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2014年2月

2014年2月27日 (木)

里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く

著  者:藻谷浩介 NHK広島取材班
出版社:株式会社KADOKAWA
出版日:2013年7月10日 初版発行 12月20日 第7刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 共著者の藻谷浩介さんをテレビで拝見して、どんな考えをお持ちなのか気になっていたので、書店で平積みになっていた本書を手に取って見た。私は知らなかったのだけれど、中央公論新社の「新書大賞2014」の大賞を受賞したそうだ。

 タイトルの「里山資本主義」は、「かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たす現象」と定義されている。ただ、これではよく分からないと思うので、私なりの捉え方を説明する。

 「里山」というのは人が住んでいる場所に隣接した山林のこと。かつては人の手が入り、建築資材としての木材や燃料としての薪、木の実や果実といった食料などの資源を得ていた。資源の購入費用としてのコストはほぼゼロ円で、適切に管理すれば持続的・永続的に資源を得ることができた。

 「里山資本主義」は、こうした里山の利用のように、「地域内で」燃料や食料を調達し資金が循環する経済モデルのこと。本書では「マネー資本主義」や「グローバル経済」に対置、あるいはこれを補完するものとして語られている。

 著者は問いかける。「われわれが生きていくのに必要なのは、お金だろうか。それとも水と食料と燃料だろうか」と。「お金があっても食料や燃料が手に入らない」という経験を、私たちは東日本大震災の時にしている。長野県に住む私は、つい2週間前の大雪の時にもそうした事態に直面した。これは、暮らしの危機管理の問題でもあるのだ。

 必要なのは「お金」ではない。それは自明だ。それなのに、私たちの社会は「お金」を中心に回っている。それは「水も食料も燃料も、お金がないと手に入れられない」という前提だからなのだけれど、実はそうでない暮らしもある。

 本書にはその実例が豊富に紹介されている。岡山県真庭市では、製材で出る木くずを使った発電と、ペレットボイラーの利用で市全体で消費するエネルギーの11%を木のエネルギーでまかなっている。オーストリアのギュッシングという町は、なんとエネルギーの72%を自給している。

 とにかくお金をドンドンつぎ込んでグルグル回して...という「アベノミクス」や、「原発はベースロード電源」というエネルギー基本計画に、違和感や不安を感じる方に一読していただきたい。本書が「じゃぁどうしたら?」の答えになるかもしれない。

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2014年2月23日 (日)

丕緒の鳥

著  者:小野不由美
出版社:新潮社
出版日:2013年7月1日 発行 7月20日 第4刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「十二国記」シリーズの第8作。4編を収めた短編集。文庫として出版されたものとしては、現在のところ本書が最新刊。

 シリーズの中では異色作だと思う。これまでは十二国のどこかの国の国王か王宮を描く作品ばかりだったけれど、本書収録の4編には共通して、国王も王宮もほとんど登場しない。代わりに描かれているのは庶民や下級官吏の暮らしだ。

 また、国が傾き荒廃する時期が舞台となっていることも共通している。十二国の世界では、国王の治世の末期には国が勢いを無くし、国王が不在となると災害が頻発するなどして国土が荒廃をし、庶民の暮らしは凄惨を極める。そんな中でも日々の暮らしを営む(営まなければいけない)人々を描く。

 表題作「丕緒の鳥」は、儀式で使う陶製の鳥である「陶鵲」を司る官吏が主人公。儀式で撃ち落とされてしまう「陶鵲」を、庶民の姿と重ね合わせて悩む。

 「落照の獄」は、死刑についての答えの出ない問いを真正面から取り上げたもの。「青条の蘭」は、植物の奇病に端を発する環境破壊が題材。どちらも今日的な問題を、壮大なファンタジー世界の中に落とし込んだものだ。

 最後の「風信」は、自国の軍隊に蹂躙されて故郷を追われた少女が主人公。たどり着いた場所には、自然観察に没頭する「浮世離れした」暮らしをしている人たちがいた。「悲惨な外の世界の暮らしをどう思っているのか」と、少女は腹立たしく思う。

 「落照の獄」を除いて、他の3編にはもう一つ共通点がある。それは「再生」の物語だということだ。失いかけた何かを再び手にする、そんな予感がしみじみとうれしい作品だった。

