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2014年1月

2014年1月30日 (木)

村上海賊の娘(上)(下)

著  者:和田竜
出版社:新潮社
出版日:2013年10月20日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 帯に「四年をこの一作だけに注ぎ込んだ凄みと深み!」とある。前作「小太郎の左腕」から本書発行までの間が4年。累計200万部超のデビュー作「のぼうの城」以降「忍びの国」「小太郎の左腕」までは、著者は作品を毎年発表しているので、確かにこの4年間という年月には、この作品への著者の思い入れが感じられる。

 時代は戦国時代。長篠の戦いで信長が武田軍を破った翌年。信長がその勢力を拡大しつつもまだ天下の行方は混とんとしていたころ。舞台は、その信長の勢力が及んでいない安芸の国(広島県)沖の瀬戸内海の島々と、信長の攻勢に直面する大坂本願寺(今の大阪城の場所にあった)、その脇を流れる木津川が注ぐ難波海(今の大阪湾)と広い範囲に及ぶ。

 主人公は、瀬戸内海の島々を根城にする村上水軍の当主、村上武吉の二十歳の娘の景(きょう)。醜女で悍婦、つまり「ブサイクで気が荒い」という、小説の主人公としては珍しい設定。普通なら近くにいて欲しいとは思わないタイプのはず。ところがこれが魅力的な女性なのだ。

 物語は、信長勢に包囲される大坂本願寺の苦境から始まり、景が「海賊働き」をする瀬戸内海に移り、景とともに大坂に移って、また瀬戸内海に戻って、再々度大坂に..と振り子のように行き来をする。景の心の内も、舞台が移る度に振り子のように揺れ動く。「もう傷つかないで欲しい..」と思うものの、景の無垢の魂は、そんな私の想いを踏み越えるように跳躍する。

 面白かった。「面白ない奴」が軽蔑を表し「阿保やで、あいつ!」が賛辞、という泉州(大阪の南部)、いや今や関西全般の気質が、随所に笑いを引き起こす。この気質は言い換えれば、他人も自分も楽しもうというサービス精神。それは著者自身にも備わっているらしく、本書全編に行き渡っている。

 上巻下巻それぞれにある合戦シーンが見せ場。多少長いけれど、現場にどっぷり浸った気分でハラハラして読むと気にならないだろう。

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2014年1月26日 (日)

世界地図の下書き

著  者:朝井リョウ
出版社:集英社
出版日:2013年7月10日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「何者」で2012年の下半期の直木賞を受賞した著者の、受賞後の第1作目。

 著者は、デビュー作「桐島、部活やめるってよ」では高校生を、「何者」では大学生の就活を、その他の作品でも自分と同年代を描いてきた。今回は打って変わって小学生の子どもたちを、物語の中心に据えた物語。

 物語の主な舞台は児童養護施設の「青葉おひさまの家」。主人公はそこで暮らす太輔。第1章は太輔が小学校3年生で「青葉おひさまの家」に来たころの話で、第2章以降はそれから3年後、太輔が6年生の時の物語だ。

 その他の主な登場人物は、太輔と同じ歳の淳也、淳也の妹の麻利、太輔の一歳下の美保子、六歳上の佐緒里。この太輔を加えた5人は「青葉おひさまの家」では同じ班で、文字通り寝食を共にしている。この施設で暮らしているからには、それぞれに事情を抱えている。

 もちろん、当人たちには何の責任もない事情であることは言うまでもない。物語は、それぞれが抱える事情が引き起こす事件や、心無い同級生による切ない出来事などを描きながら、ラストシーンへ収れんしていく。それは、佐緒里のために小学生たちが考えた幼い、しかし大きな企てだった。

 いろいろな気持ちが引き起こされた。私は子どもがつらい目にあう話は苦手だ。彼らに起きる出来事は悲しく切ない。子どもなのだから泣いてしまっていいのにそうしない。その姿がさらに切なくて、私はつらかった。一方で、彼らにも子どもらしい楽しみや企みがあって、その成り行きにワクワクしたりもする。かと思えば、大人を見る醒めた目に苦笑したり。

 奇しくも、同じように児童養護施設を描いたテレビドラマが話題になっている。そのテレビドラマの是非についてはここでは言わない。ただ、本書があのような批判を受けないのは、テレビのような影響力がないからだけではなく、この物語には温かく生真面目な、著者の心根が感じられるからだと思う。

