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2011年3月

2011年3月31日 (木)

新聞社の紙面モニターになりました

 某新聞社の紙面モニターをすることになりました。期間は4月から半年で、2週間に1回のアンケートに答えることになっています。アンケートは、その週の「良い記事」を1点選びその理由、「難点のある記事」を1点選びその理由、指定された記事の評価や意見・注文、の3つを書くそうです。

 最近になって、テレビや新聞の報道で、偏っていたり不正確だったりしていて「これはないんじゃないの?」と感じることが、ごくたまにですがありました。それで、意見をメールで送ってみたことがあるんです。そうすると「貴重なご意見をいただき...関連部署に...今後の...」という丁寧なメールが返信されてきます。
 ただ、どういう人がどういうつもりで読んでくれているのかさっぱりわからない。もしかして誰も..という疑念さえある。その点「紙面モニター」ならそんなことはないだろう、というのが応募の理由です。(「これはないんじゃないの?」という報道は、テレビの方が多いんですけどね。)

 応募したのは震災前ですが、このような大きな出来事、しかも原発の事故は進行形のまま長期間にわたると予想される出来事に直面して、報道機関が何をどのように報道するのかが、これまでになく重要になってきたと思います。

 
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2011年3月30日 (水)

ストラヴァガンザ 仮面の都

著  者:メアリ・ホフマン 訳:乾侑美子
出版社:小学館
出版日:2003年12月10日 初版第1刷発行 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の、ファンタジーに詳しいメンバーさんに教えてもらった本。本書「仮面の都」に「星の都」「花の都」と続く三部作。時空を越えて別の世界に旅することを「ストラヴァガント」と言い、タイトルの「ストラヴァガンザ」は、「ストラヴァガント」をめぐる一切のことをさす。本書は、時空を越えた冒険物語シリーズの幕開け、というわけだ。

 主人公は、ロンドンに住む15歳の少年ルシアン。悪性腫瘍を患っていて、病気のためか治療の副作用か、ベッドの上で口をきくのもつらい状態だった。そんな彼がふとしたきっかけで「ストラヴァガント」した先は、ヴェネツィアに似た美しい水の都ベレッツァで、時代は16世紀ごろらしい。
 ルシアンはロンドンとベレッツァを行き来するようになる。ロンドンでは病気療養中だが、ベレッツァでは健康で活動的に動き回れる。そしてベレッツァの、これまた活動的な同い年の少女アリアンナと友達になる。

 物語は、ドゥチェッサというベレッツァを治める女公主が持つ秘密と、対抗するレーマ公国のキミチー家との確執をタテ糸に、ルシアンの二重生活と彼を取り巻く人々との触れ合いをヨコ糸に織られていく。
 アリアンナを始めとして、ベレッツァの人びとがそれぞれとても魅力的だ。特に女性たちが。アリアンナ、彼女のおばさんやおばあさん、ドウチェッサを務めるシルヴィア、みんな自分がすべきことが分かっている。楽しめた。

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2011年3月26日 (土)

KAGEROU

著  者:齋藤智裕
出版社:ポプラ社
出版日:2010年12月15日 第1刷発行 12月24日第6刷
評  価:☆☆☆(説明)

 第五回ポプラ社小説大賞受賞作品。昨年の年末にものすごく話題になった作品だから、読んだか否かは別にして、知っている方はたくさんいるだろう。俳優の水嶋ヒロさんが、本名で応募して見事に大賞を受賞した作品。その経過が(ネガティブに)注目されて、Amazonのレビューがお祭り状態になった。

 主人公のヤスオは40歳。廃墟と化した古いデパートの屋上から、飛び降りて自殺しようとしていた。リストラ勧告に対して、辞表を叩きつけてこっちから辞めてやったまでは良かったが、その後は仕事が見つからず、借金をくり返し。その果ての自殺。
 そこに真っ黒なスーツを着た男が現れる。こんな状況で現れる真っ黒なスーツの謎の男と言えば、「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造かと思ってしまうが、もちろん違う。男は京谷貴志と書かれた名刺を差し出す。デパートの関係者ではない。しかし、ここは廃墟ビルの屋上、偶然通りかかったのでもない。京谷はヤスオにある契約を持ちかける。ますます喪黒福造かと思ってしまうが、もちろん違う。

