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2012年7月

2012年7月30日 (月)

小冊子「1Q84のここが好き!」

 新潮社が、1Q84の文庫が全6冊揃ったのを機に「1Q84のここが好き!」という小冊子を作ったそうです。先日書店を徘徊していて見つけました。どうやら7月の初めごろから書店に置いてあったようです。

 内容は女優の杏さん、俳優の谷原章介さん、ピースの又吉さんらの1Q84への想い、作家の綿矢りささんとイラストレーターの安西水丸さんの、「1Q84の舞台かもしれない」場所めぐり、などです。

 杏さんも谷原さんも又吉さんも、芸能界きっての読書家として知られた方々です。実は私は、とある理由から1Q84をあまり楽しめなかったのですが、3人の方の話を伺って、もう1度読み直してみようかと思いました。

 役者のお二人は職業柄からか、「自分が演じるとしたら..」という観点もお話しになっていて興味深かったです。杏さんの〇〇も、谷原さんの〇〇も、私としてはすでに「ハマリ役」で、他の人は考えられなくなってしまいました。是非、実現させて欲しいと思います。

 ※「1Q84のここが好き!」はネットでも読めます

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2012年7月28日 (土)

夜の国のクーパー

著  者:伊坂幸太郎
出版社:東京創元社
出版日:2012年5月30日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの最新刊。書き下ろし長編は本書が10作目、「マリアビートル」以来で1年半あまり。

 主人公は「私」と、猫のトム。「私」は公務員で、妻の浮気が発覚して居心地が悪くなった家を出て、釣りに出かけた船が時化にあって、どこか分からない場所に流れ着いたらしい。目が覚めたらそこにいた、そして目の前(というか胸の上に)いた、猫のトムが話しかけてきた。本書の大部分は、こうしてトムが「私」に話したトムの国の物語。

 「トムの国」と言っても猫の国ではない。人間の国王が居る人間の国で、猫は人間とつかず離れず「猫らしい」自由な暮らしをしている。まぁ、私たちの世界と同じように。ただ違うのは、この国の猫は人間の言葉が分かる(私たちの世界の猫も分かるのかもしれないけれど)。どこへでも怪しまれずに入り込めるので、人間たちのいざこざや人間関係なども知っていて、けっこうな「事情通」なのだ。

 トムの国は8年間続いた隣国「鉄国」との戦争に敗れ、国王が居るこの街に、鉄国の兵士たちが統治のためやってきた。鉄国の兵長は、どうやら冷酷無比な人物で、有無を言わさずに国王を射殺し、街の人々には「外出禁止」を言い渡す。「必要なものは奪われ、必要でないものも奪われる..戦争に負けるとはそういうことらしい」という、長老の言葉が人々に重くのしかかる。

 クーパーとは杉の木の怪物のことで、トムの国では、クーパーと闘う兵士のことが、半ば伝説的な物語になっている。クーパーの話と、鉄国の兵士に統治された街の話と、「私」の話の3つが縒り合される時が、この物語のクライマックス。

 帯には「渾身の傑作」とあるのだけれど、私はちょっと物足りなく感じた。伊坂さんは以前から「抗いようのない巨大な力」を描き、テーマはシリアスなのに、物語全体が重苦しくならない。どこかカラッとした雰囲気と可笑しさを感じる。「戦争に負けた国」を描いた本書もそれは同じで、その点はとても良かったのだけれど。

 コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
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2012年7月25日 (水)

自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと

著  者:四角大輔
出版社:サンクチュアリ出版
出版日:2012年7月25日 初版発行
評  価:☆☆(説明)

 出版社のサンクチュアリ出版さまから献本いただきました。感謝。

 著者は元音楽プロデューサー。現在はニュージーランドの原生林に囲まれた湖畔で奥様と暮らす。そこと東京を行き来した、企業のコンサルティングや、フィッシングやアウトドアの記事執筆や商品開発を行っている。帯によると、上智、慶應、立教などの大学でライフスタイルデザインの講義も行っているそうだ。

