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2014年6月

2014年6月29日 (日)

だから日本はズレている

著  者:古市憲寿
出版社:新潮社
出版日:2014年4月20日 発行 5月30日 6刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の名前を世間に知らしめたのは、著作「絶望の国の幸福な若者たち」。不安定な労働環境、破綻寸前の年金制度などで、日本の将来は不透明、今の若者は不遇だと言われる中で、当の「若者」である20代の70.5%が、現在の生活に「満足」していると調査に答えている(*)、というところから書き起こしたものだった。

 当時著者が26歳という若さであったことと、既存の価値観や共通認識を覆す視点と、ユーモアと皮肉の効いた語り口で、大きな評判を呼んだ。私も読んだのだけれど、なかなか的を射た意見だった。本書は、その流れで書かれたいくつかの評論をまとめたものだ。

 「リーダー」なんていらない、憲法で国の姿は変わらない、やっぱり「学歴」は大切だ、「若者」に社会は変えられない..。リーダーシップ論が華やかで、憲法論議では「この国の形」を考えると言われ、「実力主義」が喧伝され、「若者よ、今こそ怒れ」なんて言われる現代の「逆張り」をする。

 面白く読んだ。多くの人が読むといいと思う。行き過ぎて思い込んでいたことを、クールダウンしてくれるだろう。でも気になったこともある。「逆張り」に囚われてしまっている気がする。頭のいい著者のことだから、それを承知で「望まれる役割」として敢えてそれを演じているのだろう。
 しかし、中には空疎な言いがかりめいたものや、「それを言っちゃダメなんだよ」ということもあって、「難癖キャラ」に成り下がってしまう危険も感じた。そうなってはもったいない。

 最後に。これも著者は承知のようだけれど、29歳で「若者」の代表のように語るのはつらいだろう。でも、もう10年ぐらいは、偉いおじさんたちが著者に「若者の意見」を求めるんだろうなと想像する。

(*)2010年の内閣府の調査。本書によると、2013年の調査ではこの数字は78.4%に上昇している。

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2014年6月26日 (木)

アリスの夜

著  者:三上 洸
出版社:光文社
出版日:2003年3月25日 初版1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 2003年の第6回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。

 主人公は水原真彦。34歳。会社を辞めて始めたジャズバーの経営に行き詰り、資金繰りのために街金に手を出した。その後に転落を繰り返し、危ないヤツらに取り込まれ、今は店をシャブの取引所として提供している。

 しかし転落はここで止まらず、さらに何度か転がり落ちて、ようやく止まったかに見えた仕事が、怪しい芸能プロダクションの運転手。その裏の仕事(表の仕事なんてほとんどないんだけれど)で、真彦は9歳の美少女のアリスに出会う。本書の後半は真彦とアリスの逃避行を描く。

 本書は、ミステリーとは言っても「謎」はほとんどない。真彦を中心とした騒動が目まぐるしく展開していく。危機が次々と真彦を襲いそれをなんとか切り抜ける、を繰り返すジェットコースター・サスペンスだ。

 この手の物語にありがちな「都合のいい展開」はもちろんあるけれど、リアリティを求めても仕方ない。話の運びのテンポがいいので、退屈することなくドンドンと読み進めることができた。

 最後に。冒頭のシーンに結構なインパクトがある。もっと正直に言ってしまえば嫌悪感を感じる。設定がある種の禁忌に触れていて、私としてはもう少しおだやかな設定でお願いしたいと思った。ただ、それでも新人賞が取れたのかどうかは分からないけれど。

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2014年6月21日 (土)

レビュー記事が800本になりました。

800_3

 先日の記事「全員で稼ぐ組織」で、このブログのレビュー記事が800本になりました。3年前に「レビュー記事が500本になりました。」という記事を書いた後、600本、700本は気が付かないうちに過ぎていました。

 今回もあまり意識していなかったのですが、昨日なぜか集計しようと思い立って数えてみたら、ぴったり800本でした。何かが知らせてくれたのだと思います。天啓かもしれません。

