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2017年1月

2017年1月29日 (日)

桜風堂ものがたり

著  者:村山早紀
出版社:PHP研究所
出版日:2016年10月4日 第1版第1刷 2016年11月10日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。この著者の作品を読むのは初めて。申し訳ないけれどお名前も知らなかった。

 主人公は月原一整。老舗百貨店の6階にある、これまた老舗の書店「銀河堂書店」の文庫担当。学生時代のアルバイト時代から数えて10年というから20代後半。売れる本を見つける才があるらしく「宝探しの月原」と言われている。そして、なかなかのイケメン。

 万引き事件がきっけけとなって、一整は銀河堂書店を辞めた。学生時代からのアルバイトを含め、書店員しかしたことがない。いやもっと以前から、本は一整と共にあった。とはいえ、すぐには書店の仕事は見つからない。導かれるように、以前からネットで交流があった田舎町の書店「桜風堂」を、一整は訪ねることにした。

 物語は、一整が訪ねた桜風堂と、一整が辞めた後の銀河堂書店、それぞれを取り巻く人々を描く。銀河堂書店の書店員たちなどたくさんの視点で、時に時間を遡ったりしながら描く。世の中の悪意と、それを上回る善意。「さあて、わたしは何をしようかな」というセリフが心に残る。皆があの人とあの本のためにできることを探している。優しさに満ちた物語だ。

 いろいろと「多すぎる」。登場人物が多い。そのそれぞれの造形を描き込むのでエピソードが多い。「実は...」という後で明かされる秘密が多い。上に書いたように語られる視点が多い(猫視点まである)。情景描写に費やす言葉も多いように思う。何よりも人の「善意」が多い。「多すぎる」かもしれないけれど、それがいい。

 最後に。本屋さんの書店員の物語だから、本屋さんの書店員が選ぶ「本屋大賞」のノミネートは「なるべくしてなった」と言える。もちろん、物語としての完成度が低ければ論外だけれど。本書はそうではない。

 しかも「書店員の物語」というだけではない。本屋大賞の設立趣旨は「売り場からベストセラーをつくる」。そのために書店の境界を越えて書店員さんが協同している。「宝探しの月原」をはじめ、登場する書店員の全員が、本屋大賞の「心」を持っている。著者もなかなかやるもんだ。

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2017年1月26日 (木)

鈴木敏文 孤高

編  者:日経ビジネス
出版社:日経BP社
出版日:2016年12月27日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 編集の日経ビジネスさまから献本いただきました。感謝

 本書は、昨年4月にセブン&アイ・ホールディングスの会長兼CEOを退任された、鈴木敏文氏の半生、1963年のイトーヨーカ堂入社後の53年間を記したもの。日経ビジネスは1970年代以降、鈴木氏に繰り返しインタビューしていて、退任後も延べ10時間にわたる単独インタビューを行ったそうだ。

 流通業に関わる人で「鈴木敏文」の名前を知らない人はいないだろう。セブン-イレブン・ジャパンの実質的な創業者、いや、コンビニエンスストアという、今や生活のライフラインともいえる、業態そのものを生み出した人。そして、コンビニのセブン-イレブンを核に、流通業の一大帝国を築き上げてそこに君臨したカリスマ経営者だ。

 上に書いたように、日経ビジネスでは数多くのインタビューを行っていて、それを再編集して本書を構成している。いわばその時々の「肉声」を記録しているわけで、その迫真性は「肉声」ならではのものだ。鈴木氏のセブン-イレブンにかける思い、創業者の伊藤雅俊氏との絶妙な距離感、そして帝国の君臨者としてのわずかな危うさまで、とてもよく伝わってくる。キーワードは「変化対応」

 基本的には、鈴木氏サイドからの話しか収録されていないので、別の立場からは異論もあるだろう。しかし、同時期に勃興した中内氏のダイエーや堤氏のセゾングループなどが、次々と失速する中を勝ち抜いて、最強の流通帝国を築いた業績は、誰にもマネのできないものであることは確か。読み応えあり。

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2017年1月22日 (日)

