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2016年7月16日 (土)

こころの処方箋

著  者:河合隼雄
出版社:新潮社
出版日:1998年6月1日 第1刷 2016年5月25日 45刷
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は出版取次のトーハンが発行する「新刊ニュース」という月刊情報誌に、1988年から1991年まで連載したエッセイをまとめたもの。10章ほどを書き加えて1992年に刊行された。

 著者は臨床心理学を専門とする心理学者。著者本人は、本書の中では「心理療法家」と自分の職業を言っておられる。このエッセイを書いたころは、心に病を抱えた患者さんを実際に診ていた。まさに「こころの処方箋」を書いていたわけだ。

 全部で55編のエッセイを収録。目次を見ると「人の心などわかるはずがない」「マジメも休み休み言え」「ものごとは努力によって解決しない」等々、あれっ?と思わせるタイトルが散りばめられている。

 読みながら「なるほど」と思ったり共感したりしたところに、付せんを貼っていると、10カ所余りになった。どれも軽妙ながら含蓄を感じる。どこかで披露したいと思うが、ここですべて紹介すると長くなるので1つだけ。

 「二つの目で見ると奥行きがわかる」人間は目が二つあることで遠近の判断がしやすくなっている。物事を見るときもその「奥行き」を知るためには、二つの異なる視点を持つことが必要だ、という話。

 近頃は他人の意見をバッサリ切って捨てるような言論が蔓延している。「私は正しい、相手は間違っている」という、1つの視点からしか見ないから、そういうことができる。やっている方が気持ちいいかもしれないけれど、それでは議論にならない。

 これは、前に読んだ「本を読む人だけが手にするもの」という本に書いてあった「複眼思考」の話と同じ。同じと言えば、先日読んだ「夜中の電話」での井上ひさしさんと同じく、河合先生も人生をその人の「作品」と表現されていた。胸に落ちるものがあって、少しよく考えてみようと思っている。

 最後に。読んでいて30数年前の文章だと言うことを時々忘れる。それほど今にも通じる言葉の数々だった。そして、これは随分昔の本なのだと思い出す度に、「(2007年に亡くなっているので)あぁ河合先生は、もういらっしゃらないのだ」と寂しい気持ちにもなった。

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