 そんな著者が、自由であり続けるために、本当に必要なモノだけを残す、20代であれもこれも捨てよう、と語りかける。例えば、「今使わないモノ」「衝動買い」を捨て、モノを増やさない。といった具合。

 読み終えて思うのは、著者と私は価値観が違う、ということだ。私は「自由であり続けたい」と思っているわけではない。家族や仕事や住んでいる街に束縛されながらも、幸せに暮らしたい。いや、束縛も幸せの要素なのかもしれない。それに、20代は色々と抱え込んだり、試してみたりする時で、捨てるのはもっと後でいいと思う。

 だから当然、著者が「捨てよう」と言っているものに疑問を感じる。例えば「バランス感覚」。苦手は克服しなくていい。もっと得意な人にお願いすればいい。その代り「世界一好きなこと」を一つ決めて、そのことに時間を投資する、と著者は言うのだけれど、そんなことがうまく行くとは思えない。

 「人脈」も「ライバル心」も捨てる。みんなと付き合う必要はない、では誰を大切にすればいいか?と言えば「自分を助けてくれた恩人」だけ。..私とはどうにも意見が合わない。これを20代の人に、だぶん上智や慶應や立教で教えているのだろうけれど、学生さんたちはどう受け止めているのだろう?

 とは言え、著者には圧倒的な強みがある。それは、著者がこれを実践してニュージーランドに移住して、今「自由だ」と自分で感じていることだ。百の意見より一つの実例の方が重い。著者はこの目標ために、何年もぶれることなく努力をしている。

 だから、もし若い人たちが、著者にあこがれ著者の後を追うのなら、この努力の部分までまるごと引き受ける覚悟が必要だ。例えば「苦手は克服しなくていい」ということを部分的に都合よく取り入れたって、痛い目に会うだけだろう。 

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「自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと」 固定URL | 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月21日 (土)

少年少女飛行倶楽部

著  者:加納朋子
出版社:文藝春秋
出版日:2009年4月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「底抜けに明るい、青春物語が書きたくなりました。それも、中学生が空を飛ぶ話が。」これは「あとがき」の冒頭の著者の言葉だ。本書のことをよく表している。

 主人公は中学1年生の女の子の佐田海月。舞台は彼女が通う中学校。海月は、幼馴染の大森樹絵里と一緒に、2年生の部長の斎藤神と副部長の中村海星の2人しかいない「飛行クラブ」に入部する。「飛行クラブ」とは、文字通り飛行することを目的とするクラブ。活動内容の文書に「理想を言えば、ピーター・パンの飛行がベスト」と書いてある。

 この何とも奇妙なこのクラブの活動は部長の神の「空を飛びたい」という強い願望の現れだ。この中学ではクラブ活動が必修なのだけれど、神は既存のどのクラブにも入らず、自分でこのクラブを創ってたった1人で1年間活動してきた(海星は野球部と兼部、友達の神に付き合って籍を置いている)。まぁ正真正銘の「変人」だ。

 海月は、頼りない樹絵里の面倒を幼稚園の頃から何くれとなく見てきた。今回の入部も樹絵里の海星への恋心に付き合わされたものだ。他にもワガママな同級生にも慕われ(絡まれ?)ていて、どうやら海月は「放っとけない」たちのようだ。変人の神のことも放っとけなくなって、「空を飛ぶ」ために奔走する。

 著者の作品の特長と言えば「日常に潜む謎」を描いたミステリーだと思うが、今回はミステリーではない。「あとがき」の言葉通りの青春小説だった。一見するとステレオタイプな登場人物たちだけれど、その一人一人に対して人物造形の背景を丁寧に描く。お見事だ。最後に一言。海月のお母さんがいい味を出している。

 この後は書評ではなく、この本の「あとがき」を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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2012年7月20日 (金)

松尾文藝

Bungei 今回は、ちょっと番外編。紹介するのは「松尾文藝」という冊子。ある高校の文芸班の作品集で、その学校の文化祭の時に販売されている。(この高校と周辺の学校では「部活動」ではなく「班活動」という。野球班、サッカー班、吹奏楽班..そして文芸班)この1部300円の冊子が、昨年の文化祭の時に目の前で売り切れてしまった。手に入らないと思うと惜しくて、今年は文化祭に行って、文芸班の机がある廊下に直行して入手した次第。