 「どんどん道が細くなっていったりなんか、絶対にしない」。登場人物のこのセリフは、たぶん著者からのメッセージだ。

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2014年1月23日 (木)

インフェルノ(上)(下)

著  者:ダン・ブラウン 訳:越前敏弥
出版社:角川書店
出版日:2013年11月28日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ダ・ヴィンチ・コード」の著者の最新作。それも「ダ・ヴィンチ・コード」で登場する宗教象徴学者のラングドン教授のシリーズ。

 物語はラングドンのおどろおどろしい夢から始まる。川の向こうにベールをかぶった女性。その足元にはたくさんの人間の亡骸が広がっていて、手前の川の水は血の色をしている。まさに地獄絵図。

 だからと言って、ミステリー作家の著者がスプラッターホラーに転向したわけではない。今回の物語のテーマはダンテの「神曲」。念のために言うと「神曲」は3篇から成り、その第1篇が「地獄篇」で、地獄の有り様が描写されている。ラングドンの夢はこれに関連している、というわけだ。

 夢から覚めたラングドンはフィレンツェの病院にいた。ここ2日間の記憶をなくして。何がどうなっているのか分からないうちに襲撃を受けて、居合わせた美人の女医さんの機転によって、2人で難を逃れる。

 パズルのピースをはめるように、少しずつ判明する情報を繋ぎ合わせると、「神曲」を基にした謎を解き明かす必要があるらしい。その背景には大きな陰謀が見え隠れする。そうでなければ、こんなに執拗に追われることはないはずだ。

 今回も面白かった。どうやら映画化の話が進んでいるらしい。謎解きがあり、陰謀があり、美人と2人の逃避行があり、危機一髪があり。シリーズのお馴染みのパターン。意地悪な言い方をすれば、テンプレートに流し込んだ感じなんだけれど、それが期待されているという側面があるのも確かだ。

 最後に。今回の陰謀は、これまでで一番怖いかもしれない。「今そこにある危機」に対して、私たちはあまりに無防備というか無邪気というか...

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2014年1月19日 (日)

オール・マイ・ラビング

著  者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2010年4月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第5弾。時代を遡って今は亡きサチおばあちゃんの若いころの物語だった、第4弾の「マイ・ブルー・ヘブン」から、現代へと戻って来た。

 東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」が舞台。そこを営む堀田家の人数が、巻を重ねるごとに増える。堀田家が関わることで登場人物も増える。本書巻頭の「登場人物相関図」には、実に30人以上の名前が載っている。

 その登場人物たちが、それぞれ主人公となった大小の物語が同時並行的に進む。小さな物語とは例えば、堀田家3姉弟の長男の紺の義弟の修平君が、「道ならぬ恋」をしているらしい、とか。修平君は以前の巻でちょっとだけ登場している。こんな具合で登場人物の増加によって、物語のバリエーションの拡大につながっている。

 大きな物語は、堀田家に伝わる「とてつもないお宝」の話と、伝説のロックンローラーと呼ばれる我南人の歌手生命に関わる話。私としてはこの2つともが、これまでのシリーズの中で一番を争うトピックだと思う。そういう意味で一山超えた気がした。

 「都合のよさ」が興を削いでしまわない、ギリギリのラインまで来ている気がする。ただ、このシリーズは基本的に「昭和のホームドラマ」の路線で、「都合のよさ」もその路線の内、と考えた方がいいのかもしれない。

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2014年1月16日 (木)

タックス・ヘイブン 逃げていく税金

著  者:志賀 櫻
出版社:岩波書店
出版日:2013年3月19日 第1刷発行 7月16日 第3刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 大学生の娘が教科書として読んでいた本。ちょっと面白そうだったので借りて読んだ。

 著者の経歴がスゴイ。東京大学に在学中に司法試験に合格。大蔵省に入省して主計局主計官に。これで十分スゴイのだけれど、国際機関での日本国メンバーや、出向して大使館参事官や県警本部長を務めたこともある。さらにイスラエルで紛争地に迷い込んでしまって銃撃を受けるという修羅場もくぐる。趣味は「ショットガンの雉子撃ち」。まるで劇画の主人公のようだ。

