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2011年11月

2011年11月30日 (水)

探偵ガリレオ

著  者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2002年2月10日 第1刷 2011年6月1日 第50刷
評  価:☆☆☆(説明)

 天才物理学者の湯川博士が主人公の「ガリレオ」シリーズの短編集。1998年刊行の本書がシリーズ第1弾。湯川がその並外れた推理力を発揮し「探偵ガリレオ」の誕生の物語。もっとも「ガリレオ」という呼び名は、湯川の友人である刑事の草薙の上司がそう呼んだというだけで、湯川自身はピンと来ていない。(そう言えば、続くシリーズでも「ガリレオ」という呼び名に覚えがないが..)

 5つの短編が収められている。「燃える(もえる)」「転写る(うつる)」「壊死る(くさる)」「爆ぜる(はぜる)」「離脱る(ぬける)」と、多少強引な読み方をする3文字のタイトルがそれぞれに付いている。
 タイトルはそれぞれの事件の特徴、そして湯川が挑んだ謎を表している。「突然、頭が燃え上がる」「死体の顔がアルミに転写される」「胸部が壊死して死ぬ」「海が火柱をあげて爆発する」「幽体離脱して見た証拠」

 一言でいえば「超常現象」。警察も無能ではないから、犯人の目星は付けられるのだが、立証には「超常現象」を解き明かさなければいけない。それを湯川が、物理の知識と類まれな推理力とで解き明かす。

 「物理の知識」なんて聞くと頭を抱えてしまう私のような人は、推理なんて早々に放棄して、湯川の説明を聞こう。「天才物理学者」も近づき難いが、「理系オンチ」の草薙にする、湯川の説明はとても分かりやすい。また、段ボールの空気砲やらで草薙を歓迎する湯川はお茶目で、友達になりたいぐらいだ。著者は、事件の真相にそこはかとなく人情を絡ませていてうまい。

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2011年11月27日 (日)

ビブリア古書堂の事件手帖2

著  者:三上延
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2011年10月25日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ビブリア古書堂の事件手帖」の続編。今朝の朝日新聞の読書面の「売れてる本」欄に紹介され、後ろのページに広告が載っていた。それらによると、シリーズ累計53万部で、10月刊行の本書もすでに22万部に達したそうだ。前作が20万部突破に5か月、今回はそれを大きく上回るハイペースだ。
 本書の人気の秘密の1つは、「本(のウンチク)を物語の中心に据える」という着想にある。しかしこれは同時に「縛り」にもなる。読んで「なるほど」と思わせるウンチクは、無尽蔵にあるわけではないだろうし、それを事件と絡めるのも簡単ではないからだ。だから私は第2巻を期待しながら心配もしていた。著者の抽斗にはまだウンチクは残っているのか?と。

 舞台も主な登場人物も前作と同じ。北鎌倉にある古書店「ビブリア古書堂」を舞台にした、そこの店員の大輔と店主の栞子の物語。本を巡って小さな事件が起きる。いや、見逃してしまえば事件にさえならない。それを栞子が、本の知識と洞察力によって解き明かしていく。
 前作の終わりで大輔はお店を辞めているのに、本書では冒頭から「ビブリア古書堂」で働いている。「色々あって一言では説明しにくい」という説明には苦笑してしまったが、後で少しだけ丁寧な顛末が紹介されていた。

 上で述べた私の心配は杞憂だったようだ。第2巻の本書では全部で4つの書籍が登場するが、どれもが「なるほど」と思わせる物語(ウンチク)をまとっていた。さらに個々の事件が、大輔の過去や栞子の母のことなど、別のストーリーを引き出すようになって、ドラマ性が増したように思う。第3巻は来年5月刊行予定。

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2011年11月24日 (木)

モダンタイムス(上)(下)

著  者:伊坂幸太郎
出版社:講談社
出版日:2011年10月14日 第1刷発行 10月21日 第2刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、3年前に出版された単行本を文庫化したもの。単行本は2年半前に読んだ(その時のレビュー記事はこちら)。文庫化に際して行われた著者のインタビュー「文庫版「モダンタイムス」の秘密」を読み、大幅な改稿が行われていること、物語の「真相」を変えていること、著者は改稿でベストの形になったと確信していることを知り、文庫版も読んでみることにした。

