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2017年4月

2017年4月30日 (日)

ふたつのしるし

著  者:宮下奈都
出版社:幻冬舎
出版日:2017年4月15日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 2016年の本屋大賞を「羊と鋼の森」で受賞した、宮下奈都さんの2014年の作品。元は、若い女性を対象とした季刊の文芸誌「GINGER L.」に連載されたものらしい。

 主人公は二人のハル。柏木温之(はるゆき)と、大野遥名(はるな)。温之は勉強ができなかった。何かに集中すると他のことは見えない聞こえない、その場から一歩も動かない。遥名は優等生だった。でも、学校生活を無難に過ごすために、甘ったるいばかっぽいしゃべり方をしている。本書は二人がそれぞれ小学一年生と中学一年生の春から始まる30年を、数年ごとに描く。

 集団からはみ出さないように苦心する遥名と、「はみ出さないように」という考えを持ち合わせない温之。正反対のようでいて、二人とも「不器用」という点で共通する(遥名は器用過ぎて一周回って不器用だ)。そのためか、二人にはお互いには見える「しるし」があるらしい。その「しるし」がいつか二人を結びつける。

 不幸なことも起きるし心が痛む場面もあるけれど、全体として心温まる優しい物語だった。それは、二人の周囲にいつも誰か理解してくれる人がいたからだ。物語の最初から最後まで登場する友達も、ほんの少しだけの関わりの人もいる。「人は他人との関わりの中で生きている」と改めて思った。

 少し気になったこともある。二人の出会いの場面が不自然に感じることだ。二人は出会うべくして出会った、互いには見える「しるし」がある。さらにはその時には「特別」な事情もある。そういう説明はできるのだけれど、やっぱり「そんなんでいいの?」と。ただ、この物語の元々の想定読者である「若い女性」には、案外すんなり受け入れられるのかもしれない。

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2017年4月26日 (水)

村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!

著  者:大森望、豊﨑由美
出版社:河出書房新社
出版日:2017年4月30日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「はじめに」で、大森望さんが「「騎士団長殺し」メッタ斬り!というタイトルの本を出す誘惑には抵抗できなかった」と書いていらっしゃるけれど、私はこのタイトルを書店で見て、読んでみたいという誘惑に抗えなかった。なんと不埒な便乗商品か。でも「私の想いに近い」という確信めいたものも感じた。

 著者のお二人は共に「書評家」。私はお二人の書評をあまり読んだことがないのだけれど、「辛口の書評」という印象がある。それはたぶん「文学賞メッタ斬り!」という作品のことを知っているからだと思う。本書も、唐突に「メッタ斬り!」なんていう企画が湧いて出たわけではなくて、これまでの「メッタ斬り!」の系譜の中にある。

 内容は、表題の「「騎士団長殺し」メッタ斬り!」のほか、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」「1Q84 Book1、2」「1Q84 Book3 女のいない男たち」のそれぞれの「メッタ斬り!」の4部構成で、全編が著者お二人の対談形式。

 すごく面白かった。何かの役に立ちそうとか、気付きがあったとか、そういうことはない。ただ「私の想いに近い」という最初の直観は正しかった。だから読んでいて楽しかった。

 本書は村上作品の欠点を指摘する本だ。ここで大事なのは「しっかり読み込んだ上で」欠点を指摘する、という点だ。豊﨑さんが行った時系列の整理は見事なものだし、俎上にあげる細かいエピソードは、その作品だけでなく、他の村上作品、さらには他の作家の作品との関わりにまで及んで分析されている。自称「ハルキスト」のどのくらいの割合の人が、これに太刀打ちできるだろう?

 最後に。「私の想いに近い」と感じた理由の一つに、著者と私の近さがある。お二人は同い年で私の2歳上という年齢の近さ。そのために人生のほぼ同じタイミングで同じ村上作品に出会っている。大学生の時に「風の歌を聴け」でハマったのも同じ。新作が発表されるのが楽しみなのも、がっかりすることがあっても「次を期待しよう」っていつも思えるのも同じ。もちろん生きてきた時代も同じだ。それで大森さんの次の言葉に深い共感を覚えた。

 僕は「ドラゴンクエストⅦ」を思い出しましたね(笑)。「ドラクエの新作は、やっぱり発売日に買って、ヨーイドンではじめないとね」って毎回楽しみにして、ずっとやってたんだけど、2000年に出た「Ⅶ」のときに初めて思ったんですよ、「あれ?・・・このゲーム何が面白いんだろう?」って

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2017年4月22日 (土)

