« 2016年5月 | トップページ | 2016年7月 »

2016年6月

2016年6月30日 (木)

星のかけら

著  者:重松清
出版社:新潮社
出版日:2013年7月1日 発行 2016年5月30日 3刷
評  価:☆☆☆(説明)

 小学館の「小学六年生」に連載された作品に改稿を加えた、文庫オリジナル作品。

 タイトルの「星のかけら」とは、「それを持っていると、嫌なことやキツいことがどんなにたくさんあっても耐えられる」というお守りのこと。夜になると街灯や月明かりに照らされて、道路のあっちこっちでキラキラ光っているらしい。

 主人公のユウキは小学6年生。学校でも塾でも、いじめにあっている。ユウキを助けてくれる友達もいる。学校では幼稚園の頃からの幼馴染のエリカ、塾では違う学校に通っているマサヤ。「星のかけら」のことはマサヤから聞いた。「おまえには星のかけらが必要だと思う」とも言われた。

 ユウキとマサヤは「交通事故の現場に落ちている」と言うウワサに従って、事故があった現場に星のかけらを、暗くなってから探しに行く。そこで、小学2~3年生の女の子のフミと出会う。フミは本物の星のかけらを持っていて、それを街灯の明かりにかざすと不思議なことが起きた...。

 小学生向けということもあって、希望の見える物語になっているけれど、いじめや引きこもりや家庭内暴力が「いまそこにある」こととして描かれる。子どもが抱える人間関係の問題を、大人は軽く見がちだけれど、実は切実で重大な問題だったりする。そして場合によっては「死」さえ、子どもたちの身近にあることを、本書は気付かせてくれる。

 エリカは、素直でいて大人びてもいる。「よく十二歳まで生きてたなあって思わない?」とユウキに聞くシーンがあって、続けてこう言う。「死んじゃうかもしれないタイミングはたくさんあって、でも、うまい具合にそこにぶつからずに生きてて..そもそもニッポンじゃなくて(中略)そういうことを考えたら、生きてるって、なんか、すごいことだと思うわけ」。私が五十二歳まで生きているのは、奇跡の中の奇跡なのだと思う。

 にほんブログ村「重松清のトラバ」ブログコミュニティへ
 (重松清さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「星のかけら」 固定URL | 2.小説, 28.重松清 | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月26日 (日)

ギャル男でもわかる政治の話

著  者:おときた駿
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:2016年6月20日 第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 帯には「人気ブロガー議員が教える史上初のエンタメ政治入門書!!」と書いてある。元は「MTRL:明日のモテるを配信中!)」という、男性向けファッションウェブマガジンの企画らしい。試しに覗いてみたけれど、私には縁遠そうなサイトだった。

 東京都議会議員のおときた駿さんが、4人の20代の男性に、政治についてレクチャーする、と言う企画。無粋なことをわざわざ言うと、この4人は「ギャル男」と呼ばれる若者たちで、彼らは、政治のことなんて分かっていないし興味もない、という属性らしい。

 とにかく「分かりやすい」ことが大事で、飽きないようにギャル男くんたちが興味を持ちそうに話さないといけない。そのためには、マンガやアニメやアイドルを例えに使う。時々は「いいところに気づいたね」と褒めたりする。

 一般的には例えを使うと、本来の意味からズレてしまいがちだけれど、うまく例えられていたと思う。「政党」を「ワンピースの海賊団」に、「日本とアメリカ」の関係を「三代目J Soul BrothersとEXILE」に、「社会保障」を「ドラえもん」に。その他にドラゴンボールやスラムダンクやAKB..などが引き合いに出される。

 それなりに面白かった。テーマも「そもそも政治とは?」から、憲法、財政、年金、エネルギー問題、社会保障、表現の自由、と幅広い。4人のギャル男くんたちも、選挙に行くことになりそうだし。こういう政治の本ががあってもいい。

 一方で怖さも感じた。「何も知らない」ことを隠さないギャル男くんたちは、素直になんでも吸収してしまう。自らを「リバタリアン(自由主義者)」と位置付ける著者が説明すれば、その思想を肯定的に捉えてしまう。「終身雇用を廃止して、クビを切っても罪に問われない、とすればいい」なんてことを、あっさり受け入れてしまう。

