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2012年3月14日 (水)

炎路を行く者

著  者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2012年2月 初版第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の代表作の一つ「守り人」シリーズの外伝。「炎路の旅人」という220ページの中編と、「十五の我には」という50ページ余りの短編が収録されている。

 「炎路の旅人」は、同じ出版社から出ている「「守り人」のすべて」で明らかにされて(「あとがき」によると、もっと前に「精霊の木」の再販時の帯でも予告されているそうだ)、そのレビューで私が「あぁ、それも読みたい」と嘆息した作品。「蒼路の旅人」で、主人公チャグムをさらったタルシュ帝国の密偵、ヒュウゴの少年時代の物語だ。

 ヒュウゴは、故国のヨゴ皇国を滅ぼしたタルシュ帝国の皇子の密偵という役柄。何故に、故国の仇敵の皇子に仕えることになったのか?それがこの物語で明らかにされている。その「種明かし」的な役割は、もちろんこの物語の大きな魅力なのだけれど、私は別のことにも魅かれた。それは、武人の子でありながら市井に生きる、少年ヒュウゴの内に溜めたエネルギーの危うい有りようだ。

 彼は「武人の子」という強い意識を持っていて、その正義感から少年たちの抗争に身を投じることになる。武術の訓練を受けた彼は、街のゴロツキなど相手ではなく、たちまち頭角を現す。しかしそれは、「武人の子」として正義感と同じように持っている、「祖国や民を想う心」にはつながらず、自らの思いと力を完全に持て余してしまう。見ていて本当に痛々しい。さらに「蒼路の旅人」に至っても、その思いと力を果たすには、「未だ路半ば」といったところだ。

 「十五の我には」は、「守り人」シリーズの主人公のバルサの15才の頃の物語。「天と地の守り人」の頃のバルサが回想する形になっている。実は「炎路の旅人」もヒュウゴ自身の回想。2つの物語は良く似た構造になっている。そして構造が似ているだけでなく、「十五の我には」の中で、バルサの養父のジグロが歌う「十五の我には見えざりし...」と始まる詩が、「炎路の旅人」にまで響く。さすがに上橋さん、お見事です。

 コンプリート継続中!(単行本として出版された小説)
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