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2011年7月 6日 (水)

有川浩脚本集 もう一つのシアター!

著  者:有川浩
出版社:角川書店
出版日:2011年3月31日 初版発行 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品「シアター!」「シアター!2」に登場する小劇団「シアターフラッグには、「Theatre劇団子」というモデルとなった実在の劇団がある。本書は、その「Theatre劇団子」が「シアターフラッグ」の面々を演じる舞台「もう一つのシアター!」の脚本だ。
 劇団が劇団を演じる、それも自身がモデルになった小説の中の架空の劇団を。そしてその脚本を、(諸般の事情でそうなったそうだけれど)小説の著者が自ら書く。本書には、こんな面白い仕掛けがいくつも施されている。

 物語の舞台は「シアターフラッグ」の地方公演。と言っても、高校の文化イベントに呼ばれたもので、入場料が取れないので儲けは望めない。ただ、公演依頼なんか滅多にこないので、劇団員たちは張り切っている。
 日帰りの日程で、大道具も小道具もその日の朝に持ち込んで設営する。このあたりがトラブルのもとで、ドタバタと次から次へと問題が持ち上がる。それだけでなく、どうも公演を邪魔しようとしているヤツがいるらしく...。

 著者の作品らしく、笑いやしみじみとした感慨が仕込まれていて楽しめた。ただ、セリフとト書きという脚本の形式で200ページほどなので、物語は短く展開も比較的素直に進む。その代わりという訳ではないが、著者が公演や練習の際の様子などを、「註」として書いている。「作者的にはほっこりとしたいいシーンのつもりが(中略)観客が爆笑。あれー?」なんて、著者の生の反応が面白い。
 同様の「註」は他にもあって、そこで著者は「作者的に最大の予想外がここ。(中略)舞台の反応は本当に読めない。」としているが、本で読んだ私もここは笑った。もしかしたら、これまでの作品の私の「笑い」のいくつかも、著者的には予想外だったのかも。

 冒頭に「面白い仕掛け」と書いた。その意味では著者による「註」も仕掛けと言える。そしてさらにもう一つ。この物語のことは「シアター!2」に既に書き込まれていて、ちゃんと前後がつながるようになっている。「シアター!」シリーズが好きな読者には、抗いがたい魅力だろう。私はこの公演のDVDを買うのを、何とか思い留まっている。

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22.有川浩」カテゴリの記事

コメント

こんにちわ、松田です。わたしも読みました、脚本シアター!!久しぶりに演劇見たくなりましたよ。有川さんが演劇からいい刺激を受けたのが良く分かる作品ですよね。
ブログ記事に書いたとき、劇団子さんから反応あり、嬉しかったです!
最近は図書館戦争シリーズも文庫化され、やっと読めました。児玉清さんと有川さんの対談も収録されており、児玉さんの書評対談遺作だと思うと感慨深いです。

投稿: 松田朋恵 | 2011年7月13日 (水) 18時02分

松田朋恵さん、コメントありがとうございます。

私も演劇が観たくなりました。地方都市に住んでいると、
地元で観る機会というのは限られていて、この前に観たのは
4年ぐらい前だったか、長野に来た四季の「アンデルセン」を
子どもと一緒に観た時かな?

「図書館戦争」文庫版をお読みになっていたのは、松田さんの
ブログを拝見して知っていました。
登場人物に児玉清さんがモデルになっている人がいるんですね。
誰だろう、たぶんあの人だと思うんですけど。

投稿: YO-SHI | 2011年7月14日 (木) 17時36分

児玉清さんがモデルになっているのは・・・・そう、稲嶺司令です!あ顧問か。
ドラマ化されていたら、ピッタリでしたね。
品のいい感じといい。

投稿: 松田朋恵 | 2011年7月15日 (金) 10時27分

松田朋恵さん

ですよね。他にはちょっと見当たりませんからね。

有川さんの「おっさん萌え」は、「三匹のおっさん」で
発現したものかと思っていましたが、思い返すと、
「図書館戦争」の稲嶺司令に玄田隊長と、様々なタイプの
カッコいいおっさんが、すでに登場していたんですね。

投稿: YO-SHI | 2011年7月17日 (日) 00時50分

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