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2015年1月29日 (木)

その女、アレックス

著  者:ピエール・ルメートル 訳:橘明美
出版社:文藝春秋
出版日:2014年9月10日 第1刷 2015年1月10日 第9刷
評  価:☆☆☆(説明)

 本書のことが各所で取り上げられて、昨年の11月ぐらいからお祭り騒ぎのようになっている。帯にも書いてあったが「史上初の6冠達成」のことだ。

 6冠というのは「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「IN☆POCKET」「英国推理作家協会」「フランスの読書賞」の6つのランキングで、それぞれ第1位または部門1位を獲得しているのだ。当然、書店でもこのことが大きく取り上げられて宣伝していた。期待して読んだ。

 主人公はアレックス。30歳、女性、美女。それともう1人、ヴェルーヴェン警部。50代、男性、身長145cm。この2人のストーリーが交互に語られる形で物語は進む。この2つのストーリーは、すぐにも交差しそうでいて、なかなか交わらない。

 アレックスのストーリーは、開始早々に緊張が走る。なんと彼女はいきなり誘拐されて、犯人のサイコ野郎に監禁される。「サイコ野郎」という表現は本書にはなく、私が思った。なぜかと言うと、そいつは彼女を裸にして、体を折り曲げないと入らない木箱に閉じ込めたから。「淫売がくたばるところを見てやる」と言って。気色悪い。

 ヴェルーヴェン警部のストーリーは、このアレックスの誘拐事件を追う。優秀な刑事らしく、地道な捜査と閃きで犯人を追いつめる。こちらのストーリーには、警部の個人的な事情が絡んで、なかなか「いい話」になっている。

 さて、これまでの紹介が本書のすべてなら「6冠達成」はないだろう。実は、ヴェルーヴェン警部が犯人を追いつめるのは、物語の開始からわずかに100ページ、約450ページの本書の4分の1ぐらいの場面なのだ。そこから物語はナナメ上の方へ疾走を始める。

 そのナナメ上加減が評価されての「6冠達成」なのだ。それはとてもよく分かる。帯に「101ページ以降の展開は、誰にも話さないでください」と書いてあるので、それを守って明かさないけれど、読んでいて「これはスゴいわ」と、私も思った。

 しかし、私なら本書を「第1位」には選ばないと思う。(何の審査員でもない私が偉そうに「選ばない」なんて言っても失笑されるだけだけれど)それは、事件があまりに凄惨で、正視に耐えなかったからだ。もちろん、その「凄惨さ」には意味があるのだけれど、それでもこれはキツい。

 「第1位」になれば、たくさんの人が読むことになる。私などよりもっとショックを受ける読者もいるだろう。そうなったら申し訳ない、というか私自身がイヤなので、私なら「第1位」には選ばない。そんなわけで、☆4つは堅い作品だとは思うのだけれど、1つ減らして☆は3つ。

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3.ミステリー」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
読まれたんですね。この作品には、色々やられましたw
この表紙でつい買ってしまったんですが、こんなショッキングな内容とは・・・

投稿: 風竜胆 | 2015年1月31日 (土) 23時17分

風竜胆さん、コメントありがとうございます。
お返事が遅くなって申し訳ございません。

そう、私も色々やられました。
このストーリー展開を評価する声も分からないではないのですが、
ここまでショッキングな内容ではねぇ...と思います。

投稿: YO-SHI | 2015年2月 8日 (日) 11時13分

YO-SHIさんはじめまして!

のほほんです。
読んで面白かった本の記事が出ていたので、
うれしくってコメントしちゃいます。

最近、読みながら
あ~こんな感じ??
って読みを見事に裏切ってくれる本が多くてうれしいですが、
この作品は、げっ・・・・げげっっ・・・・
って感じです。
もっとこの方の作品読んでみたいです。

投稿: のほほん | 2015年2月12日 (木) 21時05分

のほほんさん、コメントありがとうございます。

いい意味で読者を裏切ってくれる本は、読んで得した気分になりますね。
でもこの本はげげっ!ですね。

投稿: YO-SHI | 2015年2月15日 (日) 00時31分

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受信: 2015年1月31日 (土) 23時12分

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誘拐されたアレックスは手足を縛られ、前こごみの姿勢のまま身動きの取れない狭い木箱に閉じ込められる。誘拐犯はお前が死ぬのは見たいと言って彼女がネズミに食われて死ぬのを待っている。10日以上もそんな状態が続けば、普通の人間なら気が狂って死んでしまうところだが、アレックスは死を目前に脱走を試みる………。... [続きを読む]

受信: 2015年5月27日 (水) 10時30分

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