ライフ・シフト

著  者:リンダ・グラットン アンドリュー・スコット 訳:池村千秋
出版社:東洋経済新報社
出版日:2016年11月3日 第1刷発行 11月29日 第3刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の一人のリンダ・グラットンさんは、前著「ワーク・シフト」で「2025年の働き方」を展望して見せた。テクノロジーやグローバル化などの要因が変化する中で、必要とされる「仕事」に関する考え方の「転換(シフト)」を考察したものだった。本書は、その考察をさらに広げて「人生」に関する考え方の「転換」をテーマとしたものだ。

 内容の紹介の前に2つ質問。その1「「人生」と聞いて何年ぐらいのものを思い浮かべますか?」。その2「仕事をリタイアするとして、何歳ぐらいを想定していますか?」。その1の答えは「80年ぐらい?」、その2は「65~70歳ぐらいまでにはなんとか..」と、私は思っていた。みなさんはどうだろう?

 厚労省の発表によると、日本の平成27年の平均寿命(ゼロ歳の平均余命)は男性が80.79年、女性は87.05年。年金受給開始年齢は65歳で、70歳への引き上げが取りざたされている。だから、私が思っていたことも、大きく間違えていないはず。

 本書の内容の紹介。序章に衝撃的な計算結果が載っている。それはある年に生まれた人が50%に減る年齢。2007年生まれの人は104歳、1997年生まれは101~102歳、1987年生まれは98~100歳...1957年でも89~94歳。ちなみにこれは「先進国」の値で、日本ではさらに3歳程度プラスされる。要するに今後は、半分の人は100歳まで生きる「100年ライフ」の世界になる、ということだ。私が思っていたこととはかなり違う。

 これを元に本書は「人生の組み立て」を考察する。これまでは「教育」「仕事」「引退」という3つステージで分けて、人生は組み立てられてきた。「100年ライフ」では、この3ステージのモデルでは無理がある、というのが本書の考察の基礎にある。

 例えば、これまでどおり65歳ぐらいで「引退」のステージに移ると、35年とか40年の長さになる。そんな長期間の経済負担に現役の時に備えるのは無理だ。また、引退年齢を思い切って80歳に引き上げると「仕事」のステージが60年近くなってしまう。様々なものの進歩の速さを思うと、そんな長期間有用な知識やスキルを、最初の「教育」のステージだけでは培えない。

 「ならばどうするか?」本書は、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーン、の3人を登場させ、それぞれの人生として「あるべき姿」を描き出す工夫をしている。これが参考にはなる。キーワードは「レクリエーション(娯楽)からリ・クリエーション(再創造)へ」

 しかし「理想的なロールモデル」が存在しない、ということも「100年ライフ」の特徴なので、自分の人生は自分で考えるしかない。備えておく必要があるのは確かなようだ。

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2017年1月18日 (水)

マンガで読む真田三代

著  者:すずき孔 監修:平山優
出版社:戎光祥出版
出版日:2016年1月10日 初版初刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 昨年の大河ドラマ「真田丸」はとても面白かった。視聴率もよかったようだ。主人公は真田信繁(幸村)だったけれど、前半はその父の昌幸の見せ場が数多くあった。

 実は、真田家の物語は、昌幸の父の幸綱(幸隆)から始めて、昌幸と信幸(信之)・信繁の兄弟へ至る「真田三代」として語られることも多い。本書はその「真田三代」マンガで紹介する。監修は「真田丸」の時代考証を担当した平山優さん。

 真田三代には物語にしやすいエピソードや人物が数多くある。(1)武田・村上に奪われた真田の郷を、武田に臣従することで取り返した、真田家の祖である幸綱。(2)幸綱の息子たちで、勇猛さで知られた信綱と昌輝の兄弟(昌幸の兄たち)。信綱と昌輝が長篠の戦いで戦死したのちに家督を継いだ昌幸。

 ここから先が「真田丸」で描かれた時代。(3)昌幸が徳川軍を二度にわたって退けた上田合戦。(4)大坂の陣で家康を追い詰めた信繁。(5)明治維新を越えて現在まで続く松代真田家の祖となった信幸(信之)。(6)これに信幸の妻である小松姫のエピソードを加えた6つの物語を、本書ではテンポよく時にユーモアを交えて紹介する。

