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2016年3月

2016年3月30日 (水)

ぼろイスのボス

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:野口絵美
出版社:徳間書店
出版日:2015年4月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の近刊。5年前に亡くなっていて、もう新しい作品は出ないはずだけれどと思っていた。この作品は既刊の短編集の「魔法!魔法!魔法!」に収録された1編に、佐竹美保さんの挿絵をふんだんに付けて独立させたものだそうだ。

 主人公はマーシャとサイモンの姉弟。二人の家には、むらさきとオレンジと水色のしましまの生地のイスが、昔からあった。クッションは傾いでいて、べたべたする茶色いシミが付いた、座り心地がひどく悪いイス。

 近所のおばさんが、そのイスに、古道具屋から持ってきた手品セットの液体をこぼしたり、杖でたたいたりした。翌日になると、そのイスがなくなって、その代わりに、むらさきとオレンジと水色のしましまの服を着た、太った人がいた。そこから大騒動...という物語。

 ドタバタが楽しかった。「近所のおばさん」というのが、「いつも忙しそうにしているけど、たいへんな仕事は他の人にやらせる人」で、こういう人は、著者の作品に時々でてくる。そんな所も面白かった。

 英語の原題は「Chair Person」。もちろん「Chairperson:議長」と「椅子人間」のダブルミーニング。

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2016年3月27日 (日)

個人を幸福にしない日本の組織

編  者:太田肇
出版社:新潮社
出版日:2016年2月20日 発行
評  価:☆☆(説明)

 著者は組織学者。「組織論」というと、目標を達成するための組織運営のあり方を研究する学問だけれど、著者の研究テーマは違うようだ。著者は、個人の視点から組織を研究している。「最終的に個人の利益につながらないような組織は無意味」と言い切る。

 組織の視点と個人の視点では見えるものが違う。例えば、会社の業績がよいことが、従業員によってもよいとは限らない。休日返上で働かされたり、サービス残業が増えたりするからだ。

 このように、ある意味正反対の視点から見たためか、一般的な通説とは逆の見解が並んでいる。「組織はバラバラなくらいがよい」「管理強化が不祥事を増やす」「厳選された人材は伸びない」「大学入試に抽選を」「地方分権は自由や平等、公平を脅かす危険がある」

 なかなか面白い切り口からの論考で、問題提起としては興味深い。例えば「管理強化が不祥事を増やす」では、不祥事を6つの類型に分類して、それぞれに及ぼす管理強化の影響を分析する。確かに管理強化が必ず不祥事の減少につながるとは言えない。

 問題は「それならどうすればいいのか?」。著者も提言を試みてはいるが、それが頼りないことが残念だ。あとがきに「改革のシナリオを十分に示せなかったかもしれない」と書いている。大事なことが書かれていないという感じがぬぐえない。そういうわけでちょっとカラいけれど☆2つ。

 ただ、個々の指摘は有用なものもあった。日本人は「勤勉でもなければ」「仕事に対する熱意もなく」「会社への積極的な帰属意識はなく」「チームワークも良いとはいえない」。通説とは反対だけれど、こちらの方が真実だと思う。

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2016年3月23日 (水)

「学力」の経済学

著  者:中室牧子
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:2015年6月18日 第1刷 10月15日 第11刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の肩書は「教育経済学者」。教育経済学とは、本書の説明によると「教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野」だそうだ。もう少し簡単に言うと「教育に関する施策の効果をデータを使って測る」学問だ。

 こういった学問が脚光を浴びるのは、それとは裏腹な状況があるからだ。古市憲寿さんが「保育園義務教育化」の中で、教育再生会議の議事録を指して「偉いおじさんたちの「私の経験」披露合戦」と表現している。

 教育評論家を称する人のものも含めて、巷に流布する教育論は「個人の体験」か、もっとひどいものは「単なる思い込み」がほとんどなのだ。それが他の子どもにも当てはまる、という保証はどこにもない。

 本書は様々な教育に関する疑問を、「個人の体験」や「思い込み」ではなく、教育経済学の手法によって検証する。例えば「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってもいいの?」という問いがある。子育てに一家言ある人ほど、答えはNoだろう?ご褒美のために勉強するのでは、「勉強すること自体の楽しみを失ってしまう」というのがその理由。

