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2014年7月

2014年7月31日 (木)

ヴァン・ショーをあなたに

著  者:近藤史恵
出版社:東京創元社
出版日:2008年6月30日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

  「タルト・タタンの夢」の続編。舞台も登場人物もほぼ同じ。下町の商店街にある、三舟シェフをはじめとする4人の従業員が切り盛りするフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台に、お店の客が抱える悩みや問題を、三舟シェフが解き明かす。

 本書は7編の短編を収める短編集。しっかり焼き込んだスキレット(分厚い鋳鉄のフライパン)が錆びてしまうのはなぜか?昔からあるパン屋が店じまいしてしまったのは?いつもブイヤベースを注文する女性の正体は?といった、「謎」とも言えない「どうしてだろう?」を解き明かす。

 不満と嬉しさが半々だ。まず不満の方は、途中で物語の形式を変えたこと。前半の4編は、ギャルソンの高築くんが語るこれまでどおりの形式。後半3編は、謎を解かれる側の第三者が主人公。悩みや問題を抱えた主人公が「ビストロ・パ・マル」を訪れたり、三舟シェフに出会ったりする。

 1回ぐらいは目先が変わって新鮮でいいのかもしれない。しかし第三者を主人公だと、最後の方に三舟シェフが登場して「はい解決」となってしまう。これではレストランの面々のキャラが生きてこない。

 嬉しさの方は、三舟シェフの秘密が少しずつ明かされること。フランスの地方で修業したらしい、という以外には経歴が謎だったのだけれど、それが少し紹介される。おまけに今回は恋バナまである。さらには、前作で際立った存在感を見せた「ヴァン・ショー(スパイス入りホット赤ワイン)」の由来も明らかになる。

というわけで次巻に期待。

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2014年7月27日 (日)

半落ち

著  者:横山秀夫
出版社:講談社
出版日:2002年9月5日 第1刷 2004年1月21日 第17刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2003年の「このミステリーがすごい」のランキング第1位。その後、寺尾聰さん主演で製作された映画は2005年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。10年ほど前になるが、当時話題になっていたことを覚えている。

 この作品が追う事件をざっと紹介する。現職の警察官の梶聡一郎が妻を殺害したと自首してきた。取り調べに答えた供述によると、アルツハイマー病の病状が進んだ妻から「殺してくれ」と懇願され、それに応えてしまった、ということらしい。

 供述は精緻なもので疑わしい点は全くない。ただ、自首したのは殺害から2日後。それまで求めに応じて整然と話して来た梶は、その空白の2日間の行動についてだけは供述を拒んだ。その2日間、梶はいったい何をしていたのか?

 本書は、刑事、検事、記者、弁護士、裁判官、刑務官といった、この事件に関わる6人の男性の視点で追う形で構成されている。それぞれが持つ事件についての情報も、梶との関わり方も違う。しかし、彼らが行きつくところは1つ。その2日間に何があったのか?梶が心の奥にしまっている秘密は何なのか?

 楽しめた。ミステリーとしてよく練られた作品だと思う。しかしそれ以上に人間ドラマとして私の胸を打った。妻の殺害から自首に至った梶の心の内を追ったドラマ。その結末に天を仰いだ。しかしそれだけではない。本書はそれに関わる6人の男性の人間ドラマをも描く。構成がうまい。

 最後に。上に書いた「話題になった」には、直木賞選考委員による痛烈な批判も含まれる。今となってはその批判はよく言って勇み足、悪く言えば中傷だと知られている。
 その批判の内容は本書の核心に触れるので、これから読む方は検索したりしない方がいい。実は私はその内容を知っていたのだけれど、読み終わるその瞬間まで忘れていた。自分の都合のよい物忘れに感謝した。

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2014年7月24日 (木)

Fantasy Seller(ファンタジーセラー)

編  者:新潮社ファンタジーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2011年6月1日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 大好評の「Story Seller」シリーズ(123Annex)の仲間ということで良いかと思う。ファンタジー作家さん7人の作品を収録したアンソロジー。7人に共通しているのは、ファンタジーノベル大賞で賞を受賞しているということ。