 区切りがいいので、分析してみました。評価は☆5が18、☆4は324、☆3が417、☆2が36、☆1は2。半分以上が☆3ですね。評価を付けるのはけっこう難しくて、無難なところで☆3つにしてしまうことが多いのは事実です。その点、☆4と特に☆5は「これはいい!」と思ったもので、自信をもっておススメできます。

 カテゴリーは小説が222、ファンタジーが171、ミステリーが142、経済・実用が88、その他が84、ノンフィクションが69、エッセイが20、雑誌が4です。基本的に「物語」が好きなんですね。小説には純文学からエンタメ系まで幅広く入っています。その他には自己啓発や評論などが含まれています。

 作家さんはダイアナ・ウィン・ジョーンズさん35、伊坂幸太郎さん29、有川浩さん27、上橋菜穂子さん20、三浦しをんさん17、東野圭吾さん16、塩野七生さん15..です。上位は、コンプリート(全作品読破)を目指した人です。集計によると著者は360組いて、なんと7割の253組が1作品だけでした。乱読が極まった感じですね。

 こうして本が読めるのは、暮らしに大きな支障がないからです。そのことは本当にありがたく思っています。その幸せを感じつつ、これからもレビュー記事を積み重ねていきたいと思います。

 
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「レビュー記事が800本になりました。」 固定URL | | コメント (0) | トラックバック (0)

温室デイズ

著  者:瀬尾まいこ
出版社:角川書店
出版日:2006年7月31日 初版発行 2006年8月30日 再版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 以前「戸村飯店青春100連発」を読んで、タイトル通りに「青春」がたっぷり詰まったとても面白い物語だった。それで著者のことはずっと気になっていたので、しばらく時間が経ってしまったけれどまた「青春」を期待して別の作品も読んでみようと思った。

 「戸村飯店~」の主人公は高校生の兄弟だったけれど、本書の主人公は中学生女子の2人。中学3年生の中森みちると前川優子。2人は小学生の時もクラスメイトだった。ただし「友達」とは言えない関係だったけれど。

 みちるたちの学校は、小学校も中学校も少し「崩れた」学校だった。「不良」と呼ばれる生徒が悪さをし、授業中に立ち歩く者もいて、何かのきっかけで陰湿な「いじめ」が起きる。小学校の時には優子が、中学校ではみちるがいじめの対象になってしまう。

 まぁそんなわけで「青春」という言葉に含まれる「爽やかさ」はあまりなく、代わりに「痛々しさ」が伝わってくる。全体的にピリピリとした緊張感が漂う。残念ながらこれも「青春」の別の側面かもしれない。

 ただし、この崩れた学校での生活も、著者の手にかかって少し明るさを感じられるようになる。みちるも優子も、相当に追いつめられるのだけれど、それぞれに踏みとどまって、反転することができる。

 それにはそれぞれに、ちょっとした拠り所やきっかけがあったことが幸いした。もちろん「いじめに負けずに頑張ったから、回りの人も反省してすべてが解決」なんてお気楽な話にはならない。それでもささやかな達成感が「爽やかさ」を残してくれる。

 「戸村飯店~」と同じように、主人公が章ごとに入れ替わる。みちると優子の互いへの思いが、ピッタリと合っていたり少しズレていたりするのがミソ。「有能な使えるパシリ」の斉藤くんにも注目。

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「温室デイズ」 固定URL | 2.小説, 2E.瀬尾まいこ | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年6月19日 (木)

全員で稼ぐ組織

著  者:森田直行
出版社:日経BP社
出版日:2014年6月2日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 本書は京セラの創業者である稲森和夫さんが、企業経営の実体験から編み出した経営手法である「アメーバ経営」を解説したもの。2010年に経営破綻した日本航空(JAL)の再生に稲森さんが乗り込んで、2年余りで東証への再上場を果たした。その時に適用した手法がこの「アメーバ経営」だ。

 「アメーバ経営」最大の特徴は、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団組織に分けること。それぞれの「アメーバ」のリーダーが経営者のように小集団組織の経営を行う。リーダーが的確な判断を行えるように、「アメーバ」ごとの採算を表す経営数値をリアルタイムで提供するシステムも整備する。