 30編以上ある収録作品はすべて短編。「あとがき」や付録の「松尾文藝裏話」を読むと、班員の皆さんの不眠の奮闘が綴られていた。短編の方が書く方は負担が小さい、読む方は色々な作品を楽しめる。

 確かに大きな期待はしていなかった、しかし軽んじてもいない。「芥川賞に最年少19歳」というニュースが流れた2004年は、今の高校生にはずいぶん昔かもしれないけれど、私には「ついこの前」ぐらいだ。受賞者の綿矢りささんは、それより前の17歳でデビューしている。まぁそんな話を持ち出さなくても、文化祭に足を運んでお金を出して買ったのは、もちろん期待があったからだ。そしてその期待には、十分に応えてくれたと思う。

 「みんな良かった」と思う。その言葉にウソはないのだけれど、そう言われても本当に褒められた気持ちにはならないだろうと思うので、特に良かった作品を2つ。「echo」と「春へゆく」。著者の2人はどうやら3年生らしいので、しばらくは新しい作品は難しいのだろう。でもいつか、あなたたちの次回作を読んでみたいと思う。

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2012年7月18日 (水)

シマウマの逃げ方 ライオンの追い方

著  者:和田典之
出版社:パレード
出版日:2012年7月14日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者が代表取締役を務める、株式会社ワダエンジニアリングさまより献本いただきました。感謝。
 著者は、航空宇宙産業の会社経営だけでなく、クラフトアートを用いた個展の開催や音楽アルバムの制作などの多彩な活動をされている。また、社会教育関係の要職も務めておられるそうだ。

 本書は、主人公が「ある朝、目覚めたらシマウマになっていた」「翌朝、目覚めたら今度はライオンに」、という不思議な体験を綴った物語だ。その物語を寓話として「組織とルール」「働く意味」「変化への対応」「快適な社会」の4章に分けて、それぞれテーマへの「気付き」を促す。

 例えば第1章「組織とルール」では、組織(群れ)を無視して孤立すれば生きてゆけない、と説く。シマウマやライオンの暮らしはシンプルだ。助け合うことやルールと役割に従うことは是非もない。そうしないと死んでしまうのだから。これを以て著者は、「助け合うことで強く生きられる」ことや「ルールを守る」ことを教訓として強調する。

 本書で示される教訓は数多く、「原点を知って問題解決」「ピンチはチャンスである」という「ビジネス指南」的なものと、「ルールを守った人が得するシステム」「品格を持って生きる」という「人や社会のありよう」を述べたものに大きくは分けられる。これは憶測だけれど、著者の経営者としての顔と、社会教育に携わる識者としての顔が、それぞれ表れているように思う。

 教訓には、違和感を覚えるものもあった。例えば「最後に笑うのは真面目に生きる人」と言われて、素直に「なるほどそうだ」とは言えないぐらいには、私は世間ずれしてしまっている。しかし、教訓を個々にではなく全体として見る観点が大事だ。少し離れて俯瞰すると、すべての教訓は、「全体最適」としての「快適な社会」に向いていることが分かる。本書はビジネス書ではあるけれど、著者の真意は「快適な社会」の実現を目指す、という方にあるのではないかと思う。

 最後に本書の読み方について。本書の構成は、第1章から第4章までのそれぞれの章に「シマウマの物語」と「ライオンの物語」があり、その後ろに「この物語の教訓」という章が巻末にある。最後に「教訓」をおさらい、というわけだ。
 しかし私は「教訓」を読むころには、最初の方の物語の詳細は忘れてしまって、何度も読み返すことになった。もし、本書を読まれるのなら、「シマウマの物語」「ライオンの物語」が終わる度に、「教訓」の該当する部分を読んで、最後にもう一度「教訓」を読んだらいいと思う。きっと「気付き」が、頭にしっかりと残る。

