« 2011年6月 | トップページ | 2011年8月 »

2011年7月

2011年7月30日 (土)

真夏の方程式

著  者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2011年6月6日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者が生み出した天才物理学者の湯川の推理が光る、ガリレオシリーズの最新刊。長編では「容疑者Xの献身」「聖女の救済」に続く第3弾。

 今回の舞台は、玻璃ヶ浦という海辺の街。「玻璃」は水晶のことで、太陽に照らされた海の底が、いくつもの水晶が沈んでいるように見えることから、街の名前が付いた。言わばこの海は宝の海。しかしその宝の海を抱くこの街は寂れる一方だ。
 その街に降って湧いたのが海底資源開発の話。湯川はその調査の技術指導のために、この街に来た。そして開発に反対する女性、成実の両親が経営する旅館に泊まる。翌日、その旅館の宿泊客の男性が、堤防から転落した状態で遺体となって発見される..。

 今回の現場は警視庁の管轄ではない。これまでのシリーズに登場した、湯川の大学の同期で警視庁の刑事の草薙の出番はないかと思ったが、そんなことはない。被害者の身元から、事件は早々に警視庁へ東京へ、そして草薙へと結びつき、いつも通りの地道な活躍を見せてくれた。新人?の女性刑事の内海の捜査も頼もしかった。
 また、こちらはいつもと違って、子ども嫌いの湯川が、今回は小学校5年生の少年の恭平クンと気が合ったようだ。夏休みの自由研究の手伝いをしたり、宿題を教えてあげたり。「大学の物理学の先生に自由研究を手伝ってもらうなんて何と贅沢な」とか「湯川先生、実は子ども好き?」などと思ってしまった。

 伏線の仕込み方が見事だ。「そうだったのか」と何度もページを前に繰った。そして著者が繰り出す「新事実」に翻弄された。何かが分かる度に「そういうことか」と真相に近づいた気になった。しかしそれは真相の一部でしかないか、まったく真相とは関係ない、ということが最後まで続く。騙され通しの400ページだった。

 にほんブログ村「東野圭吾」ブログコミュニティへ
 (東野圭吾さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「真夏の方程式」 固定URL | 3.ミステリー, 32.東野圭吾 | コメント (4) | トラックバック (4)

2011年7月28日 (木)

デイルマーク王国史1 詩人たちの旅

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2004年9月24日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「ファンタジーの女王」と呼ばれた著者は、今年3月に亡くなった。もう新しい物語を世に送り出してくれることはないのだと思うと寂しいが、幸いにも沢山の作品を遺してくれた。私が未読のものも10作品ほどあるので、これから読み進めて行こうと思っている。

 本書は「デイルマーク」という架空の王国を舞台として、時代と主人公を換えて綴る「デイルマーク王国史」4部作の第1作。デビューから間もない1975年の作品。詩人(うたびと)と呼ばれる、楽器の演奏と歌のショーをして王国内を巡る家族の物語。

 主人公は、詩人の家族の末っ子の少年、11歳のモリル。有名な詩人の父と、母、兄、姉の5人で王国内を馬車で巡る暮らしをしている。詩人は王国内を自由に行き来できる通行手形を持っているので、手紙やニュースも運ぶ。そして時には乗客として人を馬車に乗せて運ぶこともある。
 物語は、王国の北部へ向かうキアランという少年を乗せたことから展開する。馬車で旅する暮らしのため、一家は仕事を分担して休む間もないのだけれど、キアランは手伝う気はないらしい。モリルや兄姉とも仲違いばかりしている。

 実はこの王国は南部と北部に分かれて争っている。シリーズ第1作の本書で、主人公一家を王国の南端に近い街から北部へと旅させることで、そのあたりの事情をうまく紹介している。南北で争っている中を、南部の街から北部へ向かうキアランは当然ワケありなのだ。
 ワケありなのは、キアランだけではない。モリルの父にも母にもそして兄にも、モリルが知らない一面がある。父が持つ弦楽器のクィダーにも秘密がある。王国史4部作の幕開けは、捻りの効いた個性的な登場人物に著者らしさが感じられるが、活躍する子どもたちに声援を送りたくなる、正統派ファンタジーだった。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「デイルマーク王国史1 詩人たちの旅」 固定URL | 1.ファンタジー, 14.ダイアナ・ウィン・ジョーンズ | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年7月25日 (月)