ハリネズミの願い

著  者:トーン・テレヘン 訳:長山さき
出版社:新潮社
出版日:2016年6月30日 発行 8月5日 4刷
評  価:☆☆☆(説明)

 今年の本屋大賞の翻訳小説部門の第1位。

 著者はオランダの作家・詩人。子どもたちのために動物が主人公の絵本や物語を、30年以上にわたって書き続けてきた。本書は、近年大人向けに発表している「どうぶつたちの小説」シリーズの中の一冊。森に一人で住んでいるハリネズミが主人公の、59章からなるお話。メルヘン。読む前は「ハリネズミのジレンマ」が思い浮かんだけれど、そうではなかった。

 ハリネズミは動物たちに手紙を書いた。「親愛なるどうぶつたちへ/ぼくの家にあそびに来るよう、/きみたちみんなを招待します。」...その後に書き足した。「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。」...手紙は戸棚の引き出ししまって、送るのはやめた。お客様に来て欲しいけれど、本当に来たらどうしよう、という逡巡が分かる。主人公のハリネズミはそういう性格。

 斯くして自分の頭の中でお客様が来た時のことを思い浮かべる。もしもヒキガエルが来たら、もしもサイが来たら、もしもクマが来たら、もしも...。誰が来たとしても、思う浮かぶのは「大変なことになる」ことばかり。ヒキガエルは怒りまくって、サイには宙に放り投げられ、クマはハチミツを一人で平らげたあと、家中を探してもうお菓子がないと分かると帰ってしまった。

 まぁこんな感じで、ほとんどハリネズミの空想が最後まで続く。たくさんの動物が出てるけれど、ハリネズミが実際に会ったのは「アリ」と「リス」だけだ(と思う)。

 引っ込み思案のハリネズミくんの空想は、それぞれの動物の雰囲気に何となく合っていて、時にバカバカしいぐらい大げさで、まぁまぁ笑える。ハリネズミくん自身にとっては、大変な目に合っているんだけれど、どっちにしたって空想だから、実害はないし。それにいいことだってちゃんとある。

 ただ、「大人向けに発表している」ということだけれど、楽しむには子どもの視点が必要かも。例えば子どもに話してあげるとか。一章ずつ少しずつ読むのもいいかもしれない。著者は長年、52個の物語を書いて「週めくりカレンダー」に仕立ててきたそうだから。

 実際に会った「アリ」と「リス」の時は大変なことにならない。「心配しているようなことにはならないから、やってみればどう?」。そんなメッセージも潜んでいるのかもしれない。 

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2017年4月19日 (水)

ゴリラは戦わない 平和主義、家族愛、楽天的

著  者:山極壽一、小菅正夫
出版社:中央公論新社
出版日:2017年2月10日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 京都大学第26代総長で、ゴリラ研究の第一人者の山極壽一先生と、旭山動物園で行動展示を取り入れて一躍有名にした、前園長の小菅正夫さんとの対談本。人間より他の動物たちの方により愛着があるんじゃないか、と思われるお二人。以前に一緒にコンゴにゴリラを見に行ったことがある。そのあたりのことから掘り起こして、ゴリラについて語り合う。

 ゴリラはシルバーバックと呼ばれる、大人のオスをリーダーにした群れで暮らす。そのリーダーは群れのメンバーに信頼されてなる。何かあれば前面に立つ。でも相手を威嚇することはあるけれど、若いオスを除いて喧嘩はしないらしい。タイトルの通り「ゴリラは戦わない」のだそうだ。

 それに対してニホンザルのボスは力で群れを従える。もし群れを離れて他の集団に行くと最下位のオスになってしまうらしい。力を示さないとボスとして認められない。「あえて勝とうとしない、でも負けない」ゴリラ社会と、「勝ち続けていないと自分の地位が脅かされる」ニホンザル社会の違いがある。

 話題としては面白い話で、その他のたくさんの「ゴリラ」ネタもあってそれだけでも興味深い本だ。しかし、それだけではない。「ヒトと近い類人猿であるゴリラの社会を知ることによって、人間のことをよく知る」ということもできる。以前に読んだ山極先生の「京大式 おもろい勉強法」にもそんなことが書いてあった。

 さて、ゴリラとニホンザルの比較によって見えた人間のこととは?人間の社会がニホンザルに近づいているのでは?ということかも。つまり「勝ち続けていないと自分の地位が脅かされる」...。

 もうひとつ。ゴリラと、ニホンザルやチンバンジーとの違い。相手の出方を待つこと。相対した時の間の取り方が長い。相手がどうするかを予測して、もの凄く考えているらしい。すぐに手をださない。

