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2011年12月

2011年12月29日 (木)

2011年の「今年読んだ本ランキング」を作りました。

 今年で4回目ですから、そろそろ「恒例の」と言ってもいいかと思いますが、今年読んだ本のランキングを作ってみました。昨年までと同じく小説部門は10位まで、ビジネス・ノンフィクション部門は5位までです。
(参考:過去のランキング2010年2009年2008年

 今年このブログで紹介した本は102作品でした。☆の数は、「☆5つ」が2つ、「☆4つ」は24、「☆3つ」は72、「☆2つ」が2つ(☆を付けなかったのが1つ)です。以前から多かった「☆3つ」が、今年はさらに増えて7割にもなってしまいました。正直に言うと、☆3つの中にも、☆3.5(4にはあと一歩だけれどかなりイイ)や、☆2.5(2にするのは申し訳ないので3)を付けたいものもあります。これを区別するかどうかが、まぁ今後の課題です。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
下町ロケット / 池井戸潤 Amazon
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取引先や銀行の身勝手で、存続さえ危ぶまれた下町の町工場。自らの技術力によって、巨大企業を相手に渡り合い一歩も引かない姿に勇気付けられる。
シアター!2 / 有川浩 Amazon
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そこそこ力のある小劇団の面々による群像劇の第2弾。個性的なキャラクターたちが活き活きと動き回る。芝居への想いも恋心も衝突も、すべてが「青春」。
折れた竜骨 / 米澤穂信 Amazon
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12世紀末の北海に浮かぶ島を舞台にしたファンタジーかつ本格ミステリー。魔法も魔術もありの世界と、「密室殺人」の本格推理を両立させた逸品。
県庁おもてなし課 / 有川浩 Amazon
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恋する観光小説。高知県に実在する「おもてなし課」が舞台。グダグダだった課員たちが、「使える集団」になっていく。ラブストーリーも直球と変化球の2つ。
ストラヴァガンザ / メアリ・ホフマン Amazon
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現代のロンドンと、16世紀頃のイタリアに似た街とを行き来するタイムトラベル作品。「仮面の都」「星の都」「花の都」の3部作。恋と冒険がドラマチックに展開。
ビブリア古書堂の事件手帖1 / 三上延 Amazon
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現在累計87万部のベストセラーシリーズ。古書店を舞台に、心から本を愛する美人店主が、本にまつわる物語を語り、謎を解く。「本好き」を狙い撃ちです。
コロヨシ!! / 三崎亜記 Amazon
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主人公は「掃除部」のエースの高校2年生。現代の日本のようでいて、少し軸がズレた異世界。著者の独特の怪しげな世界観の元で展開される「青春小説」。
真夏の方程式 / 東野圭吾 Amazon
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天才物理学者の湯川博士が活躍する「ガリレオ」シリーズ最新刊。美しい海辺の街で起きた殺人事件。子ども嫌いの湯川と小学生の触れ合いが微笑ましい。
きみの友だち / 重松清 Amazon
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著者は、その心のひだをそっとなぞるように、子どもたちを丁寧に描く。小学生・中学生に寄りそう10編の短編集。すべてに登場する恵美の心が切ない。
10 偉大なる、しゅららぼん / 万城目学 Amazon
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奈良 京都 大阪と、関西の街を奇想天外な騒動に巻き込んだ著者が今回選んだのは「琵琶湖」。特別な力を授けられた「湖の民」の物語。大スペクタクルあり。

 毎度のことですが、ずいぶん悩みました。10個を選ぶのに悩み、順位を付けるのにさらに悩み...。有川浩さんの作品が2つ入りました。実はこれまでの3回全部にランクインしていて、つくづく私は有川さんの作品が好きなんだなぁと思いました。
 また、「折れた竜骨」「ストラヴァガンザ」「コロヨシ!!」「きみの友だち」は、それぞれ本好きのためのSNS「本カフェ」のメンバーさんたちに教えてもらった本です。良い本との出会いをいただいて、感謝しています。