ピスタチオ

著  者:梨木香歩
出版社:筑摩書房
出版日:2010年10月10日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の最新刊。著者の作品に多くに共通するのは、「異界」の存在を感じさせること。「家守綺譚」や「f植物園の巣穴」のこの世ならぬ者たち、「裏庭」の鏡の向こうの世界、「村田エフェンディ滞土録」の神々、「沼地のある森を抜けて」の故郷の島。そして、今回はアフリカの呪術医と精霊だ。

 主人公は山本翠。40歳手前。「棚」というペンネームでライターの仕事をしている。仕事関係の人からだけでなく、恋人からも近所の喫茶店の女主人からも「棚」と呼ばれている。彼女は、かつて勤めていた出版社を辞め、衝動的にケニアに渡り数か月を過ごしたことがある。

 棚は、亡父が建てた武蔵野の公園の前のマンションの2階に犬のマースと暮らしている。公園の木々や池にいる水鳥たちの描写が詳しい。「カモ」と一言で片づけてしまわずに、「オナガガモ」「キンクロハジロ」「ホシハジロ」「ハシビロガモ」「カルガモ」と名前を挙げていく。
 それは棚がそうしたことに興味があるということを表している。また棚は、気圧の変化が自分の体調で正確に分かる。前線が通過するとひどく頭痛がする一方で、異様に意識が覚醒する。だから、棚にとって気象情報は何にもまして関心のあるニュースなのだ。

 物語の前半は、公園でのマースを連れた散歩の様子などの描写が瑞々しい。しかし棚の暮らしはマースの病気に振り回されることになる。そして後半になって、著者の作品に共通する「異界」の存在を強く感じる物語に展開していく。

 正直に言って、読んでいて今ひとつ乗れないままになってしまった。前半と後半のつながりが、無いようで有る。細い糸でつながっている感じ。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「ピスタチオ」 固定URL | 2.小説, 25.梨木香歩 | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年7月20日 (水)

20代で身につけたい質問力

著  者:清宮普美代
出版社:中経出版
出版日:2011年7月6日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者が代表を務める株式会社ラーニングデザインセンター様から献本いただきました。感謝。

 「20代」という若い世代、組織で「新入り」の世代がタイトルになっているので、一見すると「先輩(上司)に好かれる上手い質問の仕方」という「処世術」っぽいものを想像するが、本書はそういう本ではない。
 本書冒頭に曰く、質問力が高いと「人間関係がうまくいきます」「問題解決がうまくいきます」「人を動かすことができます」「自己成長につながります」と、本書が言う「質問力」という力は随分と強力なのだ。

 この主張には、裏打ちがある。著者は、世界で9人しかいない、日本人としては初めての世界アクションラーニング(AL)機構の認定マスターALコーチ。「アクションラーニング(AL)」とは、現実の問題に対処する過程で生じる行動などを通じて、個人や組織などの問題解決力を養う学習法のこと。
 そのALの特徴的で重要な要素が「質問」。つまり、著者は「質問」を問題解決力や組織力の向上につなげる第一人者。「処世術」レベルのHowTo本とは違って、もっと大きく高いゴールが設定されていて当然なのだ。

 全部で40項目ほどあるが、特に腑に落ちたのが「クローズ質問」と「オープン質問」について。例を挙げると、「プロジェクトは順調に進んでいるか?」は「クローズ」で、「どうすれば順調に進むだろうか?」は「オープン」。
 「クローズ」は、「はい」「いいえ」で答えられる→相手の自由な意見(アイデア)は出てこない。そして「順調に進んでるんだよな!」というニュアンスを含んでしまう→相手は押し付けられた感じがする、他人事に聞こえる。「オープン」はその逆。問題解決にはアイデアが必要だし、一緒に事に当たる姿勢も重要だから、「オープン質問」をうまく使いこなしたいところだ。

 さて、上の「オープン質問」は、ある程度上の立場でこそ役に立つ。このことから分かるとおり、本書は20代という世代限定の本ではない。私のように50歳に届きそうになっていても読むべきことは多い。タイトルに「20代」が謳ってあるのは「20代の人はチャンスです。若いうちはどんどん質問をしても許されます(「はじめに」より)」ということらしい。
 そう、年季が入ってくると聞けなくなることもある。「クローズ質問」が多くなる。自戒を得た本でもあった。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「20代で身につけたい質問力」 固定URL | 6.経済・実用書 | コメント (0) | トラックバック (2)

