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2011年9月 7日 (水)

官僚の責任

著  者:古賀茂明
出版社:PHP研究所
出版日:2011年8月30日 第1版第5刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は経済産業省の現役の官僚、その告発の書だ。著者は、2009年12月に「大臣官房付」になってからの3年近く、職務を与えられていない。この役職は、次のポストが決まるまでの、普通は数カ月以内のつなぎのための「閑職」なのだ。そうなった理由は、「国益」のために著者がやったことが、経産省の「省益」や公務員全体の利益、次官の意向に反したためだと解説されている。

 この解説が偽りではないだろうと、本書を読めばそう思う。本書には、官僚たちの「省が大事」「御身が大事」の振る舞いと、政治家たちのへダメ出しが、あふれるように詰まっているからだ。こんなことを外に向かって言えば、「ムラ」の中で制裁を受けるのは想像に難くない。

 著者自身が「国益のため」と言ってやってきたことも紹介されている。現在話題になっている「発送電の分離」も、著者は15年近く前に仕掛けたことがある。著者が唱える「国家公務員制度改革」の内容は「あるべき姿」に近い。著者のような官僚がたくさんいれば良かったのに、と思う。

 しかしそう思う一方で、2つの点でとても危ういものを感じた。1つ目は、この著者をしてさえ排除できなかった「上から目線」という点。それは、官僚の仕事についてのこんな言葉に感じた。
 「自分の働き一つで世の中の仕組みを変えられる官僚の仕事は、民間ではなかなか体験できるものではない。とてつもない高揚感を得ることができる」「官僚という仕事の醍醐味は、まさしくこれだ」

 もう1つは「多面的な視点の欠如」。例えば、年金制度改革のこんな考え方。「(年金の受給開始年齢を)八十歳にしてもかまわない」「平均寿命くらいまでは、働くなり、不労所得を得る方法を考えるなりして、自分でなんとかしてもらう」
 また、企業は国籍にこだわらず、生産拠点だけでなく必要なら本社も海外に移すべきだ、とも言う。「日本人として、それでいいのか?」に対しては、「海外展開する企業の株に投資すれば、その配当が日本国民を豊かにする」と答える。

 受給開始年齢を引き上げれば、年金財源の逼迫は解消されるだろう。国籍や国境に拘ることが企業活動の足かせになるのも事実だろう。しかし著者の考えには、そのシワ寄せを受ける国民の視点が欠如している。「自分でなんとかしてもらう」「株に投資すればいい」では済まない。

 ダメ出しをくらった政治家たちは、苦笑しながらこう言うだろう。「それで済めば苦労しないよ」

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コメント

国の法律や決まりごとを決めるのが役人や政治家なら、国民である我々と関係ない所で勝手に決まりごとを動かしているのが、腐れきった役人や官僚や政治家なのでしょう。

投稿: 智太郎 | 2011年9月21日 (水) 05時43分

智太郎さん、コメントありがとうございます。

官僚や政治家の皆さんには、国民の暮らしの視点を忘れないで欲しいですね。

投稿: YO-SHI | 2011年9月21日 (水) 10時18分

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