 このあと、ヤスオは自分の命や自分の価値について考える、色々な出来事に出会うことになる。ヤスオが発するダジャレのせいか、命をめぐる物語なのに、ノリが終始一貫して軽い。「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」とは、伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」の中のセリフだが、著者がこういったことを意図したのなら、相当程度に成功している。しかし平板な感じは否めない。

 この後は、この記事をちょっと補足しています。よろしければ、どうぞ

 この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。

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2011年3月23日 (水)

削除ボーイズ0326

著  者:方波見大志
出版社:ポプラ社
出版日:2006年10月4日発行
評  価:☆☆☆(説明)

 第一回ポプラ社小説大賞受賞作品。著者のデビュー作(これ以前に「このミス」大賞の最終候補になった作品がある)。ある人物の過去の特定の時間を、3分26秒だけ「削除」することができる装置を手に入れた小学生の物語。近過去の歴史改変モノだ。

 主人公は川口直都、ニックネームは「グッチ」小学校6年生。街で高校生に絡まれていた同級生を助けたところ、「勇気ある行動に感動した」と、おっさんにデジカメをもらう。おっさんが言うには「実際に起きた出来事を削除できる機能がある」らしい。
 おっさんの言ったことは本当だった。カメラで人を撮って、削除する時間を設定して、「DELETE」ボタンを押せば、その時間が「削除」されるらしい。さて何に使う?最初は、自分の深爪や友達のケガをなかったことに、なんて軽い使い方をしていた。でも、どうしても「削除」したい、より深刻な出来事が起きて..当然、意図しない副作用もあって..。まぁ、王道の展開だ。

 王道の展開だけあって、読みやすい。ちょっとしたユーモアを含んだ語り口も悪くない。ミステリーの要素もうまく取り入れていた。ただ、主人公たちが小学生だと思うと、本人たちの行動にも周囲の接し方にも違和感があった。これには最後まで慣れなかったけれど、デビュー作としては力作だったと思う。

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2011年3月20日 (日)

特集「子ども向けの本」

 先日、東京近郊にお住まいの方からメールをいただいて、2つお願いをされました。1つは、これまでどおり読書をして欲しい、もう1つは子どもの本を特集的に取り上げてもらえないか、ということです。

 1つ目は、奇異なお願いに聞こえるかもしれませんが、、「震災前と同じ」状態が落ち着きを取り戻してくれるのだそうです。おそらく私が以前に「本の感想なんか書いていていいのか?」と記事に書いたことが発端なのでしょう。
 直接の被災者でなくとも、地震の後では心理面を含めて生活が変わってしまいました。特に関東ではその影響はとても大きい。そんな時に「前と同じ」日常が感じられることは、とても大事なことなのかもしれません。
 私がこれまでどおり本を読んで、ブログに記事を載せることが、誰かの安定・安心に役に立つなどと、おこがましい気持ちは今もありません。しかし、私の記事を望んでくれる人が1人でもいることが分かって、私はとても勇気付けられました。この場を借りて、ありがとうと言いたいです。

 2つ目は、この方は本の取次のお仕事をされていて、被災地域から避難されている方を受け入れている県から、子どもの本についての需要や問い合わせが増えているからだそうです。それで、その問い合わせへの対応の参考にしたいので、良い本を何冊か選んで欲しい、ということです。
 それにお応えして、中高生向け10作品、小学生向け10作品を選んでみました。私は、面白そうだと思えば、児童書でもなんでも読みます。二人の娘が小学生だったころから、娘が借りてきた本を横から取って読んだりもしました。

 ただ、あくまでも自分のために読んでいただけなので、子どもの意見を取り入れるために、選書に当たっては中学生の娘の意見を聞きました。また、これとは別に子どもの本についての経験がある方に、SNSを通じて協力をお願いしています。その方々の選書が出来次第、この記事からリンクを貼ることになっています。
 もしこの記事を読んで、ご協力をいただける方が他にいらっしゃれば、メールでご一報くださるとうれしいです。

 ※ご協力いただいた方の記事へのリンク
 小学校での本の読み聞かせの活動を10年も続けていらっしゃる、るるる☆さんが、小学生向けの本を選んでくださいました。
  rururu☆cafe:「一日も早く穏やかな日常を・・・子どもの本あれこれ」

