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2013年8月11日 (日)

覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰

著  者:池田貴将
出版社:サンクチュアリ出版
出版日:2013年6月10日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 出版社のサンクチュアリ出版さまから献本いただきました。感謝。

 サブタイトルは「超訳 吉田松陰」。吉田松陰は(説明の必要がないかもしれないけれど念のため)、幕末の武士、思想家、教育者、兵学者。西洋兵学を学ぶために密航を企てて失敗し投獄される。後に故郷の長州で「松下村塾」という私塾を開く。この塾は久坂玄瑞や高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋といった、幕末から明治維新にかけての、いわゆる志士を輩出する。しかし松陰自身は「安政の大獄」で処刑され、明治維新を待たずに29歳で没する。

 本書は松陰の「名言」を、世界No.1コーチと言われる「アンソニー・ロビンズ」の直伝トレーナーである著者が、「超訳」つまり読みやすさを最優先にした訳し方で紹介する。松陰は、手記、講義録、書簡などを多く残しているので「名言」とされるものも多い。本書の項目数も176個もある。

 元々項目数が多いことも手伝って、読み進めるうちに「これはいい言葉だな」と思うものが、たくさん見つかる。例えばNo.039「なんでもやってみる」。できないのではなくて、ただやっていないだけです。まだやったことがないことを、「怖い」「面倒くさい」「不安だ」と思う感情は、過去の偏った経験が作り出す、ただの錯覚です(後略)。

 松陰は、徹底して「行動」を重んじる人だったようだ。密航に失敗した事件などは、その実践とも言える。本書にも、上に紹介した「なんでもやってみる」のように、行動を促す言葉がとても多い。そのため、何かをためらっている人、背中を押してもらいたい人には響くものがあると思う。

 少し気になることもあった。現代語や外来語をはじめ、松陰が使いそうもない言葉が、少なからずあることだ。「超訳」だからそのこと自体は問題ない。いくつかのことが重なって、読んでいてしっくりとこない感じがした。

 まず、皮肉な言い方だけれど、「名言」は、後世の人が自分たちの都合で作り上げる側面が少なからずある。松陰には手記などの史料がたくさんあるので、そこから気に入った言葉を抜き出して「名言」にするのも容易い。

 そして、本書の項目は著者が(自分の都合で)選択した言葉で、さらにそれを「超訳」として(正確さを犠牲にしても)読みやすさを最優先にして、松陰が使いそうもない言葉を使って訳した。だから、それはもう松陰の言葉なのか著者の言葉なのか判然としなくなってしまっている。失礼かつ不合理ながら、松陰の言葉であるかないかで重みが違う。小さくても良いので、松陰自身の言葉を対置してくれれば良かったと思う。

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