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2014年12月

2014年12月31日 (水)

2014年の「今年読んだ本ランキング」を作りました。

 恒例となった「今年読んだ本のランキング」を作りました。昨年までと同じく小説部門は10位まで、ビジネス・ノンフィクション部門は5位までです。
(参考:過去のランキング 2013年2012年2011年2010年2009年2008年

 今年このブログで紹介した本は100作品でした。☆の数は、「☆5つ」が0個、「☆4つ」が51個、「☆3つ」は47個、「☆2つ」が2個。です。
 「☆4つ」が51個あっても「☆5つ」はゼロ個と、「もう少し気前よく星5つを出せばいいのに」と思わないこともないのです。しかし、こうなってくると「これは!」と、絶対の自信がある本に出会わない限りは、「☆5つ」が出せなくなってしまってます。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
村上海賊の娘(上)(下) / 和田竜 Amazon
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戦国時代の村上水軍の娘が主人公。醜女で悍婦、つまり「ブサイクで気が荒い」けれど魅力的な主人公の活躍と、「阿保やで、あいつ!」が賛辞となる、関西気質が全編に行き渡った作品。
永遠のゼロ / 百田尚樹 Amazon
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第二次次世界大戦時の大日本帝国海軍で、特攻隊員として散ったひとりの青年を描く。同時に、60年あまり前に破滅的な作戦に突き進んんだ、当時の日本のあり様を浮かび上がらせる。
インフェルノ(上)(下) / ダン・ブラウン Amazon
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宗教象徴学者のラングドン教授のシリーズ第4弾。今回のテーマはダンテの「神曲」。謎解き、美人との逃避行、危機一髪。お馴染みの展開ながら、今回の陰謀と結末はこれまでで一番怖い。
心星ひとつ みをつくし料理帖 / 高田郁 Amazon
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料理屋の板前の澪が、かつて修業した店の再興と、吉原にいる幼馴染との平和な暮らしという2つの望みのため、料理に取り組む。シリーズ第6作の本作で澪は大きな決断をすることになる。
キャプテンサンダーボルト / 阿部和重、伊坂幸太郎 Amazon
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芥川賞作家と本屋大賞作家の異色の合作。1945年に墜落したB29。致死率70%強の伝染病、戦隊ヒーロー映画の突然の公開中止、銀髪の怪人。伊坂作品らしいエンタテイメント作品。
明日の子供たち / 有川浩 Amazon
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児童養護施設を舞台とした群像劇。たくさんの対立や苦い経験を経て物語は大きなうねりを形作る。ラブストーリーあり、自衛隊あり、カッコおっさん(おばさんも)あり。有川作品らしい秀作。
思い出のマーニー / ジョーン・G・ロビンソン Amazon
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アンナとマーニーという2人の少女の邂逅を描く。喘息の転地療養に来たアンナは「心の問題」も抱えているらしい。アンナの成長、マーニーとは誰なのか?たくさんの読みどころがある物語。
いつまでもショパン / 中山七里 Amazon
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天才ピアニストの岬洋介が、その洞察力を持って事件を推理するシリーズの第3作。今回の事件は、ポーランドの首都ワルシャワでの国際コンクールでの殺人事件。骨太のストーリー展開。
アンダルシア / 真保裕一 Amazon
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外交官・黒田康作シリーズの第3作。外国での日本人保護を任務とする「邦人保護担当特別領事」の黒田が、スペインとフランスの国境の小国アンドラ公国での殺人事件に巻き込まれる。
10 あと少し、もう少し / 瀬尾まいこ Amazon
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中学校の陸上部の駅伝を走る6人が主人公。彼らがそれぞれ1章ずつ主人公となり、色々な想いを語って次の走者にバトンを渡す。みんなが何かを乗り越えて前を向いて締めくくられる物語。

 今年は、☆5つはありませんでしたが、1位の「村上海賊の娘」はすんなりと決まりました。本屋大賞受賞作品ですから順当といったところでしょうか。2位の「永遠のゼロ」は、昨年の1位「海賊と呼ばれた男」に続いて、百田作品が連続しての上位ランク入りです。百田さんの作家以外の活動での言動が、私はとても不快なのですが、作品の価値は認めざるを得ません。

 3位以下については順位をつけるのには苦労しました。順位がないとランキングにならないので順番に並べていますが、多少前後に入れ替わっていてもおかしくありません。また、4位の「心星ひとつ」は、「みをつくし料理帖」シリーズとしてのランク入りです。読まれる方はシリーズの1巻「八朔の雪」から順番にお読みください。