 「アメーバ」のリーダーが、メンバーとともに様々な努力や工夫といった「改善」を行う。その「改善」の結果はすぐに経営数値になって表れる。そうなると人間の習性として、その数値を少しでも良くする方法を考え始める。この「人間の習性」が「アメーバ経営」の駆動力だと言える。

 「アメーバ」の分け方、経営数値の作り方、といったことの詳細が、JALをはじめとする具体的な事例とともに解説されている。すぐにでも自社で適用できそうだ。

 しかし、この本では分からないこともある。それは、社員の意識改革を如何にして行うか、ということ。最初の「改善」という一回しの「駆動力」は、意識改革によって得るだと思う。もっともこれは文字にして人に伝えられることではないだろう。

 経営手法の解説本はいろいろあるけれど、本書は優れた本だと思う。組織を経営する立場の人は読んでみたらどうだろう?書店で目にしたら、巻末の付録「早わかりアメーバ経営」だけでも目を通して欲しい。 

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「全員で稼ぐ組織」 固定URL | 6.経済・実用書 | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年6月14日 (土)

55歳からのハローライフ

著  者:村上龍
出版社:幻冬舎
出版日:2014年4月10日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の5月の指定図書。

 今夜から始まるNHKの同名のテレビドラマの原作。「結婚相談所」「空を飛ぶ夢をもう一度」「キャンピングカー」「ペットロス」「トラベルヘルパー」の5編を収録。元は新聞に連載されたものらしい。

 本のタイトルにあるように、5編の物語の主人公の共通点は、50代半ばを過ぎた中高年であること。必ずしも55歳というわけではなくて、60歳を過ぎた者もいる。大きなくくりで言えば60歳という「定年」に前後する世代と言える。

 簡単に5編の紹介を。主人公が女性の話は2つ。「結婚相談所」は、30年近く共に暮らした夫と離婚した女性の「婚活」の話。ちょっと恥ずかしくなる。「ペットロス」は、定年後の夫と暮らす女性が愛犬を亡くす話。哀しいけれど、良い着地点が見つけられた。

 男性が主人公の話は3つ。「空を飛ぶ夢をもう一度」は、交通誘導員の仕事をする男性と中学の同級生の邂逅。息が詰まりそうな緊迫感。「キャンピングカー」は、早期退職した男性がキャンピングカーでの自由な旅の暮らしを妻に提案する。しっかりしてほしい。「トラベルヘルパー」は、63歳のトラックドライバーの老いらくの恋。ちょっとズレてる。

 基本的に男がカッコ悪い。離婚した妻に未練がましいメールを送ってくる。妻の気持ちを考えないで勝手に決めてしまう。妻が大事にしているものに気が付かない。ストーカー一歩手前の求愛...一途で無邪気で照れ屋で純粋。そういう言葉が中高年になっても適用されるならいいのだけれど。

 私は今50歳。10歳ほど主人公たちより年下だ。そのためか「いい歳して何やってるんだか」という気がした。ただ50歳になって思うのは、自分が若い頃に思っていた50歳のイメージと全然違っている、ということ。何かこう、全然枯れてこないのだ。そう思えば、10歳上の主人公たちを「いい歳して」なんて言ってることが滑稽に思えてきた。

 最後に。「ハローライフ」は、きっと著者の人気作「13歳のハローワーク」に着想を得て、宣伝効果を狙ったものだろう。あざといとも言えるけれど、実は「人生(生活)に出会う」というタイトルは、5編の物語をうまく言い表してもいる。5編の物語の主人公には、もうひとつ共通点があって、それは「人生に改めて向き合った」ことだ。

 NHK土曜ドラマ「55歳からのハローライフ」公式サイト

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2014年6月12日 (木)

手紙

著  者:東野圭吾
出版社:角川書店
出版日:2006年10月10日 第1刷 2011年2月15日 第32刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2006年に映画化され、それに合わせて刊行された文庫は1か月で100万部を超えた。これは出版元の文藝春秋社では最速のミリオンセラーだそうだ。帯には「日本中が涙した記録的大ベストセラー」の文字が躍る。