 「大幅な改稿」ではあるけれども、物語のあらすじは変わらない。主人公はシステムエンジニアの渡辺。物語の冒頭は、渡辺が拷問を受けるシーン。その拷問の影には他人が羨む美人の妻。本書は初出が漫画雑誌への連載なので、恐らくその当時のままに、初っ端から突っ走り気味に始まる。
 その後の、先輩エンジニアの失踪、その先輩が残したヒントを基にした謎解き、渡辺自身が被った暴漢の襲撃、謎の団体である「安藤商会」との接触などの様々なエピソードも、ほぼ単行本と同じように積み重ねられる

 本書自体の感想の前に、単行本との相違について2つ。(支障のないように、上に紹介したインタビューの範囲で)1つめは「アリは賢くない。アリのコロニーは賢い」という言葉が、文庫版では強調されて、物語のキーワードになっていること。単行本でもアリのコロニーへの言及はあるのだけれど、文庫版のような強調はなかった。
 2つめは、過去のある事件の「真相」が変わっていること。渡辺が巻き込まれる形で近づいていくその事件の「真相」が、単行本と文庫版では違っている。私の感触では、この変更によって「真相」が、明らかになるどころか、より混迷を深めたと思う。私が見聞きした中に「単行本であやふやだった真相が、文庫版では明らかになっている」という捉え方をしている人がいるけれど、それは違っている。

 この2つの相違を踏まえて、本書の感想を言うと「まぁまぁかな」だ。勿体付けておいてあやふやな表現で申し訳ない。けれど「ベストの形になった」と言われて膨らんだ期待が、しぼんて腑抜けた感想になってしまった。
 変更点の1の「アリのコロニー」はとても良かった。変更点の2の「真相の変更」は功罪半ばした。「混迷を深めた」こと自体は、著者がテーマとして描く「社会を覆う巨大なシステム」の底知れなさが増して良かったのだけれど、その変更を物語に馴染ませるための無理を、あちこちで感じた。

 単行本では多くの謎が残っていて、それに少なからず不満を感じた。だから、文庫化で変更されたという「真相」を、(「過去の事件の」ではなく)この物語の「真相」のことだと勘違いしていたこともあって、その謎が明らかになって、パズルがピッタリはまるような「スッキリ」を思って、期待を膨らませてしまったのだ。
 つまり私自身が、「単行本であやふやだった真相が、文庫版では明らかになっている」という捉え方をしたクチだったわけだ。まぁ、これは全面的に私の勝手な思い込みだったわけだけれども。

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2011年11月20日 (日)

少しだけ欠けた月 季節風 秋

著  者:重松清
出版社:文藝春秋
出版日:2008年9月15日 第1刷発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 「ツバメ記念日 季節風 春」「僕たちのミシシッピ・リバー 季節風 夏」に続く、短編集シリーズ3冊目。それぞれの季節に読もうという「自分企画」で、秋も押し詰まったころ「秋」編の本書を読んだ。12編を収録。

 「だから秋は 少しだけ 中途半端なのです♪」と、読んでいる途中に何度か口ずさんでいた。「春」は別れと旅立ちやスタートの季節、「夏」は子どもにとっては夏休み、大人は故郷や亡くなった人のことを想う季節と、多くの人に共通の想いや経験がある。では「秋」は?

 これまでの2冊では「春」や「夏」の空気が物語から感じられた。本書の各短編ももちろん「秋」の出来事を綴っているのだけれど、「秋ならではの」という物語は少ない。それは著者の責任ではなく、「秋」が何かに縛られない季節だからなのだ思う。「読書の」「食欲の」「芸術の」「行楽の」「スポーツの」と、たくさんの形容詞が付けられるのが、その証だ。

 涙をこぼしてしまうような強い印象を受ける作品はないが、どれもしみじみとした余韻を残す。今回は、大人の男性を描いた物語が目立った。「風速四十米」「キンモクセイ」「水飲み鳥、はばたく。」は、どれも40代の男性が、年老いた父親、または亡くなった父親を想う物語。「よ~い、どん」「田中さんの休日」は、どちらも「お父さん、元気出して」と語りかけてくる。「秘密基地に午後七時」は、「大人になった男の子たち」のための秘密基地の話だ。

 その他の物語も、主人公は子どもだったり、女性だったり、年寄だったりするのだけれど、たいていはその父親だったり、息子だったりで中高年の男性が出てくる。みんな家族想いの良い人。しかし、何らかの葛藤を抱えていて、背中が少し寂しい。
 この本に登場する「大人の男性」は、著者が自身を投影したものなのかもしれない。いくつかの作品では、著者と同い年の私にとっても、自分のことのように思えたから。

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2011年11月16日 (水)

マスカレード・ホテル

著  者:東野圭吾
出版社:集英社
出版日:2011年9月10日 第1刷発行 9月21日 第2刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 文庫本で売上200万部を突破した「容疑者Xの献身」など、数多くのベストセラーをモノにしてきた著者の最新刊。

