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2011年1月

2011年1月29日 (土)

水域

著  者:椎名誠
出版社:講談社
出版日:1990年9月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 昨年の11月に三崎亜記さんの「失われた町」のレビューを書いた時に、本好きのためのSNS「本カフェ」で、(あまり科学的な裏付けのない独自の設定が)椎名誠さんのSF作品に似ている、という話を聞いて、何冊か紹介してもらったうちの1冊。感謝。

 舞台は、陸地のほとんどが水没した未来世界。水棲の動植物が異様に進化していて、人間たちは、それらの脅威と闘いながら、ボートやさらに粗末な筏での漂流生活を強いられている。ただ、そんな説明はなく、いつ、なぜ、そうなったのか?国や共同体はどうなってしまったのか?そういう説明も一切ない。第1章で登場するホテルが水面から突き出ている景色で、「あぁ、沈んじゃったんだ」と気が付く。
 主人公はハル。年齢は不明だが、小屋が付いた5×2メートルほどの「ハウス」と呼ばれる筏で、たった一人で旅していて、その前にも様々な経験があるようだから、もう大人なのだろう。その後の物語から感じられる雰囲気から、30代後半から40代の壮年かと思う。(「BOOKデータベース」の紹介では「青年ハル」と書いてあるけれど)

 水流に乗って流れていく先々での邂逅を描く、一種のロードムービー。水面に屹立するホテルで、霧に閉ざされた停滞水域で、流木の島で、そして海の上で、ハルは様々な人や物と出会う。秩序を維持する一切の制度も体制もなく、向かい合った者同士の意思だけが意味を持つ。ハルはそんな世界を生き延びる。
 何もかもがシンプルだ。筏船での漂流生活だから、ムダなものを持っている余裕がそもそもない。行く先を色々と考えても、水の流れに乗って移動するしかない。文字通りに身一つになった時に、人間はどうするのだろう?他人とどんな関係を結ぶのだろう?そんなことを考えた作品。

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2011年1月26日 (水)

植松電機I

著  者:田原実 絵:西原大太郎
出版社:インフィニティ
出版日:2010年11月23日第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、株式会社インフィニティが発行している「感動コミック」シリーズの第7弾。株式会社インフィニティ様から献本いただきました。感謝。

 このコミックは、植松電機の専務さんである植松努さんの半生を描いたもの。植松電機は、北海道のほぼ中央の赤平市にある、車載電磁石システムの設計・製作・販売の会社。車載電磁石とは、建設現場で鉄板を運んだり、廃棄物の分別のために使われる強力な磁石のこと。まぁ「どこにでもある」とは言わないが、普通の中小企業。しかし、植松さんと植松電機は、普通ではない事業に取り組んでいる。それは「宇宙開発」だ。

 物語は、植松さんの小学生時代から始まる。二宮康明さんの「よく飛ぶ紙飛行機集」を読んで、紙飛行機作りに夢中になる。自分で設計を試みるが失敗、「飛行機が飛ぶ仕組み」に興味を持ち、飛行機やロケットの仕事を志すようになる...。子どもたちの理系離れを嘆く大人たちが、泣いて喜びそうなストーリー。...だけであれば、「感動コミック」にはならない。

 植松さんは、飛行機の知識を独学で習得し、中学生のころにはそれは「航空力学」と呼べるほどのものになる。しかし夢中になるあまり、学校には馴染めず成績も落ちる。中学の進路相談で、植松さんの志に早くも大きな壁が立ちはだかる。「芦別(植松さんの出生地)に生まれた段階で無理」と、先生に宣告されてしまうのだ。
 その後も、大小いくつもの壁が立ち現れる。「○億円かかりますよ」「どうせムリですよ」「やったって何も変わりませんよ」 それを、最初は悩みながら、後には自信を持って乗り越える。そのキーワードは「だったらこうしてみたら?」 子どもたちとその親御さんたちに読んでもらいたい一冊。

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2011年1月23日 (日)