 選外の作品について言うと、近藤史恵さんの「タルト・タタンの夢」を入れるかどうか最後まで悩みました。三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖」、小路幸也さんんの「東京バンドワゴン」、ジェフリー・アーチャーさんの「クリフトン年代記」の、3つのシリーズ作品が昨年から引き続いて楽しませてくれました。

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
里山資本主義 / 藻谷浩介、NHK広島取材班 Amazon
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人里に隣接した里山は、かつては人の手が入り、建築資材や燃料、食料などの資源を、適切に管理すれば持続的に供給していた。この里山の利用を参考にした「地域内経済モデル」を提唱。
未来は言葉でつくられる / 細田高広 Amazon
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未来や変革の行方を示す「ビジョナリーワード」を紹介。その後「あなたは自分で考えた言葉を使っていますか?」と問う。自分の未来も「言葉」で考える、そんな当たり前のことに気付いた本。
奇跡の脳 / ジル・ボルト・テイラー Amazon
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脳卒中によって脳の機能がひとつずつ停止していく、という恐ろしい体験を、「脳解剖学者」が「内側から観察した」記録。ユーモアたっぷりの語り口で、実に興味深い「体験」が語られている。
スノーデンファイル / ルーク・ハーディング Amazon
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元CIA、NSA(アメリカ国家安全保障局)の局員が、アメリカ合衆国の情報収集活動を暴露・告発した事件のドキュメンタリー。背筋が寒くなる事実を突き付けられる。現代史の貴重な記録。
春になったら苺を摘みに / 梨木香歩 Amazon
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家守綺譚」「西の魔女が死んだ」の著者の初エッセイ。20代の頃の英国留学の時のエピソードや、旅先で出会った人々との交流をつづったもの。著者の内面に触れる文に引きつけられる。

 1位の「里山資本主義」は、日本が進むべき1つの方向性を示しているように思います。2位の「未来は言葉でつくられる」は、私自身が折りに触れて立ち返るべきことが書かれていました。3位の「奇跡の脳」は、著者のTED Talkのプレゼンテーションそのままのユーモアたっぷりの興味深い本でした。4位の「スノーデンファイル」は、現代社会の危うさを感じる本でした。5位の「春になったら苺を摘みに」は、著者の作品が好きな方は一読すべき本だと思います。

 選外の作品としては、「新しい火の創造」「スモールマート革命」「地方消滅」など、社会問題を取り上げたものが多かったです。「ネットが生んだ文化」や評伝の「スティーブ・ジョブズ」も面白かったです。

 
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2014年12月30日 (火)

セロニアス・モンクのいた風景

編訳者:村上春樹
出版社:新潮社
出版日:2014年10月10日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、ジャズの愛好家としても知られる村上春樹さんが、一人のジャズピアニストについての文章を多方面から集めて編んだ本。そのピアニストの名はセロニアス・モンク。

 セロニアス・モンクは1940年代から70年代まで活躍した。後に「ビバップ」と呼ばれる即興演奏を主体にしたジャズの一形態を練り上げたとされる。ただ、彼の登場時には先進的すぎて周囲が理解できなかったようだ。ちょっと長いけれど、本書から引用する。

 「彼の音の選択はちょっとずれているみたいに聞こえた。しかし彼はそのワイルドなハーモニーの感覚を通して、ぶつ切り風のリズム感覚を通して、作曲家のユニークな構造感覚を通して、最終的にはそれぞれの音の選択を正しいものにしてしまった。それらの感覚はすべて、完全にどこまでも彼独自のものであり、非の打ち所がないのと同時に、まさに常軌を逸していいた。」

 本書中に何度もそう評されているけれど、つまり彼は「天才」だったのだ。天才は当初は理解されない。本書は、そんな中で早くから彼を理解し献身的な支援を与えた人々の、「セロニアス・モンク評」を集めている。

 正直に言って、読み始めはつらかった。ジャズはおろか音楽的な素養も知識もない私にとって、名も知らないジャズピアニストの評伝を延々と読むのは、忍耐力を試されているような感じだった。

 ただ、読み進めていくと、とても読みやすくなった。様々な人がバラバラに書いた文章なので、同じエピソードが少し角度を変えて何度も触れられる。しかしその効果として、立体的な像を結ぶように、マイルズ・デイビィスや、ジョン・コルトレーン(その名前ぐらいは私も知っている)の先を行って影響を与えた、セロニアス・モンクの姿が立ち上がってくる。

