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2016年10月 2日 (日)

トオリヌケ キンシ

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2014年10月15日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2014年の発行だけれど、現在のところ著者の最新刊らしい。表題作の「トオリヌケ キンシ」の他、「平穏で平凡で、幸福な人生」「空蝉」「フー・アー・ユー」「座敷童と兎と亀と」「この出口の無い、閉ざされた部屋で」の計6編を収録した短編集。

 「トオリヌケ キンシ」は、小学生3年生の男の子の話。「トオリヌケ キンシ」と書かれた札がある、50センチぐらいの隙間。そこに入って行くと、古ぼけた木造の家があった。

 「平穏で~」は、ウォーリーとか四つ葉のクローバーとかを、すぐに見つけることができる「超能力」を持った女の子の話。「空蝉」は、優しかったお母さんが突然、乱暴に怒鳴り散らす「バケモノになってしまった男の子の話。

 「フー・アー・ユー」は、「相貌失認」という病気で、人の顔が識別できない高校生の男の子の話。「座敷童と~」は、近所の家に突然やって来て「家の中に、座敷童がいる」と言ったおじいちゃんの話。「この出口の無い~」は、寝ている時に見る夢を自在にコントロールしようとしている浪人生の話。

 全体的に現実と空想の境界のような曖昧さが漂う。50センチの隙間は異世界への通路のようだし、「超能力」や「バケモノ」や「座敷童」が出て来る。話しかけてくる人が誰だか分からないというのも、世界を曖昧にする。最後の話は、そもそも「夢」が主題になっているし。

 ところが、読み進めていくと、どこかで話がストンと現実に着地する。ライトがついて急に明るく照らされたように。こういう「驚き」の仕込みはミステリ作家ならではの手際だ。

 最後に。どの作品も「フー・アー・ユー」の「相貌失認」のように「病気」と深く結びついている。これは、著者自身が大きな病を患ったことと関連があるのだろう。著者は、2010年に急性白血病で緊急入院し抗癌治療を受けられている。本書の短編は、表題作を除いてすべて、復帰後に「文藝春秋」に掲載した作品だ。

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人生の途中、はからずも厄介ごとを抱えることになった人々。でも、「たとえ行き止まりの袋小路に見えたとしても。根気よく探せば、どこかへ抜け道があったりする。」(「トオリヌケ キンシ」より)他人にはなかなかわかってもらえない困難に直面した人々にも、思いもよらぬ奇跡が起きる時がある――。短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語。 (収録作品) 高校に入ってから不登校・引きこもりになってしまったある少...... [続きを読む]

受信: 2017年11月21日 (火) 10時53分

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