希望のつくり方

著  者:玄田有史
出版社:岩波書店
出版日:2010年10月20日 第1刷発行 11月5日 第2刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」。本書を紹介する時に多くの人が触れるであろう、村上龍さんの「希望の国のエクソダス」のこのセリフから私も始めたい。
 このセリフは本書の中でも何度か引用され、本書の著者がまとめた「希望学」という本には、村上龍さんが推薦文を寄せている。そもそも、私が本書を手に取ったきっかけは、本好きのためのSNS「本カフェ」で、メンバーの方との村上龍さんの「歌うクジラ」の話題から流れて「希望学」の推薦文の話になったことだった。

 「希望の国のエクソダス」の刊行は2000年。それから10年余を経ても状況は一向に好転しないことは周知の通りだ。ただ私は思うのだけれど、あまりにスッキリと「希望がない」と言われて、私たちは納得してそれを受け入れてしまったのではないだろうか。そして逆にこの言葉に縛られて気持ちを切り替えられないまま10年を過ごしてしまったのではないか、と。

 この国にはほんとうに「希望がない」のか?よく分からないけれど「希望がない」という滅々とした言葉を心に満たしていると、前に向いて進む力をそがれる。そのことこそが今の閉塞感の源なのではないか?だから「そもそも希望とは何なのか?」こんなことを真正面から考える、著者が2005年から続けている「希望学」研究は、今こそ必要とされているものかもしれない。

 前置きが長くなったが本書について。「希望とは何か?」「夢、幸福、安心との違いは?」「希望についての人びとの考えは?」といったことを、「希望学」研究で得たアンケートやフィールドワークの結果から解き明かしていく前半は、とても良かった。
 一端を紹介すると「希望」とは、「a Wish for something to Come True by Action」だとする。日本語にすると「行動によって何か実現しようとする気持ち」とでもなろうか。つまり「希望」には、「気持ち」「何か」「実現」「行動」の四つの要素が必要。「希望がない」のは、この四つのどれか1つまたは複数が足りないからで、ならばそれを補えば「希望」は生まれるはず。机上論と一蹴するのは簡単だが、「希望」がないと思っている人が「希望」を求めるための糸口にはなるはずだ。

 また調査では、20代から50代の78.3%が「希望がある」と答えている。そのうちの80.7%、全体の63.2%の人が「その希望が実現できる」と答えている。これを多いと見るのは楽観的かもしれないが、この国には、「希望がない」なんてことはなくて、半分を大きく超える人に「(実現可能な)希望がある」のだ。

 後半は、「希望」を持つために、「こうしたらいい、ああしたらいい」と書いてくれている。帯に「壁にぶつかっている人へ希望学がおくるリアルでしなやかなヒント」とあるし、切実に求められているのはこうしたことに違いない。だから、これに応えようとしたのだろう。

 しかし、大変失礼だけれど、どこかで聞いたようなことばかりで、研究の成果として得た知見なのかどうかもはっきりとしない。著者が提示してくれる「こうしたらいい」の何十ページよりも、「試練はどうしたら乗り越えられるか?」という問いの答えとして、フィールドワークで得た「三人、分かってくれる人がいたら大丈夫だから。」という釜石の男性の一言の方が重みがあるのは、何とも皮肉なことだ。

 いやいや、この言葉を掘り起こしたのも「希望学」の成果だ。それに、研究の第一段階は「対象をよく観察して、その特徴や構造を明らかにすること」。「その対象を操作したり利用したりできること」は別の段階で、日の浅い「希望学」はまだそこまで行っていない。「こうしたらいい」は、今後の発展に期待すべきなのだろう。

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2011年1月19日 (水)

本は絶対、1人で読むな!

著  者:中島孝志
出版社:潮出版社
出版日:2010年11月20日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 禁止の命令に「絶対」と!まで付けた激しい口調のタイトルだけれど、著者は、ビジネスパーソン向けの読書会や勉強会を長く主催していて、その経験から「本を何人かで一緒に読むと色々と良いことあるよ、だから1人で読むのは損だ」と言っているのだ。1人で本を読むと、何か困ったことが起きるわけではない。
 私は、以前から「親子読み」と名付けて、親子や近しい人と同じ本を読むことを薦めている。(同じようなことを提唱する「家読(うちどく)」という言葉が以前からあったそうだが、私は知らなかった)。また、本好きのためのSNS「本カフェ」に入っていて、本を読んだ感想を話し合ったり、本を薦め合ったりしている。もちろん読書会もある。そこには1人で本を読んでいては到底得られないものがある。だから「本を何人かで読むと良いことあるよ」という著者の考えには賛成だ。