 主人公は武島直貴。「事件」が起きた時には高校3年生だった。「事件」というのは、直貴の兄の剛志が物盗りに入った家で鉢合わせした老女を殺害するという、強盗殺人事件だ。その日から直貴は「強盗殺人犯の弟」としての人生を送ることになった。

 無論「強盗殺人犯の弟」には罪はない。そんなことは誰だって頭では分かっている。少数の人々は、頭で分かっているだけでなく、行動でそれを示して直貴と付き合い援助してくれる。その意味では周囲の人には恵まれた方かもしれない。

 ただ、そんな少数の人々の善意は、その他大勢が感じる「不安」と、それが元になった「排除の圧力」の前では無力だ。直貴が人生の節々で掴みかけたものは、すべて成就する直前で手からこぼれ落ちてしまう。

 哀しい。ひたすらに哀しい物語だった。直貴と直貴に近しい人々が、理不尽でつらい目に会う。強盗殺人を犯した剛志を含めて「悪人」は一人も登場しない。そのことが却ってこの物語を空恐ろしいものにしている。私も含めて「守るべきもの」がある人間は残酷なのだと知った。

 タイトルの「手紙」は、第一には服役中の兄から直貴に届く手紙のことを指している。この手紙が時々直貴を苦しめる。ただ、他にも何通かの手紙が登場する。これが物語の重要な役割を演じる。

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「手紙」 固定URL | 2.小説, 32.東野圭吾 | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年6月 8日 (日)

ぼくの・稲荷山戦記

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:1992年7月23日 第1刷発行 2000年5月12日 第11刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 これまでに読んだ「月神の統べる森で」から始まる4部作+外伝は「月神」シリーズと呼ばれ、児童文学ながら日本の古代を描き切った迫力のある物語だった。本書はそれに先立って刊行された「神さま三部作」と呼ばれるシリーズの第1弾。

 主人公は中学1年生のマモル。祖母と二人で暮らしている。マモルの家は先祖代々裏山の稲荷神社の巫女を務める。マモルの母はマモルが小学校の2年生の時に亡くなり、父はマグロ船の船長で年に1度ぐらいしか帰ってこない。

 そのマモルの家に、腰まで届く長髪に着流しという姿の若い下宿人が来た。守山という名のその青年は、実はお稲荷さんの使いギツネ。裏山にある古墳がレジャーランド開発によって破壊されようとしているのを阻止するために、人の姿となってやってきたのだ。

 児童文学だから、子どもたちにも分かるように平易な文章で書かれている。だからと言って、大人が読んで物足りないということはない。「自然は大事だから守りましょう」と、「正しいこと」を一生懸命訴えれば願いが聞き届けられる、なんて薄っぺらい話にはなっていない。

 物語全体を通して受け取るものとは別に、「あぁそうだよな」と心に残るものがあった。一つはそれは「否念」という負の力。疑いや否定の感情や言葉は、氷のナイフのように何かを少し、でも決定的に傷つける。

 もう一つは登場人物の人類を表したこんなセリフ「力をもったはいいが、正しい使い方もしらないのにいい気になって使ってしまって、あと始末ができなくておろおろしてる

 さらにもう一つ。「人間が滅びたとして-たとえばそれが、核戦争みたいな自然も道づれにするようなものても、この草のように、自然はよみがえるんじゃないかな。(中略)しかし、自然が滅びたら、人間はいっしょに滅びるしかない」。「地球を守ろう!」に異論はない。しかし「守ってあげる」なんて思っているとしたら、それは実はとても不遜な考えなのだと気付いた。

 20年前に書かれたこのシリーズを、私たちはもう一度読み返した方がいいのではないか?そんな気がした。実は「神さま三部作」の第2弾「夜の神話」のテーマは「原発事故」なのだ。

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2014年6月 5日 (木)

嫌われる勇気

著  者:岸見一郎 古賀史健
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2013年12月12日 第1刷発行 第10刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 新聞で紹介されていたので手に取ってみた。新聞の記事によると、すごく売れているらしい。この記事を書いている今現在(6月5日0時)、Amazonのベストセラーランキング第5位、「ビジネス・経済」カテゴリでは第1位だ。