■中学生・高校生向け■

  タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
シアター! シアター!2 / 有川浩 シアター! (メディアワークス文庫)
小劇団「シアターフラッグ」の劇団員ら11人の若者が描く群像劇。それぞれが胸に秘めた想いや恋心が衝突や共感を生む。これが「ドラマ」これが「青春」
夜のピクニック / 恩田陸 夜のピクニック (新潮文庫)
高校3年の秋の1日、丸一日をかけて80kmを歩き通すという学校行事「歩行祭」が舞台。恋愛や友情、人間関係の悩み、葛藤。青春時代の経験があふれ出す。
バッテリー(1)~(6) / あさのあつこ バッテリー (角川文庫)
野球に純粋な天才中学生投手を描く。頑ななまでに純粋であるために、周囲とは衝突してしまう。大人には分からない、少年のやわらかい心に少し触れられる。
青い鳥 / 重松清 青い鳥 (新潮文庫)
ひとりぼっちの子どもにそっと寄り添う教師の話。子どもの心を丁寧に描く。子を持つ私にはつらいほどに、心の深いところに届く物語。
有頂天家族 / 森見登美彦 有頂天家族 (幻冬舎文庫)
京都の街に住む、狸たちが巻き起こす奇想天外な物語。偉大な父の跡を継いだ、ちょっとずつダメな狸の4人兄弟。ちょっとだけホロリとして、その他は笑ってください。
ドミノ / 恩田陸 ドミノ (角川文庫)
玄関ポーチに何気なく置いたビニール傘が発端になって、次々と事件が起きる。27人と1匹?が織り成すノンストップコメディ。理屈抜きに楽しんでください。
狐笛のかなた / 上橋菜穂子 狐笛のかなた (新潮文庫)
里のはずれで祖母と暮らす不思議な力を持つ少女と、森の中で暮らす少年と、霊力を持った狐の子。3人の運命が縒り合わされる、独特なアジアンファンタジー。
戸村飯店青春100連発 / 瀬尾まいこ 戸村飯店青春100連発
大阪の下町の中華料理店の、要領が良くていい加減な兄と真面目な弟。吉本新喜劇、アメをくれる近所のおばちゃん。大阪の町が育んだ家族愛の物語。
君に届け / 椎名軽穂 君に届け 1 (君に届けシリーズ) (コバルト文庫)
見た目が暗くクラスに馴染めない女子高校生。彼女に普通に接するクラスの人気者の少年。その他のクラスメイトたちとの衝突や友情と成長を描く。
10 都会のトム&ソーヤ / はやみねかおる 都会のトム&ソーヤ(1) (YA!ENTERTAINMENT)
御曹司で天才、容姿端麗な創也と、どんな状況でも切り抜けられるサバイバル能力を持った内人。2人の中学生が巻き起こす、都会派冒険ミステリー。

 左端の数字は項番であって順位ではありません。結果的に「中高生も楽しめる一般書」と「大人も楽しめるYA書」が混在して並ぶことになりました。ちなみに9、10は娘の選です。

 状況を考慮して地震や津波、火事などの災害が起きたり、親しい人の死があったりする作品は極力排しました。しかし、見落としがあるかもしれません。もし、このリストを参考にされる場合は、可能な限り子どもたちの様子に注意が行き届くよう、考えていただけると良いかと思います。