2011年7月16日 (土)

首なし騎士と五月祭

著  者:ケイト・キングズバリー 訳:務台夏子
出版社:東京創元社
出版日:2011年5月13日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 「ペニーフットホテル」シリーズの第4弾。「ペニーフットホテル」は、英国南東部の海岸沿いの小さな村バジャーズ・エンドにある、紳士淑女御用達の隠れ家的ホテル。時代は20世紀初頭。これまでも毎回奇妙な殺人事件が起きたが、どうも回を重ねるごとにその奇怪さが増している。今回の事件は「首のない騎士が現れて、女性を殺してポールに縛り付けた」というものだ。

 首のない騎士と聞けばオカルトかホラーかと思うが、おどろおどろしい雰囲気はしない。もちろん、殺人事件が起きたことは確かで、それも残虐な事件には違いない。しかし「首なし騎士」については、目撃者はホテルの常連客の退役軍人の大佐一人で、普段から言動が怪しい上に、その日は足元がおぼつかないほど酔っていた。
 誰もが彼の話を信じることに戸惑いを感じたが、大佐が「何か」を目撃したのは間違いないらしいのだ。ちょうど五月祭(英国では古代からの祭日)の直前で、事件が解決しなければ五月祭が中止になる。五月祭を目当てにくる宿泊客が多いので、ホテルの女主人のセシリーは、素人探偵よろしく聞き込みを開始する。

 前作「マクダフ医師のまちがった葬式」のレビューにも書いたが、このシリーズの魅力は、セシリーの活躍と登場人物たちが織りなすドラマにもある。そのドラマの方は、前作のように複数の同時進行ではなく、ピンポイントで展開する。私が前々から注目しているメイドのガーティに事件が起きる。

 これも前作のレビューにも書いたけれど。本書だけで物語は完結しているが、1作目から順に読む方が楽しめると思う。(もう少し安ければいいのだけれど)

 にほんブログ村「ミステリ・サスペンス・推理小説全般 」ブログコミュニティへ
 (ミステリ・サスペンス・推理小説全般についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「首なし騎士と五月祭」 固定URL | 3.ミステリー | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年7月13日 (水)

ひたむきな人のお店を助ける 魔法のノート

著  者:眞喜屋実行
出版社:ぱる出版
出版日:2011年7月1日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の眞喜屋実行さまから献本いただきました。感謝。

 主人公は山田一歩。大学4年生。学校近くの地鶏屋のアルバイトをしていた彼女は、店主の入院によって店長代理になり、おまけに店の立て直しをしなくてはならなくなった。銀行への返済が滞っており、滞納分だけでも納めないと店を手放さないといけないからだ。期限は3か月あまり。
 そんな彼女の前に、亡くなったはずの父が現れる。「しばらく前に送ったノートはあるかい?きっと今の一歩に役立つはずだよ」と告げた。ノートとは、父が亡くなる直前に一歩に送ったもの。各ページにひと言ふた言書いてあるだけのノート。一歩が最初に開いたページには「窓の外は、雪」と書かれていた。はたしてその意味は?

 本書は、一歩が店の経営を立て直していく、物語形式の実用書だ。近いところでは「もしドラ」が思い浮かぶ(「もしドラ」の著者の岩崎夏海さんが、帯に推薦を寄せている)。私が思いつく限りでも、古くは「金持ち父さん貧乏父さん」や「ザ・ゴール」以降、結構売れた本が何冊かある。
 売れた本と言えば「ソフィーの世界 」「夢をかなえるゾウ」も、それぞれ「哲学書」「自己啓発書」を物語形式にしたものだ。人に何かを伝えようとする時、物語はとても強力な方法なのだろう。100年、1000年を越えて語り継がれるものもあるのだから。

 ただし難点もある。実用書なら実用書としての内容と、物語としての魅力との両方が揃わないと、中途半端なものになってしまう。著者は販売促進関連の仕事が本職で、それについては自信も持っていらっしゃる。だから、本書は実用書としての内容は、地に足の着いた確かなものを感じた。サービス精神からか、いろいろな要素を入れ過ぎた感はあるが、物語としての魅力も、最後まで飽きずに読めるのでそれなりにある。及第点といったところだろうか。