 本書は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想「アドラー心理学」を紹介したもの。分かりやすさのためと、恐らくは「プラトンの対話篇」に習ったのだろう、青年と老人の対話形式で綴られている。

 青年は厳格な両親に育てられ、常に優秀な兄と比較された。そんな両親に反発を覚えながら、両親の意に沿うことができない自分を「価値がない」と感じる。さらにはそんな自分が嫌いだ。つまり相当に厄介な感情を抱えている。

 そんな青年に対して、老人は「人は変われるし、誰もが幸福になれる」と言う。その後に話されることも、青年には到底受け入れられないことばかり。ちょっと皮肉を込めて言うと、それでも青年は驚異的な我慢強さと礼儀正しさを発揮して、老人の言葉に耳を傾ける。

 一つだけアドラー心理学の特徴的な考え方を紹介する。それは「目的論」。例えば「ひきこもり」は、何か外の世界で起きたことが原因となって、外へ出ることに不安で家や自室にひきこもる、と考えられている。こうした考え方を「原因論」という。

 それに対して「目的論」は、まず「外に出たくない」という目的があって、それを実現するために不安という感情を作り出している、と考える。まぁこれだけでは「はぁ?」という感じで、素直に受け入れる人は少ないだろう。もちろん、本書ではもう少し丁寧な説明がある。

 本書は私には合わなかった。その理由は、私が今はこういう話を必要としていなかったからだと思う。このブログでこれまでにも何度か書いたけれど、自己啓発本はそれを必要としている人にしか届かないと思う。

 実は理由はまだある。こんなのは「心理学」という学問じゃないんじゃないか?という思いが邪魔をして素直に読めない。学問にしては物事の解釈が恣意的すぎる。それに本当に「心理学の三大巨頭」と称されているのだろうか?フロイトとユングを「心理学の巨頭」というのかさえ疑問なのだけれど。

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2014年6月 1日 (日)

文・堺雅人

著  者:堺雅人
出版社:文藝春秋
出版日:2013年7月10日 第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「やられたらやり返す、倍返しだ!!」の半沢直樹を演じた堺雅人さんの初エッセイ。もっとも初出は2005年から2009年にかけて月刊誌に掲載されたもの。ありがたいことに巻末に出演作品リストが付いていて、それによると時期的には、大まかに言えば「新選組!」の後から「篤姫」の後まで。

 「まえがき」と「あとがき」を含めて54編のエッセイ。1編は4~5ページ。著者によると原稿用紙4枚だそうだ。書かれている内容は、テレビドラマや映画、舞台で「演じる」ときに著者が考えたこと。

 例えば「篤姫」で将軍家定を演じているときのこと。「いきいきと、でも、品はよく」と言われて「品とはなにか」を考えていたそうだ。3編連続でその話題だから、たぶん3か月は考え続けていたのだろう。

 とても魅力的な文章を書く人だ。「天璋院篤姫」の作者の宮尾登美子さんが「役者なんかやめて、作家になりなさいい」と言ったそうだけれど、その気持ちが分かる。

 とても僭越なんだけれどその理由を考えてみた。その1はボキャブラリーが豊富なことだと思う。読書家としても知られているから、引出しに入っている言葉が多いのは間違いない。

 ただ「あとがき」を読んで、それだけではなかったんだな、と思った。著者は、1編を書くのに2週間、長ければ3週間近くかかるそうだ。上の「品」のエピソードでも分かるように、真面目な方だから、「最適な一語」を見つけるのに時間をかけていたのだろうと思う。

 その2。54編全部が「自分のこと」を書いていること。月に1回の連載を長く続ければネタにも困るはず。職業柄おもしろい人との出会いやエピソードには事欠かない。「こんなことがありました」とやる方が容易だろう。

 ところが著者は、「今こういうことをやっています(考えています)」と書き始める。ちらちらとちょっと頑なで繊細な内面が垣間見える。俳優が書いたエッセイなのだから、著者のことを知りたい、と思ってこの本を手に取る人が多いだろうから、これは魅力的だ。

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