■小学生向け■

  タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
エルマーのぼうけん / ルース・スタイルス・ガネット エルマーのぼうけん
主人公のエルマーは、とらわれた竜を助けるために、ひとりジャングルに忍び込む。たくさんのキケンな動物たちを、どうやって切り抜けていくのか。全3巻
「ちいさな王さま」シリーズ / 寺村輝夫 はらぺこ王さま ふとりすぎ (ちいさな王さまシリーズ (1))
ちいさな王さまは、王さまでありながらなにひとつ自分で決めることができず、いつもだいじんに命令されてばかり。そんな王さまが引き起こす騒ぎがおもしろい。全10巻
「まじょ子」シリーズ / 藤真知子 まじょ子どんな子ふしぎな子―まじょ子2in1 (ポプラポケット文庫)
まじょ子ちゃんはいたずらが大好きな魔女の女の子。人間の女の子をさそって、ゆうれいたいじをしたり、おかしの国へいったり・・・。元気な冒険シリーズ。49巻
「モンスター・ホテル」シリーズ / 柏葉幸子 モンスター・ホテルでおめでとう (どうわはともだち)
いまにもたおれそうなビルのモンスター・ホテルを舞台に、おそろしいおばけとは程遠い、やさしいモンスターたちのにぎやかな日常が繰り広げられるシリーズ。全10巻
「フェアリー・レルム」シリーズ / エミリー・ロッダ フェアリー・レルム (1)
主人公のジェシーが妖精の王国「フェアリー・レルム」で、かわいい仲間と冒険をする。エルフ、おしゃべり子馬、花の妖精やユニコーンも登場するにぎやかなシリーズ。全10巻
「こそあどの森」シリーズ / 岡田淳 ふしぎな木の実の料理法 (こそあどの森の物語 1)
変わり者だがあたたかい人びとが住む「こそあどの森」では、いつも不思議なことがおこる。調理法がわからない木の実がおくられてきたり・・・。シリーズものです。10巻
床下の小人たち / メアリー・ノートン 床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)
家の床下で、必要なものを人間たちから借りてき暮らす小人の家族。ある日、小人の少女アリエッティが人間の男の子と出会ってしまいます。小人の冒険シリーズ全5巻
モモ / ミヒャエル・エンデ モモ (岩波少年文庫(127))
話を聞くだけで人のなやみを溶かしてしまう不思議な少女・モモ。彼女が住む街に、人びとの時間をうばってしまう「灰色の男たち」があらわれる。モモは時間をとりかえせるのか。
ホビットの冒険 / J・R・R・トールキン ホビットの冒険〈上〉 (岩波少年文庫)
「指輪物語」に先立つ、魔法使いのガンダルフやドワーフたちとのホビットのビルボの、ハラハラドキドキの冒険物語。ドラゴンに奪われたドワーフの財宝を取り返しに行きます。
10 魔女の宅急便 / 角野栄子 魔女の宅急便 (福音館創作童話シリーズ)
魔女としてひとりだちすることを決めたキキは、たどりついた街で「魔女の宅急便」をはじめる。ほかの魔女と出会ったり、恋をしたりして、成長していくシリーズ。全6巻

 私が読んだことがあるものばかりです(シリーズのものは、全作品は読んでいないですが)が、すべて娘が選びました。紹介文も娘に書いてもらいました。大まかに言って、上の作品の方が低学年向けです。
  

 
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2011年3月19日 (土)

十字軍物語1

著  者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2010年9月15日発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者はいったいどれだけの物語をその身に湛えているのだろう?「ローマ人の物語」で、ローマ帝国の1200年間を15年かけて描いた後、1年おいて「ローマ亡き後の地中海世界」で、西ローマ帝国滅亡後の6世紀から16世紀までの地中海世界を描く。そして間を空けずに、今回は「十字軍」(画文集とあわせて4部作の予定)だ。
 もちろん、文献などにあたって常にインプットがあってこそのアウトプットだし、ヨーロッパの歴史そのものに物語が埋まっているとも言える。しかしこの大量の物語がとめどなく流れ出るような、最近の著作活動には圧倒される。

 本書は、高校の世界史の教科書に載っている「カノッサの屈辱(1077年)」から話を掘り起こして、11世紀末から12世紀初頭にかけての、第一次十字軍のイェルサレムへの遠征を描く。主な登場人物は、この十字軍に参加したキリスト教国の領主やその親族たち。
 その陣容を紹介する。南フランスのトゥールーズ伯サン・ジル。神聖ローマ帝国下のロレーヌ公ゴドフロアと弟のボードワン。南イタリアのプーリア公ボエモンドと甥のタンクレディ。法王代理の司教アデマール。この他にもフランスの王弟や、各地の領主が参加していて「オール欧州」の様を呈している。

 このように紹介はしたものの、十字軍に造詣が深い方でなければ、初めて聞く名前ばかりだろう。高校の教科書には「カノッサの屈辱」の教皇グレゴリウス7世と皇帝ハインリッヒの名前は載っていても(これだって覚えている人はそう多くないだろうけれど)、第一次十字軍に参加した諸侯の名前は載っていないから(娘の教科書「詳説世界史 改訂版(山川出版社)」で確認済)。