 公平のために言うと、本書ではこの後に「再雇用のサポートを充実」というフォローがはいる。そこは評価できる。ただし、そうしないこともできたし、フォローの部分がギャル男くんたちの心に残ったかどうかも疑問。若者を集めて、ある思想を植え付けるのはとても簡単なんだと思った。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「ギャル男でもわかる政治の話」 固定URL | 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月22日 (水)

武士道セブンティーン

著  者:誉田哲也
出版社:文藝春秋
出版日:2008年7月10日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「武士道シックスティーン」の続編。磯山香織と甲本早苗の前作の翌年、高校2年生の春から冬までの剣道にかける青春を描く。

 今回は、香織と早苗の別れと気持ちのすれ違いから始まる。早苗が遠くへ転校する出立の東京国際空港、3月31日。早苗は住所も学校も決まってないと言う。さらに「剣道はもう、やんないかも」と。全部ウソだ。

 なんでまたそんなウソをついたのかは、早苗の口から説明がある。「早苗ちゃん、それは間違ってるよ」と言ってあげたいような理由。でも、早苗がそう考えても仕方がない。「仲、良かったのかな」という早苗の独白が示すように、二人の間柄はとても微妙だからだ。

 微妙と言っても結びつきが弱いわけではない。「親友」という間柄より、結びつきが強いようにさえ感じる。香織からの一方的な引きの強さがないことはないけれど、共に高みを目指す「同志」。それもちょっと違う。もう少しお互いを必要としあう間柄。

 この後、香織はこれまで通りに東松学園高校で、剣道に打ち込む。後輩の田原美緒に懐かれ調子を狂わされながら。早苗は福岡南高校という剣道の名門高で、東松との違いに戸惑いながら練習に励む。黒岩レナという剣道部の友達もできた。

 著者は多くの要素を持ち込んできた。2年生になった香織の先輩後輩の関係、転入した早苗の新しい場所での葛藤、それぞれの家族の変化、そして剣道が持つ「武道」と「スポーツ」の多面性。二人以外の登場人物にも粒ぞろいになり、先が楽しみになった。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「武士道セブンティーン」 固定URL | 2.小説 | コメント (0) | トラックバック (1)

2016年6月19日 (日)

夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉

著  者:井上麻矢
出版社:集英社インターナショナル
出版日:2015年11月30日 第1刷 12月19日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は2010年に亡くなった、小説家・劇作家の井上ひさしさんが、三女の麻矢さんに残した言葉をまとめたもの。麻矢さんは、井上ひさしさんの劇場である「こまつ座」を引き継いで、代表取締役社長を務める。

 父が遺した言葉を娘が記す、高名な作家の父娘愛を感じる話だけれど、本書の場合はそれだけではない。私にはそれは、父から娘への「命の引継ぎ」のように思えた。ここに記された言葉は、がんの告知を受けてまもなく、ひさしさんが麻矢さんに、病院から日課のようにかけた電話で伝えられている。それは夜中の11時すぎから明け方まで、時には朝の9時まで続いたそうだ。

 傲慢に聞こえるかもしれないけれど、ひさしさんは自分の作品が自分の死後も生き続けることを構想していたらしい。チェーホフやシェイクスピアの作品がそうであるように。そのために必要なことを麻矢さんに託した。

 過去には確執もあったそうだし、どこまでも自己中心的な行いに見えるかもしれない。しかし、このことが麻矢さん自身に生きる芯を与えたのだから、やはり父娘愛でもあるのだ。

 そして全部で77もある言葉のいくつかは、麻矢さんを越えて私たちにも語りかけてくる。だからこその書籍化だ。「問題を悩みにすり替えない。問題は問題として解決する」「自分という作品を作っているつもりで生きていきなさい」「決定的な言葉は最後まで口から出さない」折に触れて思い出したい。

 最後に。ひさしさんはイタリアのボローニャという街を愛していた。そのことは「ボローニャ紀行」というエッセイに、詳細に綴られている。本書ではそのボローニャのことも書かれていて、麻矢さんも訪れたそうだ。そこでひさしさんの足跡に出会う。縁がつながる。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉」 固定URL | 4.エッセイ | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月16日 (木)