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「シマウマの逃げ方 ライオンの追い方」 固定URL | 6.経済・実用書 | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月14日 (土)

木暮荘物語

著  者:三浦しをん
出版社:祥伝社
出版日:2010年11月10日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 祥伝社の「Feel Love」という小説季刊誌に掲載された連作短編7編を収録。ちなみに「Feel Love」のキャッチコピーは「100%恋愛小説誌」。

 著者の作品は最新刊の「舟を編む」をはじめとして、「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」「仏果を得ず」と、他人にもおススメできる爽やかな作品が沢山ある。しかし本書は、他人におススメするのは微妙な、なんとも評し難い作品だった。70歳を過ぎた男性がデリヘル嬢を呼ぶ物語を、どんな顔をして薦めればいいのだ?

 もちろんこの男性の話は7編あるうちの1編にすぎない。しかし他の短編も、柱に〇〇〇(←自粛)の形のものがはえてくるとか、階下の部屋を覗くとか、道を外れた感じの物語が並んでいる。そう言えば、「きみはポラリス」も「普通ではない」恋愛短編集だった。著者が描くと「恋愛」はこんなにバリエーション豊かになるのだ。

 舞台の中心は、小田急線世田谷代田駅近くにある、木造二階建ての古ぼけたアパート「木暮荘」。住人は、大家の木暮、花屋に勤める坂田、外食チェーンの社員の神崎、女子大生の光子の4人。彼らと彼らを取り巻く関係者が順番に物語の主人公になる。

 上に書いたことで何となく分かるかと思うが、語られているのは主人公たちの「性」にまつわる物語。それもちょっと変化球。部分的にはエロ小説かと思う場面もあるが、読み終わって振り返えると別の思いが残っている。東京の私鉄沿線の、真面目で(はないかもしれないけれど)善人の人々の暮らしが、切なく慎ましく微笑ましい。

※著者の最新作で本屋大賞受賞作品「舟を編む」の映画化が決まったそうです。
 主演は松田龍平さん、共演は宮崎あおいさん。宮崎あおいさんは、「天地明察(2010年大賞」「神様のカルテ(2010年2位)」に続いての本屋大賞作品でのヒロイン役。(ついでに「陰日向に咲く(2007年8位)も)本屋大賞女優と言って差し支えないでしょう。

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2012年7月11日 (水)

十字軍物語2

著  者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2011年3月25日発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「絵で見る十字軍物語」「十字軍物語1」に続く、「十字軍物語」シリーズ4部作の第3弾。物語は、前作で1099年にイェルサレムの「解放」に成功した、第一次十字軍の立役者たちが世を去って、十字軍第二世代とも言えるボードワン2世がイェルサレム王に即位した、1118年から始まる。

 歴史年表を追うとこの後、1144年:イスラム世界の巻き返しによってエデッサ陥落、1146年:エデッサ陥落に危機感を強めたキリスト教世界が第二次十字軍を結成、1148年:第二次十字軍ダマスカス攻略に失敗、1174年:サラディンがスルタンに、1187年:イェルサレム陥落、となる。

 つまり本書は、1118年から1187年の約70年間の、中東の十字軍国家の歴史を物語る。普通に考えれば、出来事を1つ1つ綴っていけば「十字軍物語」にはなる。しかし、著者はそうしない。著者の関心は、歴史年表の出来事と出来事の間にまで及ぶ。

 例えば、1099年の第一次十字軍のイェルサレム解放から、1144年のエデッサの陥落まではどうだったのか、という観点だ。第一次十字軍はイェルサレム解放という「成功」によって解散、多くの将兵はヨーロッパに帰還してしまっている。つまり十字軍国家は、地中海にへばりついてイスラム世界に囲まれて、圧倒的な寡兵でこの40数年を過ごしている。なぜこんなことが可能だったのか?気になりませんか?というわけだ。

 歴史の勉強はどうしても出来事に注目してしまう。間が30年空いていようと40年空いていようと、そんなことを気にしてはいられない(むしろラッキーだ(笑))。でも、当たり前のことだけれどその間も人々は暮らしている。その暮らしを、宗教の対立、経済活動、築城技術、女性の政治介入、など様々な方向から光を当てて描く。著者にしか書けない「十字軍物語」だと思う。