 ただし、本書の内容には少し違和感も覚える。著者の言う「良いこと」というのが、「あるマンガを読書会で取り上げた時に、そこで派生的に得た情報を元に株式投資したらその株が高騰した」というような、「役立つ情報が得られる」ことを(敢えて言えばそのことだけを)指しているようなのだ。

 著者が想定しているのは、ビジネスパーソンの読書会なのでそれでいいのだけれど、私は別のものを重視したい。例えば、その本について理解が深まるとか、自分にはない見方を知って視野が広がるとかの、本そのものを楽しむために良いこと。別の考えを持つ人を受け入れ理解することができるなどの、本を通した自分自身の内面の進化(深化)に良いことなどだ。実は、この本を手に取った時には、そういったことを期待していた。

 とは言え、本書には読書会開催のノウハウや、ブログやツイッターの利用方法など、著者の永年の蓄積が披露されていて、役立つ情報が多い。やはり実際に運営してきた自信がある人は強い。ただ、その自信があまりに露骨に表現されると引いてしまう。「目利き=読書通なら、目次をパラパラッとめくるだけで品定めができる。わたしも瞬時にわかる」とか、「わたしの書評サイトにアクセスすれば、実際にその本を読んだか、あるいはそれ以上に価値ある情報を得られるはずだ」なんて部分には苦笑してしまう。
 もっとも、年間3000冊読むというのだから、著者が読書通なのは間違いない。「仕事上、必要に迫られなければ速読しない」で、年間3000冊、毎日休みなしで8~9冊。どうしたらそんなことができるのか分からないけれども、私の30倍の読書量なのだ。

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2011年1月16日 (日)

ぬしさまへ

著  者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2005年12月1日発行 2009年12月5日 第40刷
評  価:☆☆☆(説明)

 先日の「しゃばけ」に引き続きで「しゃばけ」シリーズ第2作。長編だった前作とは違って、こちらは短編集。表題作の「ぬしさまへ」を含めて6つの短編が収められている。私の経験では、シリーズものの短編集は、本編に収まらなかったエピソードなどをまとめた外伝的なものが多かった。だから第2作にして短編集というのは、ちょっと驚いたのだけれど、これがなかなか良かった。

 私は知らなかったのだけれど、ミステリーの一分野に「ベッド・ディテクティヴ」(日本語にすると「ベッド探偵」)というのがあるそうだ。病気などを理由にベッドから出られない、自分では調査することができないという条件で、聞き知った話を基に推理力を働かせて事件を解決する。大店の長崎屋の跡取り息子でしょっちゅう寝込んでいる、主人公の一太郎が、妖たちの力を借りて難事件を解き明かす一連の短編は、この「ベッド探偵」?「ふとん探偵」?いや「寝込み探偵」か?

 6編すべて味のある物語だった。中でも良かったのは、「空のビードロ」「仁吉の思い人」「虹を見し事」の3編。「空のビードロ」は、一太郎の兄で幼くして長崎屋を出された松之助の物語。松之助は「しゃばけ」の終盤にストーリーに絡んでくるが、その顛末は余韻を残したままになっている。「しゃばけ」が描いた一太郎が兄を求めた物語は、この短編をもってようやく了となる。

 「仁吉の思い人」「虹を見し事」は、それぞれ形は違うけれど「届かぬ恋心」が中で描かれている。何とも切ない物語。甘やかされ放題に育ちながら、性根の真っ直ぐな一太郎は、周囲に世話をかけお店の役にはあまりたっていないと、自ら感じている。そして「虹を見し事」では、「私は本当にいらない人になってしまう」と胸中に思う。「今のあなたなら、そんなことにはならない」と教えてあげたい。

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2011年1月12日 (水)

しゃばけ

著  者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2004年4月1日発行 2010年6月10日 第41刷
評  価:☆☆☆(説明)

 2001年の日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。10年近くも前の作品だとは思ってなかったが、巷で話題の本という認識はずっとあった。時代もので妖怪が出てくるらしい、ということも知っていた。書店で文庫本を物色していて見つけて、「ちょっと読んでみるか」と購入した。