 それでも敢えて名前を挙げたのは、本書が、彼らを主人公にした群像劇に仕上がっているからだ。歴史の記述は「出来事」を中心に語られることが多い。それは正確さを求められるからだろう。「出来事」は史料からある程度は確定ができる。
 しかし本書は「人」を中心に語られている。ある出来事を誰かが起こすと、その人が「なぜ、どういう気持ちで」そうしたかが描かれる。そんなことはなかなか史料に残っていないだろうから、正確ではないのだろう。でも、その方が物語に血が通う。そして圧倒的に面白い。

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2011年3月17日 (木)

歴史魂 Vol.2(2011年4月号)

出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2011年3月5日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 本誌は、アスキー・メディアワークスが発行する歴史ファン向けの雑誌。昨年12月に創刊され、本誌はVol.2。このジャンルには半世紀を超える歴史を誇るものを始めとして、30年、20年と続いている古参雑誌がいくつかある。
 その中で、本誌が特長的なのは、「戦国BASARA」「戦国無双」といったゲームと、そこから派生したアニメに端を発していることだ。アスキー・メディアワークスは、ゲーム・アニメの専門雑誌を数多く発行しているから、上手いメディアミックスだ。

 本誌の巻頭特集は「真田幸村と4人の勇者」。幸村は、信濃の小国上田の領主の二男坊に生まれた。上杉、豊臣へ人質として送られた青年期。父の昌幸と共に徳川軍と戦った上田合戦。その後の14年の配流先での蟄居生活。そして大坂の陣へ参戦し、家康本陣に突撃するも、あと一歩及ばず討死。実にドラマチックな人生を送った人物なのだ。
 だから幸村を特集する雑誌は珍しくない。少し食傷気味でさえある。そこを本誌の特集は「4人の勇者」を加えることで新味を出している。「4人の勇者」とは、毛利勝永、後藤又兵衛、明石全燈、長宗我部盛親の各人。私は浅学のため、後藤又兵衛以外は名前も知らなかった。掘り起こせば、まだまだヒーロー予備軍が、戦国時代には眠っているのだな、と思った。

 新味と言えば、本誌では武将たちが、「武力」「知力」「政治力」「統率力」といったポイント付きで紹介されている。幸村はこの順番で「98、70、40、85」、伊達正宗は「83、92、97、95」、豊臣秀頼は「35、55、45、25」という具合。さすがにゲームに端を発した雑誌だ。
 それから、日本の戦国時代と中国の三国志の武将たちを比べて、どっちが上か?なんていう記事もある。織田信長と曹操を比べたら?といった趣向だ。ポイント表示もそうだが、古参の雑誌には無かった企画だと思う。それは、史実とエンタテイメントのバランスが違うからだろう。もちろん本誌はエンタメ重視だ。

 参考:「歴史魂」公式サイト

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2011年3月13日 (日)

駆け出し魔法使いとケルトの黄昏

著  者:ダイアン・デュエイン 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2010年10月22日 初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 東北地方太平洋沖地震発生から2日余り。報道で見る惨状と、いつもどおりの暮らしを続ける私とのギャップに戸惑いました。本の感想なんか書いていていいのか?と。しかし、募金するぐらいしかできることを思い付きませんでした。亡くなった方のご冥福をお祈り申し上げます。そして、一刻も早く元の平穏な暮らしを取り戻せるよう、祈ってやみません。

 「駆け出し魔法使い」シリーズの第4弾。異世界のニューヨークの街、深海、宇宙の涯と、これまでドンドン遠くへ、ドンドンあり得ない場所へと舞台を移してきたが、今回の舞台はアイルランド。ちょっと近いけれども、アイルランドは「妖精の国」「伝説・神話の国」。不思議なことが起きる国なんだそうだ。主人公ニータが「夜中に声がしたので外に出て行って見たら誰もいなかった」と報告すると、アイルランドに住む伯母さんが応えた「アイルランドへようこそ」

 魔法使いとしての任務に没頭するニータの身体を心配して、彼女の両親はアイルランドに住むニータの伯母のところへ、休養のためにニータを送る。しかし、ニータがアイルランドに来たのは、両親の考えには違いないが、もっと大きな意思が働いていたようだ。ニータにはアイルランドで果たすべき任務があった。そこは、魔法に満ち満ちた場所だった。

 今回の任務は、ニータだけに与えられたものではない。アイルランド中の魔法使いを総動員しての一大作戦の一員として、ニータは参加することになる。対する相手は、ニータの宿敵とも言える「孤高なる者」。彼は様々な姿をしてこの世に現れる。今回はアイルランド神話の魔神となって、魔法使いたちの前に立ちはだかる。古代の伝説の戦いの再来だ。倒せなければ世界の破滅を招く...。
 ニータが活躍する場面があまりなかったのが残念だけれど、善悪の対決の図式は分かりやすいし、スケールも大きい。シリーズの中で本書が一番ワクワクした。

