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2012年7月 5日 (木)

沖で待つ

著  者:絲山秋子
出版社:文藝春秋
出版日:2006年2月15日 第1刷発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 第134回(2005年下半期)の芥川賞受賞の表題作と「勤労感謝の日」の2つの中編を収録。

 表題作「沖で待つ」の方が良かった。主人公は及川。住宅機器メーカーの女性営業員。入社して最初に配属されたのが福岡の営業所。一緒に配属された同期の「太っちゃん」との交流というか、会社員生活の面白おかしいエピソードが綴られている。著者自身の経歴とシンクロする部分もあるので、きっと下敷きになる実話があるのだろう。

 ただ、物語は五反田にある太っちゃんのマンションを、及川が訪ねるところから始まる。太っちゃんと会話を交わすのだけれど、それまでの経過がどこか違和感がある。「もう他人が住んでるのかもしれない」とか、「部屋には机もベッドも、ほんとうに何もなかった」とか。違和感の理由はすぐに明らかになる。太っちゃんは三か月前に死んでいたからだ。

 この後、及川と太っちゃんが福岡に配属された時まで逆戻りをして、再度この時間この場所に戻ってくる、という仕掛けになっている。女が死んだ男に会いに来たのだから、恋人同士だったのかと思うかもしれないが、そうではないところがこの物語のキモ。「異性の同期の友だち」これで言い表せるわけではないが、他に言いようのない関係。実は、私にもちょっと覚えがある。

 及川に「勤労感謝の日」の恭子、以前に読んだ「逃亡くそたわけ」の花ちゃんも、著者が描く女性は寄り道したり立ち止まったりの人生を歩んでいるけれど、そんなことは一向に構わない潔さが魅力的だ。

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コメント

POP堂書店というサイトを開いた栗原龍二といいます。
POP堂書店は、書店とは名乗っていますが本は一冊も売っていません。
そもそも営利事業ですらありません。
読者が自分のおすすめ本のPOPを作って貼る場所です。
POP堂書店を訪れた人は、街の書店でPOPを見て本を手に取るように、POPをクリックしてPOP作者のページを訪れます。
いろんな人のオススメ本が、パッとひと目で選べる場所を作ろうと思って開いたサイトなのです。
ただ、開いたばかりのサイトなのでPOPを置いているのは私が作った分が半分以上を占めるという状況。
もしよろしかったらYO-SHI様にもオススメ本のPOPを作って頂けないかというご提案です。
まだ全然訪れる人も少ない状況ですが、POPが揃ってきたら本格的に(と言っても素人作業なので知れていますが)広報活動を始めようと思っていますので、新規読者獲得の一助になれると思います。
唐突な申し出で、戸惑われたかと思いますが、ぜひ一度POP堂書店を見てご検討下さい。

投稿: 栗原隆二 | 2012年7月 5日 (木) 17時35分

栗原隆二さん、コメントありがとうございます。

POP堂書店、拝見しました。「コンセプト」に書かれていた出版業界の
状況への危機感は私も感じます。本が長く売れるようになればいいな、
と私も思います。

ところで「コンセプト」にあった「十年で年間出版点数は二倍近く」
という情報の出典はどこでしょうか?
私の認識とは違うようなのですが。

投稿: YO-SHI | 2012年7月 8日 (日) 00時09分

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» 「沖で待つ」 絲山 秋子 [日々の書付]
「沖で待つ」を読んだきっかけは、恋愛と違う会社の同僚同士という絆に引かれたからです。 わたしは今まで中小企業でしか働いたことがないので、同期と呼べる人はいませんでした。会社の人間はみなライバルだと思ってたし、信頼して約束を結ぶ相手を作ることができなかった。 仕事で失敗したり、みっともないところを見られている分、気の置けない太っちゃんと主人公みたいな関係がうらやましかった。 【ストーリー】 会社で気の置けない同期だった「私」と太っちゃんはある約束をする。それはどちらかが先に死んだらお互... [続きを読む]

受信: 2012年7月 7日 (土) 14時38分

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