 山極先生はこんなことも言っている。「だから、ゴリラにとって、人間はアホなんですよ。ちょっとチンパンジーに似ていてね

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2017年4月15日 (土)

日本3.0 2020年の人生戦略

著  者:佐々木紀彦
出版社:幻冬舎
出版日:2017年1月25日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は「NewsPicks」という経済情報に特化したニュース共有サービスの編集長。その前は「東洋経済オンライン」の編集長、その前は東洋経済新報社の記者。1979年生まれというから、年齢は現在30代後半。

 タイトルの「日本3.0」は「近代日本の第3ステージ」を表す。第1ステージは明治改元から敗戦まで、第2ステージは敗戦から立ち直った「奇跡の経済成長」。それが終わりを迎え、2020年ごろに「これまでとはまったく異なる思想、システム、人を必要とする」新しいステージが始まるそうだ。

 本書は、なぜ「日本3.0」を迎えるのか、その時代に国家は、経済は、仕事は、教育は、リーダーはどうあるべきか?を、少し暑苦しく感じるぐらい熱心に語る。その時代を牽引する(すべき)現在の30代の人たち(つまり自分たちから少し下の世代)を、「いい子ちゃんを卒業せよ」と鼓舞する。

 2020年ごろには、開国や敗戦に匹敵する「ガラガラポン革命」が起きるという著者は予想する。その根拠として「10のファクター」と「5つの社会変動」を挙げる。正直に言って漸進的な変化が多くて「ガラガラポン」にはならないだろうと思う。

 ただここ数年の政治や経済に「これまでのやり方ではムリ」という印象を強く感じる。何か新しいことが必要だし起きそうだ。それから著者が本書で言うリーダーや人材は、2020年ではなくて今すぐにでも必要だ(そもそも「3年後から必要」って予想も不自然だけど)。だからガラガラポン」が起きなくても、本書の主張は有益だと思う。

 最後に。著者の「経済紙の記者」という職業について。経済紙の記者は、駆け出しの頃から経営者に会える。一般的な会社員は、自分と釣り合った役職の人を相手にすることが多い。20代の平社員が大企業の社長や会長と会って話を聞く機会などまずない。ところが記者ならそういうことがある。

 まだ30代の著者が、これだけ社会全般を見渡す視野を身に着けている。本書の随所に取材した企業人の言葉の引用があるけれど、著者がこれまで会って来た先達たちから受けた薫陶が、そこに役立っているのだろうと思う。

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2017年4月12日 (水)

アラー世代 イスラム過激派から若者たちを取り戻すために

著  者:アフマド・マンスール 訳者:高木教之ほか
出版社:晶文社
出版日:2016年11月30日 初版 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 最近は全く報じられなくなったけれど、ヨーロッパの広い範囲から、イスラム国に参加するために、若者たちがシリアに入国する事態が今も続いている。本書は、この問題に対抗するためにドイツ国内で活動する男性が記したものだ。若者たちが過激な思想を持つに至る過程が分かる。シリアに向かう若者たちに、共感はできそうにないけれど、せめてその行動の理由を理解できないのか?と思って本書を読んでみた。

 著者の名前は、アフマド・マンスール。アフマドという名前が表す通り、彼はムスリムだ。本書の中で詳述されているが、テルアビブ近郊の村で生まれ育った彼は、長じてムスリム同胞団に加わってイスラム原理主義に染まる。その後ドイツに移住し、一度は持った過激な思想を脱した、という経歴を持っているのだ。

 心理学者でもある著者が、ドイツ国内で行っている活動は、ムスリムの若者たちを対象としたワークショップや講演など。彼らの話を聞いて、彼らに話しかける地道な活動だ。その若者たちは、必ずしも過激な思想を持っているわけではない。しかし、手を差し伸べなければ危険な状態にある。タイトルの「アラー世代」はその若者たちを指していて、イスラム過激派が形作るピラミッドの底辺に位置すると見ている。

 ピラミッドの頂点はアルカイダやイスラム国など、現実に凶行に及んでいるグループ。その下にはムスリム同胞団など、イスラム原理主義を支持するグループ。その下にムスリムの若者たち。上の層は彼らを「肥沃な土壌」と見て、様々な働きかけを実際に行っている。だからそれに対抗する必要がある。

 読み終わって「これは大変だ」と思った。著者自身の経験や、その活動の中で得た事例を見ると、「敬虔なイスラム教徒」から「過激派」までが、実にシームレスにつながっている。「イスラム国に参加する」という決断までに「決定的な何か」は必要ないのだ。※誤解があるといけないので言うけれど、過激な思想を持つ可能性があるのでイスラム教徒は全員危険だ、と言いたいのではない。