18歳選挙権ガイドブック

著  者:川上和久
出版社:講談社
出版日:2016年6月8日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は政治心理学者。政治心理学という学問にあまりなじみがないのだけれど、人々の政治的行動(選挙、世論操作、大衆運動など)について研究する社会心理学の一分野、だそうだ。ちなみに公益財団法人の「明るい選挙推進協会」の評議員も務めておられる。

 タイトルを見れは説明の必要はないかと思うが、本書は公職選挙法の改正によって、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられたことを受けたもの。国政選挙ではこの7月の参院選から適用され、18歳と19歳の若者が選挙権を得る。

 その「新有権者」に向けて書かれた部分もあるが、本書の目的はそれより広く、これを契機に選挙について改めて考えることにある。これまでだって、20歳になれば自動的に選挙のことが分かるはずもない。多くの人は選挙について深く学んだり、考えたりしたことがない。今一度おさらいをしてみよう、ということなのだ。

 章立ては「政治に潜む3つの落とし穴」「「18歳」とはなにか」「「民主主義」とはなにか」「「主権者教育」とはなにか」「「7つの課題」とはなにか」」「「18歳選挙権」投票ガイド」の6章。

 全体として「選挙権」や「民主主義」に関する、歴史や意義といった内容が多く、「今度の選挙でどうすればいいの?」という、お手軽なガイドブックではない。コンパクトにまとまった教科書、といった印象だ。

 「政治に潜む3つの落とし穴」が第1章にあるのは、「ここだけでも」という大事なことだからかもしれない。3つの落とし穴とは「無関心と無気力」「センセーショナリズム」「情報操作」。最初の「無関心と無気力」も含めて、これらの3つを「権力者が意図して行う」場合がある、という指摘は心に留めて置いた方がいいだろう。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「18歳選挙権ガイドブック」 固定URL | 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月12日 (日)

神々の魔術(上)(下)

著  者:グラハム・ハンコック  訳:大地舜
出版社:KADOKAWA
出版日:2016年2月29日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は、1995年の「神々の指紋」以降、考古学の定説を覆す著作を精力的に出版している。その主張は多岐にわたるが「エジプト文明などの四大文明の前に、高度なテクノロジーを持った「超古代文明」が存在した」という確信がその中心となっている。

 本書では著者は、世界各地に残る「巨石遺跡」に焦点を当てる。トルコのギョベックリ・テペ遺跡、レバノンのバールベック、海を越えたペルーのサクサイワマン、そしてイースター島。

 ギョベックリ・テペ遺跡は、放射性炭素年代測定によって、紀元前9600年まで遡れることが分かっている。エジプト第一王朝よりも6000年も前。そしてそれは氷河期の終わりにあたる。地球規模の激変期の終わりに建設が始まったことになる。

 浮彫が施された列柱のうえに巨石が載せられている。規模はストーンヘンジの30倍はあると予想される。そんなものを建設するテクノロジーを持った文明が、今から11600年前に存在した。しかし問題はそこではない。その文明が「忽然と登場した」ことだ..。

 本書はこの後、「忽然と登場した」理由を解き明かしていく。そこにはあの「有名な大洪水」の論証がある。これは著者の新しい知見で、なかなか読み応えがあった。

 正直言ってよく分からないことが多いのだけれど、著者の一連の著作が好きだ。「神の刻印」「惑星の暗号」「天の鏡」「神々の世界」「異次元の刻印」すべて読んだ。批判が多く「トンデモ本」とも言われていることは知っている。私も、その指摘がまったく的外れではないのだろうとは思っている。

 ただ、お話として面白いし、一片の真実はあるように思う。主流派の学者は迷惑なことだろうけれど(あるいは完全に無視か)、「定説」と「真実」は、実はあまり強い結びつきはない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「神々の魔術(上)(下)」 固定URL | 5.ノンフィクション, 54.グラハムハンコック | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月 9日 (木)