 選外の作品について言うと、「神様のカルテ」とか「謎解きはディナーのあとで」といった、話題の本をどうしようか迷いました。映像化もされて、世間一般にも話題になってしまうと、少し気持ちが落ち着いてしまうんですね(天邪鬼ですね)。それから森見登美彦さんの「四畳半王国見聞録」。私としてはとても面白かったのですが、あまりに「男汁」が濃くて躊躇してしまいました(笑)

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
知事抹殺 / 佐藤栄佐久 Amazon
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コトが起こって初めてクローズアップされる。本書もそんな一つ。原発の是非、検察への疑問、今年になって私たちが意識したことを、2年先取りしていた本。
「ニート」って言うな! / 本田由紀 他 Amazon
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「ニート」=自立していない、甘えている、といったネガティブなイメージは、問題を個人の資質に帰してしまった。それを基にした支援策の歪みを指摘する。
体制維新-大阪都 / 橋下徹 堺屋太一 Amazon
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橋下大阪市長の「大阪都構想」を記した本。支持する/しないに関わらず、よく理解した方が良いと思う。「なんとなく良さそう」で投票することのないように。
20代で身につけたい質問力 / 清宮普美代 Amazon
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「上司に好かれる上手い質問」というような、HowTo本とは違って、問題解決力や組織力の向上を目的とした質問の仕方を解説。20代以外でも役立つ。
森見登美彦の京都ぐるぐる案内 / 森見登美彦 Amazon
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森見登美彦さんの、私的「京都ガイドブック」。極端に偏りがあるので、一般には適さないと思うけれど、森見ファン、京大関係者にはウケること間違いなし。

 今年は、私たちが「何かを真剣に考える」ことを促された年でした。今年起きた事件・事故によってクローズアップされた原発、検察の問題は、1位の「知事抹殺」ですでに提起されていました。「「ニート」って言うな!」「体制維新」で書かれている、就労の問題や自治の問題にも、一段高い「真剣さ」が必要な気がします。来年には少しでも明るさが見えるようにしたいです。

 
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2011年12月28日 (水)

動的平衡

著  者:福岡伸一
出版社:木楽社
出版日:2009年2月25日 初版第1刷 4月10日第5刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「生物と無生物のあいだ」の著者による、「生命」について考察する科学エッセイ。第2弾が出版されたと聞いて、第1弾を読んでみようと思い、手に取ってみた。タイトルの「動的平衡(Dynamic Equilibrium)」は、著者が前著の中で「生命とは動的平衡にある流れである」という使い方をした、著者の生命観のキーワードだ。

 私たちの身体は、固定して存在しているように見えるが、分子レベルでは驚くべき速さで「入れ替わって」いる。食物として外界から取り入れたものは分解されて、分子単位で体を構成するそれまであったものと置き換えられている。不変に見える骨や歯や脳細胞も例外ではない。

 少し視野を広げて見ると、分子レベルでは、外界→私たちの身体→外界、という流れの中に私たちはいることに気付く。質量や形状が変化することはないので、入ってくる一方で、同じ速さで分解されて体外へ排出され、一種の平衡状態を保っているわけだ。この流れの中の平衡状態を「動的平衡」と呼んでいる。

 本書は前著を受けて、「記憶」や「ダイエット」や「食品の安全」、「細菌とウィルス」の話などに話題を広げて、読みやすい読み物になっている。「あとがき」によれば、雑誌や会員誌の連載記事が元になっているそうで、なかなか興味深い連載だったろうと思う。やや「動的平衡」の捉え方を拡大しずぎに感じる部分もあるが、まぁ許容範囲としよう。

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2011年12月24日 (土)

ピース

著  者:樋口有介
出版社:中央公論新社
出版日:2009年2月25日 初版発行 2011年7月15日 4刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「この表紙、よーく覚えておいてください。読み終えたあと、あなたはゾッとするはずです。」新聞広告のこのコピーが気になって、すぐに買って読んでしまった。畑中純さんによる、力強い線で描かれたピースサインの子どもたちは、無邪気で健康的だ。「ゾッとする」とは、どういうことなのか?