 すごく面白いので、「真田丸」で真田家のことに少しでも興味を持った方は、ぜひ読んでほしい。人物事典や史跡案内、エピソード集、年表などの「資料編」つき。

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2017年1月14日 (土)

剣より強し(上)(下)

著  者:ジェフリー・アーチャー 訳:戸田裕之
出版社:新潮社
出版日:2015年7月1日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「追風に帆を上げよ」に続く、超長編サーガ「クリフトン年代記」の第5部。

 前作ではハリークリフトンの妻のエマが会長を務める、バリントン海運の新造旅客船「バッキンガム」の大西洋横断の処女航海のシーンで終わっている。テロリストが紛れ込んで爆発物を仕掛け、轟音が轟いた。本書はその場面の少し前から始まる。「バッキンガム」の浮沈は、クリフトン-バリントン一族の浮沈にも関わる。

 そしてテロリストが仕掛けた爆発物は、確かに爆発した。バッキンガムは辛くも沈没を免れたものの、バリントン海運は大きな痛手を受けた。本書はこうした「最悪を免れたものの、大きく後退」という状況からの、一進一退の気の抜けない攻防が描かれる。

 これまでのシリーズを通して「著者らしい」物語が続いていたけれど、本作は中でもそうだ。著者の筆運びがノリにノッている感じがする。陰謀あり、サスペンスあり、法廷劇あり、取締役会での解任劇あり、丁々発止の金融戦争あり。著者は、こんなにも多彩なストーリーを紡ぎ出す人だったのだな、と改めて気づく。

 最後に。前作のレビューの最後で「主人公がハリーから息子のセバスティアンに移った」ということを書いたが、それは誤りだった。本作ではハリーが007ばりの活躍を見せる。まだまだ楽しませてくれそうだ。

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「剣より強し(上)(下)」 固定URL | 3.ミステリー, 3B.ジェフリー・アーチャー | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月11日 (水)

ハリー・ポッターと呪いの子

著  者:J.K.ローリング、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーン
出版社:静山社
出版日:2016年11月11日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ハリーポッターシリーズの8番目の物語。と言っても、これまでの7作とは少し違う。本書はシリーズ著者のJ・K・ローリングさんが書いた新たな物語を基にした舞台劇、その脚本を書籍化したもの。描かれている舞台も7作目の「ハリー・ポッターと死の秘宝」の19年後だ。

 「死の秘宝」のエピローグも「あの出来事(「ホグワーツの戦い」と言われているらし)」の19年後。ハリーの息子たちがホグワーツ特急に乗る、キングズ・クロス駅のプラットフォームのエピソードが描かれている。実は本書の冒頭は、そのエピソードとそっくり重なっている。そういう意味で、前の7作と本書は確かにつながっている。

 本書の主人公は、そのエピソードで初めて登場した、ハリーの二男のアルバス。同じくその場面にいた(ほとんど名前だけで、セリフはなかったけれど)、ドラコ・マルフォイの息子のスコーピウスが、重要な役割を担う。そう、本書は前7作でホグワーツにいた面々の、息子たちの物語。

 アルバスはハリーの息子として、重いものを背負っていた。スコーピウスもドラコの息子であるが故の偏見と闘っていた。19年経ってもなお人々は「あの出来事」を引きずっていた。世間の「目」を感じて、それぞれに孤独を抱えた、アルバスとスコーピウスの間には共感が生まれ、急速に近づいていく。

 引きずっているのはハリーも同じ、ドラコも同じ。そして一連の事件で息子を失った老魔法使いも。そんな中で、ハリーの額の傷が再び痛みだす...。
 面白かった。楽しめた。正直に言ってそんなに期待していなかった。「ハリーポッター」は既に完結した物語だし、その設定を使って「おまけ」のような話を作っても、大したものにならないだろう。そう思っていた。でも「完結した物語」の「その後」をうまく昇華した、読み応えのある作品になっていた。

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2017年1月 8日 (日)

島はぼくらと

著  者:辻村深月
出版社:講談社
出版日:2013年6月4日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 以前から好きだったけれど「東京會舘とわたし」を読んで、「この人の作品をもっと読みたい」と思った辻村美月さんの作品。「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した後の第1作目。