 最後に。表紙のイラストは、今年3月に急逝された安西水丸さんへのオマージュとなっている。

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2014年12月28日 (日)

ビブリア古書堂の事件手帖6

著  者:三上延
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2014年12月25日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 累計600万部突破の人気ベストセラーシリーズの第6巻。

 4巻に続いてシリーズ2作目の長編。今回は太宰治の処女作品集「晩年」の初版を巡るミステリー。「晩年」はこのシリーズとの因縁が浅からぬる本だ。第1巻で古書堂の店主である篠川栞子は、「晩年」に妄執する古書マニアに襲われて大ケガをしている。

 そして、こともあろうにその事件の犯人である田中敏雄が、主人公の五浦大輔と栞子の前に、再び現れる。しかも「晩年」を探し出して欲しいという依頼を持ちかける。あの事件の発端となった「晩年」とは別の「晩年」がある、というのだ。

 一見、田中は改心したようだ(というより、目当ての古書を手に入れるためには手段を選ばないけれど「悪人」ではないらしい)。しかし、それは本当か?今回も大輔と栞子の周囲には、危険が影がチラつく。その正体は田中なのではないのか?という疑念が最後まで付きまとう。

 読み応えのあるミステリーだった。「晩年」を追う過程で浮上してきた「47年前の事件」の謎解きが絡んでくる。さらに、その47年前の事件には、大輔の祖母や栞子の祖父までもか関わっているらしい。構造がドンドン重層的になってきた。

 本当にそんな人がいるのか分からないけれど、狂信的な古書マニアは怖い。最初と最後にだけ登場する、栞子の母の智恵子の存在も目が離せない。次巻が楽しみ。

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2014年12月26日 (金)

本についての授業をはじめます

著  者:永江朗
出版社:少年写真新聞社
出版日:2014年9月22日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は「少年写真新聞社」という学校向け刊行物の出版社の書籍。「少年写真ニュース」というB2版の壁新聞が、学校の廊下や図書室などに貼ってあるのを、ご覧になった方もいらっしゃるだろう。その壁新聞を発行している会社だ。

 本書は、その「少年写真新聞社」の小学校中学年以上の子どもたちを対象にした、「ちしきのもり」というノンフィクションシリーズの第8弾。「本」をテーマとして1から10まで、いや「そこからですか!」と思うほど幅広く説明している。

 「そこからですか!」とは具体的には、「オーストラリアに生えるユーカリの木」から。「今きみはどこでこの本を読んでいる?図書館?」という問いから始まって、本屋さん→問屋さん(取次)→出版社→製本会社→印刷工場→製紙工場、とドンドン遡ってたどり着いたのがユーカリ。そこから話が始まる。

 なるほどなぁと思った。シリーズの説明に「知的好奇心や
探究心を育てる」とあるけれど、「それはどこから?」を何度も繰り返すのは、子どもの好奇心や探求心に応えるためなのだろう。

 「そこからですか!」だけでなく「そこまでですか!」もある。印刷技術のこと、製本の方法、本屋さんの仕事。「モノとしての本」だけでなく、本の中身を作る人のことも書いてある。著者、編集者、イラストレーター、校正者、営業、宣伝...。

 子ども向けの本だけれども、大人も読んだらいいと思う。もちろん大人なら知っていることも多い。しかし、知らないことも少しはあるはずだし、ハッと気が付くようなことも書いてある。

 「本を読むときは、まず、手をきれいに洗いましょう(中略)手のよごれはせっけんで落とすことができますが、よごれた本はもとにもどせません」私はこんな気持ちで本に向かっていただろうか?反省。

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2014年12月23日 (火)

キャプテンサンダーボルト

著  者:阿部和重、伊坂幸太郎
出版社:文藝春秋
出版日:2014年11月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんと阿部和重さんの合作小説。伊坂幸太郎さんは、私が大好きな作家さんで新刊が出れば必ず読む。もう30作品以上を読んだ。阿部和重さんの作品は、まだ読んだことがなかった。芥川賞受賞作家だから「純文学」に分類されるのだろう。

 舞台は仙台と山形、県境に位置する蔵王。主人公は相葉時之と田中徹の二人。小学校時代の少年野球のチームメイトでもうすぐ30歳になる。章ごとに、この二人を含めて何人かの視点が入れ替わり、年代が多少前後しながら物語が進む。

