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2016年7月 6日 (水)

スーツケースの半分は

著  者:近藤史恵
出版社:祥伝社
出版日:2015年10月20日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

  祥伝社の月刊小説誌「小説NON」に連載された8つの短編に書き下ろし1編を加えた連作短編集。1つのスーツケース、それは「目の覚めるような青」色の革のスーツケース、がすべての短編をつなぐ。

 主人公は短編ごとに入れ替わる。1編が男性で他の8編は女性。最初の4編は、今は29歳になっている大学時代の友達の4人の女性が、順番に主人公になって物語がすべり出す。卒業後はそれぞれの道を歩む4人の「群像劇」のように物語の幕が開く。

 作品順に主人公の4人を紹介する。真美は4人で唯一結婚している。夫は優しい人なのだけれど、気持ちのすれ違いもある。ニューヨークへ行きたいと思っている。花恵はオフィスクリーニングの会社のマネージャー。同居する両親との間にすき間を感じる。毎年のように香港に行くが、少し後ろめたいことがある。

 ゆり香は派遣社員。お金がたまるとたっぷりと休みを取って海外へ旅行にいく。今はいいが、20年後30年後を考えると胸がちりちりする。悠子はフリーライター。大学生の時に来て「一度で恋に落ちた」パリに取材に来た。仕事の不安定さが気持ちにも影響している。4人に共通するのは「これでいいのか?」「このままでいいのか?」という気持ち。

 友達4人全部のストーリーが終わって、次はどうなるのか?と思ったら、わずかなつながりから、新たな人のストーリーが次々と継がれていく。友達4人の群像劇かと思った物語は、もっと広い世代を巻き込んだ大きな群像を描きだした。偉そうに言って恐縮だけれど、実にうまい。

 主人公全員の手元に、あの革のスーツケースがある。友達4人の間では「幸運のスーツケース」と呼んでいる。みんなあのスーツケースを持って旅に出て、いいことがあったのだ。ただ、その「幸運」は与えられたものではなく、つかみ取ったものだ。そういうことが、短編を順に読んでいくと分かる仕掛けになっている。やっぱり、実にうまい。

 最後に。主人公以外も含めて女性がカッコいい。男もしっかりしたいものだ。

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