 そうそう、長い物語を今回初めて書いた著者は、「窓の外は、雪」を地で行ったことになる。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「ひたむきな人のお店を助ける 魔法のノート」 固定URL | 6.経済・実用書 | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年7月 9日 (土)

王国の鍵6 雨やまぬ土曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年6月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 月曜日から始まって日曜日に終わる7冊シリーズも、本書で6冊目の土曜日。最後から2冊目になった。今回主人公アーサーが対決するのは、「卓越したサタデー(原書では、Superior Saturday)」。世界の中心に位置するといわれている「ハウス」の上層の管財人。

 サタデーは、これまでの5巻でも、本人は登場しないがその暗躍が見え隠れしていた黒幕キャラ。いよいよ本書の冒頭で姿を現す。どうらや彼女は(サタデーは女性なのだ)、創造主がつくった最初のハウス住人という太古からの存在らしい。それ故に、創造主の息子であるサンデーより、自分が上位であるべきだとの、強烈な自負を抱いている。

 アーサーの冒険にはいつもながらハラハラさせられる。しかし、本書は約300ページで、他の巻より100ページほど短く、その分冒険もあっさりしていた感は否めない。実は、上に書いたサタデーの強烈な自負が描かれたことが、本書の最大のポイントと言っても過言ではない。サタデーその人が登場し、これまでの様々な事件のウラを明らかにしたことで、最終巻への準備が整えられたのだ。つまり、本書はこれまでの5巻と最終巻を橋渡しする「つなぎ」の巻だと思う。

(2011.7.12追記)
訳者の原田さまからわざわざコメントをいただきました。最後にアーサーが唱えたセリフに誤りがあるそうです。(誤:中層/正:上層)
コメントで原田さまもおっしゃっているように、大事な決めぜりふではあるのですが、この誤りが物語の面白さを減じるものではありません。どんなに注意しても、何人で見ても、それをかいくぐって生き残る間違いがあるんですねぇ。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「王国の鍵6 雨やまぬ土曜日」 固定URL | 1.ファンタジー, 18.ガース・ニクス(王国の鍵) | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年7月 8日 (金)

レビュー記事が500本になりました。

 先日の記事「有川浩脚本集 もう一つのシアター!」で、このブログのレビュー記事が500本になりました。
 過去を振り返ると、昨年の7月29日に「レビュー記事が400本になってました。」、一昨年の8月1日に「レビュー記事が300本になりました。」という記事をそれぞれ書いています。年間100本を少し超えるペースが守れているということです。

 先の震災以後、幸いなことに私や私の周囲には、直接被害を受けた人はいないのですが、それでも「今までと変わりないこと」が、実はありがたいことなのだと、考えない日はありませんでした。だから、この1年間にその前の1年間と同じペースで本が読めたことに感謝しています。

 レビュー記事が500本になったことを伝えたある人に、「次の目標は?」と聞かれました。まぁ600とか1000とか答えても良かったんですが、正直に言って「目標」なるものは、あまり意識したことはないんです。ただただ週に2回記事を書こうと思っているだけ。先週と同じように今週も、を繰り返しているわけです。

 まぁ、それでも500本に近づいて来たことを知った時から、少し考えていることがあります。せっかくだから、これまでに読んだ500余冊の本を、何かの形でまとめられないものかと。まだ具体的にはなっていないのですが、このブログに来ていただいた方の読書の参考になるようなものを作れればいいなと、夢想しています。

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「レビュー記事が500本になりました。」 固定URL | | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年7月 6日 (水)

有川浩脚本集 もう一つのシアター!

著  者:有川浩
出版社:角川書店
出版日:2011年3月31日 初版発行 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品「シアター!」「シアター!2」に登場する小劇団「シアターフラッグには、「Theatre劇団子」というモデルとなった実在の劇団がある。本書は、その「Theatre劇団子」が「シアターフラッグ」の面々を演じる舞台「もう一つのシアター!」の脚本だ。
 劇団が劇団を演じる、それも自身がモデルになった小説の中の架空の劇団を。そしてその脚本を、(諸般の事情でそうなったそうだけれど)小説の著者が自ら書く。本書には、こんな面白い仕掛けがいくつも施されている。

