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2013年7月 4日 (木)

僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか

著  者:荻上チキ
出版社:幻冬舎
出版日:2012年11月30日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 タイトルを見て、自分の想いととても近いので読んでみようと思った。テレビで見る政治家や著名人の意見から、ネットに溢れるコメントまで、見渡せば「あれはこうだからダメだ」という批判ばかりが幅を利かせている。ダメだと思うことが多いからこうなっているのも事実。しかし、これでは前に進まない、もっとポジティブ(前向き)な意見交換が必要だ、と思っていた。

 著者も「はじめに」でこう書いている「他人の提案に対し、延々とダメ出しを加えるだけではなく、もっとこうしたほうがいいと提案しあう議論を加速させなくては、もうこの社会は持ちません」。「ダメ出し」に対して、ポジティブな提案を出すという意味の「ポジ出し」という言葉を作って、著者はこれを勧める。

 本書では、まず大雑把な見取り図として、1970年代以降の政治経済状況を見渡して、時代が予算を分捕って配る「配り合い」の競争から、どこの予算を減らすかの「削り合い」の競争の時代になったと見る。別のところを削らなければ、自分のところが削られるかもしれない。これが「足の引っ張り合い」、つまりダメの出し合いにつながっているわけだ。

 このあと、消費税法案、デフレ議論、生活保護、ネットカフェ条例、と次々とテーマを替えて、その問題点を浮き彫りにしていく。さらには、官僚やメディアのありようについてダメ出しする。???? 残念なことに、本書の初めから7割ぐらいまでは、色々な物事へのダメ出しが延々と続いている。タイトルとは正反対で、怒る気にさえならず呆れてしまった。そんな訳で☆は2つ。

 著者の名誉のために、そして何よりこの記事がダメ出しで終わらないために、3つ述べておく。1つ目。延々と続くダメ出しの中には「こうすべきだ」という提案も書かれている。これが著者が言う「ボジティブな提案」なのかもしれない。しかし「このやり方は間違いで、こっちの方が正しい」という言い方は、私にはダメ出しにしか思えなかった。

 2つ目。7割のダメ出しの残りの3割には、いいことも書いてあった。「倫理」と「功利」の2つのレンズと、社会疫学的なアプローチの話はその一つ。削り合い競争の中で、倫理的には必要な弱者や少数の利益は犠牲にされがちだ。しかし、疫学的なアプローチで予防的な解決策が取られれば、実は社会全体に対する功利的なメリットも大きい、といった見方だ。

 3つ目。最終的には「(読者の)あなたも何か行動しましょう」という話になる。そう言うだけあって、著者はすでに行動済みなのだ。難病や障害についての困ってることをシェアするメールマガジン「困ってるズ!」や、東日本大震災関連情報のサイト「復興アリーナ」、いじめ対策の情報サイト「ストップ!いじめナビ」。どれも有意義な試みだと思う。下にURLを紹介しておくので、興味のある方は覗いてみて欲しい。
・困ってるズ!: http://synodos.jp/komatterus/
・復興アリーナ: http://fukkou-arena.jp/
・ストップ!いじめナビ: http://stopijime.jp/

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コメント

はじめまして。僕も同じ問題意識からこの本を手に取りました。
後半のポジ出しにもっとボリュームがあるといいなと思いましたが、
社会疫学的なアプローチは、ご指摘のとおり参考になりました。
また書評を拝見しにきます。

投稿: clb_webmaster | 2014年8月29日 (金) 18時27分

clb_webmasterさん、コメントありがとうございます!

身近な会話からニュースまで「ダメ出し」があまりに多いと感じていました。
だから著者の「ポジ出し」の提案には賛成なんです。でもこの本の中では
それができていないように感じたことが残念でした。

投稿: YO-SHI | 2014年9月 2日 (火) 01時08分

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