 物語の舞台は秩父の田舎町。60歳過ぎの大柄で固太りの男性、八田が経営するスナック「ラザロ」。その周辺で連続バラバラ殺人事件が起きる。埼玉県警のベテラン刑事が事件を担当し、総力をあげての捜査も難航する。

 広告を見て即買いしたほど、期待が大きかったのがいけなかった。私にはあまり合わなかった。帯に「意外な犯人、ラストのどんでん返し」と書いてあって、「ミステリーって、普通そういうもんだろう?」とツッコミを入れながらも、やっぱり「意外な犯人」と「どんでん返し」を期待していたのだけれど...

 面白くなかったわけではないのだ。「キャラ読み」には絶好の本だと思う。「ラザロ」のマスターの八田もタダモノではない。どうやら元公安警察官らしい。スナックを手伝う甥の梢路は、21歳という若さで「何もせずに、ただ淡々と日常を消化して、そうやって死ぬのを待つ」などと言って、人生を悟ってしまったような若者だ。

 その他にも、梢路の元に忍んで来る美人記者、東京から流れてきたピアニスト、スナックの常連客で誰とも話さないアル中の女子大生、入り口を隠した集落に一人で住む老人、定年間近のベテラン刑事、セックスのことばかり考えているフリーター...「キャラが立っている」というのは、こういうことを言うのだろう。

 だから「キャラ読み」が得意ではない私も、登場人物たちの振る舞いに引き込まれた。彼らがどう事件と絡むのだろう?と、ワクワクした。読み終えて表紙を見てゾッともした。それらを加味して☆は3つ。しかし、拙い例えで恐縮だけれど、「おいしそうな食材がたくさんあるのに、料理として出てこなかった」という感じ。「あれは食べないの?」と、残念に思った。

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「ピース」 固定URL | 3.ミステリー | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月22日 (木)

王国の鍵7 復活の日曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年12月31日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 トールキンの遺稿集に「終わらざりし物語」というのがあるが、普通は物語はいつか終わりが来る。このシリーズは第1巻の「アーサーの月曜日」で、半ば予告されていた通り、火曜日、水曜日...と続いて、7巻目の本書「復活の日曜日」で幕を閉じる。どのような人気シリーズも、いや人気シリーズであればあるほど「終わり方」は難しい。

 前作「雨やまぬ土曜日」のラストで、主人公アーサーは、遥かな上空に存在する「至高の園」から落下してしまう。そこは手に入れた鍵の力で切り抜けたが、早々とこのシリーズのラスボスとも言える日曜日の管財人、サンデーと対峙することになる。

 その後は、アーサーと準主人公のスージー、リーフの3人の物語が縒り合さって、物語の結末へと向かう。もちろん、シリーズを通しての謎であった、誰が何の目的で一連の事件を引き起こしたのか、も明らかにされる。

 気になるアイテムは、アーサーが実の両親からもらい、5歳の時になくしたゾウのぬいぐるみ。「海に沈んだ水曜日」でアーサーの手元に戻り、再び手を離れては戻ってきて本書に至っている。ようやくこれが大事な役割を担う。

 「終わり方」に関しては、「ナルニア国物語」の終わりにも似た、これで良かったのかどうか、もっと前に他の手を打てなかったのか、という気がする結末だった。まぁそれでも、複雑に交錯した物語が決着する着地点を、何とか見出したとは言える。
 考えてみれば、このシリーズの7作はそれぞれ、キリスト教の7つの大罪に相対するようになっている。「ナルニア国」も7巻で、多分にキリスト教の影響を感じる作品だった。きっと通底するものがあるのだろう。

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「王国の鍵7 復活の日曜日」 固定URL | 1.ファンタジー, 18.ガース・ニクス(王国の鍵) | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月18日 (日)