 最後に。気が付いたことを。日本ではドイツのようなムスリムに関する状況はないが、似たようなことはあるのではないか?ということ。イスラム原子主義では、コーランに疑問を持ったり解釈したりしてはいけない。「イスラム」が善で「イスラム以外」は悪とされる。複雑で多様な社会状況で判断が難しい中、悩まなくてもいいシンプルな答えが歓迎されている。

 さて、日本にいる私たちにも、何かに疑問を持つだけで排斥される、あるいは排斥するような空気はないか?「私たち」と「私たち以外」に分けて、「自分たちが正しい」「相手が間違っている」という考えに安住していないか?原理主義は音もなく近付いて、もうそこまで来ているのかもしれない。

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2017年4月10日 (月)

勝手に予想!2017本屋大賞

 明日4月11日(火)が本屋大賞の発表日です。今年は10作品がノミネートされていますが、そのうちの8作品を読みました。

 読んだのは「i(アイ)」「暗幕のゲルニカ」「桜風堂ものがたり」「コンビニ人間」「ツバキ文具店」「罪の声」「蜜蜂と遠雷」「夜行」です。読んでいないのは「コーヒーが冷めないうちに」「みかづき」です。

 全部は読んでいないし、これまでいいセンは行くけれど当たったことがないのですが、今年も、私の予想を発表します。

 大賞:「暗幕のゲルニカ」 2位:「蜜蜂と遠雷」 3位:「罪の声」 4位:「桜風堂ものがたり」

 「暗幕のゲルニカ」は、19世紀と21世紀、現実とフィクションが行き来する構成が見事で、とても上質な読み物になっていました。それに加えて「反戦」を象徴した「ゲルニカ」の時代背景や制作意図を取り込むことで得た、今の時代へのメッセージ性を評価して大賞にしました。

 「蜜蜂と遠雷」は、「暗幕のゲルニカ」とどちらにするかすごく迷いました。著者の描写力の高さが発揮されていて、作品としての完成度が抜きんでていると感じました。ただし既に直木賞を受賞しているので、それを追認するのでは書店員さんが選ぶ意味がないのではないかと思いました。実際のところ、直木賞受賞作が本屋大賞を受賞した例は、これまでにはありません。

 「罪の声」は、昭和の大事件をテーマとした作品で、「本当に「こうだったかもしれない」と思わせる読み応えがありました。この作品で山田風太郎賞を受賞していますが、まだデビュー5年ということで、書店員さんが発掘して世に出た、ということになるのではないでしょうか?

 「桜風堂ものがたり」は、売れる本を発掘する才能がある書店員が主人公。同僚たちも書棚づくりに熱意を持って取り組む。まさに「本屋大賞の心」を持った人たちの物語。完成度も高く、心を打つ場面もあり、きっと上位に入ってくるでしょう。

----2017.4.12 追記----

 大賞は「蜜蜂と遠雷」に決定しました。2位「みかづき」3位「罪の声」4位「ツバキ文具店」と続きます。3位の「罪の声」が的中しましたが、その他は外れました。直木賞とのダブル受賞は、少し前までは「あるかもしれない」と思っていたのですが、ずっとないので「ないものだ」と思ってしまいました。

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2017年4月 9日 (日)

図書館が教えてくれた発想法

著  者:高田高史
出版社:柏書房
出版日:2007年12月20日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 よく利用する図書館に「図書館の未来(これから)を考える」と銘打ったコーナーが作られていて、そこにあった1冊。そのコーナーと本書のタイトルに引っかかりを感じて手に取った。

 図書館のアルバイトである主人公に仕事を教える、という物語の体裁で、図書館の「レファレンス・サービス」を紹介する。その主人公の名は上田彩乃、歳は21歳。ぶらりと立ち寄った図書館で、1か月半の短期アルバイトについた。志望動機は「調べものがうまくなりたくて..」

 彩乃の指導係の伊予さんが、彼女の志望動機を聞いて、図書館の仕事をしながら1日に10分ぐらいずつ、図書館での調べもの(リファレンス・サービス)について話してくれることになった。物語は、日記のように日付がついた形で、一日一日の記録として綴られている。

 図書館で調べ物をするには...。まず空間を把握。一般書のコーナー、事典などの参考図書のコーナー、児童書、雑誌、新聞、郷土資料...。次には分類番号。例えば「ニワトリ」の本を探すなら「4自然科学」「8動物」「8鳥類」「4ニワトリやハトの仲間」で、「4884」が「ニワトリ」の本の分類番号。