 主人公は、超一流ホテル「コルテシア東京」のフロントクラークの山岸尚美と、警視庁捜査一課の刑事の新田浩介の2人。都内で発生した連続殺人事件の捜査の結果、次の事件が「コルテシア東京」で起きることが判明。新田はフロントクラークに成りすましての潜入捜査を命じられ、尚美はその教育係。

 犯人はもちろん誰が狙われているかも分からない。いつ起きるかも分からない事件。そんな手探りの状態で、「怪しい人物」を発見するために、新田はフロントに立つ。しかしホテルには実に様々な人が訪れる。「怪しい人物」も数多く来る。
 部屋付きの高級バスローブをくすねようとする客、「この部屋には霊がたくさんいる」と言って部屋のチェンジを求める客、ホテルクラークに次々と無理難題を吹っ掛ける客、結婚式の新婦を狙うストーカー...。
 ちなみに、タイトルの「マスカレード・ホテル」の「マスカレード」は「仮面舞踏会」のこと。客は仮面を着けてホテルにやってくる。見えている姿が本当の姿とは限らない。

 こうした客たちを、尚美と新田の即席コンビが見事にさばいていく。その間の2人の心の通い合いが見どころの1つ。さらに一見して事件とは関係がない、客とのエピソードのそれぞれが、連続殺人事件とその解決に結びついていく。このパズルのような組み立てがもう1つの見どころだ。

 本書の公式サイトに、「加賀恭一郎、湯川学に続く第三の男、あらわる」とある。これはもしかして、「新田浩介シリーズ」の予告だろうか?

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2011年11月12日 (土)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

著  者:米原万里
出版社:角川書店
出版日:2001年6月30日 初版発行 2002年9月5日 8版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の10月の指定図書。

 著者は、本業のロシア語の通訳の他、エッセイスト、テレビのコメンテーターなど、幅広く活躍されていた。2006年5月に亡くなられた。合掌。(もう5年も経つとは思えないのだけれど)

 本書は、著者が9歳から14歳までの少女時代を過ごした、プラハのソビエト学校での思い出と、当時の友だち3人を31年ぶりにそれぞれ訪ねた顛末が綴られたもの。タイトルにある「アーニャ」はその中の1人。2002年度大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
 ソビエト学校とは、ソ連外務省が運営する学校で、50か国以上の子どもたちが通っていた。著者の父が日本共産党代表として、各国共産党の情報誌編集局のあるプラハへ赴任し、著者も一緒に渡欧したのだ。チェコ語ではなく、ロシア語で授業が行われた。つまり、著者のロシア語通訳としての原点はここにある。

 ガラスの多面体のように、光の当て方を変えると違った見え方のする作品だった。時にユーモアを交えて描かれる、少女たちの学校生活の活き活きとした姿。少人数で自律を重視した、日本とは大きく違う学校運営も興味深い。音信不通の友だちとの再会は叶うのか?といったサスペンス調のドキドキ感。
 そして、子どもたちにも影を落とす、共産主義を共有しながらも各国で微妙に異なる事情。再会が露わにした31年間のそれぞれの人生。子どもの微笑ましい暮らしから政治経済問題まで、様々な視点から見ることができ、どの視点からも著者の息づかいが伝わってくる。

 私が特に思いを馳せたのは、著者を含めた4人の31年間の人生についてだった。それは本書には多くは書かれていない。しかし、31年後に会った40代半ばの女性になったそれぞれを見れば、その歩んできた道のりが慮られる。
 その道のりは、著者の歩んできた道と、大きく隔たっていた場合もある。アーニャとの再会では、「31年ぶりに会った友だちに、そんなこと言わなくても」と思う場面もあるのだけれど、それは逆に著者がアーニャを、まだ「友だち」だと思っていることの証しなのかもしれない。

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2011年11月 9日 (水)

闇の公子

著  者:タニス・リー 訳:浅羽莢子
出版社:早川書房
出版日:2008年9月15日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」で、少し前に話題になった本。

 英国の女性作家による「幻想文学」。英語にするとFantasyで、ハヤカワ文庫の分類もFT(ファンタジー)なのだけれど、日本語の「ファンタジー」という言葉ではしっくりこない。「幻想文学」が、この物語が持つ退廃的な怪しさと妖しさを表すのに適した言葉だと思う。