 実験とデータから導かれた答えは逆で、ご褒美で釣ってもいいらしい。「勉強すること自体の楽しみを失う」についても、統計的に有意な結果は出なかった。しかも「効果的なご褒美の与え方」というのがある。詳しく知りたい方は本書を読んでももらいたい。

 とてもためになった。「教育」を語る(「一億総評論家」と言うぐらい教育を語る人は多いのだけど)人には是非読んでもらいたい。何と言っても子どもは「社会の宝」であるし、「教育」は未来への投資なのだ。「個人の経験」より「実験とデータ」の方が確実だろう。

 最後に。「子どもは一人一人ちがうのだから、実験やデータではわからない」という意見には一理ある。統計によってこぼれ落ちるものもあるだろう。そこは「個人の体験」よりは、多くの子どもに当てはまる、というだけで、やはり家庭や学校などでのキメ細やかな対応が必要なところだろう。

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2016年3月20日 (日)

先生の隠しごと 僕僕先生

著  者:仁木英之
出版社:新潮社
出版日:2011年4月20日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「僕僕先生」シリーズの第5弾。元ニート青年の主人公の王弁と、彼が師と仰ぐ仙人の僕僕先生の旅を描く。前作の「さびしい女神」で訪れた苗人の国を発って、「ラクシア」という名の新興王国に着く。

 「ラクシア」はラクスという若い王が治める国。「ラクシア」は、ラスクの故郷の言葉で「光の国」を意味する。彼はここに、身分も貧富の差もなく、人々を縛る法さえない、自由な理想郷を造ろうとしていた。王弁の言葉を借りれば「胡散臭い」。

 人の心の内側まで見通せる仙人の僕僕先生なら、こんな胡散臭い話なんかすぐに見破れそうだ。しかし今回は、僕僕先生の態度がどうにも生ぬるい。ラクスが言葉巧みに語る理想に、取り込まれてしまったかのようだ。それには、はるか昔の神話の時代の、僕僕先生のの経験が関係していた。

 僕僕先生は、今回はあまり活躍しない。もちろん、ここぞという時には、なくてはならない。しかし今回は、王弁を始めとした、僕僕先生の旅の道連れとなった面々が、それぞれの特技を生かして、できることを最大限にして、そのことが事を動かす。

 前作に続いて、僕僕先生の素顔が垣間見える。この物語がこの先どこへ向かうのか楽しみだ。それにしても、「理想」とはこんなにも危ういものなのか。

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2016年3月17日 (木)

捏造の科学者 STAP細胞事件

著  者:須田桃子
出版社:文藝春秋
出版日:2014年12月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 いわゆる「STAP細胞」騒動を、新聞記者の目で追ったレポート。ある人から「小保方さんの「あの日」を読んだなら、合わせて読むといいよ」と言われて、手に取った。

 よく整理された優れたレポートだと思う。本書に記録された期間は、2014年1月の華やかな記者会見から、理化学研究所による検証実験の最中の11月まで。その間の新聞報道の通りで、小保方さんによる捏造を強く示唆する内容となっている。

 本書のもっとも注目すべき点は、渦中の人々の肉声を伝えていることだ。笹井氏や若山氏といった、論文の共著者や理研の幹部らに、メールや面談で取材をしている。特に笹井氏とのメールの往復は、当事者の心の内を知ることができて、貴重だと思う。

 読んでいて一つ気付きがあった。「STAP細胞」についての私の関心は「(本当のところ)STAP細胞はあるのか?」だった。しかし著者をはじめ多くの人(特に科学者コミュニティの)が、そうではなかったことだ。そしてその考えに理があることにも気が付いた。

 つまり、彼らの関心は「論文不正の真相究明」にあって、「STAP細胞の存在の真偽」は副次的なものだったらしい。著者は「検証実験」に熱心な理化学研究所の態度を強く批判している。研究者らに対しては「科学者の倫理より組織の論理を優先させた」と手厳しい。

 私も今は、再発防止の観点からも「真相究明」が大事であり、STAP細胞を再現できたとしても、それでOKとはいかない、ということは分かった。ただそれでも「論文が不正」「証明が不十分」をもってして「STAP細胞(現象)は捏造」という結論が、胸に落ちない。

 「STAP細胞(現象)はあるのでは?」と思う理由の一つは、亡くなった笹井氏の言葉。「自分の目が確信したものを「ない」ということは、たとえ、自分の実験でなくても、研究者である限り、できません」。笹井氏が見たものは真実(STAP細胞)ではないのか?そういう想いが未だに残る。