 収録順に作品名と著者を紹介する。「太郎君、東へ/畠中恵」「雷のお届けもの/仁木英之」「四畳半世界放浪記/森見登美彦」「暗いバス/堀川アサコ」「水鏡の虜/遠田潤子」「哭く戦艦/紫野貴李」「スミス氏の箱庭/石野晶」「赫夜島/宇月原晴明」。

 こうして列記してそれぞれの作品を思い出して感じるのは、ファンタジーには、ずいぶんと様々な作品があるのだということ。河童や雷や竜といった和製ファンタジーのキャラクターものや、古典文学をベースにした創作、怪奇現象やホラー色の強い題材、そして学園ものまで。(意外なことに、ファンタジーの定番の魔法系はなかった)

 私としては、馴染のある作家さんということもあって、畠中恵さんの「太郎君、東へ」が楽しめた。徳川時代の初め、関八州に聞こえた河童の大親分、禰々子(ねねこ)の物語。女性ながらめっぽう腕っぷしが強い。利根川の化身である坂東太郎とのやり取りも面白い。

 もう一人の馴染のある作家さんは森見登美彦さん。「こんなところに新作が!」と思ったのだけれど、森見さんの作品は小説ではない。「四畳半」について、自分の作品と絡めながらグダグダと書いたものだ。(「グダグダ」なんて書いたけれど貶すつもりは毛頭ない。「グダグダ」は森見さんの作風なのだ)

 他には、前から気にはなっていた仁木英之さんの「雷のお届けもの」と、「かぐや姫」をベースにした宇月原晴明さんの「赫夜島」がよかった。これを機会に他の作品を読んでみたいと思った。

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2014年7月21日 (月)

あと少し、もう少し

著  者:瀬尾まいこ
出版社:新潮社
出版日:2012年10月20日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 舞台は中学校の陸上部、主人公は駅伝を走る6人の選手。章のタイトルが1区、2区...6区と6章あり、駅伝でそれぞれの区間を走る選手がその章の主人公となって、自らの過去から現在までの行く立てを、駅伝大会で仲間にタスキを渡すまでの間に語る。

 「6人の選手」とは言っても、実は陸上部員は3人しかいない。部長の桝井、3年生の設楽、2年生の俊介。後の3人は、バスケットボール部のジロー、吹奏楽部の渡部、校内一の不良の大田。つまり混成チーム。陸上部以外の3人は桝井が選んだ助っ人だ。

 もう一人の重要な登場人物が、顧問の上原先生。この中学は昨年までは、厳しくも優秀な顧問がいて、県大会への連続出場を果たしている。その顧問が去り代わりに就任したのが上原先生。どんくさそうな女性の美術教師。もちろん陸上についてはズブの素人。でも、この先生でなければ、この駅伝チームは成り立たなかったと思う。

 中学生といえども、いやいや中学生の年頃だからこそ、色々な想いを抱えている。その想いが章を重ねるごとに、一人分ずつ積み重なる。あぁこの子はこんなことをしょい込んでいたんだ、それを知って切ない気持ちになる。私は特に不良の大田くんの心根に目が潤んだ。彼はこれで変われるかもしれない。

 こういう物語が私は好きだ。主人公(たち)が何かを乗り越えて、前を向いて締めくくられる物語。「予定調和」だとか「現実はそんな甘くない」とかと言われるかもしれない。それでも、特に子どもたちが主人公の物語はこうあって欲しいと思う。

 駅伝という競技も章の構成の仕方も、三浦しをんさんの名作「風が強く吹いている」と共通している。陸上という「個人競技」の中の、駅伝という「団体競技」。一人一人が走っている間に、その胸に想いが去来する。もしかしたら駅伝という競技自体が物語的なのかもしれない。

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2014年7月17日 (木)

バーティミアス ソロモンの指輪1 フェニックス編

著  者:ジョナサン・ストラウド 訳:金原瑞人、松山美保
出版社:理論社
出版日:2012年1月 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 7年前に読んで面白かった「バーティミアス」3部作に、新刊が出ていることを知って読んでみた。

 時代は、以前に読んだ「バーティミアス」3部作から、ざっと3000年ぐらい前。妖霊のバーティミアスが2000歳ぐらいのころ。..と、なんだか時間の感覚がおかしくなりそうな設定だけれど、「妖霊」というのはいわゆる「悪魔」で何千年も生き続ける。だから3000年前と言えば、私たちには「歴史」だけれど彼らには「経験」なのだ。