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2014年2月16日 (日)

空色メモリ

著  者:越谷オサム
出版社:東京創元社
出版日:2009年11月30日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の1月の指定図書。

 ベストセラー+映画化となった「陽だまりの彼女」の著者の作品。「陽だまりの彼女」は25歳の会社員を主人公にしたラブストーリーだったけれど、本書は高校2年生男子を主人公にした青春ミステリー。

 主人公の桶井陸は、体重98キロ、ウエスト115cm。つまりデブ。デブであること自体を悩んでいる風はないのだけれど、友達の一人が「ぶーちゃん」と呼ぶのが本当は嫌だ。そして彼は、部員が部長一人しかない文芸部に(部員ではないけれど)入り浸っている。

 物語のきっかけは、その文芸部に新入生の女子が一人入部したこと。そして部長の河本博士(通称ハカセ)が、その新入生の野村さんを好きになってしまう。ここまで約20ページ。あまりモテない男の子の恋を描く、という青春小説の王道が冒頭から展開される。

 ところが野村さんには、付き合っているイケメンの彼氏がいるらしい。報われない恋、これも王道。でもこの後は、野村さんに脅迫状が届くとか、陸も正体不明の相手から脅されるとか、「野村さんは実は...」とか、ミステリー要素が配分された展開で、面白い読み物になっている。

 陸がなかなかいいヤツで、ハカセと野村さんの仲を取り持ったり、ハカセにアドバイスしたりする。そんな彼が私は好きだ。汗をかくことや体臭を気にしている「デブネタ」が痛々しい。ふざけて小突く力は、相手を怒らせないように慎重に加減している。失礼ながらデブでなければ、もっと自分に自信が持てて、男女ともに人気もあったことと思う。

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「空色メモリ」 固定URL | 3.ミステリー | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年2月12日 (水)

オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ

著  者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2011年4月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第6弾。

 東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」とそこを営む堀田家を舞台としたミステリー&ホームドラマ。これまでと同じく4つの章があり、章の中で決着がつく小さな物語と、章をまたぐ大きな物語が同時並行で進む。

 例えば小さな物語は、「店の外のワゴンに何度か林檎が置かれていた」とか、「風体の穏やかでない輩が店の周りをウロウロしている」とか、「常連客の一人がストーカーされている」とか。深刻度に差はあるけれど「事件」が起きる。謎が解ければ一見落着。

 大きな物語の方は、30年前に亡くなった絵本童話作家の記念館の設立の話と、「伝説のロックンローラー」と呼ばれる我南人の曲の盗作事件。まぁこちらもうまい落としどころに落ちた感じ。

 前作のレビューで「都合のよさ」が興を削いでしまわない、ギリギリのライン、と書いたけれど、今回はそんなに「都合のよさ」を感じなかった。最終盤で「こりゃ力技だな」と思うことはあったけれど...

 改めて数えてみたら、本書までで堀田家の4年間を描いたことになる。シリーズ当初では小学校4年生だった研人くんは、中学1年生になった。ホームドラマの「無邪気+かわいい」担当だった彼が、本書では重要な役回で、何気ないセリフが「大きな物語」の伏線になっている。

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2014年2月 9日 (日)

はなとゆめ

著  者:冲方丁
出版社:角川書店
出版日:2013年11月6日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 少女マンガ雑誌ではない。「天地明察」「光圀伝」と、江戸時代初期の男性を主人公とした物語を鮮やかに描いた著者の最新作。その主人公は、平安時代でおそらく一番か二番に有名な女性だ。

 主人公の名は清少納言。一条帝の中宮定子に仕える女房で「枕草子」の著者。全編を通して彼女の昔語りで構成される物語は、宮中に出仕する前から始まる。そのころは彼女はまだ「清少納言」ではなく、「歌人の清原元輔の娘」だった。

 本書は「清少納言」誕生の物語であり、「枕草子」誕生の前日譚でもある。父のような歌才もなく、秀でた美貌の持ち主でもない、自分に自信を持てない28歳バツイチの女性が、如何にしてその才能を花開かせ、どのような時代を生きたか?が描かれている。