体制維新-大阪都

著  者:橋下徹 堺屋太一
出版社:文藝春秋
出版日:2011年10月31日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 私は、テレビなどで気になる主張をする人がいたら、批評をする前にその人の著書を読むようにしている。テレビや新聞などで伝えられるものは、その人の主張の断片しか伝えていないと思うからだ(特にテレビは全く信用していない。)そして本書は、明日19日に就任する橋下徹大阪市長の主張が記された本だ。

 実は私は、先の大阪市長選の結果を大変不安な気持ちで受け止めた。以前から、橋下さんの主張は競争原理主義、新自由主義的で、特に教育行政への態度について不安を感じていたからだ。23万票弱、現職の市長の得票を4割超も上回っての圧勝。小泉構造改革路線の結果の荒廃を見て、競争だけを是とする路線に白紙委任する危険を学んだはずなのに..

 それで本書を読んで、橋下さんの主張はどうだったのか?というと、「大阪都構想」は、大変念入りな実効性のあるものだということが分かった。東京都への対抗意識などではないし、ましてやテレビが演出する「ヤンチャ坊主の大言壮語(失礼!)」的なものなどでは全くない。

 それにも関わらず、私の不安はさらに強いものになった。良い「政策」や「住民サービス」を担保するものは「競争」のみなのだ。例えば、住民と接する「区長」は現在は公務員だが、これを公選制にして身分保障がなくなれば、良い住民サービスを競争するだろう、と。詳しくは書かないが、それは、私が不安を感じる教育行政でも同じだった。

 そもそも橋下さんは「政策」を自分の役割だとは思っていないらしい。自分の役割は、仕組み作りや戦略の実行であって、「政策」は専門家が練り上げればいい、どんな「住民サービス」を提供するかは住民が決めればいい、と言うのだ。

 また、「選挙」を実績の審判だと捉えている。新しいことをやる前からごちゃごちゃ言わずに、やってみてダメなら選挙で辞めさせればいい、と。「選挙結果」は民意であり委任状なのだ。もちろん「選挙」は、市民が政治参加する限られた機会の1つだから、これを重視するのは道理ではある。でも私は不安を覚える。

 それは、本書を読んでいて私が感じたことと関連する。この本は政治をテーマとして書かれた本としては、すごく分かりやすい、と感じた。その感じが、大阪市長選の報道で流れたある女性のインタビューと重なったのだ。

  問:平松候補と橋下候補を比べてどうでした?
  女:橋下さんの方が分かりやすかったかな。
  問:「大阪都構想」って分かりました?
  女:....ようわからんかった。

「ようわからん」でも、「分かりやすい」と感じて一票入れてしまう。橋下さんにはそんな「分かりやすさ」がある。その結果は民意となり委任状となる。そうした橋下さんの捉え方自体は、代議制民主主義そのもので、建前としては責められない。彼の登場で、有権者は新たな覚悟を求められることになったのだと思う。

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2011年12月14日 (水)

ヒア・カムズ・ザ・サン

著  者:有川浩
出版社:新潮社
出版日:2011年11月20日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 たった7行のあらすじから生まれた3つの物語。著者の最新刊の本書は、まだ7行しかない「ヒア・カムズ・ザ・サン」という演劇のあらすじから、著者の有川浩さんと成井豊さんのお二人が、それぞれ別の物語を生み出す、というコラボレーション企画からうまれた作品。成井さんは、演劇集団キャラメルボックスの代表で構成・演出を手掛ける。

 今年5月に、キャラメルボックスの舞台公演があり、ほぼ同時に著者の作品が「小説新潮」に掲載され、2つの「ヒア・カムズ・ザ・サン」生まれた。その後著者は、舞台の設定と登場人物を生かして、もう一つの物語「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」を書き下ろした。つまりたった7行のあらすじから、小説が2つ演劇が1つの3つの物語が生まれたのだ。本書には、著者の作品である2つの物語が収められている。

