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2016年9月25日 (日)

対岸の彼女

著  者:角田光代
出版社:文藝春秋
出版日:2007年10月10日 第1刷 2016年7月5日 第20刷
評  価:☆☆☆(説明)

 2004年下半期の直木賞受賞作。著者の代表作のひとつ。

 主人公は2人の女性で、それぞれの物語が交互に進む。一人は横浜から群馬県の田舎町に引っ越して来た高校生の葵。もう一人は結婚して仕事を辞めて専業主婦をしている小夜子。読み始めてすぐに分かるのだけれど、二つの物語は時代が違っていて、葵はずっと後になって小夜子と出会うことになる。

 葵の物語は、同級生のナナコとの交流を描く。クラスの中で「なんとなくできたグループ」から弾き出されないように懸命になっている葵と、どこのグループにも属さずにいるナナコ。共通点はあまりなかったけれど、なぜか放課後には良く二人で過ごした。

 小夜子の物語は、葵が立ち上げた会社での小夜子の働きぶりと気持ちを描く。小夜子はふとしたことがきっかけで、働こうと決意した。そして得たのは、葵の会社の新規事業である「ハウスクリーニング」の仕事だった。

 そんなわけで、本書には4人の女性が登場する。高校生の葵とナナコ、30歳半ばの小夜子と葵。もちろん葵は一人の人物なので、正確には「3人の女性」なのだけれど「高校生の葵」と「大人の葵」が、十数年の時間が間にあるとはいえ、読んでいてもどうにも繋がらない。別の人間のように思えるのだ。

 面白かった。並行して描かれる全く違う2つの物語が楽しめた。一方は、鬱屈を抱えながらも、女子高校生らしい「友情」を育む物語。それが一転して...。もう一方は、仕事に努力や工夫をしても周囲に認められない、なかなか気の晴れないつらい物語。天井の低い廊下をずっと歩いているような気持ち。

 それぞれの物語が「読ませる」完成度の高いものだった。でも、本書の醍醐味は、2つの物語をより合わせることで浮かび上がった、ほとんど描かれていない「葵の十数年」にあるように思う。「八日目の蝉」は「事件の後」を描いた秀作だった。本書の「大人の葵」も「事件の後」を描いている。同じ着眼点だと思う。

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» 『対岸の彼女』 [観・読・聴・験 備忘録]
角田光代 『対岸の彼女』(文春文庫)、読了。 直木賞受賞作ですが、納得の読後感。 専業主婦の小夜子が仕事を再開するに当たって出会った同い年の女社長・葵。 現在の2人の状況は小夜子の目を通して、そして高校時代の話は葵の目を通して描かれますが、 この構成が非常に計算されているように感じ、どっぷりと本作の世界感にはまってしまいました。 専業主婦で幼い子供が居る小夜子と、独身で...... [続きを読む]

受信: 2016年10月 2日 (日) 22時16分

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