 「妖精」と聞くと、背中に羽がある小さくてか細い生き物を思い浮かべがちだけれど、本書の妖精は凛々しく力強い。(「サークル・オブ・マジック」に登場した妖精もそうだった。)アイルランドの妖精には、こうした力強いものも、醜いものもいるそうだ。ちなみに著者は、ニューヨークで生まれたが、現在は本書の舞台となったアイルランド・ウィックロウ在住。

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2011年3月10日 (木)

再び、本好きのためのSNS「本カフェ」フリーペーパー

honcafefp.jpg この度、私が参加している、本好きのためのSNS「本カフェ」で、フリーペーパーを発行しました。右の表紙イメージからPDFファイルにリンクされています。興味がある方は、ぜひご覧ください。

 今回は私も、書評の寄稿の形で制作に参加させていただきました。A5版の1ページをいただいて、有川浩さんの「シアター!」「シアター!2」の書評を載せています。出版社のアスキー・メディアワークスさんにもご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 それから今回は、何人かで同じ本を読んで、その書評を30文字で表す、「30文字読書会書評」という新しい企画もあります。前回同様に、たくさんのメンバーの参加によって、1つの形あるものを作り上げることができました。

 例によって、印刷した紙のフリーペーパーは、メンバーの有志が、書店や図書館などの自分の身近の場所にお願いして置いてもらっていて、非常に限られた部数しか設置されていません。どこかで見かけたなら、それは「超々レア物」ですよ。

 本カフェフリーペーパー(前号)の記事:本好きのためのSNS「本カフェ」フリーペーパー(2010.11.28)

 
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2011年3月 9日 (水)

葉隠物語

著  者:安部龍太郎
出版社:エイチアンドアイ
出版日:2011年3月14日 初版第1刷発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 出版社の株式会社エイチアンドアイさまから見本を献本いただきました。感謝。

 本書は著者が「月刊武道」という雑誌に連載した小説に加筆修正したもの。「武士道とは、死ぬことと見つけたり」という苛烈な言葉で有名な「葉隠」を基にしている。だから、まず「葉隠」の説明から始めるのが良いと思う。
 「葉隠」は、佐賀藩の鍋島家の家来である山本常朝の口伝を、同じく家来である田代陣基が筆記編集したもので、1716年に完成した。総論と11巻の各論からなり、武士のあるべき姿を述べた教訓や、鍋島家の代々の君主らにまつわる挿話が記されている。その項目数、なんと約1300にも上る。
 「死ぬことと見つけたり」だけに焦点が当てられて、「命を軽視している」と捉えられたり、「国のために命を捧げろ」と軍国主義に利用されたりした。そうでなくとも、この一文があまりに有名なために、「時代錯誤の教訓集」のイメージが強く、全体像を誤って捉えられているように思う。私もそうだった。

 本書は、この一文だけに引きずられることなく、著者が多数ある中から選んだ挿話を基にして、23編の短編にまとめたものだ。読み進めると、そこには君主を初めとする、佐賀藩の「曲者」(一癖も二癖もある剛勇の者の意味)たちの、活き活きした姿が立ち上ってくる。
 「曲者」なのは男だけではない。藩主の臨終の床に臨んで「さてさて、めでたいご臨終でございます。~これにてお暇いたします」と席を立つ奥方。屈辱を晴らすために決闘に出かけた夫の助太刀に、鎌をつかんで走り出す無役の武士の妻。男も女も、身分の上も下も、腹が据わっているのだ。

 「死ぬことと見つけたり」が「葉隠」のすべてではない。しかし本書を読み終わった今、そのテーマがこの一文に回帰していることが分かる。それは「死ぬこと」に対する「覚悟」だった。敢えて言えば、現在でも「死んだ気になって..」という表現があるが、字面の意味はそれと同じだ。
 ただ、現在は「死」は完全に例えであって、この言葉から本当の「死」をイメージすることは難しい。「葉隠」の当時は、「死」はもっと日常にあるものだった。特に、武士ならば常に半日先にはあるかもしれないもの。それだけに字面の意味が同じであっても、求められる覚悟は全く違う。そこから生まれる「生」の輝きも同じく全く違うものになる。

