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2011年6月 2日 (木)

海に沈んだ町

著  者:三崎亜記
出版社:朝日新聞出版
出版日:2011年1月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「小説トリッパー」という季刊誌に、2009年~2010年に掲載された8編と、書き下ろし1編を加えた、短編集。前後の作品と緩やかにつながっている、連作短編集の形になっている。

 アンソロジーを除くと、著者の本を読むのは「失われた町」「となり町戦争」に続いて3冊目。なるほどこういう物語を書くのだな、という特徴がいくつか分かってきた。1つは「当たり前でないことが当たり前の世界」。それによって「当たり前のことが、実は当たり前ではない」ことを描く。
 「失われた町」は「町の消滅」、「となり町戦争」は「隣町と戦争をする」という当たり前でない設定。それによって、「今日と連続した明日」「戦争とは無縁の日常生活」という当たり前のことの危うさが描かれている。

 本書の表題作「海に沈んだ町」も、「町がそっくり海に沈む」という当たり前ではない設定。20年以上前に飛び出してきた故郷が海に沈んだ男性。憎んでいたはずの故郷が無くなることで、逆にその存在感が大きくなる。著者が描く物語のもう一つの特徴は「喪失と回復」。
 どんな「喪失」を抱えても、残された者はその後を生きている、いや生きていかなければならない。「失ったものは返って来ない」その底の知れない哀しみと、そこから一歩踏み出したしなやかな強さを感じる。私が一番心にしみた作品「四時八分」は、そんな物語だ。

 良かった作品とそうでもなかった作品が半々。それが私の正直な感想。思うにその分かれ目となるキーワードは「回復」らしい。

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コメント

こんばんは。

「コロヨシ!!」も面白いですよ♪
掃除がスポーツ競技の話です。
続編も月刊『野生時代』に載っていますw

投稿: ポポロ | 2011年6月 2日 (木) 23時07分

ポポロさん、コメントありがとうございます。

「コロヨシ!!」おもしろそうですね。
続編があるということは、評判も良かったんでしょうね。

投稿: YO-SHI | 2011年6月 6日 (月) 00時01分

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数千人の人々を乗せて海を漂う“団地船”、永遠に朝が訪れない町、“生態保存”された最後のニュータウン…喪失、絶望、再生―もう一人の“私”が紡いでゆく、滑稽で哀しくて、少しだけ切ない九つの物語。『失われた町...... [続きを読む]

受信: 2012年10月16日 (火) 14時20分

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