 一人称の体裁は、随筆文学の祖とも言われる「枕草子」の著者だから、自分語りをさせたら面白そうだ、という狙いだろう。それは半ば功を奏していて、古典の現代語訳の雰囲気まで感じられて面白かった。しかしそれは難点でもあった。「古典の現代語訳を長く読むのはなかなかつらいでしょう?」と言えば共感してもらえるだろうか。

 それでも、読み終わってみればしみじみと良い本だっと思う。著者は「人」に興味があるのだろう。清少納言は「枕草子」の著者として、知らぬ人はいないぐらいに有名でも、その人自身のことは知られていない。本の著者とはそういうものかもしれない。でも、作品の「向こう側」のドラマが、作品に負けずに面白いこともある。

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「はなとゆめ」 固定URL | 2.小説 | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年2月 6日 (木)

ビブリア古書堂の事件手帖5

著  者:三上延
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2014年1月24日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 人気ベストセラーシリーズの第5巻。「帯には累計550万部突破!」の文字が躍る。

 3巻4巻のレビューを読んだ方には繰り返しになるけれど、このシリーズは3巻目から俄然面白くなった。4巻はその盛り上がりを維持した。そして本書は...

 4巻がシリーズ初の長編だったのに対して、本書はまた1編に1つの本にまつわる謎を追いかける連作短編に戻った。古書店の若い女店主の栞子が、溢れるほど豊富な古書の知識を使ってその謎を解く。それを主人公であるアルバイトの大輔の目を通して語る。

 その見事な謎解きがこのシリーズの特長ではあるのだけれど、巻を重ねるとさすがに飽きてくる。3巻の盛り上がりは、それに加えて栞子自身にまつわるミステリーが、シリーズを貫く芯としてストーリーに絡んできたことによる。

 そして、上の「そして本書は...」の続き。本書では維持してきたテンションを、フッと緩めた「転換」を見せる。栞子のミステリーについては一旦クールダウン。その代わりに、栞子と大輔の関係の大きな進展の予感で引っ張る。

 「転換」と言えば、本書から各短編の後にこれまでにはなかった「断章」が付くようになった。そこでは、主人公の大輔がいない場面での栞子が描かれている。これがなかなか効果的だ。

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2014年2月 2日 (日)

未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略

著  者:細田高広
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2013年7月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 以前にお世話になった方がFacebookで紹介されていたのを読んで、興味が湧いたので読んでみた。

 本書のキーワードは「ビジョナリーワード」。本書ではこう説明されている。「想像の中の未来を鮮やかに言い当てる。変革の行方を指し示す。そうやって、未来の骨格となる言葉」。「ビジョン」や「コンセプト」と同義語ではあるのだけれど、それらの中で鮮明さと求心力を備えたものだと、私は理解した。

 本書は「ビジョナリーワード」を30個も例示してくれている。1つだけ紹介する。ソニーの創業者の井深大さんの「ポケットに入るラジオをつくれ」。今はありふれたモノだけれど、当時1950年代の初めでは、ラジオは冷蔵庫や洗濯機のような「家具」で、ポケットに入るラジオなんて「ありえない」代物だった。

 技術者からは「無理だ」という声が上がり、井深さん自身も「何度も中止しようと思った」そうだけれど、数年後には実現する。それは小さいラジオという製品だけではなく、「ひとりで聴く」という新しいラジオの聴き方まで創造した。さらに言えば、これがウォークマンを経てiPodにつながることを、私たちは知っている。

 本書の前半3分の2は、こうした「ビジョナリーワード」と、それを生み出した人をそれぞれ3ページでコンパクトにまとめたもの。明日からの「話のネタ」になる良くできた読み物なのだけれど、実は本書の狙いはそこにはない。

 著者は「それであなたはどうですか?本当に自分の頭で考えた言葉を使っていますか?」と問いかける。私たち一人一人が「それぞれの未来を語る言葉」を生み出すことを促すことが本書の狙い。親切な著者は後半3分の1を使って、その方法を教えてくれている。

 ひとつ新しい気付きがあった。私たちはコミュニケーションの手段としてだけでなく、何かを考える時にも言葉を使っている、ということだ。どれだけ言葉を使いこなせるかは、どれだけ考えられるかに影響する。自分や家族の明日や未来だって「言葉」で考えるのだ。だから言葉を磨こう、そう思った。

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