著  者:東山彰良
出版社:講談社
出版日:2015年5月12日 第1刷 7月9日 第4刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2015年上半期の直木賞受賞作品。舞台となる台北の街は著者自身の出身地。主人公は著者より一回り上の世代の設定だけれど、抗日戦士だった祖父のことなど、自伝的な要素が強い作品と思われる。

 主人公は葉秋生(イエチョウシェン)。物語の始まりの時の1975年には、台北の街に住む高校生で17歳だった。布屋を営む祖父のもと、祖母、父母、叔父、叔母と大家族で住む。国民党の戦士だった祖父は、幾度も死線をくぐり生き延びた「不死身の男」だった。その祖父が、自身の店の中で殺される。

 物語は、秋生の日常を切り取りながら、その後の10年ほどを描く。喧嘩、悪友との友情、ヤクザとの抗争、軍隊生活、幼馴染との恋、別離、新しい恋。こうしたことを物語の横糸に、祖父の過去と死にまつわる謎が縦糸になっている。

 面白かった。40年前の台北はエネルギーに溢れている。時にそれは暴走気味になって、読んでいるだけで息が浅くなる。随所に出てくる狐火などの「超常現象」も含めて、何が起こっても不思議じゃない勢いが、緩むことなく最後まで続く。

 読み始めは台湾の人の名前が読みづらいけれど、すぐに慣れる。時間的には一世代前に起きた、日中戦争とそれに続く国共内戦が背景にあるので、少しでもその知識がある方がいいかもしれない。ただ、そんなことは気にせずに読んでも構わないけれど。

 ひとつ思ったこと。本書の前の直木賞受賞作「サラバ!」と似たところがある。それは人の半生(というには本書は少し短いけれど)を追ったドラマであること。長い時間軸で展開する物語には、それに対応した構想力や筆力が必要だろう。そうした作品が続けて評価されたのには、何か理由があるのかもしれない。ないのかもしれない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「流」 固定URL | 3.ミステリー | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月 8日 (水)

レビュー記事が1000本になりました。

1000 先日の「君の膵臓をたべたい」の記事で、このブログのレビュー記事が1000本になりました。2002年の9月に書いた「海底二万海里」が1本目で、それから13年と9カ月、続けていればちょっとした財産ができるものだなと、我ながら感心しています。そして、いろいろなことに感謝です。

 2年前にレビュー記事が800本になった時にもやりましたが、ちょっと分析してみました。

 評価は☆5が23、☆4が431、☆3が500、☆2が41、☆1が2でした(評価しなかったのが3)。☆3がちょうど半分の500で一番多いですが、800本の時は半分以上あったので、最近は少し傾向が変わってきています。私としても少し積極的に評価を付けていこうと思ってやっています。☆5は約2%。厳選された作品です。

 カテゴリーは小説が279、ファンタジーが194、ミステリーが172、その他が109、経済・実用が99、ノンフィクションが90、エッセイが31、オピニオンが22、雑誌が4です。上位3つは物語でこれで約65%、基本的に娯楽としての読書ですね。

 ただ、これも800本の時より割合が下がって、他のジャンルのものを読むことが増えています。特に、政治や社会への関心が高まる出来事が多いためか、さまざまな人の意見や提言を読むことが多く、それを「オピニオン」というカテゴリーを作ってまとめました。

 1000本になったら記念に何か作ろうと思っていました。ちなみに10周年の時には、レビュー記事のマップを作りました(「本読みな暮らし」マップ(FLASH版)(画像版))。

 今回はこんな大がかりなものを作る気力体力がありませんが(そもそもFLASHは動かない端末が増えているし)、前からあればいいなと思っていた、☆の数別の記事一覧を作りました。ご興味があるようでしたら、右のサイドバーもしくは、このリンクからどうぞ

 最後に。いつも言っていることですが、こうして本が読めるのは、暮らしに大きな支障がないからです。そのことは本当にありがたく思っています。その幸せを感じつつ、これからもレビュー記事を積み重ねていきたいと思います。

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「レビュー記事が1000本になりました。」 固定URL | | コメント (2) | トラックバック (0)

2016年6月 5日 (日)