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「捏造の科学者 STAP細胞事件」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年3月12日 (土)

ザ・万字固め

著  者:万城目学
出版社:文藝春秋
出版日:2016年2月10日 第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」などの、奇抜な着想の楽しい物語を多く世に送り出す著者のエッセイ集。2013年に発行された単行本を文庫化。文庫化にあたって10編を新規収録して、本書には35編のエッセイが収められている。

 著者が日々体験したことを、親しい人に伝えているような感じ。まるで「あのなぁ、この前こんなことあってな..」と話しかけられているようだ。大阪生まれの著者らしく、面白そうに語って最後にはオチを付けて。

 例えば「ひょうたん」を育てる話が3編ある。栽培方法の本の購入をきっかけに、「全日本愛瓢会」なるNPO法人に入った。そして毎年ひょうたんを栽培している(3篇目には「五年目」と書いてある)。

 事実が淡々と書かれているだけなのに面白い。ちょっとしたことだけれど、クスッと笑えるとか、ほのぼのするとか、というエピソードが集められているからだ。「ずいぶん大きくなりましたねえ」と声をかけられて、「ええ。もう少しで収穫なんです」と答えたら、「いえ..お子さんのほう」、みたいな話。

 その他には、大阪の地下鉄を戦隊ヒーロー(レッドとかブルーとか)に例える話や、パソコンのカードスロットに違う種類のカードを差して抜けなくなった話など「どーでもいい(けど面白い)」話がいくつか。台湾で熱烈歓迎された話や、イタリアで置き引きにあった話など「ほーそんなことが..」という話も。

「2011東京電力株主総会リポート」と「2014ブラジルW杯リポート」は、ちょっとマジメな万城目さんが顔を出す。森見登美彦さん、綿矢りささんとの鼎談も興味深い。京都橘大学での講演の抄録らしいけれど、できれば全部聞きたい。

 最後に。「すべての大阪、わたしの大阪」から引用。
いや、大阪の人たちならやりますよ。なぜなら彼ら、彼女らは世界で一番、アホなことを真面目な顔でやってのける人々だからです

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「ザ・万字固め」 固定URL | 26.万城目学, 4.エッセイ | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年3月 9日 (水)

ジェネラル・ルージュの凱旋

著  者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2007年4月22日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ヒット作「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥シリーズ(著者は「東城大学シリーズ」としているそうだ)」の第3作。大学病院で起きた収賄疑惑事件を追う。

 読み始めてすぐに、強烈な既視感。「これ前に読んだことある?」と疑問が湧いた。実は、本書が描くのは、前作「ナイチンゲールの沈黙」と、同じ舞台で同時並行的に起きたもう一つの事件。だから当然、前作と同じ出来事が本書でも起きる。私の既視感の原因はそういうこと。

 主人公は田口公平。東城大学医学部付属病院で「不定愁訴外来(通称愚痴外来)」の責任者。ある日、田口が委員長を務める「リスクマネジメント委員会」宛に文書が届く。「救急救命センターの速水部長が、業者と癒着して収賄している」という告発状だ。

 物語は、速水部長は本当に収賄をしたのか?その場合の処分はどうなるのか?そもそもこの告発状は誰が何の目的で出したのか?といった、ミステリーとして展開される。

 面白かった。これまでのシリーズ3作の中で一番楽しめた。悪者の悪者っぷりが良かったし、看護師たちの活躍も痛快だった。そして何よりも、ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)こと、救急救命センターの速水部長が(収賄の容疑者なのに)カッコいい。

 「キャラの立った」登場人物も、このシリーズの魅力。ただし今回は、それは少し控えめだった(新登場の姫宮さんはすごくよかった)。そのおかげもあって、シリーズの主題がよく見えてきたように思う。

 それは、現代医療が抱える「医療と経営と倫理」の問題に切り込む、コミカルにも思えるストーリー展開には似合わない、ずっしりと重いものらしい。

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2016年3月 6日 (日)

国ってなんだろう?

