着」という言葉が象徴している。「墜落」ではないので破滅は免れている。でも、明らかに変則的でまともではない事態で、一歩間違えると..という危うさを内包している。

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