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2012年7月10日 (火)

富士通の皆さん、ご訪問ありがとうございます。

Access 普段は1000前後をフラフラしている、このブログの昨日のアクセス数が、昨日は倍の2000にもなっていました。先日の記事「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀」へのアクセスが急増したようです。

 ココログのログには、「リモートホスト名」というものが記録されています。それを見るとこの記事へのアクセスのほぼ全部が、fujitsu.co.jpのドメインからのものでした。昨日だけで1108件。今朝も8時ごろから順調にアクセスが伸びています。そういうわけで、「富士通の皆さん、ご訪問ありがとうございます。

 試しに昨日の富士通さんからのアクセス数をグラフにしてみました。午後1時に急に立ち上がったのには何か理由があるのでしょうね。記事URLに直接アクセスしたものがほとんどなので、社内の情報共有システムにお知らせでも出たのでしょうか?(グループ17万人超へアピールしたとしたらすごいですね)

 グラフには出ていませんが、日付が変わった深夜にもポツポツとアクセスがあります。相変わらず(といっても私が知っているのはライバル会社のことですが、そう変わりはないのでしょう)、遅くまで残っている方がいるのですね。身体を壊さないように気を付けてください。

 
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2012年7月 7日 (土)

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀

著  者:片瀬京子、田島篤
出版社:日経BP社
出版日:2012年7月9日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 「挑み」、そして「成し遂げる」には、どうすればいいのだろうか?その答えを、困難なプロジェクトに挑んで成し遂げた人々から見出したい。「はじめに」で、著者はその思いをこう綴っている。これを読んで、2000年代前半のNHKのあの番組を思った人は多いだろう。そう「プロジェクトX」だ。本書は、テレビ番組のような過剰気味な演出はなく、困難を克服したリーダーたちの言葉をそのまま伝えようとしている。

 本書で、困難なプロジェクトに挑んで成し遂げているのは、富士通の社員の皆さん。富士通を取材対象にした理由の1つが、スーパーコンピューター「京」のプロジェクトの成功。「2位じゃダメなんでしょうか?」が耳目を集めた、あのプロジェクトだ。(このプロジェクトの成功が、本書の企画の発端なんじゃないかと思うが、邪推だろうか?)

 他には、東京証券取引所の株式売買システム、すばる望遠鏡の観測データ解析システム、東日本大震災の復興支援、らくらくホンの開発、農業クラウド、次世代電子カルテ、手のひら静脈認証の、「京」と合せて8つのプロジェクトが紹介されている。どのプロジェクトも富士通が主要部分を手がけたものだ。

 実は、私は富士通のライバル会社に、15年ほど前までの10年間勤めていた。そのため、自分の経験に照らしながら読むことになった。読み終わって「富士通がこんな会社なのだったら、敵わないな」と思った。経営の姿勢やスピード感が、以前の勤め先のあの会社とは全く違う。反面「こんな会社だったか?」とも思った。同じ業界にいたし、知り合いもいたので、知りうる情報は少なくなかった。今も仕事で付き合いがある。私が知っている富士通とも少し違った。

 「そうなんだよな」と思ったことが1つ。登場した社員の多くが異動で、そのプロジェクトに関わるようになる。当初は「なんで私が..」というネガティブな気持ちを持つ。しかし、プロジェクトの成功はその人を育てる。本人もやって良かったと思う(成功しないプロジェクトも何倍もあるけれど)。会社の「異動」というシステムは、人を育てるための仕組みという側面もあるのだ。

 気になったことが1つ。特に終盤に多いのだけれど、DNAという言葉が盛んに使われていることだ。現場主義もDNA、チャレンジ精神もDNA、「夢をかたちに」もDNA、「がむしゃらな人をみんなが助けてくれる」のもDNA(まだあるが、この辺でやめておく)。