 2000歳のバーティミアスは、古代イスラエルの王であるソロモン王に仕える魔術師に仕えていた。魔術師は妖霊を召喚し、妖霊はその魔術師の命令を聞くことになっている。ただし魔術師に呪文を間違えるなどのスキがあれば、襲ってもいいことになっている。

 物語は、バーティミアス、ソロモン王、シバの女王、女王の近衛兵、のパートが入れ替わって進む。ソロモン王とシバの女王の争い、魔術師たちの確執、陽気で冷酷な妖霊たちの小競り合いなどを描く。腕は立つけれど口が悪く不真面目なバーティミアスは、その性格のせいでずいぶんと面倒なことを引き寄せている。まぁそれが面白いのだけれど。

 それで、私がうっかりしていたのがいけないのだけれど、本書は完結していない。中途でブッツリと切れて終わっている。読んでいて後半になっても、どうも物語が収れんしていかないと思っていたら、そういうことだったのだ。正直言って本書では「何も起きない」に近い。

 そんなわけで、物語は次巻の「ヤモリ編」、そして「スナネコ編」に続く。

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2014年7月13日 (日)

アンダルシア

著  者:真保裕一
出版社:講談社
出版日:2011年6月9日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「アマルフィ」「天使の報酬」に続く、外交官・黒田康作シリーズの第3作。「アマルフィ」は2009年に本書は2011年にそれぞれ映画化された(注:映画と書籍では設定や展開が大きく違う)。

 主人公は黒田康作。「邦人保護担当特別領事」という肩書を持つ外交官。外国での日本人の保護の事案に、特別な任務を帯びて派遣される。今回はスペインのカナリア諸島で、コカイン密輸の疑いで逮捕された遠洋船の乗組員の元に派遣された。ただしその乗組員の権利の保護のためではなく、スペイン軍警察との司法取引に応じるよう説得するためだ。

 と紹介したけれど、この任務は冒頭20ページで完了。今回の物語とは直接の関係はない。しかし、読み終わると周到な下敷きになっていたことが分かる。

 本編の物語は、在バルセロナ総領事館にかかって来た一本の電話から始まる。マドリード在住の日本人女性からの電話で、買い物に行ったアンドラ公国で「パスポートと財布を落とした」という。

 黒田がこの女性の救助要請に応える。ミステリー作品なので本編の物語を詳しく紹介するのは控えるが、同時期にアンドラ公国で起きた殺人事件への、この女性の関与が疑われ、その対処に黒田が巻き込まれる。それは更なる大きな事件へとつながっていた。

 アンドラ公国というのは、スペインとフランスの国境に位置する小国。かつてはスペイン、フランスの両国を宗主国とし、現在も防衛や外交はフランスに頼っている。税金がかからず銀行は顧客の秘密主義を通して来たため、「租税回避地」として後ろ暗いお金も流れ込んでいそうだ。

 そうした地政学的な背景をうまく物語に組み込み、なかなか複雑なストーリーになっている。スペインの警察官に「日本のMI6」と言われるシーンがあるが、黒田の活躍はジェームズ・ボンドばりだ。それが痛快と感じるか、「あり得ない」と白けるか。私は前者だった。

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2014年7月10日 (木)

いつまでもショパン

著  者:中山七里
出版社:宝島社
出版日:2013年1月24日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く、岬洋介シリーズの第3作(スピンオフの「さよならドビュッシー前奏曲」を入れれば第4作)

 名古屋を舞台とした前2作と打って変わって、今回はポーランドの首都ワルシャワでの物語。5年に1度開催される国際ピアノコンクールの「ショパン・コンクール」。その一次予選のさ中に殺人事件が起きた。それも手の指10本全部を切り取られるという猟奇的な犯行だった。

 主人公は、ヤン・ステファンス。18歳。このコンクールの優勝候補。ポーランドで4代続いて音楽家を輩出する名家のホープ。それだけでなくポーランドの人々にとってショパンは特別な存在で、ヤンはポーランドの期待の星で、彼の優勝は人々の希望でもあった。