 本書は、著者のこのような経歴の中で、特に租税分野の国際交渉の豊富な経験を踏まえて、「タックス・ヘイブン(租税回避地)」の実像を明らかにするものだ。タックス・ヘイブンとは一般的には、税を課さない国や地域のこと。取引をそこを経由させることで、税を免れたり資金の出所を隠ぺいしたりすることができる。

 本書では企業名は挙げていないけれど、アップルやグーグルなどの超優良巨大企業が、法人税をどこの国にもほとんど納めていないことは、様々な報道で明らかになっている。日本でもオリンパスやAIJの事件でその存在が知られた「ケイマン諸島」などが、タックス・ヘイブンとして有名だけれど、その他にもいろいろあるらしい。それを主要施策としている国もあるし、ロンドンやニューヨーク市場のオフショア・マーケットもそれに類する。

 ここまでの紹介では、著者の経歴と同じぐらい劇画の中の世界で、私たちとあまり関係がないように感じることだろう。暴力団やテロ組織の資金洗浄にも使われることを思えば、私たちの暮らしの安全に関わる。大企業や富裕層が支払うべき税金を支払わなければ、その分の負担は私たちのような「真面目な納税者」にシワ寄せがくる。いや今現在きている。

 現在は弁護士である著者は、このタックス・ヘイブン退治に執念を燃やしているようだ。本書もそのために実情を広く知らせる目的がある。私たち「真面目な納税者」も知っておくべきことかもしれない。

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2014年1月12日 (日)

花散らしの雨 みをつくし料理帖

著  者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2009年10月18日 第1刷発行 2013年9月8日 第33刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「八朔の雪」に続く「みをつくし料理帖」シリーズの第2弾。前作のレビューで「これは楽しみが増えた」なんて書いておいて、あれから半年以上が経ってしまった。

 主人公は前作を同じく澪、歳は二十歳ごろ。女性ながら大坂の一流料理屋で修行し、訳あって江戸に来て今は「つる家」という料理屋で板前をしている。舞台は前作で神田にあった店がつけ火で焼けてしまったので、九段坂下に移って来た。

 これも前作と同じく、料理の名前が副題についた短編が4つ収録されている。「ほろにが蕗ご飯」「こぼれ梅」「なめらか葛饅頭」「忍び瓜」。名前からどんな料理か想像がつかないものもあるが、読めばどれも滅法うまそうな料理なのだ。

 一遍一遍に事件があり人情があり解決がある。「ほろにが蕗ご飯」では年端もいかない子どもが背負う苦渋に苦悶し、「なめらか葛饅頭」では病に倒れた隣人への献身に泣いた。
 またシリーズを通してのテーマもある。「こぼれ梅」では幼馴染の親友との会うことのない交流、「忍び瓜」では澪の恋心がこれまでにないほどはっきりと描かれた。

 「つる屋」の主人の種市、元女将の芳、医者の源斉や客の小松原、といった人々とのやり取りや、宿敵の登龍楼との因縁など、基本的には前作で蒔いた種が育っている感じ。ただし、新しい登場人物もいる。下足番として雇ったふきと戯作者の清右衛門。この二人が新しい種になりそうだ。

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2014年1月 8日 (水)

日本人はなぜ存在するか

著  者:與那覇潤
出版社:集英社
出版日:2013年10月30日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 新聞の書評欄で知った本。その記事には「気鋭の歴史学者が(中略)「日本人とは何か」というテーマに迫った」と書いてあった。面白そうなので手に取ってみた。

 結論から言うと、期待通りとはいかなかった。章建ては「日本人は存在するか」といった刺激的なものが並んでいるし、取り上げられる視点も「歴史」「国籍」「民族」「文化」と、なかなか語りがいのあるものが並んでいる。だたし、どれもちょっと論点がズレているように感じるのだ。

 例えば第1章の「日本人は存在するか」。こう聞かれたら「存在する(に決まってるじゃないか)」というのが大方の答えだろう。これに対して著者は、日本人の定義は何?と問い返す。国籍が日本?いま日本に住んでいる?...一律には決められないねぇ。つまり、定義が曖昧なのだから「存在する」という答えも自明ではない、というわけなのだ。

 質問を投げかけて答えを議論するのではなく、質問の方の曖昧さを指摘して「明確な答えは出ません」が答えでは、はぐらかされた気分だ。たいたい「日本人」が「存在するか」がテーマだったのに、「定義」の話に置き換わっている。上で「論点がズレている」と言ったのはそういうことだ。