 早い段階で物語の材料が提示される。1945年の東京大空襲の日に蔵王に墜落した3機のB29。その蔵王の火口湖を発生源とする致死率70%強の伝染病「村上病」。その火口湖でロケをした戦隊ヒーロー映画の突然の公開中止。そして相葉を追って来る「銀髪の怪人」。

 面白かった。「魅力的な登場人物」「巧みな伏線」「気の効いたセリフ」の伊坂作品の魅力が三拍子揃った作品。合作ということだけれども、私には伊坂さんの作品ということで、全く違和感がなかった。(それは良いことではないのかもしれないけれど)

 伊坂作品の系譜にもぴったりはまった作品だと感じた(阿部さんの作品は読んだことがないので、どういう特徴があるのか分からないのだけれど)。「グラスホッパー」「マリアビートル」の「たくさん人が死んでしまう」線と、「魔王」「モダンタイムス」「ゴールデンスランバー」の「事件の背後にある巨大な組織」の線が交わるところに位置づけられる。

 文春の情報サイト「本の話WEB」に、伊坂さんと阿部さんの対談が掲載されている。読む前でも後でもいいので、本書を読む方はご覧になることをおススメする。村上春樹さんへの想いや、合作の詳細など、とても興味深いことが語られているので。

本の話WEB「史上最強の完全合作!阿部和重、伊坂幸太郎がそのすべてを語る

 

 コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
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2014年12月21日 (日)

同級生

著  者:東野圭吾
出版社:講談社
出版日:1996年8月15日 第1刷発行 2010年12月1日 第51刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1993年というから今からざっと20年も前の作品。手元にある文庫本の帯には「ターニングポイントとなった傑作! この作品で作家・東野圭吾はますます輝きを増した」とある。この惹句に魅かれた。

 主人公は西原荘一。地域随一の名門高校の3年生。野球部の主将。物語の発端は同級生の死。野球部のマネージャーでもあった宮前由希子が交通事故で亡くなる。真相が明らかになるにつれて、この「事故」が、学校全体を揺るがす「事件」に発展していく。

 由希子は身籠っていた。産婦人科病院からの帰りに事故に会ったらしい。事故が様々な憶測を呼び、西原は「事件」の当事者になる。生徒指導の教師も事故に関わりがあることがわかり、西原と学校は鋭く対立し、ついには「殺人事件」が起きる。

 当初は同級生の死を発端とした、学校の中の様々な出来事を描いた「学園モノ」の様相だったけれど、この「殺人事件」後には、犯人捜しを軸にしたミステリーの王道が展開される。

 この学園モノからミステリーへの転換が実に鮮やかで、引き込まれた。さらにそのミステリーの背景には、高校生の友情・恋愛、教師と生徒の対立、学校の体面、それに環境問題など、様々なものが描き込まれている。多少「描き込み過ぎ」な感はあるが、物語を楽しめた。

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2014年12月18日 (木)

ダンス・ウィズ・ドラゴン

著  者:村山由佳
出版社:幻冬舎
出版日:2012年5月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者のことは、私が入っている本好きのためのSNS「本カフェ」などで何度か評判になったことがあって気になっていた。 直木賞受賞の「星々の舟 」や中央公論文芸賞他のトリプル受賞となった「ダブル・ファンタジー 」などが代表作なのだろうけれど、手に入った近著の本書を読んでみた。

 ドラゴンを巡る4つの物語をつなぐ連作短編集。井の頭公園の自然文化園の中にある図書館が主な舞台。その図書館は自然文化園の閉園中にだけ、それも図書館自身に「呼ばれた」人だけがたどり着くことができる不思議な図書館。

 29歳の滝田オリエは、この図書館で司書として働くことになった。そこで住居として用意された洋館に住み始めてしばらくしたころ、「屋根裏部屋へ上がるように」という伝言が届く。そこでオリエはドラゴンに遭遇する。

 4つの物語にはそれぞれ主人公がいる。オリエの他の主人公たちもそれぞれにドラゴンや竜との縁が深い。そしてそれぞれが、圧倒的な疎外感や孤独、背徳感や悔恨を胸に抱え込んでいる。哀しい、しかしもの凄い吸引力をもった物語で、強く深く引き込まれてしまった。

 井の頭公園は繁華街から近い。そこにこんな不思議な空間が広がっている。本書は、私たちの暮らしと隣り合わせにある異世界を艶めかしく描いている。他の作品も読んでみたい。

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2014年12月14日 (日)

