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2013年11月14日 (木)

めぐらし屋

著  者:堀江敏幸
出版社:毎日新聞社
出版日:2007年4月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の10月の指定図書。

 主人公はビルの管理会社に勤める蕗子。地元の大学を出て今の会社に就職して20年近い、というから40歳ぐらい。一人暮らしの独身。以前に母親を亡くし、この度は父親が亡くなった。

 物語は、蕗子が父親の遺品整理をしていて、厚手の大学ノートを見つけたところから始まる。表紙の裏に黄色い傘の絵が描かれた画用紙の切れ端。その絵は小学生の頃の蕗子が描いたものだった。そして、そのノートの表紙には「めぐらし屋」の文字。

 物語は、このノートをきっかけにして、蕗子が父親の足跡を訪ねる様子を軸として、蕗子の仕事と、子どもの頃の回想が語られる。その3つは少しずつ交錯し始める。

 淡々とした物語の進行の中にしみじみとした良さを感じる本だった。

 亡くなった父親が「めぐらし屋」という仕事をしていたらしい、ということが分かった以外には、大きな出来事は起こらない。でも、よく観察された日々の出来事が詳細に描かれていて、少しずつ楽しい。少しずつ可笑しい。

 兄弟もいないようだから、蕗子はいわゆる天涯孤独の身。おまけに、病院で看護師に「これでよく生きてられますね」と言われるぐらい血圧が低い。心臓にはしぼんだ水風船ぐらいの力しかない。

 もうこの世とのつながりが弱くて心細い境遇なんだけれど、物語にはそういった心細さが感じられない。その理由は蕗子の自然体の生き方にある。何一つ拒むことなく自然に受け入れる。たぶん、蕗子の父親がそうだったように。そういう生き方も悪くないと思う。

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