 その7行のあらすじは、著者のブログに掲載されているので、そちらを見ていただきたい。ここでは、その7行をさらにかいつまんで紹介する。「出版社で働く30歳の真也は、物や場所に残された人間の記憶が見える。ある日、会社の同僚のカオルの父がアメリカから20年ぶりに帰国した。彼はハリウッドで映画の仕事をしているという...」

 お見事でした。特に1作品目「ヒア・カムズ・ザ・サン」が良かった。最近の著者は「恋愛未満」のラブストーリーが上手い。そして「大人の恋愛」も。100ページ足らずの短い物語の中で、いくつもの恋愛の形を描き、若者の成長を描き、作家と編集者の関係を描き、出版業界への皮肉もチクリ。お題を基にした仕事であることも含めて、まさに「職人技」でした。

 2作品目の「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」は、演劇の舞台から設定を持ってきているので、著者にしてみれば、より制限の厳しい試みだっただろう。ちょっと単調な感じを受けたが、「おっさん萌え」の著者は、おっさんの心根が分かるらしい。おっさんである私はちょっと嬉しかった。できれば演劇の方も観たいのだけれど、今のところDVDなどはないようだ。

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2011年12月11日 (日)

日本の問題

著  者:ピオ・デミリア 翻訳・構成協力:関口英子
出版社:幻冬舎
出版日:2011年10月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、日本在住30年のイタリア人ジャーナリストの著者が、3.11以後に東日本大震災の被災地と原発事故の周辺という「現場」を訪れたレポートだ。副題は「地震、ツナミ、放射能汚染の「現場」で見たもの」
 著者がその目で見た「現場」とは、震災から3日後(震災翌日に福島市へ向かったが、交通事情でたどり着かなかった)早朝の気仙沼や、福島第一原発から20キロ圏内で、立ち入りが禁止されている「警戒区域」などだ。

 震災と原発事故から約1カ月の間に、著者は何度も「現場」に足を運ぶ。「ジャーナリストならばて当然」なのかもしれない。しかし当時は、多くの外国政府が自国民に避難勧告を行っていたし、何より相手は放射能だ、身の守りようがない。そんな中で、福島第一原発の正門前まで行った著者は、例外中の例外だろう。

 帯には「日本のメディアでは語られない」とあるが、レポートの内容に重大な「新事実」があるわけではない。あれから今日でちょうど9か月、当初は隠されていたことも多かったが、かなり明らかになった。それでも「自分の目で見た」と言って伝える文章には、格別の切れ味と説得力がある。

 その切れ味はまず、大阪や福岡ひどい場合は香港から、センセーショナルに「黙示録」的な報道をする海外メディアに一太刀を浴びせる。次に、唯一の被爆国である日本の国民、つまり私たちの「原子力」への感覚に、鋭い突きを繰り出してくる。

 著者の母国イタリアは、国民投票の選択によって、過去20年間も原発が稼働していない国。経済界からの要請によって、稼働再開を模索した政権に対して、今年6月に再度94%の反対票でNoを突きつけた国だ。「感情的」とか「ヒステリック」とか、軽んじる声も聞かれるが、私は著者の「脱原発のススメ」に説得力を感じる。

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2011年12月 8日 (木)

経済は感情で動く はじめての行動経済学

著  者:マッテオ・モッテルリーニ
出版社:紀伊國屋書店
出版日:2008年4月20日 第1刷発行 5月12日 第3刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 突然だけれど質問。あなたならどちらを選ぶ?