アルベルト・アインシュタイン -相対性理論を生み出した科学者

著  者:筑摩書房編集部
出版社:筑摩書房
出版日:2014年8月25日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 先月に読んだ「スティーブ・ジョブズ -アップルをつくった天才」と同じレーベル、「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ> 」つまり中高生に向けた伝記。

 アインシュタインの生涯については、いくらかの知識があった。子どものころは数学は抜群の成績だけれど他はダメ。興味のあること以外はヤル気がなく、集団生活に馴染めない。大学を卒業しても教授陣のウケが悪く、大学に残れず就職もできない。ようやく特許局の審査員としての仕事を得て、その仕事の傍らで相対性理論の最初の論文をまとめる...。

 本書を読んで「あぁそうだったのか」ということも、もちろんある。例えば、小学校に入る前にお父さんに方位磁石をもらって、その動きの背後に地球の原理や仕組みを想像して身震いした、というエピソード。目の前の出来事に驚いたり不思議に思うことは多いけれど、その背後を想像して身震いということはあまりないだろう。感性の成せる業だと思う。

 物理学者としての名声を得てから後のことにも、多くのページを割いている。第一次世界大戦の敗戦の混乱から第二次世界大戦、ファシズムへ向かうドイツ国内にあって、ユダヤ人であるアインシュタインは反戦平和主義を貫き、米国へ渡って後も発言を続けた。後年には原爆の開発を結果的に後押ししてしまった...。

 本書を読んだのには理由があった。「スティーブ・ジョブズ」を読んだときに、「伝記」にしては書き手の意識(興奮)を感じて、これは著者の思い入れの強さの表れなのかシリーズの特徴なのか、どちらなのだろう?と感じた。それがもう1冊読めば分かるだろうと思ったのだ。

 本書を読んだ結果、あれは「著者の思い入れの強さの表れ」だったのだろうと思った。

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2014年12月11日 (木)

ネットが生んだ文化

監  修:川上量生
出版社:KADOKAWA
出版日:2014年10月26日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 新聞の書評欄で知って興味を持ったので読んでみた。本を読んでいると時々深く印象に残る一文に出会うことがある。本書にもそんな一文がある。

「どんなにネットに現実世界が流れ込んでも、リア充勢力が多数派になっても、ネット原住民の影響力が低下することはない。なぜなら、彼らは暇だからだ。

 本書は、ニコニコ動画の生みの親である川上量生さんが監修者となって、ネットの文化を浮き彫りにしようとする本だ。ネットに造詣の深い8人の著者が、「ネットの言論空間」「リア充対非リア」「炎上」「祭り」「コピペ」といった様々な切り口で、ネット社会の来し方行く末を斬る。

 本書で初めて知ることができたことはとても多い。特に「炎上」について。様々なきっかけが「炎上」を引き起こすことは知っていた。社会のルールやマナーに違反する発言が、集中砲火的に非難(罵詈雑言)を浴びることがある。しかし、そこには少数の「炎上させる人」と多数の「炎上させられる人」が存在するとは知らなかった。2ちゃんねる上のほとんどの炎上事件の「実行犯」は5人以内で、たった一人という場合も珍しくないらしい。

 様々な出来事に対する「まとめサイト」が数多くあることも知っていた。炎上事件を積極的に取り上げるサイトもあって、これによって情報の伝播力が高まり、さらに大規模な炎上へと発展する。しかし、これらのサイトの多くでは、アフィリエイトによってアクセスを稼いで収入につなげていることは知らなかった。「炎上」は様々な思惑を持った人が加わって、意図的に「引き起こされている」のだ。

 全く関係のない出来事なのに、煽られて怒りをかきたてられる人。「釣り見出し」だけを見て反応して怒りのコメントを残す人。そういう人は「炎上させられる人」で、誰かに利用されている。....私たちは、インターネットを上手に使えるほどには成熟していないんじゃないか?前々から思っていたことだけれど、さらに強くそう思った。

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2014年12月 7日 (日)

破門

著  者:黒川博行
出版社:角川書店
出版日:2014年1月31日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 2014年度上半期の直木賞受賞作。寡聞にして著者のことを知らなかった。本書は「疫病神」シリーズと呼ばれるシリーズの第5作であるらしい。

 主人公は二宮。「二宮企画」という建設コンサルタント会社を営む39歳。建設コンサルタントの業務は、建設に関わる計画や設計、調査などだけれど、「二宮企画」のはちょっと違うらしい。建設現場に暴力団の妨害が入らないように話をつける仲介で、主な収入を得ている。

