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2012年6月14日 (木)

サヴァイヴ

著  者:近藤史恵
出版社:新潮社
出版日:2011年6月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者が自転車のロードレースの世界を描くシリーズ3作目。1作目の「サクリファイス」では、新人選手の白石誓を主人公として、「エースとアシスト」という自転車ロードレース特有の世界を描き出した。2作目の「エデン」はそれから3年後、ヨーロッパに雄飛した誓が見た、より深い人間ドラマを見せてくれた。本書は、この前2作の前後を描く6つの短編からなる。

 実は6つ短編のうち、3つは既読だった。「Story Seller」「Story Seller2」「Story Seller3」という、月刊文芸誌「小説新潮」の別冊にそれぞれ収録されていたもので、順に「プロトンの中の孤独」「レミング」「ゴールよりももっと遠く」の3編。

 この度は再読になったこの3編が、私は好きだ。それは、誓が日本にいた時のチーム「チーム・オッジ」のエースの石尾と、その同期でアシストの赤城の物語。「サクリファイス」の前の時を描いたものだ。これで、著者が描き出した世界が、ぐんと厚みを増した感じがする。

 石尾が「プロトン~」では新人、その2年後の「レミング」ではエースになった直後、さらに5年後の「ゴール~」では王者としてチームに君臨している。石尾自身はあまり変わりがないのだけれど、7年の間にその立場は大きく変わっている。
 赤城は、同期とは言え3つ年上。石尾と出会う前にスペインでの3年半のキャリアもある。言うなれば石尾の先輩なのだけれど、選手生活の大半を名実ともに「石尾のアシスト」に徹してきた。2人の関係の変化と、赤城の心情が見どころだ。(今気が付いたけれど、このシリーズの半分は、赤城の物語だとも言えるぐらいだ)

 残りの3編のうちの1編は、誓の同期の伊庭が主人公。他の2編は誓が主人公。自らは勝利することのない「アシスト」。常に若い世代が背後から迫る「エース」。忍び寄る薬物の誘惑。ビジネスとしての暗部をはらんだロードレース。色々なドラマを含んだ6編はそれぞれに楽しめるけれど、やはり前2作を読んでからがいいと思う。

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» 「サヴァイヴ」近藤史恵 [心に残る本]
娘から「サヴァイヴどうする?」というメールが来ました。 新作の映画か何かかと思い「何それ?」と返信したら「ググリなさい」と返事。 調べてみたら、なんと、近藤史恵の最新作ではないですか。うかつでし...... [続きを読む]

受信: 2012年6月14日 (木) 20時25分

» 美しくも残酷な自転車ロードレースの世界。「サヴァイヴ」 近藤 史恵 [日々の書付]
自転車ロードレース界を舞台にした名作「サクリファイス」、「エデン」のスピンオフ短編「サヴァイヴ」。「サクリファイス」や「エデン」前後の登場人物たちの様子が語られます。 レースでは強気の伊庭が家庭にめんどくさい問題を抱えていたり、一匹狼のエース・石尾に振り回されるアシストの赤城の姿だったり。長編二作より登場人物たちの性格や感情、家庭環境など意外な一面が明らかになっていました。 そして、レースに潜む「魔物」と戦う選手たち。彼らのなかにはプレッシャーに潰され自滅するものも多い。明日は我が身だと思い... [続きを読む]

受信: 2012年6月17日 (日) 01時23分

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