 舞台は江戸時代の江戸は日本橋の大店、回船問屋兼薬種問屋の長崎屋。主人公はそこの跡取り息子で17才になる一太郎。この一太郎が体が弱い。これまでに病で何度も死にそうになっている。ちょっと寒気に当たると寝込んでしまう。そのためか、一太郎の両親は息子にはめっぽう甘い。
 そして一太郎には、仁吉と佐助という2人の手代が付いて身の回りの世話をしているのだけれど、これが輪をかけて甘い。ちょっと咳きでもしようものなら、すぐに寝間の支度をして寝かせてしまう。そしてこの2人の手代は、一太郎の祖父が付けた齢千年の妖(妖怪)なのだ。

 物語冒頭は、そんな病弱な一太郎が、なぜか夜に一人で外出した帰り道。五つ過ぎというから、日没から2時間あまり。江戸時代の夜は真っ暗闇だ。そこで、殺人の現場に遭遇してしまう。殺人鬼に追われた一太郎に助力したのも、人ならぬ身の妖たちだった。
 この殺人事件は、やがてもっと大きな事件へとつながる、一太郎の身にも危険が迫る。岡っ引きの親分たちには解決できそうもない。どうやら、この事件は一太郎自身が解決しなければならないようなのだ。ちょっとムリをすれば寝込んでしまうのに...

 甘やかされ放題の一太郎なのに、奇跡的にも性根の真っ直ぐな責任感のある青年に育った。そういうところが好印象だ。仁吉と佐助の甘やかしっぷりも、いっそすがすがしい。謎解きと人情にコミカルな笑いをまぶした、江戸の街と妖たちが身近に感じられる作品。シリーズがたくさん出ている。「ちょっと読んでみるか」が、長い付き合いに発展しそうだ。

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2011年1月11日 (火)

アクセス解析ツール「Woopra」のチャット機能について

Ask_chat  昨年の春先に「アクセス解析ツール「Woopra」を試してみました」という記事を書きました。「Woopra」とは、ブログへのアクセス状況がリアルタイムに分かるというスグレモノのツール。例えば、今この記事を読んでいる人がいれば、その情報が私のパソコンの管理ツールに表示される仕組みになっています。

 その他、「どういうキーワードで検索されているか?」とか、「どのサーチエンジンからのアクセスが多いのか?」「どのOS、どのブラウザからのアクセスがどのくらいあるか?」などなどのことが分かります。興味がある方は、導入してみてはいかがでしょうか?ちょっとインストールが簡単とは言えませんが、苦労の甲斐はあるかと思います。

 さらに、アクセス中のユーザを選んでチャットで話しかけることもできます。以前の記事の時には残念なことに、日本語が文字化けしていましたが、先日試してみるとそれは解消されていました。Woopraのフォーラムで改善要望を出してから9か月。特にバージョンアップもなく、対応のアナウンスもないので、半ばあきらめていたのですが、対応されていたわけです。

 それで、チャットのスタート時には右上のような「Web Master YO-SHI wants to chat with you」というポップアップ画面がでます。見るからに怪しげな広告やウィルスのようですが、そうじゃないんです。無闇に話しかけたりはしませんが、何かお聞きしたいことがあれば、チャットを申し込むかもしれません。時間的・気持ち的に余裕があればで結構ですから、その時には「Accept」を押して、しばしお付き合いいただきたく、お願いいたします。

Woopraのオフィシャルサイト
http://www.woopra.com/

 
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2011年1月 9日 (日)

王国の鍵5 記憶を盗む金曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年1月31日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 月曜日から始まる「王国の鍵」シリーズ5冊目は金曜日。今回主人公アーサーが対決することになるレディ・フライデーは、世界の中心に位置するといわれている「ハウス」の中層の管財人。実は、彼女は前作「戦場の木曜日」のラストシーンに姿を現している。アーサーの友人で、意識も身体も支配されてしまう菌に侵されたリーフを診察する医師として。

 今回は、このリーフから物語が始まる。彼女が目覚めたのは、自分の部屋ではないことはもちろん、病院のベッドでさえなかった。数多くの人が眠っている大きな部屋。やがて、レディ・フライデーがその部屋に入ってきて、眠ったままの何百人もの人々が夢遊病者のように、その後を追う。前作のラストの暗示の通り、リーフはレディ・フライデーの手に落ちてしまったらしい。
 一方のアーサーは、前作で辛うじて敵の大軍を押し返して、つかの間の安寧の中にあった。はずだが、これもレディー・フライデーの謀略にかかって、目のとどくかぎりの雪野原に、ひとり放り出されてしまった。