 主人公は、地底の王国に君臨する絶大な魔力と美貌を誇る妖魔の王、アズュラーン。彼は、地上に姿を現しては、災いの種をまき、気まぐれに人間の運命を弄ぶ。例えば、災いを招くと知っていて、地底界の宝でできた首飾りを地上にもたらす。また、自分を拒んだ娘への意趣返しに、娘の婚礼の夜に花婿をおぞましい怪物に変えてしまう。

 「退廃的」「怪しい」「妖しい」と修飾語を重ねてきたけれど、さらに加えると「エロティック」で「不道徳」だ。こんな物語が許されていいのか?と問うてみたいが、少なくとも私は許してしまった。目を背けることなく(背けられずに?)、最後まで読んでしまった。
 物語というものはかなり時代が下ってくるまでは、エロティックで不道徳なものもたくさんあったようだ。それは、アンドルー・ラングの「ももいろの童話集」を読んだ時にも思ったことだ。日本の民話を調べてみると、教訓的な改変が後世にかなり為されていることがすぐ分かる。

 そして、この物語を読んでいると「千夜一夜物語」が思い浮かんだ。短めの話が互いに関連しながら続く形式や、砂漠の国が登場する、エロティックなシーンがある、という理由もあるが、そういう明確な特徴ではなく、語りから感じる雰囲気がそう思わせるのだ。
 と思ったら「訳者あとがき」で、「これはリー版「千夜一夜物語」だ」と訳者の浅羽莢子さんの感想が披露されていて、そう意図して訳したことが書いてあった。さらには、著者本人も「千夜一夜」を意識したものだと認めているそうだ。
 英語の文体から「千夜一夜」を読みとって、私にも分かるように「千夜一夜」っぽく訳すなんて、すごい。職人技だ。翻訳という仕事は、そこまでできることなのだ。

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2011年11月 2日 (水)

20代で読んでおきたい成功の教科書

著  者:嶋田有孝
出版社:PHP研究所
出版日:2011年11月7日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の嶋田有孝さまから献本いただきました。感謝。

 著者は、「世の中には仕事に悩みや不安を抱えている方がとても多く、そういう方々に少しでも元気になってもらいたい」との思いから、若手のビジネスパーソン向けに、この本を書かれたそうだ。著者は私より3歳下、まぁ同年代と言わせてもらおう。私も、若い人たちに少しでも元気になってもらいたい。

 本書には、「ポジティブに生きていくためのものの見方、考え方」が、「プラス発想をしよう」「ストレスを乗り越えよう」など5章に分かれて、全部で40個紹介されている。それぞれに「下を向いて立ちすくんでいないで、前を向いて歩きだそうよ」という著者の励ましが滲む。

 その1つめは「事実の解釈を変えてみよう」。頬を縫うケガをした上司の例で、「悪い出来事だ。俺はついてない」と解釈するか、「少し上か下だったら、目か口をやられていた、俺はついている」と解釈するかの違いについて述べている。ケガをした「事実は変えられない」けれど、「解釈は自分で変えられる」というわけだ。
 ケガをしたのに「ついている」と思え、というのはかなり無理がある。同じように、プラスの意味に捉えるのが難しい出来事もたくさんあるでしょう?、と問いたいところだ。しかし、この問いへの著者の答えは明快だった「無理やりにでもプラスの解釈を考えてみる。それだけで十分」ということだった。そうした考えは、ほんの僅かかもしれないけれど、事態を良い方向へ進めると、私も思う。

 実はこの1つめの「事実の解釈を変えてみよう」は、その後の39個のほとんどに通じている。失敗した時に、失業した時に、悔しい目に会った時に、不満を感じた時に...それをどう解釈するか。また、心配ごとができた時に、目標が出来た時に、困難に直面した時に...どういう選択をするか。
 つまりは、1つの「事実」に対するアクションの「選択」の問題、ということだ。それは、それぞれの項目に付いているチャート図のほとんどが、「Aを選ぶかBを選ぶか」2つに分かれる図になっていることからも分かる。
 タイトルの「成功の教科書」や帯の「これであなたの将来は約束された!」という言葉はどうかと思うけれど、たくさんの方が本書を読んで、「要は選択の問題で、選択するのは自分なのだ」と気付いてくれれば、少し世の中が元気になると思う。

(2011.11.4 追記)
タイトルと帯の言葉は、出版社が決めたもので、著者の意思ではないそうです。そう言えば、「恋の六法全書」の著者の長嶺超輝さんのベストセラー「裁判官の爆笑お言葉集 」もタイトルが内容と合わないのですが、これも出版社が著者の意に反してつけたんだそうです。出版社の「売るための工夫」なんでしょうが、消費者を欺くようでいただけませんね。

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