 参考:松永義弘/「葉隠」(ニュートンプレス)

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2011年3月 5日 (土)

悪人

著  者:吉田修一
出版社:朝日新聞社
出版日:2007年4月30日 第1刷発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 大佛次郎賞と毎日出版文化賞をダブル受賞。本屋大賞第4位と、2007年・2008年の話題の本。出版数は220万部を突破したそうだ。昨年9月に、妻夫木聡さん、深津絵里さんの主演で映画化され、モントリオール世界映画祭で深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞、今年2月には日本アカデミー賞で作品賞は逃したものの、主演・助演の演技部門4賞を独占。間違いなく近年の大ヒット作品だ。

 事件は2001年の12月に起きる。福岡と佐賀の堺にある峠道で、福岡市内に住む保険外交員の石橋佳乃が、長崎市郊外在住の土木作業員の清水祐一に殺害される。このことは、読み始めて3ページ目で明らかにされる。物語は、この事件に至る数時間前から始まり、事件後の清水祐一と彼と行動を共にする女性、馬込光代の逃避行を中心に、関係する人々の人間模様を抉り出しながら進んでいく。

 殺人犯の清水祐一は悪人なのか?他の誰かは悪人なのか?タイトルにはこういった問いかけの意味があるようだ。孤独な青年が他人を求めた果てに、その人の命を奪ってしまう。孤独な女性が他人を求めて逃避行を選ぶ。真面目に生きてきた人間に悲劇が降りかかる。その一方で恵まれた人間が他人の悲劇を笑う。

 実は、私は今ひとつ乗りきれなかった。それは、主な登場人物の誰にも共感を感じられなかったからだと思う。登場人物への評価が作品の評価に直結するわけではない。しかしこの物語は、逃避行を続ける清水祐一と馬込光代の心理がキーファクターで、それが物語に深みを与えている。だから、その心理を撥ね付けてしまうと、深みがなくなってストーリーが上滑りしてしまう。残念だが、私はそうなってしまった。

 最後に1つ。「ちくわ」の伏線は余計だったかも。

 この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。

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2011年3月 2日 (水)

きみの友だち

著  者:重松清
出版社:新潮社
出版日:2009年7月1日 発行 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の2月の指定図書。

 著者の作品を読むのは3年前の「青い鳥」以来で2冊目。「青い鳥」がそうだったように、本書でも著者は子どもたちを丁寧に描く。その心のひだをそっとなぞるように。帯に著者自身の言葉で「僕の「少年・少女もの」のひとつの集大成です。」とある。誇張でも虚勢でもないのだろう。本書を読み終わった今そう思う。

 本書は10編の連作短編集で、登場人物はほぼ共通していて、恵美と文彦(ニックネームはブン)の姉弟とその友だちたち。彼らが1人ずつ交代で主人公になって、二人称の「きみは....」という形で語られる。まるで読んでいる私に語りかけているように。

 すべての短編で登場して要となる役回りの恵美は、小学4年生の時に交通事故に遭い、左ひざに大きな怪我を負った。今でも歩くのに松葉杖が必要だ。事故の原因の一端は、友だちたちの他愛のない悪ふざけ。それを責めた恵美は、左脚の自由だけでなく、友たちまで失ってしまった。「みんな」を敵にしてしまったらしい。

 弟のブンは、成績優秀、スポーツ万能、クラス一番の人気者だ。そんなブンの前に、転校してきた基哉(モト)が現れる。モトはブンより少し「デキルやつ」らしい。モトによって自分が「一番」ではなくなることを、ブンは「認める」のだが「受け入れる」ことができない。

 こんな感じで、女の子が「みんな」との関係に悩む物語と、男の子が「誰か」との関係に悩む物語が交互に描かれる。そして恵美の前には、体が弱いために入院生活が長い由香が現れる。「みんな」を信じなくなった恵美と、「みんな」の中にいたことがない由香の間には、絆が生まれる。
 その絆が、傷つき立ち止まってしまった友だちたちの心を、少しだけ前に押す。...落涙。

 この後は、本書について私なりの解釈を書いています。本書を未読の方で、先入観なくお読みになりたい方は、読まない方がいいと思います。それでよろしければ、どうぞ

 この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。

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