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2014年7月27日 (日)

半落ち

著  者:横山秀夫
出版社:講談社
出版日:2002年9月5日 第1刷 2004年1月21日 第17刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2003年の「このミステリーがすごい」のランキング第1位。その後、寺尾聰さん主演で製作された映画は2005年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。10年ほど前になるが、当時話題になっていたことを覚えている。

 この作品が追う事件をざっと紹介する。現職の警察官の梶聡一郎が妻を殺害したと自首してきた。取り調べに答えた供述によると、アルツハイマー病の病状が進んだ妻から「殺してくれ」と懇願され、それに応えてしまった、ということらしい。

 供述は精緻なもので疑わしい点は全くない。ただ、自首したのは殺害から2日後。それまで求めに応じて整然と話して来た梶は、その空白の2日間の行動についてだけは供述を拒んだ。その2日間、梶はいったい何をしていたのか?

 本書は、刑事、検事、記者、弁護士、裁判官、刑務官といった、この事件に関わる6人の男性の視点で追う形で構成されている。それぞれが持つ事件についての情報も、梶との関わり方も違う。しかし、彼らが行きつくところは1つ。その2日間に何があったのか?梶が心の奥にしまっている秘密は何なのか?

 楽しめた。ミステリーとしてよく練られた作品だと思う。しかしそれ以上に人間ドラマとして私の胸を打った。妻の殺害から自首に至った梶の心の内を追ったドラマ。その結末に天を仰いだ。しかしそれだけではない。本書はそれに関わる6人の男性の人間ドラマをも描く。構成がうまい。

 最後に。上に書いた「話題になった」には、直木賞選考委員による痛烈な批判も含まれる。今となってはその批判はよく言って勇み足、悪く言えば中傷だと知られている。
 その批判の内容は本書の核心に触れるので、これから読む方は検索したりしない方がいい。実は私はその内容を知っていたのだけれど、読み終わるその瞬間まで忘れていた。自分の都合のよい物忘れに感謝した。

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» 半落ち [風竜胆の書評]
 横山秀夫の「半落ち」(講談社)、これもまた、なかなか考えさせられる作品である。W県警現職警部の梶聡一郎が、アルツハイマーの妻を殺したとして自主してきた。梶は、その ... [続きを読む]

受信: 2014年8月18日 (月) 22時09分

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