 このコンクールに、日本人が2人出場している。1人は榊場隆平。18歳。生まれながらの盲目ながら、耳から聞いた音楽を完璧に再現する天賦の才の持ち主。もう1人は岬洋介。27歳。そう、このシリーズの主役。類まれなピアノの表現力と共に、鋭い洞察力を持ち、これまでにも様々な事件を解決に導いた。

 これまでのシリーズの中で最高の作品だと思う。周辺の大国に蹂躙されたポーランドが置かれた歴史的な意味づけ、現代社会が抱えるテロとの戦い、といった大きな物語を取り込んだ骨太なストーリー。期待を背負った若者の屈託や親子の気持ちのすれ違い、そして飛躍。読み応え十分だ。

 それから、忘れてはならないのが、音楽小説としての魅力。音楽の才能も知識もない私にも、文章から音楽が聞こえてくる。前2作もそうなのだけれど、これは本当に不思議だ。

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2014年7月 6日 (日)

スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実

著  者:ルーク・ハーディング 訳:三木俊哉
出版社:日経BP社
出版日:2014年5月26日 第1版第2刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 2013年6月の、エドワード・スノーデン氏による、アメリカ国家安全保障局(NSA)が、世界中の個人情報を収集していたことを暴露・告発した事件のドキュメンタリー。

 スノーデン氏は、元CIAおよびNSAの局員。NSAではシステム管理者として機密情報にアクセスすることができた。そこで、NSAがインターネットの通信の盗聴やサーバーへの侵入によって、世界中の人々の通話、Eメール、検索履歴などを収集していることを知る。

 米国民に対する広範なこのような情報の収集は、合衆国憲法(修正第四条)に違反する。そう考えたスノーデン氏は、国家によるこの重大な裏切りを告発するために、機密文書を公開した。本書は、この告発に至るスノーデン氏の経歴から、告発後の数か月を、多方面からの取材によって克明に追う。

 「事実は小説より奇なり」(「推薦のことば」を寄せた元外務省主任分析官の佐藤優さんもそう書いていた)。苔むしたこんな言葉が読み終わって浮かんだ。1年前のことゆえ記憶に新しい方もいるだろうが、スノーデン氏は、香港に身を潜めながら情報を公開し、追手をかわすために中南米へ向かう。その途中のモスクワの空港のトランジットエリアで足止めされるが、39日後にロシアへの亡命が認められた。サスペンス小説さながらの緊迫感だ。

 著者は英国の新聞社「ガーディアン」の海外特派員。スノーデン氏が持つ機密情報を最初に公開したのが、ガーディアン米国なので、本書を記すための好位置にいたことは確かだ。しかし、わずか1年前の(見方によっては現在進行形の)事件のため、関係者が容易にすべてを話してくれたとは思えない。これだけ克明に再現できたのは驚異的。本書は現代史の貴重な記録だと思う。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ。 

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2014年7月 3日 (木)

小夜しぐれ みをつくし料理帖

著  者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2011年3月18日 第1刷発行 2014年5月18日 第16刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「みをつくし料理帖」シリーズの第5作。「浅蜊の御神酒蒸し」「菜の花尽くし」「寿ぎ膳」「ひとくち宝珠」の4編を収録した連作短編。

 主人公の澪は、江戸の元飯田町にある「つる家」という料理屋の板前。彼女には、かつて修業した「天満一兆庵」の再興と、今は吉原にいる幼馴染の野江と昔のように共に暮らす、といった2つの望みがある。

 今回は、「つる家」の主人の種市が抱える過去や、「天満一兆庵」の若旦那の消息などが分かり、澪の友人の美緒が人生に新たな一歩を踏み出す。また、料理勝負のようなイベントや、初めて澪が登場しない作品、といった趣向が楽しめる。これまでのシリーズの中でも出色の作品だと思う。

 特に、種市の過去を題材にした「浅蜊の御神酒蒸し」は、緊迫感と劇的な展開で読みごたえがあり、5作目にして迎えた大きなヤマを感じた。また、澪の想い人の小松原を主人公にした「ひとくち宝珠」は、面白い試みで物語の広がりを予感させた。

 シリーズは10作で完結の予定らしい。すると本書が前半の掉尾ということになるのだろう。この盛り上がりはそれにふさわしい。

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