 確かに社風というものはあると思う。自分が属するコミュニティについて「らしい」と、特に良い意味で感じた時にはDNAという言葉を使いたくなることもある(「日本人のDNA」とか)。でもこれは使いすぎだ。第一せっかく伝えた現場のリーダーたちの言葉が生きない。彼らが頑張ったのは、「それが富士通のDNAだから」ではなくて、彼らがそうしようと自分で決めたのだから。

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「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月 6日 (金)

ブログにちょっと手を入れました。

 ソーシャルサービスのボタンを、記事の最後とブログのタイトルの下に設置しました。記事の最後のボタンは少し前に付けたものがあったのですが、それはちょっと気に入らなかったのです。トップページやカテゴリーページなど、複数の記事が並んでいるページでは、記事のボタンを押しても、ページ全体へのリンクが共有されていました。今回設置したボタンは、記事のボタンは記事のリンク、タイトル下のボタンはページ全体へのリンクが共有されます(そのはずです)。良ければ試してみてください。

 今回の作業には、もうひとつ理由がありました。このブログをFacebookと連動させようとしたのですが、それが上手くいかなかったのです。Facebookで記事のリンクをシェアすると、サムネイル画像が付くのですが、サイドバーのアフィリエイト広告の画像が自動的に設定されていました。

 それを自分で選択するためには、OGP(Open Graph Protocol)という仕様に則ったタグをサイトに仕込む必要があるのですが、私が使っているココログ・プラスでは、それができませんでした。外部のアプリを使えばできたのですが、そうするとFacebookのエッジランクというのが低くなってしまうらしく、他の人に見てもらえない...

 それで、タグのをサイトに仕込むために、ココログのプランをプロに変えました。プロにすると、テンプレートやスタイルシートが使えるので、他にも色々なことが柔軟にできます。そうなると欲が出てしまって、ソーシャルサービスのボタンも...となった次第です。

 実のところ、タグを仕込むのはわりとあっさりとできました。それに比べて、欲が出てやったボタンの設置には苦労しました。ボタンを簡単に設置できるネット上のサービスがいくつか試しましたが、ページ全体と個別の記事へのリンクをうまく切り替えられるものが見つからず、結局全部自分でタグやスクリプトを書きました。

 ちょっとやり足りないこともあるし、Facebookの動作もおかしいのですが、今回はここまでにします。また、私の試行錯誤も何かの役に立つかもしれませんので、時間がある時にまとめてみたいと思っています。

 
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2012年7月 5日 (木)

沖で待つ

著  者:絲山秋子
出版社:文藝春秋
出版日:2006年2月15日 第1刷発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 第134回(2005年下半期)の芥川賞受賞の表題作と「勤労感謝の日」の2つの中編を収録。

 表題作「沖で待つ」の方が良かった。主人公は及川。住宅機器メーカーの女性営業員。入社して最初に配属されたのが福岡の営業所。一緒に配属された同期の「太っちゃん」との交流というか、会社員生活の面白おかしいエピソードが綴られている。著者自身の経歴とシンクロする部分もあるので、きっと下敷きになる実話があるのだろう。

 ただ、物語は五反田にある太っちゃんのマンションを、及川が訪ねるところから始まる。太っちゃんと会話を交わすのだけれど、それまでの経過がどこか違和感がある。「もう他人が住んでるのかもしれない」とか、「部屋には机もベッドも、ほんとうに何もなかった」とか。違和感の理由はすぐに明らかになる。太っちゃんは三か月前に死んでいたからだ。

 この後、及川と太っちゃんが福岡に配属された時まで逆戻りをして、再度この時間この場所に戻ってくる、という仕掛けになっている。女が死んだ男に会いに来たのだから、恋人同士だったのかと思うかもしれないが、そうではないところがこの物語のキモ。「異性の同期の友だち」これで言い表せるわけではないが、他に言いようのない関係。実は、私にもちょっと覚えがある。

 及川に「勤労感謝の日」の恭子、以前に読んだ「逃亡くそたわけ」の花ちゃんも、著者が描く女性は寄り道したり立ち止まったりの人生を歩んでいるけれど、そんなことは一向に構わない潔さが魅力的だ。

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