 主人公は、池上朱里、榧野衣花、矢野新、青柳源樹の、女子2人男子2人計4人の高校2年生。瀬戸内海に浮かぶ人口3000人弱の島「冴島」に暮らし、フェリーで本土の高校に通う。源樹は島に来た2歳の時から、他の3人は生まれた時から一緒に育っている。保育園も小学校も中学校も..。

 物語は、島にやって来た人たちと4人の関わりを主に描く。「冴島」は現村長(「現」と言っても6期目で、もう20年以上になる)の方針で、シングルマザーやIターン者を多く受け入れている。そうしたこともあって、人の出入りが意外と多い。「島」というと閉鎖的な社会を思い浮かべがちだけれど、そうでもなくて開かれている。ただ人々の心の中までそうかと言うと..。

 瀬戸内海の島に住む男女同数の高校生4人、しかも幼馴染。青空のように澄み渡った青春群像劇。恋と友情に揺れる女心?もしかしたら男心?なんてことを思ったけれど、本書はそんなありきたりの物語ではなかった。青春群像劇だし恋も友情もあるけれど、描かれるものはもっと広く深い。すごく面白かった。

 それは登場人物のそれぞれに、何かしら背負ったものがあり、それを丁寧に描いているからだ。例えば、3年前に身重の体で島に来たシングルマザーの蕗子。簡単にではないけれど、最終的には島も彼女もお互いを受け入れて、蕗子親子は島に居場所を見つけた。例えば、島の活性化のために雇われた「地域活性アドバイザー」のヨシノ。島民さえ「どうしてそこまで?」と思うほどの冴島への献身。それはなぜなのか?

 私が一番に心を動かされたのは、小さなエピソードとして紹介された、島の母子手帳のこと。島には中学までしかない。主人公の4人は、家から高校に通う選択をしたけれど、早ければ子どもたちは15歳で親元を離れる。島のお母さんたちは、その15年間にすべてを贈るつもりで、子どもを育てる。母子手帳はそのためにある。感涙。これは名作だ。

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2017年1月 5日 (木)

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

著  者:井上智洋
出版社:文藝春秋
出版日:2016年7月20日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 今年は「AI(人工知能)」についての理解を深めようと思った。何冊か見つけた本の中から本書を選んで、今年最初の1冊にした。

 2年ほど前から「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉を聞くようになった。このまま技術が進歩すると、1台のコンピュータの計算速度が、全人類の脳全てに比肩する時が来る。そうなるとAIが人間の知性を凌駕する。その時点のことを「シンギュラリティ」と呼び、おおむね2045年と予測されている。

 この「シンギュラリティ」を迎えると、社会の様々なことに大きな影響を与えるとされている。そのとき何が起きるのか?本書はそのうちの経済成長や雇用への影響についてを記す。著者はマクロ経済学者であるが、学生時代に計算機科学を専攻して人工知能に関連するゼミに属していた、という経歴の持ち主。このテーマにピッタリだ。

 本書は、第1章で「機械の叛乱の懸念」といった「機械VS.人間」の最近の話題から入って、第2章で、著者なりのAIについての今後の見通しを語る。続く第3章4章で、経済への影響について詳述する。このあたりで「なくなる仕事、残る仕事」が話題になり、2045年には「全人口の1割ほどしか労働しない」、言い換えると「人口の1割分の仕事しかない」社会が予想される。
 
 悲観的な予想に思うかもしれない。かつて「機械やコンピュータの導入が、仕事を奪う」と言われた。しかし、部分的には機械に代替されて失業があっても、全体的には市場が拡大し、新しい仕事が生み出されて、大きな問題にならなかった。「今回もそうなのではないか?」。しかし、著者はとても丁寧な説明によって、この考えが楽観的に過ぎると教えてくれる。

 ただし悲観にくれるのは早い。著者は、多くの人が失業して貧しくなるディストピアか、全ての人々が豊かさを享受できる社会か、私たちはまだ選べる、と言っている。第5章で、後者の選択の方法として「ベーシックインカム(BI)」を、著者は提言している。

 実はBIのことは帯にも「はじめに」にも書いてある。私は、BIについて最初はとても懐疑的だったのだけれど、読み終わってみると「これしかないんじゃないか」と、思うようになった。

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