 二宮自身は堅気だけれど、こんな商売なのでヤクザとの関係が密接だ。それに二宮の亡くなった父親はヤクザの大幹部だった。そんなわけで、二宮のところには二蝶会の桑原というヤクザが出入りしていて、「危ない話」に二宮を巻き込む。シリーズ名の「疫病神」は桑原のことだろう。

 今回の「危ない話」は映画製作への出資話。日本と韓国が舞台のスパイ映画の製作に、二蝶会の若頭と桑原が出資する。昔、桑原と一緒に北朝鮮に渡ったことがある二宮も協力しろ、というわけだ。シナリオライターに会って質問に答える、それぐらいの協力だったはずが、「疫病神」の桑原に引き回されてヤクザの抗争にはまり込んでしまう...

 面白かった。直木賞という「大衆小説作品に与えられる文学賞」にふさわしい。ヤクザの抗争を描いているので、殴り合いもあるし血も流れる。それでも重苦しくならず、どこか軽快な感じがするのは、桑原の人物造形によると思う。

 桑原は、どうしょうもない極道だ。喧嘩っぱやい「イケイケヤクザ」なのに、損得勘定に長けていて、誰にでも平気でウソをつく。周り中に迷惑をかける。堅気の二宮を引き込んで舎弟のように使う。でも、ギリギリのところで止まって一線を越えないことと、意外なほど真っ直ぐな性根が垣間見える。

 ひどい目に会い、周り中から「縁を切れ」と言われながらも、二宮がズルズルと付き合っているのは、桑原のそういうところが分かっているからかもしれない。(もちろん、桑原みたいな男が、本当に近くにいたら、こんなこと言ってられないけれど)

※2015年1月にスカパーで、北村一輝さん、浜田岳さん主演でドラマ化されるそうです。
BSスカパー「破門(疫病神シリーズ)」公式サイト

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2014年12月 4日 (木)

誰がタブーをつくるのか?

著  者:永江朗
出版社:河出書房新社
出版日:2014年8月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 日本では憲法で「言論の自由」が保障されている(憲法21条)。しかし出版、新聞、テレビ、ラジオなど、いわゆるマスメディアには、報じてはいけない「規制(制限)」がある。本書では、法律などの根拠がある制限を「規制」、そんな制限はないことになっているものを「タブー」と呼んでいる。気を付けないといけないのは、本書は「マスメディアにおける」規制とタブーを論じていて、私たちの普段の暮らしの中のタブーではないことだ。

 「規制」の例として、わいせつな文書や図画、他人の名誉を棄損する内容などは「刑法」で制限されている。法律はないけれど、誘拐事件の報道を規制する「報道協定」は、報道機関自身がその存在を認めているので「規制」の代表的な例。

 「タブー」の例は、「皇室」について、「差別」について、「原発」について、それぞれに「言ってはいけない」ことがある、という。理由のあるものもあるが、多くは「言うと面倒なことになる」という動機による自主規制だ。

 マスメディアにおけるタブーにも、私たちの暮らしに影響するものがある。例えば「原発」。福島の事故の前には原発についてのネガティブな情報はタブーだったそうだ。だから「危険」だという情報が流れず「安全神話」を形成してしまった。その理由に唖然とする。「電力会社」が巨大なスポンサーだったからだ。

 一旦は「そんな理由なのか」と唖然としたけれど、考えて見れば当たり前だ。報道機関だって民間企業なら収入が大事だ。さらに言えば「お客」も大事。出版社にとってのお客は?読者?それもあるけれど、取次、書店、コンビニ・キオスクなどの流通業者がお客となる。かつての原発と同様に、それらのネガティブな情報は流れにくいと思った方がいい、というわけだ。。「何を報じなかったか」を知るのは難しい。しかし、それを考える必要もあるかもしれない。

 本書だってそのタブーの渦中にあるわけで、その意味ではよくぞ書いたし、よくぞ出版したと思う。これには拍手する。ただ最後の、タブーについての想いが書かれている部分は、それまでの明快な論理の構成とは違って、言いたいことが行ったり来たりして読みづらくなってしまっている。「タブーはいろいろあってもいいじゃないか」と「できるだけないないほうがいい」の両方を、自分の考えとして紹介していて混乱を感じる。著者の想いも複雑なのだろう。

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「誰がタブーをつくるのか?」 固定URL | 7.オピニオン | コメント (0) | トラックバック (0)

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