  A 3万円が確実に儲かる
  B 15万円が儲かる確率が25%で、まったく儲からない確率が75%

 答えは人それぞれだと思うが、本書が紹介する調査では、Aを選んだ人が84%だったそうだ。少し数学や経済学に明るい方ならお分かりのように、期待値はAが3万円(3万円×100%)、Bは3万7500円(15万円×25%)で、Bのほうが高い。Bを選ぶ方が合理的であるにも関わらず、Aを選ぶ人が圧倒的なのだ。。

 本書は、このように「不合理」な人間の経済行動を論じた「行動経済学」という学問領域の本で、「予想どおりに不合理」と同じジャンルだ。「伝統的な経済学」は、常に合理的な行動をする「ホモ・エコノミクス」を前提とする。上の質問で分かるように、多くの人は不合理な行動もしてしまうので、それでは現実への適応が難しい(もっと言えば「役に立たない」)。「行動経済学」は、その補完でありアンチテーゼでもある。

 では次の質問。あなたならどちらを選ぶ?

  C 10万円を確実に損する
  D 15万円を損する確率が75%、損失ゼロの確率が25%

 本書によれば、Dと答えた人が87%だったそうだ。期待値はCが-10万円(-10万円×100%)、Dは-11万2500円(-15万円×75%)。Dの方が損害の見込み額は大きい。どうらや人は、得をする時は安くても確実さを優先し、損をする時には危険でも賭けに出てしまうらしい。これではギャンブルで勝てないはずだ。

 本書ではこの他に、「赤味80%の豚肉は売れるけれど、脂肪分20%の豚肉は売れない」「何かを「した後悔」と「しなかった後悔」ではどちらが大きいか」「100万円得した喜びより、100万円損したショックの方がはるかに大きい」など、面白そうな話題が豊富。設問が約50個もある。重複もあるようだけれど、話のネタに良さそうだ。

 終盤の脳科学と経済行動を結びつけた「神経経済学」は、興味深いけれどまだその有用性が見えてこない。

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2011年12月 4日 (日)

プロフェッショナルを演じる仕事術

著  者:若林計志
出版社:PHP研究所
出版日:2011年11月1日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 冒頭の「はじめに」に、「道を極めた「プロフェッショナル」からエッセンスを学ぶために「演じる」というやり方を紹介する」とある。本書のタイトルはこれに通じている。
 他人から何かを学ぶ時に、「自分」というものが壁になってしまう。「自分には合わない」と。その壁を越える方法として「演じる」、換言すれば「マネる」というわけだ。最終的には「単なるモノマネ」を超えることができる、としている。

 着眼点は良かった。成功した経営者の話を聞いてもピンと来ない、仮にヤル気になっても長続きしない。つまり、自分のものにならない。それぐらいなら、そっくりマネをしてプロフェッショナルを演じる。そのうちに自分の振る舞いだけでなく、思考や周囲の対応まで変わってくる。なかなか面白い考えだ。

 しかし、内容は少し分裂気味だった。章のタイトルと内容が合っていない。例えば第3章、タイトルは「プロフェッショナルのスゴさを「見える」化する」だ。それなのに、まず出てくるのは「自分を客観的に見るための3つの方法」だった。「自分」と「プロフェッショナル」という、主体と客体が不明瞭になってしまっている。
 さらに「自分を客観的に見るための3つの方法」の説明が進んでいくと、4P(Product、Price、Promotion、Placement)が出てくる。マーケティングを学んだ方ならお馴染みの、製品戦略のフレームワークだ。自分を客観的に見ることに、使えないとは言い切れないが、違和感は拭えない。

 もちろん全くバラバラなわけではなく、「見える化」→「(自分を)客観的に見る」→「(心理状態を)客観的に把握するフレームワーク」→「(製品戦略の)フレームワーク」と、関連した話題で話が転がっているのだ。だから読んでいても断絶は感じないのだけれど、当初の話題からはドンドン逸れてしまって、「何の話をしていたんだっけ?」となってしまう。

 この傾向は本書全体にも及んでいて、何の話か捉えにくくなってしまっている。ただ、著者が主張する「学ぶ姿勢」が大切なのも事実。私は、立川談春師匠の著書「赤めだか」から引用されていた、亡き談志師匠の言葉に沁み入った。「よく覚えとけ。現実は正解なんだ」 合掌。

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