 物語の舞台は「シアターフラッグ」の地方公演。と言っても、高校の文化イベントに呼ばれたもので、入場料が取れないので儲けは望めない。ただ、公演依頼なんか滅多にこないので、劇団員たちは張り切っている。
 日帰りの日程で、大道具も小道具もその日の朝に持ち込んで設営する。このあたりがトラブルのもとで、ドタバタと次から次へと問題が持ち上がる。それだけでなく、どうも公演を邪魔しようとしているヤツがいるらしく...。

 著者の作品らしく、笑いやしみじみとした感慨が仕込まれていて楽しめた。ただ、セリフとト書きという脚本の形式で200ページほどなので、物語は短く展開も比較的素直に進む。その代わりという訳ではないが、著者が公演や練習の際の様子などを、「註」として書いている。「作者的にはほっこりとしたいいシーンのつもりが(中略)観客が爆笑。あれー?」なんて、著者の生の反応が面白い。
 同様の「註」は他にもあって、そこで著者は「作者的に最大の予想外がここ。(中略)舞台の反応は本当に読めない。」としているが、本で読んだ私もここは笑った。もしかしたら、これまでの作品の私の「笑い」のいくつかも、著者的には予想外だったのかも。

 冒頭に「面白い仕掛け」と書いた。その意味では著者による「註」も仕掛けと言える。そしてさらにもう一つ。この物語のことは「シアター!2」に既に書き込まれていて、ちゃんと前後がつながるようになっている。「シアター!」シリーズが好きな読者には、抗いがたい魅力だろう。私はこの公演のDVDを買うのを、何とか思い留まっている。

 にほんブログ村「有川浩」ブログコミュニティへ
 (有川浩さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「有川浩脚本集 もう一つのシアター!」 固定URL | 22.有川浩 | コメント (4) | トラックバック (1)

2011年7月 2日 (土)

下流の宴

著  者:林真理子
出版社:毎日新聞社
出版日:2010年3月25日 第1刷発行 2011年6月15日 第13刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、毎日新聞に2009年3月から12月まで連載されていた、新聞小説を単行本化したもの。NHKでテレビドラマ化されて現在放映中だし、奥付を見るともう13刷にもなっている。きっと評判がいいのだろう。

 物語は、複数の人物を順に追って3人称で描く。48歳の主婦の福原由美子、その娘で女子大生の可奈、息子で20歳のフリーターの翔、翔の恋人で22歳の宮城珠緒の4人が主な登場人物。この他に福原家と宮城家の人々が、物語の要所で絡んでくる。

 由美子は、自分たちが中流の「ちゃんとした」家庭なのだ、という思いを心の拠り所にしている。教育評論家の意見を参考にして、ちゃんと子育てをして来た。それなのに翔は高校を中退し、20歳を過ぎて家出をしてしまった。今は、珠緒のアパートに住んでマンガ喫茶でバイトをしている。
 珠緒はと言うと、沖縄の離島出身で高校卒業後に上京、リサイクルショップでバイトをしている。母は故郷の離島で飲み屋を開いている。両親は離婚していてそれぞれが再婚。両方の家で弟や妹が生まれて、珠緒を入れて全部で8人、小さな島ゆえにみんな姉妹兄弟のように育った。

 翔と珠緒が結婚すると言い出したことから、由美子の心の拠り所が危うくなる。いや、もっと前から由美子が思う「ちゃんとした」家庭ではなくなっていた。しかし、それは一時的なものだと自分に思い込ませてきたのだ。由美子には、「下品」で「無教養」な「あっちの人」の珠緒が、自分たち家族の敵に見えた。家族を守るためには敵を排除しなくてはならない...。

 上にも書いた通り、評判は良いのだろう。誇張はあっても由美子のように振る舞う母はいそうだし、リアリティを評価する声もあるらしい。ただ、私にはあまり合わなかった。私は物語にリアリティよりドラマを求める。この物語は、私にとってはヤマなしオチなしでドラマを感じなかった。
 もう一つ。登場人物の誰にも共感を覚えなかったのも辛いところだ。強いて言えば、由美子の夫の健治は、私と立場が似ていることもあって、その意見に頷くこともあった。ただ、彼の意見は由美子が言う通り「他人事」で、共感を感じるとまでは言えなかった。自分の子どもに翔と同じことが起きたらどう思うか?それは、なってみないと分からない。

 NHKドラマ10 「下流の宴」サイトへ

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「下流の宴」 固定URL | 2.小説 | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2011年6月 | トップページ | 2011年8月 »