編  者:早尾貴紀
出版社:平凡社
出版日:2016年2月18日 初版第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 サブタイトルは「あなたと考えたい「私と国」の関係」。安倍首相が、「在任中に成し遂げたい」と発言されたこともあり、憲法改正が熱を帯びてきた。そんな時に本書を目にして、興味が湧いたので手に取ってみた。「憲法改正」というのは「国のあり方」を考えることだからだ。

 本書は「中学生の質問箱」というシリーズの1冊。専門家の先生が中学生の質問に次々と答える、という体裁で話が進む。「「国民国家」はいつはじまったの?」のいう質問からスタートする。とても中学生の質問とは思えないけれど、まぁいいことにしよう。

 今の「国」のあり方は、「国民国家」と呼ばれるもので、その国に住む住民を「国民」という一つのまとまりとして統合することで成り立つ。その端緒は18世紀末のフランス革命にある。本書は、このように「そもそも」の歴史から「国」を論じ、その後、ホロコースト、イスラエルの誕生と、まずは西欧の状況をまずは説明する。

 続いて、日本における「国民国家」の誕生と言える「明治維新」から、太平洋戦争とその後までを俯瞰する。最後に、現代の「国」のあり方を論じるなかで、中東の問題、憲法の問題、原発事故のことなどを幅広く取り上げる。「国」って何?という問いに対する答えは、必ずしも明確にはなっていないけれど、これで輪郭はつかめるようになる。

 全体を通して繰り返されるのは「国民」とは誰か?ということだ。「日本人」という集団が自明のものとして存在するように錯覚しがちだけれど、そうではない。「日本人」はどの範囲を指すのか?の線引きは難しい。特に注意を必要とするのは、日本人の範囲を決めることは、それ以外の人を排除すること、という点だ。

 「国」から排除の対象とされれば、権利が奪われ何の保護も受けられなくなる。「国民」は、もう少し緊張感を持って「国」に対する必要があるようだ。「国は経済や国の安全保障政策を優先して、それに合致しない個々人は、国民も含めて守る気がありあません。」と言い切る。原発事故がその一端を見せた。

 最後に。フランス革命から、ホロコースト、福島の原発事故、イスラム国まで、本書で取り上げるすべての出来事は、実はつながっている。その中で日本の立場は必ずしも良くない。人によっては、反日、自虐史観の塊だと映るだろう。私はそこまでではないけれど、何か前のめりなものを感じた。しかし、持論とは違う論説も一旦は受け止めねばならない。

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2016年3月 3日 (木)

ラオスにいったい何があるというんですか?

著  者:村上春樹
出版社:文藝春秋
出版日:2015年11月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 村上春樹さんが、旅行したり暮らしたりした世界の様々な場所について書いた、10編の紀行文集。

 ボストンと熊本の他の場所は、アイスランド、ギリシャのミコノス島よスペッツェス島、フィンランド、イタリアのトスカナ、ラオス、それからアメリカのニューヨーク、オレゴン州とメイン州のポートランド。欧米が多い中で東南アジアのラオスが目を引く。

 ラオスと聞いて、何が思い浮ぶか?浅学ゆえに私は何も思い浮かばなかった。メコン川が流れていたかな?とは思ったものの、「地獄の黙示録」のシーンが浮かんで「それはベトナムか」と思う始末(後で調べたら、メコン川はラオスもベトナムも流れていた)。まさに「いったい何があるというんですか?」という具合。

 ラオス以外の場所も含めて、村上さんの足は、いわゆる「観光地」には向かない。「取材」のという目的と、ご本人の好奇心によって、地元に分け入るようなピンポイントな訪問が多い。アイスランドの館員が一人しかいない博物館とか、フィンランドの陶芸家の工房とか..。

 劇的なことは何も起きない。最近よくあるテレビの紀行番組ほどにも起きない。まぁ退屈と言えば退屈。でも、出会う人のさりげない言葉に含蓄を感じたり、「メコン川は、まるでひとつの巨大な集合的無意識みたいに、土地をえぐり..」という比喩表現に「!」と思ったりしているだけで読み進められる。

 ちょっと長くなるけれど。2カ所抜粋する。

 アイスランドでは、みんなが多かれ少なかれ何らかの芸術活動に携わっているのだ。受信的な大量情報が中心になって動いている日本からやってくると、こういう発信情報に満ちている国はとても新鮮に見えるし..

 ルアンプラバンでは、僕らは自分が見たいものを自分でみつけ、それを自前の目で、時間をかけて眺めなくてはならない。そして手持ちの想像力をそのたびにこまめに働かせなくてはならない。

 「旅」(本書の中で村上さんは「旅」を「人生」にも例えている)は、能動的であることが大事なのだな、と思った。

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