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2013年10月10日 (木)

ボローニャ紀行

著  者:井上ひさし
出版社:文藝春秋
出版日:2008年3月1日 発行 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の9月の指定図書。

 2010年4月に亡くなった、小説家・劇作家の井上ひさしさんのエッセイ。タイトルを見る限りでは、イタリアのボローニャを訪れた紀行文に思える。確かに始まりは、2003年の12月に著者が初めてボローニャを訪れるシーンから始まる。しかしその後に展開されるのは、ボローニャという街を中心にイタリア全体までに視野を広げた、政治・経済・歴史・文化を活写したレポートだった。

 恥ずかしながら私はボローニャという街のことをほとんど知らなかった。サッカーの中田英寿選手がしばらく在籍していたチームに、そんな名前があったように思う、ぐらいだった。ところが、ヨーロッパでもっとも古い大学であるボローニャ大学があり(ダンテ、エラスムス、コペルニクスらが同窓生!)、工業都市としても発展し、ドゥカティやランボルギーニの本拠地で..と、イタリア有数の都市であるらしい。

 本書の要諦は、何度も繰り返し語られる「ボローニャ方式」と称される街づくりのあり方だ。これによってボローニャは、工業都市への発展と、「生まれた土地で育ち、学び、結婚し、子どもを育て、孫の顔を見ながら安らかに死ぬのが一番の幸せ」と、街の人々が愛して止まない街づくりを同時に成し遂げた。

 「ボローニャ方式」を一言でまとめるのは難しい。「古い建物を壊さずに外観を残して、中を現在の必要に合わせて改造する」というのが、第一の特長ではある。ただ、そのように目に見えるものだけではなく、「社会的協同組合」という公共性を持った組合を、企業と銀行と行政と、そして何よりも市民が支援して育てていく「共生」の精神こそが、ボローニャ方式の肝要だ。

 この方式は好循環を生んでいる。例えばある工場主は、市民に支えられて築いたものだからと、引退するときに工場を街にそっくり寄贈してしまう。そしてそこを使った新しい事業が起きる。もちろん市は無償で提供する。市民は必ず自分たちに何かの形で還元されると信じて、そこを盛り立てる。

 ひとつ驚いたことがある。イタリアの銀行法では、貯蓄銀行は最終利益の49%以上を地域の文化やスポーツに還元するように定めているそうだ。企業活動への介入として、日本やアメリカでは議論にもならないだろう。

 著者の明に暗にの巧みな誘導もあって、ボローニャの話を読みながら、日本の現状が浮かび上がる仕組みになっている。街づくり関係者、自治体、銀行の皆さんに読んでもらいたい。

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