 それから「再帰性」という社会学の用語が、本書を貫くキーワードになっている。これは、「認識」と「現実」がループする現象が生じることを指す。例えば「日本人は集団主義的」という認識が、日本人に集団主義的な行動を促し、そのことが最初の認識を補強し、そのことが....というループだ。さらに言えば「認識」が「現実」に先立つこともあるし、その「認識」が誤っていることさえある。

 著者はこの「再帰性」を使って、自明や定説とされるさまざまなことを覆す。日本の「国籍」「民族」「文化」といった大きなものから、「織田信長は歴史的な人物」という細かいものまで。この本の元が大学の講義だそうで、「ちょっと面白い話」としてはまぁいい。しかし、本にした場合は、それで何が言いたいのか?となってしまう。「あれも間違いこれは思い込みだ」と、手当たり次第にひっくり返して後に何も残らない。白けた気持ちで取り残されてしまった。

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「日本人はなぜ存在するか」 固定URL | 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月 4日 (土)

永遠の0

著  者:百田尚樹
出版社:講談社
出版日:2009年7月15日 第1刷発行 2013年12月2日 第47刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 今年最初のレビューは、昨年の「今年読んだ本ランキング」の1位「海賊と呼ばれた男」の著者のデビュー作である本書。デビュー作というよりも「映画が大ヒット中の作品」と紹介した方が分かりやすいかもしれない。先月21日の公開後2日間で動員約43万人だそうだ。

 「0(ゼロ)」は零戦のゼロ。念のために補足すると、第二次世界大戦時の大日本帝国海軍の戦闘機のこと。本書は、この零戦の搭乗員であった宮部久蔵という名の男の物語。主人公は宮部の孫の佐伯健太郎。健太郎が祖父を知る人々を訪ねて話を聞く。一つ一つの話が折り重なって、60年あまり前の一人の「青年」の生き様が浮かび上がる。

 上で「青年」としたのは、この物語が昭和16年から20年、宮部の23歳から26歳の時のものだからだ。飛行訓練の教官を務め「熟練搭乗員」と呼ばれるので、つい「壮年の男性」をイメージしてしまうのだけれど、まだ20代なのだ。周囲の人々も総じて若い。多くは10代から20代の若者。そのことを思い返すとより一層胸が痛む。

 浮かび上がるのは「青年」宮部の生き様だけではない。当時の日本がどのような戦い方をしたのか?いかにして破滅的な特攻作戦に突き進んでいったのか?という当時の時代のあり様が浮かび上がる。さらには、残された人々の現在にいたる60年余りの時間も...。私は、宮部の教え子のある特攻要員の妻の一言が胸に刺さった。

 醒めたことを言って恐縮だけれど、「十死零生」と言われる特攻は「泣ける」という意味ではテッパンのテーマだ。文庫歴代売り上げ1位という300万部超も、映画の大ヒットも一番の要因はここだろう。ただしそれだけではない。この作品を「泣ける」物語として消費してしまってはもったいない。この作品によって、あの戦争を知識としてではなく、記憶として留めたい。

 最後に。正直に言って読みやすい本ではない。プロローグと第1章に「つかみ」はあるものの、その後に長く続く「戦争語り」は、あの戦争をしっかり描写することを意図したものなのだろうけれど、読者に優しいものではない。本書を手に取った人は、少しガマンすることになるかもしれないけれど、先へ読み進めてほしい。

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「永遠の0」 固定URL | 2.小説 | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月 1日 (水)

あけましておめでとうございます。

 皆さん、あけましておめでとうございます。

 このブログでは、昨年は102作品を紹介しました。これで2010年から4年連続で100作品超えとなりました。昨年も同じことを書きましたが、暮らしが安定していたからこそ続けて来れたわけで、そのことは本当にありがたく思っています。

 昨年末に発表された様々な指標によると、日本の経済は堅調で回復基調が定着しつつあるようです。私が住む地方の街では、それらの指標はあまり改善されず取り残された感がありますが、気分が少し上向いてきた気がします。

 今年は娘が成人式を迎えます。これまでに「この子が大人になる頃には...」と想像することが何度かありました。いよいよそれは想像ではなく、眼前に現れることになるのですが、それはどんな姿をしているのでしょう。楽しみより心配が先に立ちますが、住みよい世界を次の世代に手渡したいものです。

 それでは、今年が、皆さんにとって良い年でありますように。

 
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