君の膵臓をたべたい

著  者:住野よる
出版社:双葉社
出版日:2015年6月21日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 今年の本屋大賞第2位。公式Twitterによると55万部突破だそうだ。トーハンの調べで2016年上半期ベストセラー「単行本・文芸書」で第2位(ちなみに第1位は「羊と鋼の森」。本屋大賞の効果は抜群だ)。とにかく売れている本。

 主人公は高校2年生の「僕」。「僕」はクラスメイトの山内桜良が、余命数年の病に侵されていることを知る。そして読者は、桜良が亡くなってしまうことを、物語の冒頭の1行目で知らされる。物語は「僕」が桜良の秘密を知ってから、彼女が亡くなるまでの二人の交流を描く。

 浅いようで深い、深いようで浅い、そんな物語だった。桜良が余命数年とは思えない溌剌さで、自分の病気もジョークにしてしまう。おみくじで「病、やがて治る」とあったのに対して「治んねぇっつうの!」と悪態をつく。浅いと言うかノリが軽いのだけれど、桜良の心の中までは覗けない。そこには深い淵があるのかもしれない。

 「深いようで浅い」と感じたのは「構成」について。エピソードをもう少し積み重ねて欲しかった。詳しくは書かないけれど、さまざまな思わせぶり(私が勝手に思っているだけだけれど)な出来事が起きるのだけれど、ただ流れて行ってしまったように思う。

 そうそう「僕」にはちゃんと名前はあるのだけれど、【秘密を知ってるクラスメイト】くんとか、【根暗そうなクラスメイト】くんとか書かれている。その時々の相手が、自分をどう思っているかを「僕」が推し量った言葉のようだ。ちょっと面白い仕掛けではある。

 最後に。これまでにも何度か書いているけれど、私は「死」と「感動」を結びつける物語が好きじゃない。「読後、きっとこのタイトルに涙する」「ラスト40ページは涙涙涙」という、本書の帯の惹句もちょっとイヤだ。これがなければ泣けたかもしれない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「君の膵臓をたべたい」 固定URL | 2.小説 | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月 1日 (水)

ネット炎上の研究

著  者:田中辰雄 山口真一
出版社:勁草書房
出版日:2016年4月25日 第1版第1刷 5月20日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の二人は共に、大学の計量経済学の研究者。経歴を拝見すると、どうも師弟関係にあるのでは?と推測される。本書は「ネット炎上」を、計量経済学の統計分析の手法を用いて解き明かしたレポート。

 ネットにおける炎上事件を取り扱った本は「ネットが生んだ文化」「ウェブはバカと暇人のもの」などがあった。特に「ネットが生んだ文化」は、「炎上」がごく少数の人によって引き起こされることを明らかにしたところなど、なかなか読み応えがあった。

 本書の分析でも、この1年で炎上事件に書き込んでいるのは、インターネットユーザの0.5%としている。しかも、その多くは一言感想を述べる程度で、直接当事者に攻撃を加えるのは、0.00X%のオーダー(つまり10万人に数人)と算出している。

 これを踏まえた上で、本書の特長は2つ。ひとつ目は炎上に加わる(率の高い)人のプロフィールをはじき出したこと。若い/子持ちの/男性で/年収が高く/ラジオをよく聞き/ソーシャルメディアをよく使い/掲示板に書き込む/ネットでいやな思いをしたことのある人。住んでいる場所や結婚や学歴などは関係がなかった。どうだろう?私は、ちょっと意外だった。

 もうひとつは、社会的コストの観点から炎上を考察したこと。炎上を放置したり、回避するために発言を控えたりすることは、自由で多様な言論空間を損なう。それは本来得られるネットの効用を失うという意味で、社会的コストになる、という考え方だ。

 詰めが甘いところはあった。調査結果から数字を理詰めて分析してきたのに、最後の方で「仮に1割とすれば」と、唐突に裏付けのない仮定が入る。4つの炎上事例(だけ)から、攻撃を行うのは「コミュニケーション能力に難がある一部の特異な人」と結論してしまう。(私の理解では)数値の誤植もある。

 ただし、そういうことを差し引いても、新しい知見を示した優れたレポートだと思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「ネット炎上の研究」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年5月 | トップページ | 2016年7月 »