 こうやって「自然科学」>「動物」>「鳥類」>「ニワトリ」と「絞る発想」と同時に、「広げる発想」も必要。絞った段階を戻って「488鳥類」や「480動物全般」のところにある本に、ニワトリのことが書いてあるかもしれない。さらには「6産業」の中の「645家畜・畜産動物」も見た方がいい。調べる内容がどんな本に載っているかをイメージすることが大切だ。

 ここに書いたことは、まだ図書館の調べものの方法の入口。なかなか奥が深くて、書いてあることをすべて習得すると、図書館の調べものの達人になれそうだ。

 ただ、本書を読んでいて途中でふと思う。「これは図書館員向けの指南書なのか?」「図書館員になる予定はないので読んでもムダ?」。これら疑問への答えは半分YESで半分NO。まずは、よくできた指南書になっている。それからよく噛まないと消化できないけれど、汎用的な発想法にも応用ができる。

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2017年4月 6日 (木)

ビブリア古書堂の事件手帖7

著  者:三上延
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2017年2月25日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 人気ベストセラーシリーズの第7巻。本書の発売に合わせて、実写とアニメの映画化が発表されている。ストーリーもキャストも公開時期さえ未発表で「詳細は後日」という異例の告知だけれど。

 「古書にまつわるミステリー」をテーマにしてきたこのシリーズは、短編ごとに別の古書が登場する短編集の巻と、1冊の本を追いかける長編の巻がある。第7巻の本書は長編の体裁。そして本書でシリーズは完結する。

 完結編の本書で、主人公の大輔と栞子が追う本は、シェイクスピアの作品集。ファースト・フォリオと呼ばれる、17世紀に出版された最初の作品集で、その1冊がサザビーズで約6億円の値が付いた、というシロモノだ。その本は栞子の祖父の因縁の品物で、母の失踪とも関係している。

 前作の第6巻は、栞子を取り巻く新たな謎を加えて、シリーズの構造をドンドン重層的に複雑にした。本書は(完結編ということもあって)、その複雑さを解きほぐす役割を持っている。だから物語が一方向に流れて行く感じなのだけれど、それでも幾つかのヤマがあって、やっぱり最後まで気が抜けなかった。

 これで完結ということで、著者には「ありがとう」と「お疲れさま」と声をかけたい。それまで1年を空けずに巻を重ねて来ていたのに、今回は2年以上も空いての発行だった。「あとがき」によると「今度こそ書けないと思う瞬間が何度もありました」ということだ。

 さらにうれしいことに「番外編やスピオンオフという形で「ビブリア」はまだ続きます」という。いつ公開されるかもわからない映画も気になるけれど、スピンオフ作品が今から楽しみだ。

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2017年4月 2日 (日)

言葉にできるは武器になる。

著  者:梅田悟司
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2016年8月25日 1版1刷 10月17日 5刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社の日本経済新聞出版社さまから献本いただきました。感謝。半年ぐらい前にいただいたのに、紹介が今日になってしまいました。陳謝。

 著者は電通の現役のコピーライター。コーヒーのジョージアの「世界は誰かの仕事でできている。」が著者の手になる作品。「言葉」それも「伝えるための言葉」のプロフェッショナルということだ。

 プロフィールからは「プロが教える言葉のテクニック」的なものを想像する。そういうすぐに使えそうな技も紹介している。「比喩・擬人」とか「反復」とか「対句」とか..。ただし分量的には後半の4割ほどで、前半ではもう少し奥深いコピーライティングのコーチが受けられる。

 「言葉には2種類ある」と著者は言う。「外に向かう言葉」と「内なる言葉」。前者はコミュニケーションツールとしての言葉。「すぐに使えそうな技」はこれを気の利いたものにする。後者は思考するときに使っている言葉。私たちは、言葉で考え、納得のできる答えを言葉で探す。著者は後者の方が大事だと言う。

 「言葉が意見を伝える道具であるならば、まず、意見を育てる必要がある」「言葉にできないということは「言葉にできるほどには、考えられていない」ということ」。正論だ。日々言葉のテクニックで勝負しているコピーライターだからこそたどり着いた、実体としての重さを感じる正論だ。

 もちろん正論だけ言われても、また心構えだけ言われても、どうしようもない。でも安心してほしい。前半の6割はこの「内なる言葉」との向き合い方を、色々な視点から説いて、そのための思考プロセスの様々な方法を紹介している。

 最後に。著者は、自分が抱えている具体的な課題を想定して、本書を読むように促す。実は今、私はそのような課題を抱えている。半年も本棚に収まったままだった本書を、今回、何気なく手に取ったのは、たぶん本が呼んでくれたのだと思う。そういうことが時々ある。

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