 アーサーは、これまでに手に入れた鍵の力によってほぼ無敵の状態。しかし前作からは、これをあまり使いすぎると、地球には戻れなくなってしまう、という葛藤を抱える。さらに「1作で1人のボスキャラと戦って勝ち抜く」という単純な構図も、前作での第2の敵の出現によって転換した。
 本作では、この転換がもう一段発展して、さらなる敵の存在や、身内に抱える不安定さが示唆されるなど、様々な仕掛けが施される。しかも、その仕掛けはラスト2行でもう1つ追加される。これは、益々目が離せない。

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2011年1月 6日 (木)

ストーリー・セラー

著  者:有川浩
出版社:新潮社
出版日:2010年8月20日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 アンソロジーの「Story Seller」に収録されていた短編「ストーリー・セラー」を「Side:A」として、新たに書き下ろした「Side:B」を加えて単行本化したもの。Side:AもBも、女性の小説家と、その一番の理解者であり、読者でもある夫との揺るぎない愛と哀しみの物語。

 以前、アンソロジーの「Story Seller」のレビューで、「ストーリー・セラー」(つまり、本書の「Side:A」)について、「私は好きになれない」として「著者が「悪意」や「悲劇」も描けることは分かっているが、読後感は大事にしてほしい。」と書いた。その「読後感」は「Side:B」の冒頭で救われた。
 救われはしたが「Side:B」も含めて、依然としてこの作品は、私は好きになれない。理由はいくつかある。一つは、大切な誰かの「死」による感動的な話に、私自身意外なほど抵抗があること。「死」は重要なテーマだとは思うが、感動のために利用しているようでイヤなのだ。

 もう一つは、主人公の小説家の旦那さんを、どうにも持て余してしまうこと。クールでやさしくて、著者の作品の男性の例に漏れず、ここイチバンの時には甘~いセリフを吐ける。言うことないのかもしれないんだけれど、こんなに滑らかに口が回る男ってどうなのよ、と口も手も遅い私は思ってしまう。
 また「Side:A」では、「読む側としては」とか「本読みとしての勘」というセリフがいくつもある。本を沢山読んでいる人らしいのだけれど、そういう勝手に何かを代表したり上から見たもの言いをする人は、あまり大した人じゃないんじゃないかと思ったりするのだ。(著者の旦那さんがそういう言い方をするのなら前言撤回します。)

 「著者の旦那さん」に図らずも触れたが、著者の作品に、旦那さんのアドバイスが生かされているのは、「あとがき」を読んでいるファンには周知のことだ。著者が「あとがき」で作品制作の裏話を少し明かしてくれることも。
 その「あとがき」が、本書にはない。このことが、「Side:B」のエンディングとあいまって、読者の気持ちをざわつかせる。

 この後は書評ではなく、新聞に載った有川さんのインタビュー記事について書いています。お付き合いいただける方は、どうぞ

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2011年1月 1日 (土)

あけましておめでとうございます。

 皆さん、あけましておめでとうございます。

 景気がよくなった、先の明るい見通しが見えてきた、という話をついに聞くことなく年が明けてしまいました。そんな中で昨年は100冊以上の本を、ここで紹介することができました。働く場所があること、働きながらも本を読む時間があること、読んだ本の感想をブログに書く余裕があることの幸せを、毎年、年越しに改めて感じています。今年も、この幸せが続くことを祈って止みません。

 昨年は、私がお世話になっている本好きのためのSNS「本カフェ」で、「読書会」が毎月催されて、今まで疎遠だったジャンルや作家さんの本を読む良い機会になりました。同じ本を読んだ感想を聞き、時には意見を交し合うのは、大変良い刺激になりました。

 また、昨年の暮れから「たんぽぽモール」という、女性向けウェブマガジンで、「ブックレビュー・オススメ本」のコラムを書くことになりました。もうしばらくすると第2回のコラムが掲載される予定です。私にとっては新しい試みで、うまく展開するようがんばって行きたいと思っています。

 それでは、今年が、皆さんにとって良い年でありますように。

 
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